最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第453話 失われた力をその身に宿す者

 レアを襲った者達は『概念跳躍アルム・ノーティア』を用いて『アレルバレル』の世界へ戻ってきていた。彼らは大賢者ミラが作った『組織』に属する者達であった。

 今回のレア襲撃を行った者達のそれぞれが大魔王の領域に居る者達であるが、そんな彼らの中心に居る人物の名は『マルクス』といった。

 大賢者ミラがトップに君臨するこの組織は『本隊』と『分隊』に分けられており、分隊の方に所属する者達はミラやルビリスが別世界から集めてきた者達が多く、偵察や斥候という役割を担っている。
(※生贄部隊とされた者達もこの分隊所属の者達である)。

 そして本隊は重要な作戦を遂行する者達であり、その多くが『アレルバレル』の世界出身の者達である。
 『本隊』にはトップであるミラを除いて数々の名のある大魔王や、大賢者達が名を連ねており、その者達は、個々に部隊を持つ幹部達である。

 ------
 『簡易組織図』
 ★
 総帥:ミラ(大賢者:全ての組織に属する者への命令権保有)
 司令官:ルビリス(大魔王:幹部以下の者達への命令権保有)
 ☆
 最高顧問:バルド
(大魔王・元ソフィの魔王軍序列一桁三位:戦闘員※命令権等はなし)
 ■ 
 最高幹部:セルバス(大魔王:組織に属する幹部命令権保有)

 最高幹部:リベイル(大賢者:組織に属する幹部命令権保有)

 最高幹部:ハワード(大魔王:組織に属する幹部命令権保有)

 最高幹部:ユーミル(大賢者:組織に属する幹部命令権保有)

 □ 
 本隊・総隊長:ネイキッド
(大魔王・総隊長:本隊・隊長含めた隊員への指示権保有)

 ◆
 本隊・隊長:リザート(大魔王・隊長:本隊隊員への指示権保有)

 ◇
 本隊・隊員(アレルバレル世界出身の大魔王多数・ミラに選ばれた賢者含)

 ▼
 分隊・隊長:レルナート(大魔王・隊長:隊員への指示権保有)

 分隊・分隊長:マルクス(大魔王・分隊の大半の隊員への指示権保有)

 分隊・隊員(アレルバレル以外の世界から選び抜かれたそれぞれの世界の精鋭)

 実験体 (元魔族や元人間だったモノ:戦闘員)

 ------
 上記がミラの組織の簡易組織図である。

 レアを襲った襲撃部隊の中心人物『マルクス』は、最高幹部の一人『ハワード』に命じられて、配下を引き連れて『リラリオ』の世界で機を伺っていた。

 最高幹部である『ハワード』の『マルクス』への指示は一つだった。
 分隊の偵察部隊から連絡が入り次第『概念跳躍アルム・ノーティア』を使って『レア』及び『ユファ』の暗殺及び拉致。

 『魔王』レアによって分隊隊員一名は犠牲となったが任務は無事遂行されて、レアは瀕死状態のまま『アレルバレル』の世界へと拉致に成功。

 ――マルクス達は意気揚々と『組織の拠点』へと戻るところであった。

 ハワードからの情報ではソフィ側の世界間転移魔法の使い手は『ユファ』と『レア』のみと聞かされていたため、他の分隊の情報でユファは別の場所に居る事は知っており『リラリオ』の世界から離れた時点で彼らのだと思われた。

 ――しかし、そこで一つのイレギュラーが起きたのだった。

 組織の情報にはなかった一体の魔族が、遠く離れた世界『アレルバレル』の世界へと転移したにも拘らず、マルクスの魔力を感知し追走。

 更に『概念跳躍アルム・ノーティア』を一目見ただけで『発動羅列』から『概念跳躍アルム・ノーティア』そのものを『トレース』。

 自らもまた『概念跳躍アルム・ノーティア』の発動に成功させてグングンとその距離を縮めて行くのであった。

 そして『マルクス』達と分隊員の大魔王達が『アレルバレル』の世界に到着したと同時に、ぴったりとレアを攫った『マルクス』達に追いついてみせたのであった。

 そして驚く分隊の大魔王達が『シス』に攻撃を仕掛けるより先に、シスは『金色』と『青』の『二色の併用』を纏ったままで『組織の分隊』の大魔王達に攻撃を展開。

 ――、『聖光耐滅魔セイント・ブレイク』。

 『マルクス』を含めた組織の大魔王達は、シスが片目を閉じて視線で貫いただけで、大魔王全員の『耐魔力』を強制的にほぼ最小値まで下げられた。

 そして続け様に今度は『レパート』の『ことわり』を用いて、流れるように魔法詠唱を紡ぐ。

 ――神域魔法、『天雷一閃ルフト・ブリッツ』。

 組織の大魔王達は、魔力に対抗するための耐魔力を、見た事もないによって激減させられているために『神域魔法』の雷光の一撃をまともに受けて骨も残らずに粉々に砕け散った。

 更に生命を失った大魔王達が用意していたのであろう『代替身体だいたいしんたい』へと魂が移り行くところを見た『シス』はそれを許さずに、一斉に全ての魂を『』させてしまうのだった。

 ――このかん。僅かコンマ数秒の出来事である。

 まるで彼らの組織の総帥である大賢者『ミラ』のような振る舞いに、シスの攻撃を躱せた大魔王が一人、脂汗を額に浮かべながらその場から離脱する。
 その大魔王『マルクス』は瞬時にレアを手放して即座にこの空間から脱出を測る。

 流石は組織の分隊長を任せられる『アレルバレル』の魔族なだけあって、行動と咄嗟の機転は優秀といえるものであった。

 ――神域『時』魔法、『概念跳躍アルム・ノーティア』。

 この世界から再び『リラリオ』の戻ろうと考えたマルクスだったが、この化け物が『リラリオ』の世界からきていた事を考えて直ぐに行き場所を変更。

 大魔王シスが訪れたことのない世界『ダール』を選び『世界間転移』をしてシスから逃亡しようとするのであった。

(少しでも奴の馴染みのない世界の方がいい! 僅かでも時間を稼ぐ事が出来れば更にそこから『世界間転移』を繰り返して、追えないようにすることが重要だ!)

 マルクスは次から次へと思考を巡らせて、生き延びるために最善の方法を取り続ける。

 しかし再びシスは目を『』にしながら、マルクスの放った魔法の『ことわり』から『発動羅列』を瞬時に全て読み解き『オリジナル』のマルクスの『発動羅列』とほぼ同速度で完全にトレースして、今度はアレルバレルの『ことわり』を用いて発動。

 ――神域『時』魔法、『概念跳躍アルム・ノーティア』。

 シスはレアの身体を必死に胸で抱きつつ、今度は『無詠唱』で完全にマルクスと同速度で行われた魔法で、ぴったりとマルクスの背後を追従したシスは、そのまま右手をマルクスの内臓に突き入れてその動きを止めてみせるのであった。

 マルクスは空間から離れる事は出来ずに『ダール』の世界へ向かう寸前の別空間に入る手前で、血反吐を辺りにぶち撒けながら白目を剥いて絶命するのだった。

 結局『ダール』の世界へと跳ぶことは叶わず、マルクスは他の数体の魔族とは違い、この『アレルバレル』の世界にて骸と化して床に転がるのだった。

 シスはマルクスの魂を他の者達と同様に『除外』させようとしたが、そこでシスは纏っていた『オーラ』が消えていくのであった。

 ――どうやら度重なる『時魔法』や『神域魔法』それに慣れない身体での『神聖魔法』を使った影響からか、シスは『魔力枯渇』を行ってしまい、その場で崩れ落ちそうになるのであった。

 マルクスの魂はどうやら用意していたのだろう『代替身体だいたいしんたい』へとふわふわと力なく飛んで行く。

 その様子を見ながらシスは舌打ちをするが、魔力枯渇を行っている以上はここで無理をして『生命力』を用いてまでマルクスを追いかけることはしなかった。

 ――何故なら躍起になって『マルクス』のためだけに『魔力』の代わりに『生命力』までを使う事で、この身体の今後に影響を及ぼすかもしれないと考えたためであった。

 更にいえば虎視眈々とシスの身体を乗っ取ろうとするもう一つの存在――。
『憎悪の大魔王』が今のシスを動かしている存在の『影響力』が無くなれば、強引に表に出てきてこのシスの身体を完全に支配してしまう可能性もあったからである。

 今のシスの身体を動かしている存在はみすみすと逃してしまった、魂がすでに消失した『マルクス』の亡骸を睨みつける。

 そこで視線を微かに息をする瀕死状態のレアに向けるが、このままでは死んでしまうとシスは判断して、何とかもう一度『概念跳躍アルム・ノーティア』を『リラリオ』の世界へ向けて発動しようとする。

 今の『魔力枯渇』を失った自分一人であれば『憎悪の大魔王』の対処は難しいが『リラリオ』の世界へ戻れば、あの『大魔王ソフィ』というとんでもなく頼りになる存在が居るために、彼が何とかしてくれるだろうと考えたのである。

 しかし『魔力枯渇』を行った状態で強引に『アレルバレル』の『理』を用いようとした瞬間に、これまで気を失っていた本来の『シス』が目を覚まそうとし始めるのだった。

 、結局は元の宿主のシスに身体の所有権が戻るのであった。

 ――どうやら元の宿主は相当に強く『レア』を助けたいと意識していたのだろう。

「だ、誰……か! レアをたすけてぇ!!」

 ――シスは必死にレアを助けようと表に出てきて大声をあげたが、そこで意識が切断されて静かに眠りにつくのだった。

 どうやら完全に『魔力枯渇』を引き起こしたようで、先程の『シス』や『憎悪の大魔王』もまた、表に出て来る余力はのこされてはいないようであった――。

 ……
 ……
 ……

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品