最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第481話 格の違い
ソフィも『金色のオーラ』を全身に纏い始めたかと思うと、向かってくる『ハワード』の『サーベル』を『青』の『形成付与』で強化を施した右手で受け止める。
互いに攻撃力は拮抗していたが、このままでは埒が明かないと悟った『ハワード』が一歩下がり、再び『サーベル』でソフィの心臓を目掛けて刺突しようとする。
ソフィは避ける事も防御を行う事もせずに『ハワード』の『サーベル』を抵抗せずに身体で受けるが、ソフィの心臓に届くどころか皮膚の途中で止まるのだった。
「ば、馬鹿な!」
ハワードの武器がそれ以上ソフィの体内に進むことは叶わず、いくら力を込めようとびくともしない現実に彼は驚愕に目を丸くするのだった。
ソフィは無表情のまま視線だけを『ハワード』に向けたまま、ゆっくりと右手を自分の皮膚に刺さっているサーベルへと伸ばしていき、そのまま『魔力』をサーベルを掴む右手に集約し始める。
次の瞬間、ソフィの皮膚に刺さっていた『サーベル』はどろどろと溶け始めていき、やがてハワードの手にまで影響が伸びて行くようだった。
慌ててハワードは手を離して距離をとるが、それが功を奏したようで『サーベル』はもう完全に解けて消え失せるのだった。
「ば、化け物めが!」
流石に心臓を貫くつもりで刺したサーベルが皮膚で止められたかと思えば、逆に何事もなく溶かされてしまい、ハワードは目の前の少年が想像以上に厄介な存在だという事をようやく理解するのだった。
「……」
そして離れて行ったハワードを睨みつけたまま、ソフィはゆっくりと拳を握る。
次の瞬間、その場からソフィの姿が忽然と消える。
「!?」
大魔王ハワードでさえソフィが何処に行ったのか分からず、直ぐに『魔力感知』と『魔力探知』で探ろうとするが、結果が割り出される前に一瞬の内に『ハワード』の目の前にソフィが姿を現すと、握りしめられた拳がハワード目掛けて繰り出されるのであった。
「くっ!?」
ハワードが反射的に身体をのけ反らせたが、その時にはもうすでに遅く、ソフィの右拳はハワードの鳩尾に刺さっていた。
「ぐ……っ! ぬぅっ!!」
何とか空の上でソフィの拳に耐えたハワードは、再び具現化したサーベルで隙だらけのソフィの首を突き刺す。
首は種族関係なくどんな者であっても急所である事は間違いない。身体ごとぶつけるつもりで『サーベル』を深く突き入れるのだった。
全力でソフィの首に『サーベル』を突き刺したハワードは、にやりと笑みを浮かべる。
――だが。
「……本気でやっているのか?」
首にサーベルが突き刺さっている状態で、ソフィは何事もないかのように口を開いた。
「ばっ……! 馬鹿な!? な、なぜ!? 何故喋る事が出来る!?」
驚きながらそう口にするハワードだが、目の前に居たソフィの姿がまたもや最初から居なかったかの如く消えた。
「お主こんなもので我と戦うつもりだったのか? あまり我を舐めるなよ?」
…………
「……ソフィ様と戦っているあの魔族。実はそこまで大した事ないんじゃないですか?」
リーシャは持っている短剣をくるくると器用に手の中でまわしながら、横に居るイリーガルに問いかけ始める。
「いや、そんな事はない。あいつは俺から見ても相当に強い奴だと思うぞ」
過去にハワードと互角の戦いを繰り広げる程の戦いを行ったイリーガルは、大したことないんじゃないかと疑問を口にするリーシャに、思っている本音を口にするのだった。
「イリーガルの言う通りじゃ。そもそもアイツは『組織』の最高幹部だった男じゃしな。大した事がなく見えるというのならば、それはソフィが強すぎるからだろうな。しかしだ……。何か変だと思わぬか?」
「え? 変って何がですか?」
「ソフィの奴をよく見てみろ。あの『魔神』を出しているというのに『魔法』を一つも使っておらぬ。あやつはすでに本来の『魔力』を取り戻しておる筈じゃろう?」
――ソフィは本来『魔法』を使う事に長けた大魔王なのである。
イリーガルとリーシャは再び視線を上空に戻すと、そう言えば確かにおかしいと思い始めるのだった。
空に張ってある結界の中で『ハワード』が何度もソフィに向かって攻撃を仕掛けては、それを躱して素手のままで『ハワード』を殴り飛ばしていた。
「はぁっはぁ……! く、くそ! 馬鹿にするなよ! 化け物がぁっ!」
常人では目にも止まらぬ速さで移動して『サーベル』を再びソフィに刺し入れる。
しかしソフィが手をゆっくりと前に出すと、サーベルを持っていたハワードの右手が千切れて吹き飛んでいく。そしてソフィの目が金色になったかと思うと、ハワードはその場に縫い付けられたかのように動きを止められるのだった。
「!!」
そこでこの戦いが始まってソフィは、初めて『魔力』を込め始めるのだった。
魔力回路から自身の周囲に供給した魔力を空気に交わらせて、魔法発動までの道筋を作る。
自身の魔力を魔法発動の潤滑油として扱い、周囲の空気と混ぜ合わせた後に全身に魔力を行渡らせて、最後に使う魔法をイメージする。
――これは『レパート』の『理』であった。
「さて、試してみるとするか」
ソフィの身体が『金色のオーラ』だけではなく『紅』や『青』と同時に三つのオーラを出し始めると、更にその『三色』色違いのオーラが交ざり合っていく。
「我の魔力によって生み出されし業火よ、我の視界の先の標的を燃やし尽くせ」
――それはソフィの魔法を発動させる詠唱であった。
『発動羅列』が浮かび上がると同時に『スタック』させていた『魔力』が魔法陣へと吸い込まれていき、『発動羅列』が明滅をし始めた瞬間に『レパート』の刻印が刻まれた魔法陣が、高速回転を始めて『魔法』が発動されるのだった。
――超越魔法、『終焉の炎』。
「!?」
一瞬の静寂の後『力の魔神』の表情が歪む程の『魔力』が『結界内』で爆ぜた。
この形態で三色併用オーラを纏っている大魔王ソフィが『魔法』に『詠唱』を用いて放ったのである。
魔法の位階が『超越魔法』であろうが『神域魔法』だろうが、所詮大魔王ハワード程度の『耐魔力』では違いなど感じさせない――。
『魔神』の創り出した『結界』に亀裂が入ったかと思うと、慌てて『魔神』は『結界』を再生させる。直撃を受けたハワードは『終焉の炎』によって身体が燃え上がったかと思うと、一瞬で炭と化して姿形の原型を留めていなかった。
「『数多の神々を従える魔神よ、汝の全てを今ここに欲す。復元の力を我は望む、契約者たる大魔王の言葉に応じよ、我が名はソフィ』」。
今度は慣れ親しんだ『アレルバレル』の『理』でソフィは『詠唱』を開始する。
――神聖魔法、『救済』。
大魔王ハワードの身体が完全に再現されたかのように元に戻り、肉体は完全に治癒されていた。
「な……、なんだ……? い、いったい……!?」
死んだ筈の体が元に戻り、ハワードは驚きながら自分の両手を見る。
「まぁ、所詮はこの程度だろうな」
数多の世界を支配する大魔王『ハワード』を相手にしながら、ソフィは落胆するような目を浮かべて溜息を吐く。
「く、くそっ!!」
ハワードは自尊心をズタズタにされたかの如く悔しそうな表情を浮かべたが、僅か数秒前にこの表情を見せた『ソフィ』という化け物に、一瞬で命を奪われてしまった『ハワード』は何も言い返す事が出来なかった。
「……さて、まあよい」
そういうとソフィは気持ちを入れ替えるように『三色併用』の『オーラ』を消しながら、魔神に結界を解くように指示をするのだった。
「お主に選択肢を選ばせてやろう――」
――そしてソフィは大魔王ハワードにそう言い放つのだった。
……
……
……
互いに攻撃力は拮抗していたが、このままでは埒が明かないと悟った『ハワード』が一歩下がり、再び『サーベル』でソフィの心臓を目掛けて刺突しようとする。
ソフィは避ける事も防御を行う事もせずに『ハワード』の『サーベル』を抵抗せずに身体で受けるが、ソフィの心臓に届くどころか皮膚の途中で止まるのだった。
「ば、馬鹿な!」
ハワードの武器がそれ以上ソフィの体内に進むことは叶わず、いくら力を込めようとびくともしない現実に彼は驚愕に目を丸くするのだった。
ソフィは無表情のまま視線だけを『ハワード』に向けたまま、ゆっくりと右手を自分の皮膚に刺さっているサーベルへと伸ばしていき、そのまま『魔力』をサーベルを掴む右手に集約し始める。
次の瞬間、ソフィの皮膚に刺さっていた『サーベル』はどろどろと溶け始めていき、やがてハワードの手にまで影響が伸びて行くようだった。
慌ててハワードは手を離して距離をとるが、それが功を奏したようで『サーベル』はもう完全に解けて消え失せるのだった。
「ば、化け物めが!」
流石に心臓を貫くつもりで刺したサーベルが皮膚で止められたかと思えば、逆に何事もなく溶かされてしまい、ハワードは目の前の少年が想像以上に厄介な存在だという事をようやく理解するのだった。
「……」
そして離れて行ったハワードを睨みつけたまま、ソフィはゆっくりと拳を握る。
次の瞬間、その場からソフィの姿が忽然と消える。
「!?」
大魔王ハワードでさえソフィが何処に行ったのか分からず、直ぐに『魔力感知』と『魔力探知』で探ろうとするが、結果が割り出される前に一瞬の内に『ハワード』の目の前にソフィが姿を現すと、握りしめられた拳がハワード目掛けて繰り出されるのであった。
「くっ!?」
ハワードが反射的に身体をのけ反らせたが、その時にはもうすでに遅く、ソフィの右拳はハワードの鳩尾に刺さっていた。
「ぐ……っ! ぬぅっ!!」
何とか空の上でソフィの拳に耐えたハワードは、再び具現化したサーベルで隙だらけのソフィの首を突き刺す。
首は種族関係なくどんな者であっても急所である事は間違いない。身体ごとぶつけるつもりで『サーベル』を深く突き入れるのだった。
全力でソフィの首に『サーベル』を突き刺したハワードは、にやりと笑みを浮かべる。
――だが。
「……本気でやっているのか?」
首にサーベルが突き刺さっている状態で、ソフィは何事もないかのように口を開いた。
「ばっ……! 馬鹿な!? な、なぜ!? 何故喋る事が出来る!?」
驚きながらそう口にするハワードだが、目の前に居たソフィの姿がまたもや最初から居なかったかの如く消えた。
「お主こんなもので我と戦うつもりだったのか? あまり我を舐めるなよ?」
…………
「……ソフィ様と戦っているあの魔族。実はそこまで大した事ないんじゃないですか?」
リーシャは持っている短剣をくるくると器用に手の中でまわしながら、横に居るイリーガルに問いかけ始める。
「いや、そんな事はない。あいつは俺から見ても相当に強い奴だと思うぞ」
過去にハワードと互角の戦いを繰り広げる程の戦いを行ったイリーガルは、大したことないんじゃないかと疑問を口にするリーシャに、思っている本音を口にするのだった。
「イリーガルの言う通りじゃ。そもそもアイツは『組織』の最高幹部だった男じゃしな。大した事がなく見えるというのならば、それはソフィが強すぎるからだろうな。しかしだ……。何か変だと思わぬか?」
「え? 変って何がですか?」
「ソフィの奴をよく見てみろ。あの『魔神』を出しているというのに『魔法』を一つも使っておらぬ。あやつはすでに本来の『魔力』を取り戻しておる筈じゃろう?」
――ソフィは本来『魔法』を使う事に長けた大魔王なのである。
イリーガルとリーシャは再び視線を上空に戻すと、そう言えば確かにおかしいと思い始めるのだった。
空に張ってある結界の中で『ハワード』が何度もソフィに向かって攻撃を仕掛けては、それを躱して素手のままで『ハワード』を殴り飛ばしていた。
「はぁっはぁ……! く、くそ! 馬鹿にするなよ! 化け物がぁっ!」
常人では目にも止まらぬ速さで移動して『サーベル』を再びソフィに刺し入れる。
しかしソフィが手をゆっくりと前に出すと、サーベルを持っていたハワードの右手が千切れて吹き飛んでいく。そしてソフィの目が金色になったかと思うと、ハワードはその場に縫い付けられたかのように動きを止められるのだった。
「!!」
そこでこの戦いが始まってソフィは、初めて『魔力』を込め始めるのだった。
魔力回路から自身の周囲に供給した魔力を空気に交わらせて、魔法発動までの道筋を作る。
自身の魔力を魔法発動の潤滑油として扱い、周囲の空気と混ぜ合わせた後に全身に魔力を行渡らせて、最後に使う魔法をイメージする。
――これは『レパート』の『理』であった。
「さて、試してみるとするか」
ソフィの身体が『金色のオーラ』だけではなく『紅』や『青』と同時に三つのオーラを出し始めると、更にその『三色』色違いのオーラが交ざり合っていく。
「我の魔力によって生み出されし業火よ、我の視界の先の標的を燃やし尽くせ」
――それはソフィの魔法を発動させる詠唱であった。
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「……さて、まあよい」
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