最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第364話 大魔王ヴァルテンVS真なる大魔王レア2
「ほう? 『青』を纏うということは、この私と戦うつもりか? 小童がこの私に勝てると……で、も……!?」
そこでヴァルテンは言葉を切る。
――いや、むしろ切らざるを得なくなったのである。
レアを纏うオーラは『青』だけではなく『鮮やかな紅』もまた、その青に混ざり合っていったからである。
「ま、まさか……、レア?」
そしてその光景を見ているのはヴァルテンだけではない。ヴァルテンと同じ『大魔王』の領域に居るレインドリヒもまた、レアがしようとしている事を悟る。
『青』3.2 『紅』1.2からなる――。
――『二色の併用』。
突如膨れ上がったレアの魔力に慌てた『ヴァルテン』は、その場から転移して『魔王城』の外へと距離をとろうとするのだった。
この場でレアを相手に戦闘になっても構わないとまで思っていたヴァルテンだが、相手が『大魔王』以上の領域に居るとわかれば、敵の間合いに馬鹿みたいにいつまでも居るわけにはいかない。
転移は一瞬で行われるために、その移動を阻止する事は出来ない。
――しかし、転移の中には『逆転移』という更に上位の技術が存在する。
フルーフの魔王城の上空に転移して『レア』から距離をとった『ヴァルテン』は、再びレアの前に戻されてしまうのだった。
「な……! な、な、何が起きたのだ!?」
――私に喧嘩を売っておいて、勝手に逃げるなよ。
ヴァルテンもレインドリヒも驚愕に目を丸くしたまま、その場から動けずにレアに視線を奪われる。
――レアの目は『金色』に輝き、射貫くような視線を『ヴァルテン』に向けながら口を開く。
「いいか? 次につまらない冗談を口にすれば、お前を殺した後に二度と復活が出来ないように永遠にこの世から除外をしてやる……」
レアの言葉は脅しではなく、本当にヴァルテンをこの世界から除外する手立てがある。
リラリオの世界で行った『時魔法』の『空間除外』である。
この魔法によってすでに『精霊王』の居る精霊の大陸や、始祖龍キーリを含めた龍族の大陸を『リラリオ』の世界から除外させている。
ヴァルテンはようやく目の前の幼女が、自らをも越える程の大魔王なのだと理解させられるのだった。
「それで? もう一度最初から質問しようかしらぁ。お前は何なのかしらぁ?」
もうレアが舐めた口を利いても、ヴァルテンは反論しようとはしなかった。それどころかヴァルテンの中でレアの存在は、逆らってはいけない者として脳内に上書きされた。
「わ、私は『アレルバレル』という世界から来た魔族で、数年前にこの『レパート』の世界へ来た魔族でございます……!」
余りのヴァルテンの変わりように、レアは内心で訝しんだがそのまま質問を続ける。
「別世界から……? それはフルーフ様の編み出した『理』を使わずに『概念跳躍』を使っているのかしらぁ?」
ほんの十年前に完成したばかりのフルーフの『概念跳躍』。この魔法の完成でようやくフルーフやレア達は別世界へ行けるようになり、レアは『リラリオ』の世界へ跳ぶ事が出来たのである。
それほどの最新の魔法は、この世界で『理』を学んできた魔族であっても、簡単には扱うことは出来ないだろう。
その筈だというのに目の前の『ヴァルテン』とかいう別世界の魔族は『概念跳躍』を使ってこの世界へきたというのである。
「どうやって覚えた?」
レアの目が細められて『嘘を言えば殺す』と視線で告げる。
「ふ、フルーフ殿です! 私はフルーフ殿に出会って色々と世話になり、数年間程『フルーフ』殿に魔法を教わり『理』を学びこの世界へやってきたのです!」
確かにこの男が言うことには一応は筋が通っている。大魔王『フルーフ』がレアの居ない間に『アレルバレル』へ向かったということが本当に正しければではあるが……。
――そしてレアはこの男の言う事は全く信用できなかった。
「へえ? たった数年でこの世界の『理』を使った魔法を貴方は覚えたというの? どうやって覚えたのかしらぁ? この私でもフルーフ様直々に教わって数百年。いや、それ以上かかったのに?」
レアはヴァルテンの胸倉を掴み始めると、その小さな手とは思えぬ腕力でヴァルテンの首を締め上げる。
「ぐ……っ!! う、嘘ではない! わ、わたしとて『アレルバレル』の世界の『理』を極めた魔王なのだ……! この世界の『理』と波長が近いのですか……ら、基礎となる概論を学べば使えるのは当然のこと……だ!!」
レアは宙に浮きながらヴァルテンの首を掴み上げたまま、数秒間真意を確かめるために睨み続ける。
確かにレアもフルーフの『理』をかなりの領域まで極めている。その状況でリラリオの世界の精霊の『理』を一瞬で理解は出来た。
しかしそれは本当に何百年と毎日しっかりと研鑽を行い、元々の才能が豊かであったレアだから出来る事であって、どんな魔族でも『理』の波長が近いからといって別世界の『理』をたった十年やそこらで扱うことは不可能の筈なのである。
そうでなければ『レア』がわざわざ『リラリオ』の同胞の魔族達のために、あの世界の精霊族の『理』を残すためだけに『精霊族』を『除外』させる必要は無かっただろう。
あらゆる可能性を考えてもこの男の言うことが信用できないレアは、ひとまずは彼の親のことを僅かながらでも知っているという事実だけで、処分するのは保留に留めるのであった。
どさり、と音を立てながらヴァルテンはその場に尻餅をつく。レアが首を掴んでいた手を離したからである。
「まぁこの世界に来たことは事実なのだしねぇ。信用してあげてもいいわぁ。それでお前が居た世界に、フルーフ様は今いるのねぇ? そこへ案内しなさい」
「そ、それは出来ません! ち、違うのです! 教えたくないわけではなく、現在あの世界は『魔王』達の戦争の真っ最中なのです。フルーフ殿もあの世界の魔王連中に敗れてしまったのだ……! さ、最後に私に『レパート』を頼むと告げて……、フルーフ殿は……!」
余程焦っているのか先程までレアに使っていた敬語すら忘れて、事細やかに詳細を伝えるヴァルテンだった。
どうやらこの様子では、嘘を言っているようには見えない。
「フルーフ様が別世界の大魔王に敗れたとでも言いたいの? 言ったわよねぇ? 次につまらない冗談を言えば、貴様を殺して永遠に除外すると……!」
再びレアの周りを二色のオーラが纏われていくのを見た『ヴァルテン』は慌てて口を開く。
「う、嘘ではない!! 証拠もあるぞ! そ、それに私はフルーフ殿を助けるために、この世界の軍勢を従えて再び『アレルバレル』へ戦争を仕掛ける準備をしていたのだ!」
「証拠? そんなものがあるならさっさと見せなさい! 但し、嘘だとわかったらもうお前は殺す」
「わ、分かった!! 分かったから、その魔力の余波をこちらに向けるな! 吐き気を催して、喋ることすら出来ないのだ!」
二人のやりとりを見ていたレインドリヒは何も出来ずに、どんどんと進んでいくやりとりを遠巻きに眺めている事しかできなかった。
――ただ『レインドリヒ』は、僅か十年でここまで力をつけたレアに、驚嘆の念を抱いたことは決して間違いではなかった。
そこでヴァルテンは言葉を切る。
――いや、むしろ切らざるを得なくなったのである。
レアを纏うオーラは『青』だけではなく『鮮やかな紅』もまた、その青に混ざり合っていったからである。
「ま、まさか……、レア?」
そしてその光景を見ているのはヴァルテンだけではない。ヴァルテンと同じ『大魔王』の領域に居るレインドリヒもまた、レアがしようとしている事を悟る。
『青』3.2 『紅』1.2からなる――。
――『二色の併用』。
突如膨れ上がったレアの魔力に慌てた『ヴァルテン』は、その場から転移して『魔王城』の外へと距離をとろうとするのだった。
この場でレアを相手に戦闘になっても構わないとまで思っていたヴァルテンだが、相手が『大魔王』以上の領域に居るとわかれば、敵の間合いに馬鹿みたいにいつまでも居るわけにはいかない。
転移は一瞬で行われるために、その移動を阻止する事は出来ない。
――しかし、転移の中には『逆転移』という更に上位の技術が存在する。
フルーフの魔王城の上空に転移して『レア』から距離をとった『ヴァルテン』は、再びレアの前に戻されてしまうのだった。
「な……! な、な、何が起きたのだ!?」
――私に喧嘩を売っておいて、勝手に逃げるなよ。
ヴァルテンもレインドリヒも驚愕に目を丸くしたまま、その場から動けずにレアに視線を奪われる。
――レアの目は『金色』に輝き、射貫くような視線を『ヴァルテン』に向けながら口を開く。
「いいか? 次につまらない冗談を口にすれば、お前を殺した後に二度と復活が出来ないように永遠にこの世から除外をしてやる……」
レアの言葉は脅しではなく、本当にヴァルテンをこの世界から除外する手立てがある。
リラリオの世界で行った『時魔法』の『空間除外』である。
この魔法によってすでに『精霊王』の居る精霊の大陸や、始祖龍キーリを含めた龍族の大陸を『リラリオ』の世界から除外させている。
ヴァルテンはようやく目の前の幼女が、自らをも越える程の大魔王なのだと理解させられるのだった。
「それで? もう一度最初から質問しようかしらぁ。お前は何なのかしらぁ?」
もうレアが舐めた口を利いても、ヴァルテンは反論しようとはしなかった。それどころかヴァルテンの中でレアの存在は、逆らってはいけない者として脳内に上書きされた。
「わ、私は『アレルバレル』という世界から来た魔族で、数年前にこの『レパート』の世界へ来た魔族でございます……!」
余りのヴァルテンの変わりように、レアは内心で訝しんだがそのまま質問を続ける。
「別世界から……? それはフルーフ様の編み出した『理』を使わずに『概念跳躍』を使っているのかしらぁ?」
ほんの十年前に完成したばかりのフルーフの『概念跳躍』。この魔法の完成でようやくフルーフやレア達は別世界へ行けるようになり、レアは『リラリオ』の世界へ跳ぶ事が出来たのである。
それほどの最新の魔法は、この世界で『理』を学んできた魔族であっても、簡単には扱うことは出来ないだろう。
その筈だというのに目の前の『ヴァルテン』とかいう別世界の魔族は『概念跳躍』を使ってこの世界へきたというのである。
「どうやって覚えた?」
レアの目が細められて『嘘を言えば殺す』と視線で告げる。
「ふ、フルーフ殿です! 私はフルーフ殿に出会って色々と世話になり、数年間程『フルーフ』殿に魔法を教わり『理』を学びこの世界へやってきたのです!」
確かにこの男が言うことには一応は筋が通っている。大魔王『フルーフ』がレアの居ない間に『アレルバレル』へ向かったということが本当に正しければではあるが……。
――そしてレアはこの男の言う事は全く信用できなかった。
「へえ? たった数年でこの世界の『理』を使った魔法を貴方は覚えたというの? どうやって覚えたのかしらぁ? この私でもフルーフ様直々に教わって数百年。いや、それ以上かかったのに?」
レアはヴァルテンの胸倉を掴み始めると、その小さな手とは思えぬ腕力でヴァルテンの首を締め上げる。
「ぐ……っ!! う、嘘ではない! わ、わたしとて『アレルバレル』の世界の『理』を極めた魔王なのだ……! この世界の『理』と波長が近いのですか……ら、基礎となる概論を学べば使えるのは当然のこと……だ!!」
レアは宙に浮きながらヴァルテンの首を掴み上げたまま、数秒間真意を確かめるために睨み続ける。
確かにレアもフルーフの『理』をかなりの領域まで極めている。その状況でリラリオの世界の精霊の『理』を一瞬で理解は出来た。
しかしそれは本当に何百年と毎日しっかりと研鑽を行い、元々の才能が豊かであったレアだから出来る事であって、どんな魔族でも『理』の波長が近いからといって別世界の『理』をたった十年やそこらで扱うことは不可能の筈なのである。
そうでなければ『レア』がわざわざ『リラリオ』の同胞の魔族達のために、あの世界の精霊族の『理』を残すためだけに『精霊族』を『除外』させる必要は無かっただろう。
あらゆる可能性を考えてもこの男の言うことが信用できないレアは、ひとまずは彼の親のことを僅かながらでも知っているという事実だけで、処分するのは保留に留めるのであった。
どさり、と音を立てながらヴァルテンはその場に尻餅をつく。レアが首を掴んでいた手を離したからである。
「まぁこの世界に来たことは事実なのだしねぇ。信用してあげてもいいわぁ。それでお前が居た世界に、フルーフ様は今いるのねぇ? そこへ案内しなさい」
「そ、それは出来ません! ち、違うのです! 教えたくないわけではなく、現在あの世界は『魔王』達の戦争の真っ最中なのです。フルーフ殿もあの世界の魔王連中に敗れてしまったのだ……! さ、最後に私に『レパート』を頼むと告げて……、フルーフ殿は……!」
余程焦っているのか先程までレアに使っていた敬語すら忘れて、事細やかに詳細を伝えるヴァルテンだった。
どうやらこの様子では、嘘を言っているようには見えない。
「フルーフ様が別世界の大魔王に敗れたとでも言いたいの? 言ったわよねぇ? 次につまらない冗談を言えば、貴様を殺して永遠に除外すると……!」
再びレアの周りを二色のオーラが纏われていくのを見た『ヴァルテン』は慌てて口を開く。
「う、嘘ではない!! 証拠もあるぞ! そ、それに私はフルーフ殿を助けるために、この世界の軍勢を従えて再び『アレルバレル』へ戦争を仕掛ける準備をしていたのだ!」
「証拠? そんなものがあるならさっさと見せなさい! 但し、嘘だとわかったらもうお前は殺す」
「わ、分かった!! 分かったから、その魔力の余波をこちらに向けるな! 吐き気を催して、喋ることすら出来ないのだ!」
二人のやりとりを見ていたレインドリヒは何も出来ずに、どんどんと進んでいくやりとりを遠巻きに眺めている事しかできなかった。
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