最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第358話 魔王レアVSキーリの十体の守護龍

 遂にレアはターティス大陸へと到着する。

 そしてそのまま地へ降りようと降下していくが、そこでレアはこの大陸に張られている『結界』の存在を感じ取る。

「これはなかなかの魔力が込められているわねぇ。あの龍族の力のモノかしらぁ?」

 この世界に来た時に感じた大きな魔力の持ち主だった、とあたりをつける。

 レアは自分を押し返そうとする負荷の力に抗い、そのまま同一の魔力量をその『結界』にぶつけ始める。

 この『結界』と『二色の併用』を用いているレアの魔力とほぼ拮抗状態となった。

「結界一つでいちいちこの魔力。やっぱり龍族の王とやらはとんでもないわねぇ……?」

 愚痴を言いつつレアは一気に魔力を開放。

 現在のレアの総魔力の七割程まで魔力を高めると、一気に右手に『魔力』を集約させて結界を割ることに本気になった。

 するとそれまで拮抗状態だった『結界』はあっさりと歪を起こして、パキッという一際高い音が響いたかと思うと、そのあとは一瞬で砕け散って『結界』は消えた。

「どうやら『二色の併用』を使えることが『龍族』と戦う最低条件みたいねぇ?」

 ここにきた時の『真なる魔王』位階では『結界』すら割れずにこの『大陸』に入ることすら適わなかったのだと理解を示したレアは、ようやく条件を満たしたと自分で判断を行い、そのまま『ターティス』大陸へと侵入するのだった。

 ……
 ……
 ……

「来たか……。魔人の王が全力で壊そうとしても数日はかかる『結界』の筈なんだがな。あっさりと壊してくれるぜ……! 魔族の王!」

 玉座の上で始祖龍キーリはそう吐き捨てるのだった。

 ……
 ……
 ……

 キーリがそんな事を喋っている事など露知らずレアは『ターティス』大陸に降り立ち、周りを見渡し始める。

「何か変なところねぇ? 空気が澄んでいるんだけど『トーリエ』のところとは違って、自然が感覚を感じるわねぇ」

 そんな感想を漏らしていると、レアの目の前の空に龍族達が続々と姿を見せ始めるのだった。

「そこで止まれ、魔族の王。ここは龍族だけが入ることが許される神聖な場所だ」

 レアが声をする方を見ると、小柄な人型の男が空を浮いていた。

 今まで出会った魔人や精霊、そしてヴェルマーに攻めてきた『ブリューセン』よりも、は戦力値も魔力値も上のようであった。

「悪いけどその神聖な場所は、今日を最後に沈む事になるわよぉ」

 レアが悪びれもせずにそう告げると、男は忌々しそうにレアを睨みつける。

「不浄な存在は消えてもらわねばな」

 周りの龍達がすっと道を開けると、そこから続々と人型の龍族達が姿を見せる。

 どうやら他の龍族の態度を見るに、この人型の者達が龍族の上位に君臨する龍達なのだろう。レアは『漏出サーチ』で四体の人型の龍族達の力を測り始める。

(戦力値はそれぞれ一億弱といったところか。どうやら今の私の敵じゃないわねぇ)

「我ら龍族に楯突いた事を後悔しながら死ね! 魔族の王」

 一体の守護龍はそう告げると周りにいた龍達に視線を向ける。それが合図となって龍達は、一斉にレアに向かって炎を吐いた。

「ひとつ先に言っておくけど、戦争を仕掛けてきたのはお前達だと言う事を忘れないでねぇ?」

 レアは『青のオーラ』を身に纏いながら上に飛んで龍達の炎を躱す。

 だが、追従するように龍達が体をしならせながら、レアに近づいてくる。

「すでにお前達龍の戦い方は学んでいる。同じ戦法が通用するとは思わない事ねぇ」

 そういうとレアに食らいつこうと近づいてきていた龍達の目に『金色の目ゴールド・アイ』を合わせる。

「!!」

 ――その瞬間。

 レアに迫ってきていた龍達の目が虚ろになり、そのまま体を反転させたかと思えば、背後にいた龍達に向けて炎を吐き始めた。

 仲間が攻撃をしてくるとは思っていなかった龍達は、同胞の炎を浴びて断末魔を上げながら空から落ちていく。

 レアに操られた龍族は三十体程だが、まさか同胞が操られる等考えていなかった龍達は、どうしていいか分からずにウロウロと空を移動する事しかできない。

「そのまま燃やしなさい」

 レアの言葉に操られた龍族達は、自分たちの仲間たちに次々と炎を吐く。同士討ちを嫌った龍達が、操られた龍達から離れようとして距離をとり始めるが、それを狙っていたレアは逃げようとしている龍達の背後に転移し魔法を放つのだった。

 ――神域魔法、『天空の雷フードル・シエル』。

「グググ……ッッ!!」

「が……っ、ハァッ……!」

 レアの放つ雷は大勢の龍族達を一撃で命を奪っていった。

 そしてそんなレアの周りを操られた龍達が、彼女の盾のように空の上で並び立っていく。このままレアを攻撃しようと近寄れば、同胞である筈の龍達が立ちはだかって攻撃を仕掛けてくるのだろう。

「な、なんて卑劣な……!」

 人型の守護龍『アイン』は、自分たちの同胞が操られて盾にさせられているのを見て、苛立ち交じりにそう口にした。

「アイン。俺達も戦うぞ」

 そしてもう一体の守護龍『ディーザ』がそう言うと、人型だった龍たちも次々と変身していく。

 上位龍からキーリに選ばれた『十体の守護龍』。

 ――その龍達の力の開放であった。

 ……
 ……
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