最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第323話 トーリエ大陸からの精霊族の刺客
精霊や妖精が住む平和で神秘的な大陸『トーリエ』では、普段はのんびりと妖精達が大陸の森で駆け回り遊んでいる光景が見られたが、最近行われた『魔族』が『魔人』を襲う様子が大々的に空に映し出されたのを見て、その平和な光景も今は鳴りを潜めた。
そして四元素を操る精霊たちの王、精霊王『ヴィヌ』が『壁戦の滝』と呼ばれる滝に姿を見せていた。
その滝は精霊達の聖域とされていて、四元素を操る精霊たちが普段から集まっている為、魔力に満ち溢れている場所であった。
現在その壁戦の滝では、四元素の長老達が集まって『魔族の王』に対して話し合う為に会合が行われている。
――『リラリオ』には『火』『水』『風』『土』の属性を持つ精霊達がいる。
魔法は精霊の力を用いて使う事が出来るが、この世界ではすでに長年精霊たちが残してきた『魔力の権化』がある為、現在の精霊達は世界の魔法に対してあまり関与をしていない。つまり精霊達は妖精達と平和を好み育み生きる事が出来ていた。
しかし、魔族の王『レア』の出現によって魔人族は滅びることになり『トーリエ』大陸、ひいては世界の安寧が脅かされる可能性が出てきた。
それ程までに膨大な魔力や『魔』の知識量を持つとされるレアの存在は大きかったようである。
すでに精霊達の中にはこの会合の前に、色々とヴェルマー大陸に向けて行動を起こしている精霊もいた。そしてそれこそが『ラクス』に嫌がらせを考えていた魔族達を操った者であった――。
――その精霊族の男の名は『ジウ』。
『風』の属性を持っており、元来司る魔法は天候系の魔法である。
魔法を使う事の出来る魔族や、人間族とは比べ物にならない程の魔力を持つ精霊族。その中でもジウは次代の『風』の精霊達の長老になるとさえ呼ばれている程の『賢者級』だった。
そんなジウに現在の『風』の長老である『トネール』は、大まかに分けて二つの命令を下した。
魔族の大陸に潜り込みんで魔族の王レアの情報を入手する事。そして可能であれば、魔族の王レアを暗殺する事。
有り体に言って精霊族にとって魔族は脅威でも何でもなく、精霊族は魔法や魔力に関しては世界でも最上位の種族に位置しており、力では適わないが魔人族との戦争が行われたとしても全精霊族が結集すれば数年は持つとさえ言われていた。
そんな魔人族より圧倒的に力が及ばない魔族など、精霊族にとっては何の問題にもならなかった筈である。
――だが、空に映し出された映像は、そんな精霊族達の思いの柱を根本から折る事となった。
そしてジウは風の長老の命令に従いヴェルマー大陸に紛れ込んだ。
『風』は戦闘魔法以外にも使える魔法は多い。そして魔法だけではなく風を操り、人や魔族達の会話などを遠くからでも聞く事も可能なのである。
ジウは精霊だが人型に変化することも可能であり、辺境の国に姿を晦ましながら情報を集めた。そしてそこでとある情報を入手する。
それは魔人との戦争に勝ったレア女王に心酔していて、辺境の国から大勢の者達が『ラルグ』魔国へと移り住もうとしているという情報を耳にしたのだ。ジウはそれを利用しようとラルグ魔国へと移動を試みた。
そして上手く事を運ばせる事が出来て無事にラルグ魔国へと、怪しまれずに入る事が出来た。
ここまでくればジウは、城下の宿からある程度の中の様子を風を使って探ることが出来るようになる。早速そのジウは『ラルグ』魔国の宿に連泊する手筈をつけて、少しずつ城の内部を調べていった。
――だが、ここで一つの問題が生じてしまった。
城の一定の領域は脆弱ではあるが、結界が張られていたのである。精霊族のジウの魔力を以てすれば、あっさりと結界を破ることは出来るが、結界を破けば詠唱者には直ぐに感づかれてしまうのである。
だからといって結界を破らずにレア王がいる箇所付近は、風を利用しても探索は出来ない。
どうしたものかとジウは悩んだが、城の入り口付近から声が聞こえてくる。
全域ではなくその声を聴くために風を集中させていると、何やら城にいる魔族が声を荒げて文句を言っているようだった。
――畜生、あの魔人の野郎、毎日毎日レア様とイチャつきやがって!
――ギャハハ。あれをイチャついてるとは言えねぇだろ? シゴキだよシゴキ。
――でも魔人が俺達の大陸にいるだけでもむかつくよなぁ。
どうやらこの城に滅ぼされた筈の『魔人』の生き残りがいるらしい。そしてどうやら荒げていた声は、その魔人を憎く思う者達が愚痴を言い合っているようであった。
――ジウは思考の海に身を委ねる。
当分はあの魔族の王の情報を得ることが厳しいのは間違いがないであろう。
だが、すでにラルグ魔国へと侵入することは出来たのだ。そうであれば、いつかは好機が巡ってくるはずであり、慌てる必要はないだろう。
それよりも城の中に入る事が出来る程の魔族であれば操っておいて損はない。
そう考えたジウは『風』のとある『超越魔法』を用いて苛立っている様子の魔族に仕込みを行うのであった。
――超越魔法、『誘操風可』。
この超越魔法の優れた点はこの魔法をかけた後でもその対象者が、普段通りの行動を取ることが出来るというところにある。
そして一度でも魔法をかけることが出来れば、ジウは遠くから任意に遠隔で自由に操ることが出来るのである。
そして次にジウは超越魔法『誘致促進』を使い、苛立った様子の魔族の感情を増幅させる。
(よし、ひとまずはこれでいい……)
後は操った魔族が見ている視界を共有する必要がある。
宿の一室に魔法で作り出した水晶玉を置き、操った魔族の視界と水晶玉をリンクさせる根源魔法を発動させる。
――根源魔法、『映見接続』。
ジウは結界から遠く離れた場所で最小の行動で魔法をかける事に成功した。発動時にバレることがなければもう安心である。
(よし、全ての準備は整った)
こうしてジウは少しずつ内部の情報を探っていき、好機が訪れるのをじっくりと待つのであった。
そして四元素を操る精霊たちの王、精霊王『ヴィヌ』が『壁戦の滝』と呼ばれる滝に姿を見せていた。
その滝は精霊達の聖域とされていて、四元素を操る精霊たちが普段から集まっている為、魔力に満ち溢れている場所であった。
現在その壁戦の滝では、四元素の長老達が集まって『魔族の王』に対して話し合う為に会合が行われている。
――『リラリオ』には『火』『水』『風』『土』の属性を持つ精霊達がいる。
魔法は精霊の力を用いて使う事が出来るが、この世界ではすでに長年精霊たちが残してきた『魔力の権化』がある為、現在の精霊達は世界の魔法に対してあまり関与をしていない。つまり精霊達は妖精達と平和を好み育み生きる事が出来ていた。
しかし、魔族の王『レア』の出現によって魔人族は滅びることになり『トーリエ』大陸、ひいては世界の安寧が脅かされる可能性が出てきた。
それ程までに膨大な魔力や『魔』の知識量を持つとされるレアの存在は大きかったようである。
すでに精霊達の中にはこの会合の前に、色々とヴェルマー大陸に向けて行動を起こしている精霊もいた。そしてそれこそが『ラクス』に嫌がらせを考えていた魔族達を操った者であった――。
――その精霊族の男の名は『ジウ』。
『風』の属性を持っており、元来司る魔法は天候系の魔法である。
魔法を使う事の出来る魔族や、人間族とは比べ物にならない程の魔力を持つ精霊族。その中でもジウは次代の『風』の精霊達の長老になるとさえ呼ばれている程の『賢者級』だった。
そんなジウに現在の『風』の長老である『トネール』は、大まかに分けて二つの命令を下した。
魔族の大陸に潜り込みんで魔族の王レアの情報を入手する事。そして可能であれば、魔族の王レアを暗殺する事。
有り体に言って精霊族にとって魔族は脅威でも何でもなく、精霊族は魔法や魔力に関しては世界でも最上位の種族に位置しており、力では適わないが魔人族との戦争が行われたとしても全精霊族が結集すれば数年は持つとさえ言われていた。
そんな魔人族より圧倒的に力が及ばない魔族など、精霊族にとっては何の問題にもならなかった筈である。
――だが、空に映し出された映像は、そんな精霊族達の思いの柱を根本から折る事となった。
そしてジウは風の長老の命令に従いヴェルマー大陸に紛れ込んだ。
『風』は戦闘魔法以外にも使える魔法は多い。そして魔法だけではなく風を操り、人や魔族達の会話などを遠くからでも聞く事も可能なのである。
ジウは精霊だが人型に変化することも可能であり、辺境の国に姿を晦ましながら情報を集めた。そしてそこでとある情報を入手する。
それは魔人との戦争に勝ったレア女王に心酔していて、辺境の国から大勢の者達が『ラルグ』魔国へと移り住もうとしているという情報を耳にしたのだ。ジウはそれを利用しようとラルグ魔国へと移動を試みた。
そして上手く事を運ばせる事が出来て無事にラルグ魔国へと、怪しまれずに入る事が出来た。
ここまでくればジウは、城下の宿からある程度の中の様子を風を使って探ることが出来るようになる。早速そのジウは『ラルグ』魔国の宿に連泊する手筈をつけて、少しずつ城の内部を調べていった。
――だが、ここで一つの問題が生じてしまった。
城の一定の領域は脆弱ではあるが、結界が張られていたのである。精霊族のジウの魔力を以てすれば、あっさりと結界を破ることは出来るが、結界を破けば詠唱者には直ぐに感づかれてしまうのである。
だからといって結界を破らずにレア王がいる箇所付近は、風を利用しても探索は出来ない。
どうしたものかとジウは悩んだが、城の入り口付近から声が聞こえてくる。
全域ではなくその声を聴くために風を集中させていると、何やら城にいる魔族が声を荒げて文句を言っているようだった。
――畜生、あの魔人の野郎、毎日毎日レア様とイチャつきやがって!
――ギャハハ。あれをイチャついてるとは言えねぇだろ? シゴキだよシゴキ。
――でも魔人が俺達の大陸にいるだけでもむかつくよなぁ。
どうやらこの城に滅ぼされた筈の『魔人』の生き残りがいるらしい。そしてどうやら荒げていた声は、その魔人を憎く思う者達が愚痴を言い合っているようであった。
――ジウは思考の海に身を委ねる。
当分はあの魔族の王の情報を得ることが厳しいのは間違いがないであろう。
だが、すでにラルグ魔国へと侵入することは出来たのだ。そうであれば、いつかは好機が巡ってくるはずであり、慌てる必要はないだろう。
それよりも城の中に入る事が出来る程の魔族であれば操っておいて損はない。
そう考えたジウは『風』のとある『超越魔法』を用いて苛立っている様子の魔族に仕込みを行うのであった。
――超越魔法、『誘操風可』。
この超越魔法の優れた点はこの魔法をかけた後でもその対象者が、普段通りの行動を取ることが出来るというところにある。
そして一度でも魔法をかけることが出来れば、ジウは遠くから任意に遠隔で自由に操ることが出来るのである。
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