最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第333話 概算要求書と空間除外
ジウを倒してから数か月が過ぎた。
未だに精霊達を滅ぼすかどうかを決めかねているレアは、今日も自室で頬杖をつきながら国の重要な書類に目を通す。
書かれている内容は民間の税等から捻出された国の予算と、その予算の使い道が書かれたあらゆる項目の概算要求の書類等であった。
ベイドが王だった時代では専属の部署の者たちに任せていたのだが、レアがラルグ魔国王に就任してからはレアが直接全ての書類に目を通していた。国の重要な案件等に国のトップが把握せずにいる事はあってはならないと断言して、レアが全て目を通す事にしたのである。
しかし部署の者達はこのレア王の言葉に焦る事となった。もちろんベイドが王の時代の部署の配下達も決して手を抜いていたわけではないのだが、要所要所で妥協をしていた場面もあったからである。
――しかし、それもレアが女王となれば事情は変わる。
レアという魔国王は力一つでこの大陸の全ての国々を統治する王となった。そして戦争を仕掛けてきた上位種の魔人達をもたった一体で全てを滅ぼしてみせたのだ。
そんな『最強』とも呼べる魔族であるレアに、無様な書類等を提出したらどうなるだろうか。笑って許してもらえるとはとても思えず、下手をすれば処刑をされてしまうかもしれない。
そう考えた国の管理をする部署の魔族達は、必死の思いで書類を作り上げているのであった。
「国のインフラ整備にこの額は多くないかしらぁ? 土地は潤沢にあるのだし、今ある修理の必要な建物等は魔法で修理してその分をプールしときたいわねぇ」
ぺらりぺらりと書類のページをめくりながら、次から次に件を片付けていく。
「うーん……。経年劣化でそろそろ危ないというモノは厄介よねぇ、あっさりと破壊して一から修理するほうが楽だけど、流石に全てそんなことをするのも面倒だし。こういうのは一時的に『空間除外』でも使って、後に回す方がいいわねぇ」
「んぅ……?」
そこでレアはふと自分の発言に違和感を感じた。
「一時的に放置? 『空間除外』……!」
みるみるレアの目が輝きを増していき、遂にはその場で立ち上がった。
「そうだわぁ! 何も滅ぼさなくても時間を停止させた状態で、海にでも沈めておけばいいのよぉ!!」
この世界の魔族達では、いやそれどころか『魔』を司る『精霊族』であっても出てこない発想をレアは発言する。
それもその筈『空間除外』は、神域の中でも『時魔法』の領域であり『超越魔法』までしかこの世界には存在しないのだから仕方がないのであった。
精霊族もその上の位階魔法である『神域魔法』の存在自体は把握している。
発動羅列で『魔法』に意味を持たせる上で、更に威力を増せるという事自体には、当然『精霊族』も行き着いているからである。
しかしそれでも精霊達の『理』では、発動羅列からその先の可能性を見出す事には成功していても、どう足掻いたところでその『理』では『超越魔法』から上の位階へは辿り着く事が出来ないのであった。
レア自身も口に出して言っていたことだが『発動』と『魔力』の存在と意味が重要で、この二つの相互関係をカッチリと合わせなければ、思い描く事が出来ても実現するには程遠いからである。
ちょうどその時、レアの自室の扉をノックする音が聞こえた。
「レア様、そろそろ宜しいですかな?」
声の主はベイドであった。
どうやらそろそろ目を通し終えたであろう、レアの書類を受け取りに来たようであった。
レアはニコニコと笑みを浮かべながらペイドに入るように促す。
「失礼しま……す?」
ベイドはレアに許可を得た後に部屋に入りその顔を見たと同時に固まった。恐ろしいほど上機嫌のレアが自分を見ていた為である。
こんな表情を浮かべている時はあまり良いことがないと、ベイドは長い経験から知っていたからであった。
「ベイドちゃぁん、この書類を作った奴には私が後で褒美をあげると伝えておきなさい? そして概算要求書をもう一度提出させなさい。この私が出来るだけ歎願を飲んであげると一言添えてねぇ?」
普段のレアからは想像もできない言葉が、次々とベイドの耳に入ってくる。
「わ、分かりました、それにしても一体全体どうなされたのですか?」
「うふふ……」
レアはいっそう笑みを深めながら言い放つ。
「この世界を掌握するのに、また一歩近づいたのよぉっ!」
……
……
……
未だに精霊達を滅ぼすかどうかを決めかねているレアは、今日も自室で頬杖をつきながら国の重要な書類に目を通す。
書かれている内容は民間の税等から捻出された国の予算と、その予算の使い道が書かれたあらゆる項目の概算要求の書類等であった。
ベイドが王だった時代では専属の部署の者たちに任せていたのだが、レアがラルグ魔国王に就任してからはレアが直接全ての書類に目を通していた。国の重要な案件等に国のトップが把握せずにいる事はあってはならないと断言して、レアが全て目を通す事にしたのである。
しかし部署の者達はこのレア王の言葉に焦る事となった。もちろんベイドが王の時代の部署の配下達も決して手を抜いていたわけではないのだが、要所要所で妥協をしていた場面もあったからである。
――しかし、それもレアが女王となれば事情は変わる。
レアという魔国王は力一つでこの大陸の全ての国々を統治する王となった。そして戦争を仕掛けてきた上位種の魔人達をもたった一体で全てを滅ぼしてみせたのだ。
そんな『最強』とも呼べる魔族であるレアに、無様な書類等を提出したらどうなるだろうか。笑って許してもらえるとはとても思えず、下手をすれば処刑をされてしまうかもしれない。
そう考えた国の管理をする部署の魔族達は、必死の思いで書類を作り上げているのであった。
「国のインフラ整備にこの額は多くないかしらぁ? 土地は潤沢にあるのだし、今ある修理の必要な建物等は魔法で修理してその分をプールしときたいわねぇ」
ぺらりぺらりと書類のページをめくりながら、次から次に件を片付けていく。
「うーん……。経年劣化でそろそろ危ないというモノは厄介よねぇ、あっさりと破壊して一から修理するほうが楽だけど、流石に全てそんなことをするのも面倒だし。こういうのは一時的に『空間除外』でも使って、後に回す方がいいわねぇ」
「んぅ……?」
そこでレアはふと自分の発言に違和感を感じた。
「一時的に放置? 『空間除外』……!」
みるみるレアの目が輝きを増していき、遂にはその場で立ち上がった。
「そうだわぁ! 何も滅ぼさなくても時間を停止させた状態で、海にでも沈めておけばいいのよぉ!!」
この世界の魔族達では、いやそれどころか『魔』を司る『精霊族』であっても出てこない発想をレアは発言する。
それもその筈『空間除外』は、神域の中でも『時魔法』の領域であり『超越魔法』までしかこの世界には存在しないのだから仕方がないのであった。
精霊族もその上の位階魔法である『神域魔法』の存在自体は把握している。
発動羅列で『魔法』に意味を持たせる上で、更に威力を増せるという事自体には、当然『精霊族』も行き着いているからである。
しかしそれでも精霊達の『理』では、発動羅列からその先の可能性を見出す事には成功していても、どう足掻いたところでその『理』では『超越魔法』から上の位階へは辿り着く事が出来ないのであった。
レア自身も口に出して言っていたことだが『発動』と『魔力』の存在と意味が重要で、この二つの相互関係をカッチリと合わせなければ、思い描く事が出来ても実現するには程遠いからである。
ちょうどその時、レアの自室の扉をノックする音が聞こえた。
「レア様、そろそろ宜しいですかな?」
声の主はベイドであった。
どうやらそろそろ目を通し終えたであろう、レアの書類を受け取りに来たようであった。
レアはニコニコと笑みを浮かべながらペイドに入るように促す。
「失礼しま……す?」
ベイドはレアに許可を得た後に部屋に入りその顔を見たと同時に固まった。恐ろしいほど上機嫌のレアが自分を見ていた為である。
こんな表情を浮かべている時はあまり良いことがないと、ベイドは長い経験から知っていたからであった。
「ベイドちゃぁん、この書類を作った奴には私が後で褒美をあげると伝えておきなさい? そして概算要求書をもう一度提出させなさい。この私が出来るだけ歎願を飲んであげると一言添えてねぇ?」
普段のレアからは想像もできない言葉が、次々とベイドの耳に入ってくる。
「わ、分かりました、それにしても一体全体どうなされたのですか?」
「うふふ……」
レアはいっそう笑みを深めながら言い放つ。
「この世界を掌握するのに、また一歩近づいたのよぉっ!」
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