最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第456話 九大魔王リーシャ
リーシャの現在の住居は『魔界』最西端にある島であり、イリーガルが昔支配していた大陸の管轄の島だった。
リーシャは組織の者達に追われながら『魔界』の場所を転々と移動しながらこれまで生きてきた。
組織に所属する多くの者達はソフィの居ない今の『アレルバレル』の世界の支配を目論んでいる。
組織内の元『魔界』出身の魔族達にとっては、野望を持ちつつも絶対的な存在であった『ソフィ』や『九大魔王』に逆らえず、腹の底では下克上の気持ちを抱きながら今の状況を待ち望んでいた。
ソフィが居た時は顔色を窺いながら従順に従っていた魔族達だったが、ソフィが居なくなった瞬間に、手の平を返すように世界の支配を目論み始めたのである。
ソフィの本質を知っている『九大魔王』達は何があろうとも裏切る事はない。
『ディアトロス』『イリーガル』『ブラスト』『ユファ』『ホーク』そして『エイネ』。
数千年という長い年月『ソフィ』を主とした『九大魔王』の先輩達の背中を見てきた『リーシャ』。
そんなリーシャは『魔界』にてソフィと『魔王軍』に反旗を翻した組織の魔族達を嫌悪して、自らの手でそんな者達を屠り続けている。
如何に『九大魔王』の先輩達が別世界へ跳ばされてこの世界から姿を消したとしても、彼らはいずれ必ずこの世界へ戻ってくるとリーシャは信じている。
自分達は九大魔王として大魔王『ソフィ』に選ばれた者達という自負を持っており、たった一人になろうとも決してソフィに敵対する者達を許しはしない。
「……さて、片付けますか」
リーシャの目の前に大魔王領域に居る『組織』の魔族達が続々と姿を見せ始める。
彼らはたった一人のリーシャを囲みながら『二色の併用』を纏い始めるのだった。
この場に居る魔族達は誰も一人で戦うリーシャを侮りはしていない。
リーシャはあの化け物である『大魔王ソフィ』が認めた『九大魔王』の一角であり、これまで多くの組織の同胞達がこの目の前の少女一人にやられてきた。
手を抜いていい相手ではないと知る大魔王達は、最初から本気でリーシャに向かっていった。その場に居た十体を越える大魔王達は、戦力値が100億を越える者達である。
アレルバレルの魔界に弱い魔族などは元々存在はしないが、組織に参加している者達は戦闘面でチームとしての協調性を持つ。
リーシャに正面から向かっていった魔族は七体。
そして後方支援をする大魔王が五体。
前衛たちに『失われし根源』の魔法を用いて戦闘能力の向上にかかり、敵であるリーシャの能力を低下させる『デバフ』と呼ばれる魔法を放つ。
ただでさえ数の上で劣るリーシャだったが、敵は魔法によって更に強く早くなり、そして自身は能力を下げられる。
組織の大魔王達はそんな状態にあるにも拘らず、油断をせずにリーシャの死角から確実に仕留めようと攻撃を加える。
真正面から手に『オーラ』を込めて、内臓に指を突き入れようとしてくる魔族の攻撃に対して、リーシャは身体を捻って躱す。
そして胴を回した状態で左手の短剣で攻撃をしてきた魔族の左下腹部を斬り、右手の短剣で開いた相手の傷口から更に掬い上げて首まで突き上げる。
一人の魔族を絶命させるが、すでにすぐそこまで近づいていた大魔王達は『リーシャ』の攻撃の反動を狙って殺しにかかる。
――しかしそこで信じられない事が起きるのだった。
リーシャの身体に『金色のオーラ』が纏われ始めたかと思うと、彼女の身体がブレて見え始めて、攻撃を仕掛けた大魔王達の攻撃を難なく躱して、先程とは比べ物にならない速度で動き始めるリーシャだった。
「遅いんだよ!!」
残像すら見える程加速したリーシャは、舞を踊るかの如く両手の短剣を振りながら近づいてきていた魔族達を切り刻んでいく。
後方にいた大魔王達の魔法によって、速度低下のデバフを掛けられている筈だというのに、リーシャはそんな状態で攻撃を仕掛けてきた前衛の『大魔王』達の速度とは比較にもならない程速く、瞬く間に七体全ての突っ込んできた魔族を真っ二つにしていくのだった。
「ば、化け物か……!」
リーシャに向かって攻撃を仕掛けた七体の大魔王達は、全員が地に伏し倒れた。
そして今度はお前達だとばかりに、後方に居た者達を見据えるリーシャだが、そこで先程より数が少ないことに気づいた。
(……さっきまでと数が合わない。残りは逃げたか?)
「は、離しなさいよぉっ!」
「く……っ!!」
リーシャは突然の声に振り返り見ると、部屋に残してきた筈の二人が敵に捕まっているのがみえた。
「れ、レア!? それにシスさんも!」
どうやらリーシャの戦いぶりを見ようとこっそり出てきたのだろう二人は、組織の『大魔王』達に捕えられてしまったらしい。
「動くな!! 動けばこいつらを殺……すっ!?」
しかし二人を捕えた組織の大魔王達は、それ以上声を発することは出来なかった。
「汚い手でレアに触ってんじゃねぇ! 分を弁えろよ三下っ!」
リーシャの声が近くから聴こえたかと思うと、レアの背後に居た『大魔王』の首が吹き飛んで行った。
「……大丈夫ぅ?」
心配そうにレアに声を掛けるリーシャにレアは頷きを返す。
「心配かけさせないでよぉ……! レアは『代替身体』の身なんだから、無茶しないでよねぇ?」
レアが無事なのを確認してほっとしたリーシャは、残っている組織の者達に目を向ける。
「撤退だ!!」
残っていた三体の大魔王は、その言葉を残して姿を消した。
どうやら襲ってきた組織の者達は、リーシャには勝てないと判断したらしい。
――しかし、リーシャは戦闘態勢のまま口を開いた。
「おいおい、知らないのぉ? ソフィ様の『九大魔王』からは逃げられないのよぉ?」
『高速転移』を使ってすでにリーシャ達から、かなり離れた場所まで移動していた三体の魔族達は再びリーシャの目の前に戻された。
リーシャは舞を踊るかの如く戻した魔族達に近づき、左手に持つ短剣で首を飛ばしたかと思うと、そのまま回転をしながら右手で二人目の首を飛ばす。
そして二人が犠牲になっている間に、その場から再び逃げ出したもう一人をリーシャは見る。
そこでぐっと脚に力を入れたかと思うと、逃げた魔族目掛けて大きな一歩で背後に一瞬で迫る。
「なっ……!?」
追いつかれたと悟った組織の魔族の肩に手を置き、宙返りをしながら前方に姿を見せたリーシャは、驚いている魔族の目の前で左手を前に右足をぐいっと後ろに引き、身体を横に捻りながら、力を溜める。
「死ね」
次の瞬間――。
リーシャは捻った体を元に戻しながら引いた右足を大きく前に踏み出して、逆手に持った右手の短剣で『大魔王』の首を刎ね飛ばすのだった――。
すでに絶命した組織の仲間達を見ていたのだろう。リーシャの狙いが首だと判断していたその魔族は首周囲を魔法で守っていた。
しかしそれでも『リーシャ』の放った『最後の一撃』は、ギチギチという音を立ててその魔法の『効力』を突き破ったのだった。
パァンッ!という空気が弾ける音と共に『大魔王』の首が吹き飛んだ後、その背後にまで真空波は轟いた。
――こうして戦力値が100億を超える組織の『大魔王』領域の魔族達は、リーシャ一体に全滅させられるのだった。
「こ、この私でも『リーシャ』の動きが速すぎて、全部は見えなかったわよぉ……!」
「……」
驚きながらリーシャを見ていた『レア』と、その隣に居る『シス』は無言でリーシャを見ていたが、やがて口角を吊り上げて嗤うのだった。
……
……
……
リーシャは組織の者達に追われながら『魔界』の場所を転々と移動しながらこれまで生きてきた。
組織に所属する多くの者達はソフィの居ない今の『アレルバレル』の世界の支配を目論んでいる。
組織内の元『魔界』出身の魔族達にとっては、野望を持ちつつも絶対的な存在であった『ソフィ』や『九大魔王』に逆らえず、腹の底では下克上の気持ちを抱きながら今の状況を待ち望んでいた。
ソフィが居た時は顔色を窺いながら従順に従っていた魔族達だったが、ソフィが居なくなった瞬間に、手の平を返すように世界の支配を目論み始めたのである。
ソフィの本質を知っている『九大魔王』達は何があろうとも裏切る事はない。
『ディアトロス』『イリーガル』『ブラスト』『ユファ』『ホーク』そして『エイネ』。
数千年という長い年月『ソフィ』を主とした『九大魔王』の先輩達の背中を見てきた『リーシャ』。
そんなリーシャは『魔界』にてソフィと『魔王軍』に反旗を翻した組織の魔族達を嫌悪して、自らの手でそんな者達を屠り続けている。
如何に『九大魔王』の先輩達が別世界へ跳ばされてこの世界から姿を消したとしても、彼らはいずれ必ずこの世界へ戻ってくるとリーシャは信じている。
自分達は九大魔王として大魔王『ソフィ』に選ばれた者達という自負を持っており、たった一人になろうとも決してソフィに敵対する者達を許しはしない。
「……さて、片付けますか」
リーシャの目の前に大魔王領域に居る『組織』の魔族達が続々と姿を見せ始める。
彼らはたった一人のリーシャを囲みながら『二色の併用』を纏い始めるのだった。
この場に居る魔族達は誰も一人で戦うリーシャを侮りはしていない。
リーシャはあの化け物である『大魔王ソフィ』が認めた『九大魔王』の一角であり、これまで多くの組織の同胞達がこの目の前の少女一人にやられてきた。
手を抜いていい相手ではないと知る大魔王達は、最初から本気でリーシャに向かっていった。その場に居た十体を越える大魔王達は、戦力値が100億を越える者達である。
アレルバレルの魔界に弱い魔族などは元々存在はしないが、組織に参加している者達は戦闘面でチームとしての協調性を持つ。
リーシャに正面から向かっていった魔族は七体。
そして後方支援をする大魔王が五体。
前衛たちに『失われし根源』の魔法を用いて戦闘能力の向上にかかり、敵であるリーシャの能力を低下させる『デバフ』と呼ばれる魔法を放つ。
ただでさえ数の上で劣るリーシャだったが、敵は魔法によって更に強く早くなり、そして自身は能力を下げられる。
組織の大魔王達はそんな状態にあるにも拘らず、油断をせずにリーシャの死角から確実に仕留めようと攻撃を加える。
真正面から手に『オーラ』を込めて、内臓に指を突き入れようとしてくる魔族の攻撃に対して、リーシャは身体を捻って躱す。
そして胴を回した状態で左手の短剣で攻撃をしてきた魔族の左下腹部を斬り、右手の短剣で開いた相手の傷口から更に掬い上げて首まで突き上げる。
一人の魔族を絶命させるが、すでにすぐそこまで近づいていた大魔王達は『リーシャ』の攻撃の反動を狙って殺しにかかる。
――しかしそこで信じられない事が起きるのだった。
リーシャの身体に『金色のオーラ』が纏われ始めたかと思うと、彼女の身体がブレて見え始めて、攻撃を仕掛けた大魔王達の攻撃を難なく躱して、先程とは比べ物にならない速度で動き始めるリーシャだった。
「遅いんだよ!!」
残像すら見える程加速したリーシャは、舞を踊るかの如く両手の短剣を振りながら近づいてきていた魔族達を切り刻んでいく。
後方にいた大魔王達の魔法によって、速度低下のデバフを掛けられている筈だというのに、リーシャはそんな状態で攻撃を仕掛けてきた前衛の『大魔王』達の速度とは比較にもならない程速く、瞬く間に七体全ての突っ込んできた魔族を真っ二つにしていくのだった。
「ば、化け物か……!」
リーシャに向かって攻撃を仕掛けた七体の大魔王達は、全員が地に伏し倒れた。
そして今度はお前達だとばかりに、後方に居た者達を見据えるリーシャだが、そこで先程より数が少ないことに気づいた。
(……さっきまでと数が合わない。残りは逃げたか?)
「は、離しなさいよぉっ!」
「く……っ!!」
リーシャは突然の声に振り返り見ると、部屋に残してきた筈の二人が敵に捕まっているのがみえた。
「れ、レア!? それにシスさんも!」
どうやらリーシャの戦いぶりを見ようとこっそり出てきたのだろう二人は、組織の『大魔王』達に捕えられてしまったらしい。
「動くな!! 動けばこいつらを殺……すっ!?」
しかし二人を捕えた組織の大魔王達は、それ以上声を発することは出来なかった。
「汚い手でレアに触ってんじゃねぇ! 分を弁えろよ三下っ!」
リーシャの声が近くから聴こえたかと思うと、レアの背後に居た『大魔王』の首が吹き飛んで行った。
「……大丈夫ぅ?」
心配そうにレアに声を掛けるリーシャにレアは頷きを返す。
「心配かけさせないでよぉ……! レアは『代替身体』の身なんだから、無茶しないでよねぇ?」
レアが無事なのを確認してほっとしたリーシャは、残っている組織の者達に目を向ける。
「撤退だ!!」
残っていた三体の大魔王は、その言葉を残して姿を消した。
どうやら襲ってきた組織の者達は、リーシャには勝てないと判断したらしい。
――しかし、リーシャは戦闘態勢のまま口を開いた。
「おいおい、知らないのぉ? ソフィ様の『九大魔王』からは逃げられないのよぉ?」
『高速転移』を使ってすでにリーシャ達から、かなり離れた場所まで移動していた三体の魔族達は再びリーシャの目の前に戻された。
リーシャは舞を踊るかの如く戻した魔族達に近づき、左手に持つ短剣で首を飛ばしたかと思うと、そのまま回転をしながら右手で二人目の首を飛ばす。
そして二人が犠牲になっている間に、その場から再び逃げ出したもう一人をリーシャは見る。
そこでぐっと脚に力を入れたかと思うと、逃げた魔族目掛けて大きな一歩で背後に一瞬で迫る。
「なっ……!?」
追いつかれたと悟った組織の魔族の肩に手を置き、宙返りをしながら前方に姿を見せたリーシャは、驚いている魔族の目の前で左手を前に右足をぐいっと後ろに引き、身体を横に捻りながら、力を溜める。
「死ね」
次の瞬間――。
リーシャは捻った体を元に戻しながら引いた右足を大きく前に踏み出して、逆手に持った右手の短剣で『大魔王』の首を刎ね飛ばすのだった――。
すでに絶命した組織の仲間達を見ていたのだろう。リーシャの狙いが首だと判断していたその魔族は首周囲を魔法で守っていた。
しかしそれでも『リーシャ』の放った『最後の一撃』は、ギチギチという音を立ててその魔法の『効力』を突き破ったのだった。
パァンッ!という空気が弾ける音と共に『大魔王』の首が吹き飛んだ後、その背後にまで真空波は轟いた。
――こうして戦力値が100億を超える組織の『大魔王』領域の魔族達は、リーシャ一体に全滅させられるのだった。
「こ、この私でも『リーシャ』の動きが速すぎて、全部は見えなかったわよぉ……!」
「……」
驚きながらリーシャを見ていた『レア』と、その隣に居る『シス』は無言でリーシャを見ていたが、やがて口角を吊り上げて嗤うのだった。
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