最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第476話 九大魔王VS組織の最高幹部
ハワードは右手に魔力を集約させ始めたかと思うと『紅のオーラ』を用いて『創成具現』という技法で『サーベル』を創り出した。
「『処刑』。今日こそ決着をつけてやろう」
ハワードがそう呟くと『高速転移』で一気にイリーガルの元へ向かっていった。
イリーガルはハワードが『高速転移』で移動を開始したのを見て、ディアトロス達の元から離れて陸の方へと『転移』をする。
イリーガルのその移動の目的は、ディアトロスの魔力回復の妨害をさせられないためであった。
もちろんハワードもそれは理解しているが、今の目的がイリーガルであったため、ディアトロスを無視してすぐに軌道修正しながらイリーガルに肉薄していく。
地面スレスレまで降りてきた後、振り返りざまにイリーガルは、大刀で接近してくるハワードに向けて剣を振りぬく。
そのイリーガルの剣をハワードは下から掬い上げるように合わせる。カァンッ! という高い音が周囲に響き互いの剣がぶつかり合うのだった。
イリーガルはオーソドックスな剣士であるが、ハワードはどちらかというと変則的な武器の使い方をする。ハワードが『紅のオーラ』で具現化した得物は、一般的なサーベルではなく、太刀に近く少し刃渡りが長い。
どうやらイリーガルと戦う事を目的として創り出されたものであったようだが、背格好に似合わぬ長さの形状で見た感じ不釣り合いのように見えた。
しかし真っ向からイリーガルの大刀を受け止めて尚、余裕を見せるハワードは強引にそのサーベルを使いこなし不利さなどは一切感じられない。
器用に得物を扱いながら、巨漢といっても差し支えない程のイリーガルが振り下ろす大刀を、上手く往なしながら隙をついて刺突などを狙う。
真っすぐに突かれたサーベルの切先は、イリーガルの首元を貫くかの如く突き出されてくる。
何とかイリーガルは、首を捻ってその刺突を躱す。
「うおおおっ!」
ハワードの刺突を躱し様に両手で大刀を握りなおし真横に振り切る。
サーベルを縦に構えて大刀を受け止める。チリチリという音が響き渡るが、その得物が折れる事はなかった。
オーラで補強していなければあっさりと折れているだろうが、そこは互いに名を馳せた『大魔王同士』である。
『処刑』の異名を持つ『イリーガル』と『組織』の『ハワード』は、まさに互角と言っていい実力者同士だった。
…………
イリーガルとハワードが戦いを始めた頃、リーシャもまたクルクルと短剣を回しながら遠く離れた場所に居る『ルビリス』の隙を伺っていた。
かなり離れた距離だが、実はこの距離は信じられない事に、リーシャのいつもの間合いなのである。もしルビリスが『発動羅列』の長い魔法を刻もうとするならば、その一瞬で勝負は決まるだろう。
リーシャの得物は短剣だが、戦い方は居合術を使う剣士に近いだろうか。
前傾姿勢をとりながら、相手の隙を見つけた瞬間に身体がブレて見える程の速度で移動して相手を斬る。
相手が一流の剣士であっても初速が早い上に、片方の短剣を防がれたとしても、もう一つの短剣で相手の得物を跳ね上げて反動をつけながら相手を仕留める。
接近戦ではリーシャに適う程の者は少なく『魔導士』や『魔法使い』、それに『賢者』といった後方職が相手であればリーシャに完封されることが多い。
『九大魔王』が一堂に会した戦争の時、イリーガルと並んで前衛に選ばれる程である。
(……やれやれ。流石は『神速』。攻めにくい相手ですねぇ?)
リーシャの直線位置に入らぬように、少しずつ横に横にと移動しながら射線上を避けるルビリスはどうリーシャを攻略しようかと考え始める。
先程『セルバス』があっさりと、切り刻まれたところを見ていたルビリスは、一度懐に入られてしまえば流石に手の出しようがなくなるだろうとそう判断して威力が低めだが、手数の多い魔法が有効だろうと考える。
やがてルビリスが『発動羅列』を並べ始めてそれを見た瞬間に、リーシャは低い姿勢から更に前のめりに身体を倒し始動を開始し始める。
「さて、それでは仕掛けてみましょうかね」
『発動羅列』を省略して出来るだけ隙を減らしながら『ルビリス』は『高速転移』でリーシャから距離をとる。
ルビリスが動いた瞬間にリーシャも行動を開始。常人であれば『ルビリス』の『高速転移』で、何処に移動したかすら映らないが、リーシャの目にはルビリスの場所を正確に把握しているかの如く迷いなく突っ切っていく。
「!!」
リーシャがルビリスを捉えて短剣で切りかかった瞬間。ルビリスの姿がボヤけて消えた。そして代わりに『炎帝』がいつの間にか姿を現しており、次々と火球が空中に出現した。高速で次々とその火球が『リーシャ』に向けて放たれ始める。
一発一発の威力は少ないが、これだけ弾幕が張られてしまえば、先程よりルビリスを捉える事が難しくなる。余裕が出来たルビリスは、更に『高速転移』でリーシャを攪乱するように動いて今度は長めの『発動羅列』を並べ始めた。
しかし『発動羅列』が長いとはいっても『魔法』自体の『詠唱』をする事は一切なく全てが『無詠唱』であった。
――超越魔法、『凜潔暴風雨』。
火球の弾幕の次は『天候系』で視界を晦ましながら更に自身は姿を隠す。
完全に『リーシャ対策』と言った様子で、放たれる魔法の数々にリーシャは舌打ちをしながら追いかける。
ルビリスは移動に移動を繰り返してリーシャに的を絞らせない。
それでも少しずつ近づけているリーシャは、ついにルビリスの身体に短剣を掠らせた。
それが自信となったリーシャは、火球の弾幕を切り伏せてルビリスをついに捉えるのだった。
「ここだぁっ!」
――しかし捉えた筈のルビリスは、幻影のように消えたかと思うと、ルビリスの居た場所から球体が出現して範囲内に居る『リーシャ』を呑み込もうとする。
――神域魔法、『追放』。
「かかりましたね『神速』! その態勢からは流石に貴方でも逃げられないでしょう!」
ルビリスは笑みを浮かべながら、前のめりになって空を切ったリーシャに言い放つのだった。
「ちっ!」
空の上で身動きが取れないリーシャは、舌打ち交じりに持っている短剣を手前に投げる。
「さぁ、終わりですよ!」
青い球体がリーシャを飲み込む僅かの瞬間。前のめりの状態から慣性に逆らわずにクルリと回転して自分で投げた短剣を足で蹴り飛ばす。
「な、何?」
リーシャはまるで短剣を空に浮いた陸代わりにするように、足場に変えながら球体を躱して見せる。更にその曲芸を見せたリーシャは驚いているルビリスを前にして、真っすぐと右手に持つ短剣で切り掛かる。
リーシャの短剣がルビリスの首を切り裂く寸前。ルビリスは半透明の分厚い鉄板のような『障壁』を自身の首元に出現させて強引に首を捻る。
その『障壁』はリーシャの一撃であっさりと切り裂かれたが、ルビリスを捉える事は出来なかった。そして再びルビリスは『高速転移』でその場から離脱することに成功する。
「くそ! 今のでも仕留め損ねるか!」
左手を『紅』で纏い再び短剣を創り出して、前傾姿勢を取りながらリーシャはそう呟いた。
距離をとったルビリスは溜息を吐きながら、再び『発動羅列』を並べ始めながら口を開いた。
「やれやれ……。流石に『九大魔王』の相手は一筋縄ではいきませんねぇ」
――こうして再び、三者三様に死闘が行われるのだった。
「『処刑』。今日こそ決着をつけてやろう」
ハワードがそう呟くと『高速転移』で一気にイリーガルの元へ向かっていった。
イリーガルはハワードが『高速転移』で移動を開始したのを見て、ディアトロス達の元から離れて陸の方へと『転移』をする。
イリーガルのその移動の目的は、ディアトロスの魔力回復の妨害をさせられないためであった。
もちろんハワードもそれは理解しているが、今の目的がイリーガルであったため、ディアトロスを無視してすぐに軌道修正しながらイリーガルに肉薄していく。
地面スレスレまで降りてきた後、振り返りざまにイリーガルは、大刀で接近してくるハワードに向けて剣を振りぬく。
そのイリーガルの剣をハワードは下から掬い上げるように合わせる。カァンッ! という高い音が周囲に響き互いの剣がぶつかり合うのだった。
イリーガルはオーソドックスな剣士であるが、ハワードはどちらかというと変則的な武器の使い方をする。ハワードが『紅のオーラ』で具現化した得物は、一般的なサーベルではなく、太刀に近く少し刃渡りが長い。
どうやらイリーガルと戦う事を目的として創り出されたものであったようだが、背格好に似合わぬ長さの形状で見た感じ不釣り合いのように見えた。
しかし真っ向からイリーガルの大刀を受け止めて尚、余裕を見せるハワードは強引にそのサーベルを使いこなし不利さなどは一切感じられない。
器用に得物を扱いながら、巨漢といっても差し支えない程のイリーガルが振り下ろす大刀を、上手く往なしながら隙をついて刺突などを狙う。
真っすぐに突かれたサーベルの切先は、イリーガルの首元を貫くかの如く突き出されてくる。
何とかイリーガルは、首を捻ってその刺突を躱す。
「うおおおっ!」
ハワードの刺突を躱し様に両手で大刀を握りなおし真横に振り切る。
サーベルを縦に構えて大刀を受け止める。チリチリという音が響き渡るが、その得物が折れる事はなかった。
オーラで補強していなければあっさりと折れているだろうが、そこは互いに名を馳せた『大魔王同士』である。
『処刑』の異名を持つ『イリーガル』と『組織』の『ハワード』は、まさに互角と言っていい実力者同士だった。
…………
イリーガルとハワードが戦いを始めた頃、リーシャもまたクルクルと短剣を回しながら遠く離れた場所に居る『ルビリス』の隙を伺っていた。
かなり離れた距離だが、実はこの距離は信じられない事に、リーシャのいつもの間合いなのである。もしルビリスが『発動羅列』の長い魔法を刻もうとするならば、その一瞬で勝負は決まるだろう。
リーシャの得物は短剣だが、戦い方は居合術を使う剣士に近いだろうか。
前傾姿勢をとりながら、相手の隙を見つけた瞬間に身体がブレて見える程の速度で移動して相手を斬る。
相手が一流の剣士であっても初速が早い上に、片方の短剣を防がれたとしても、もう一つの短剣で相手の得物を跳ね上げて反動をつけながら相手を仕留める。
接近戦ではリーシャに適う程の者は少なく『魔導士』や『魔法使い』、それに『賢者』といった後方職が相手であればリーシャに完封されることが多い。
『九大魔王』が一堂に会した戦争の時、イリーガルと並んで前衛に選ばれる程である。
(……やれやれ。流石は『神速』。攻めにくい相手ですねぇ?)
リーシャの直線位置に入らぬように、少しずつ横に横にと移動しながら射線上を避けるルビリスはどうリーシャを攻略しようかと考え始める。
先程『セルバス』があっさりと、切り刻まれたところを見ていたルビリスは、一度懐に入られてしまえば流石に手の出しようがなくなるだろうとそう判断して威力が低めだが、手数の多い魔法が有効だろうと考える。
やがてルビリスが『発動羅列』を並べ始めてそれを見た瞬間に、リーシャは低い姿勢から更に前のめりに身体を倒し始動を開始し始める。
「さて、それでは仕掛けてみましょうかね」
『発動羅列』を省略して出来るだけ隙を減らしながら『ルビリス』は『高速転移』でリーシャから距離をとる。
ルビリスが動いた瞬間にリーシャも行動を開始。常人であれば『ルビリス』の『高速転移』で、何処に移動したかすら映らないが、リーシャの目にはルビリスの場所を正確に把握しているかの如く迷いなく突っ切っていく。
「!!」
リーシャがルビリスを捉えて短剣で切りかかった瞬間。ルビリスの姿がボヤけて消えた。そして代わりに『炎帝』がいつの間にか姿を現しており、次々と火球が空中に出現した。高速で次々とその火球が『リーシャ』に向けて放たれ始める。
一発一発の威力は少ないが、これだけ弾幕が張られてしまえば、先程よりルビリスを捉える事が難しくなる。余裕が出来たルビリスは、更に『高速転移』でリーシャを攪乱するように動いて今度は長めの『発動羅列』を並べ始めた。
しかし『発動羅列』が長いとはいっても『魔法』自体の『詠唱』をする事は一切なく全てが『無詠唱』であった。
――超越魔法、『凜潔暴風雨』。
火球の弾幕の次は『天候系』で視界を晦ましながら更に自身は姿を隠す。
完全に『リーシャ対策』と言った様子で、放たれる魔法の数々にリーシャは舌打ちをしながら追いかける。
ルビリスは移動に移動を繰り返してリーシャに的を絞らせない。
それでも少しずつ近づけているリーシャは、ついにルビリスの身体に短剣を掠らせた。
それが自信となったリーシャは、火球の弾幕を切り伏せてルビリスをついに捉えるのだった。
「ここだぁっ!」
――しかし捉えた筈のルビリスは、幻影のように消えたかと思うと、ルビリスの居た場所から球体が出現して範囲内に居る『リーシャ』を呑み込もうとする。
――神域魔法、『追放』。
「かかりましたね『神速』! その態勢からは流石に貴方でも逃げられないでしょう!」
ルビリスは笑みを浮かべながら、前のめりになって空を切ったリーシャに言い放つのだった。
「ちっ!」
空の上で身動きが取れないリーシャは、舌打ち交じりに持っている短剣を手前に投げる。
「さぁ、終わりですよ!」
青い球体がリーシャを飲み込む僅かの瞬間。前のめりの状態から慣性に逆らわずにクルリと回転して自分で投げた短剣を足で蹴り飛ばす。
「な、何?」
リーシャはまるで短剣を空に浮いた陸代わりにするように、足場に変えながら球体を躱して見せる。更にその曲芸を見せたリーシャは驚いているルビリスを前にして、真っすぐと右手に持つ短剣で切り掛かる。
リーシャの短剣がルビリスの首を切り裂く寸前。ルビリスは半透明の分厚い鉄板のような『障壁』を自身の首元に出現させて強引に首を捻る。
その『障壁』はリーシャの一撃であっさりと切り裂かれたが、ルビリスを捉える事は出来なかった。そして再びルビリスは『高速転移』でその場から離脱することに成功する。
「くそ! 今のでも仕留め損ねるか!」
左手を『紅』で纏い再び短剣を創り出して、前傾姿勢を取りながらリーシャはそう呟いた。
距離をとったルビリスは溜息を吐きながら、再び『発動羅列』を並べ始めながら口を開いた。
「やれやれ……。流石に『九大魔王』の相手は一筋縄ではいきませんねぇ」
――こうして再び、三者三様に死闘が行われるのだった。
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