最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第469話 大賢者ミラと、組織の大魔王ハワード
ディアトロスの放った魔法によって、ルビリス達を中心に大爆発が起きた。
神域魔法『崩壊ス、摺リ砕ク虚構ノ世界』は『智謀』の持つ数多の殺傷能力を持つ『魔法』の中でも、最上位領域の『殲滅系』の魔法である。
普段通りの魔力であったならば『ルビリス』程の者達であったとしてもまともに当たれば、金色で纏っていたとしても致命傷を負わせるだけの一撃を誇る。
しかし今の『崩壊ス、摺リ砕ク虚構ノ世界』は、本来待つ『魔力』の八割程で放たれたため、ルビリスやリベイル達を今の一撃で仕留めるのは難しいだろう。
だが『智謀』はそれでも今の一撃で決めようとは思っていなかった。
ユーミルやセルバスが居なくなった今、この場に残っている者達は二人。
そしてこちらにもイリーガルとリーシャが残されている以上、自らの役目は司令官である『ミラ』や残された幹部『リベイル』達の体力を消耗させて彼女達にトドメを託そうという狙いだった。
ルビリス達は苦悩に歪んだ表情をしているだろうと、ディアトロスは目論んだ。
そして爆発によって起きた砂塵と煙が少しずつはれていき、ゆっくりと相手の姿が見え始める。
――しかしまず最初にディアトロスの視界に映ったのは、笑みを浮かべた『ルビリス』の姿だった。
…………
シスの『神聖魔法』を受けて今も捕縛されているルビリス達の前に、背が高く痩せ型の金髪の男が『ルビリス』の盾となるように立っていた。
「危ないところだったな? 司令官殿」
突如現れて『ディアトロス』の魔法から『ルビリス』と『リベイル』を守った金髪の男は、その髪と同じ『金色のオーラ』を纏いながらそう告げた。
「いやはや、よく来てくれましたよ『ハワード』さん。待っていましたよ」
シスの『神聖魔法』で捕縛されたまま、ルビリスは笑いながらそう返した。
ディアトロスは上空で信じられないといった表情を浮かべた。
(ワシの『虚構ノ世界』を真っ向から受けて無傷だと……!?)
確かに今放ったディアトロスの殲滅系の魔法は、本来の魔力から放たれたワケではないが『次元防壁』といった『防衛魔法』を使われたワケでもなく、敵がそのまま直撃をして無傷というのは『ディアトロス』にとっては、些か現実味を感じられなかった。
残された魔力をほぼ費やしたディアトロスの元に、イリーガルとリーシャが集まってくる。
「ディアトロス殿。その魔力ではもう無理だ。一度下がられよ」
「そうです。後はあたし達に任せて『ディアトロス』様は魔力の回復に務めて下さい」
先程の魔法で一気に魔力が枯渇したのを理解しているイリーガル達は、ディアトロスを戦闘から離脱させようと魔力の回復を促す。
了解の意を示そうとしたディアトロスだが、そこで突然顔を歪めた。
「ユーミルは意識を失っているだけのようだが、セルバスの野郎はどうやらもう無理だな……」
――いつの間にこの場に姿を現したのか。
両手にユーミルを抱えた状態で大賢者『ミラ』が姿を見せたのだった。
ミラはディアトロスに視線を向けると、抱えていたユーミルを魔法でどこかに『転移』させたかと思うと、ゆっくりとディアトロス達に近づいてくる。
「久しぶりだな? 爺。相変わらず、しぶとく生き永らえているようだ」
ディアトロスの周りに居るイリーガルや、リーシャが近づいてくるミラを相手に戦闘態勢をとるが、ミラはそちらを完全に無視して、ディアトロスだけしか視界に映っていないかの如く、彼だけに話し始める。
「戦場に姿を見せるのは、久しぶりじゃな? 『若造』」
組織を形成してからは、表舞台には司令官である『ルビリス』や最高幹部達が行動を見せていたため、ディアトロス達の前にこうして『大賢者』が姿を見せたのは数百年ぶりであった。
「もう爺の姿を見る事は無いと思っていたが、少しばかり計算が狂ったようだ」
そう言うとミラはもうディアトロスに興味を無くしたのか、忽然とその場所から音も無く消え去ったかと思うと、ミラはいつの間にか『ハワード』と『ルビリス』の間に転移して横に立っていた。
「確かにこれは『神聖魔法』か。それもこの『神聖魔法』の練度は相当な代物だ。それでお前達にソレを使ったのはどいつだ?」
ミラがルビリスに尋ねると、何とか動く首を動かして『ルビリス』は『シス』の方を見る。
「あいつか。どうやら本当に魔族のようだが、俺は見たことがないな。一体何者だ?」
口でぶつぶつと呟きながら『ミラ』の右手が光ったかと思うと次の瞬間。ルビリスとリベイルの手足を縛っている光が消えてあっさりと二人の捕縛を消して見せた。
どうやらシスの『神聖魔法』に、ミラの『神聖魔法』が干渉したようである。
「……」
自分の魔法が消されたというのにシスは全く動じずに、無表情のままミラを見る。
どうやら今の『ミラ』が解除に使った『神聖魔法』は『シス』から見ても相当な練度だったようで、ルビリスが使った時のように嘲笑ったりはせずに、興味深そうな顔を見せていた。
「まぁいい。ハワード、ルビリス、リベイル。お前らは爺や『九大魔王』達を殺してこい」
ルビリスとリベイルは即座に頷き、ハワードもまた気だるそうに返事をする。
「ミラ様はどうなさるおつもりですかな?」
ルビリスがミラに尋ねると、ミラは鼻を鳴らして笑う。
「我が同士以外に『神聖魔法』を使えるものは居ないだろう。奴は発動羅列をコピーしたか、それともトレースしたのか。そこまでは分からんが、勝手に私の『神聖魔法』を盗み使ったアイツに、少しばかりお灸を据えねばな」
自分が大賢者エルシスの後を継いだと考えているミラにとっては、エルシスの作り上げた神聖魔法をトレースしたにせよ、勝手に使った事に対して腹を立てていた。
そして静かにシスに対する怒りを滲ませる大賢者ミラであった。
……
……
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神域魔法『崩壊ス、摺リ砕ク虚構ノ世界』は『智謀』の持つ数多の殺傷能力を持つ『魔法』の中でも、最上位領域の『殲滅系』の魔法である。
普段通りの魔力であったならば『ルビリス』程の者達であったとしてもまともに当たれば、金色で纏っていたとしても致命傷を負わせるだけの一撃を誇る。
しかし今の『崩壊ス、摺リ砕ク虚構ノ世界』は、本来待つ『魔力』の八割程で放たれたため、ルビリスやリベイル達を今の一撃で仕留めるのは難しいだろう。
だが『智謀』はそれでも今の一撃で決めようとは思っていなかった。
ユーミルやセルバスが居なくなった今、この場に残っている者達は二人。
そしてこちらにもイリーガルとリーシャが残されている以上、自らの役目は司令官である『ミラ』や残された幹部『リベイル』達の体力を消耗させて彼女達にトドメを託そうという狙いだった。
ルビリス達は苦悩に歪んだ表情をしているだろうと、ディアトロスは目論んだ。
そして爆発によって起きた砂塵と煙が少しずつはれていき、ゆっくりと相手の姿が見え始める。
――しかしまず最初にディアトロスの視界に映ったのは、笑みを浮かべた『ルビリス』の姿だった。
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シスの『神聖魔法』を受けて今も捕縛されているルビリス達の前に、背が高く痩せ型の金髪の男が『ルビリス』の盾となるように立っていた。
「危ないところだったな? 司令官殿」
突如現れて『ディアトロス』の魔法から『ルビリス』と『リベイル』を守った金髪の男は、その髪と同じ『金色のオーラ』を纏いながらそう告げた。
「いやはや、よく来てくれましたよ『ハワード』さん。待っていましたよ」
シスの『神聖魔法』で捕縛されたまま、ルビリスは笑いながらそう返した。
ディアトロスは上空で信じられないといった表情を浮かべた。
(ワシの『虚構ノ世界』を真っ向から受けて無傷だと……!?)
確かに今放ったディアトロスの殲滅系の魔法は、本来の魔力から放たれたワケではないが『次元防壁』といった『防衛魔法』を使われたワケでもなく、敵がそのまま直撃をして無傷というのは『ディアトロス』にとっては、些か現実味を感じられなかった。
残された魔力をほぼ費やしたディアトロスの元に、イリーガルとリーシャが集まってくる。
「ディアトロス殿。その魔力ではもう無理だ。一度下がられよ」
「そうです。後はあたし達に任せて『ディアトロス』様は魔力の回復に務めて下さい」
先程の魔法で一気に魔力が枯渇したのを理解しているイリーガル達は、ディアトロスを戦闘から離脱させようと魔力の回復を促す。
了解の意を示そうとしたディアトロスだが、そこで突然顔を歪めた。
「ユーミルは意識を失っているだけのようだが、セルバスの野郎はどうやらもう無理だな……」
――いつの間にこの場に姿を現したのか。
両手にユーミルを抱えた状態で大賢者『ミラ』が姿を見せたのだった。
ミラはディアトロスに視線を向けると、抱えていたユーミルを魔法でどこかに『転移』させたかと思うと、ゆっくりとディアトロス達に近づいてくる。
「久しぶりだな? 爺。相変わらず、しぶとく生き永らえているようだ」
ディアトロスの周りに居るイリーガルや、リーシャが近づいてくるミラを相手に戦闘態勢をとるが、ミラはそちらを完全に無視して、ディアトロスだけしか視界に映っていないかの如く、彼だけに話し始める。
「戦場に姿を見せるのは、久しぶりじゃな? 『若造』」
組織を形成してからは、表舞台には司令官である『ルビリス』や最高幹部達が行動を見せていたため、ディアトロス達の前にこうして『大賢者』が姿を見せたのは数百年ぶりであった。
「もう爺の姿を見る事は無いと思っていたが、少しばかり計算が狂ったようだ」
そう言うとミラはもうディアトロスに興味を無くしたのか、忽然とその場所から音も無く消え去ったかと思うと、ミラはいつの間にか『ハワード』と『ルビリス』の間に転移して横に立っていた。
「確かにこれは『神聖魔法』か。それもこの『神聖魔法』の練度は相当な代物だ。それでお前達にソレを使ったのはどいつだ?」
ミラがルビリスに尋ねると、何とか動く首を動かして『ルビリス』は『シス』の方を見る。
「あいつか。どうやら本当に魔族のようだが、俺は見たことがないな。一体何者だ?」
口でぶつぶつと呟きながら『ミラ』の右手が光ったかと思うと次の瞬間。ルビリスとリベイルの手足を縛っている光が消えてあっさりと二人の捕縛を消して見せた。
どうやらシスの『神聖魔法』に、ミラの『神聖魔法』が干渉したようである。
「……」
自分の魔法が消されたというのにシスは全く動じずに、無表情のままミラを見る。
どうやら今の『ミラ』が解除に使った『神聖魔法』は『シス』から見ても相当な練度だったようで、ルビリスが使った時のように嘲笑ったりはせずに、興味深そうな顔を見せていた。
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ルビリスがミラに尋ねると、ミラは鼻を鳴らして笑う。
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