最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第301話 とんだ肩透かし

 ダイオ魔国を狙ってきた魔人達の前に突如現れた魔族の王『レア』。

 『幹部級』の魔人リオンは不敵な笑みを浮かべたレアを『下級兵』の魔人に襲わせるのだった。下級兵の魔人の戦力値は4000万を超える為に魔族で言うところの『魔王』階級クラスである。

 この時代の魔族では『魔王』の領域に立つ者など居なかった事を考えると『魔人』という種族が襲い掛かってくると、如何にどうしようもないのかという事が窺い知れるというモノだろう。

 魔人の全力で振り切った拳はレアに向かって一直線に伸びていき直撃する。レアはそのまま防御をせずに、魔人の一撃をまともに受けると、そのまま吹っ飛んでいくのだった。

 その様子に『下級兵』の魔人は笑みを浮かべて『幹部級』の二体の魔人は対照的に訝しげに眉を寄せた。吹き飛ばされたレアはそのまま『ダイオ』魔国の詰め所のあった壁に大きな音を立てて激突する。

「何だ? ただの見掛け倒しだったのか?」

 リオンはあっさりと『下級兵』の一撃で吹っ飛んだレアを見てそう言葉を漏らす。

「いや、相手が死ぬところを見るまでは油断はするな」

「ああ……、もちろんそれは分かっているがよ」

 しかし魔人の一撃で飛ばされてから数秒経つが、レアが起き上がってくる様子はない。

「おいおい、本当にこれで終わりなのかよ? そうだとしたら、もう今回は何も楽しめねぇぞ!?」

 先程の『青のオーラ』を纏ったレアの威圧感は、この時代の魔族では考えられない力を示している程であったため、二人の『幹部級』の魔人は、目の前のこの幼女が魔族の王だと断定していた。

 それが『下級兵』のたった一回の攻撃で戦闘不能となったのであれば、とんだ肩透かしであり、やはり魔族という種族は、魔人の配下にする価値もないのかとリオンは思わされたのだった。

「ふふ、安心しなさぁい? 少し魔人とやらの力を分析していただけよぉ」

 そういうとレアは何事もなかったように身体を起こして、ゆっくりと元の場所へと戻ってくる。

 その様子にリオンは改めて笑みを浮かべた。

「へぇ? それでその分析の結果はどうだったんだ?」

 言葉では何事もなかったかのように振る舞うレアだが、すでにリオンはレアに対して興味が薄れていた。

 確かに目の前の魔族は『下級兵』の魔人よりは強いかもしれないが、それでも自分達『幹部級』には届いてない領域レベルだろうと察した為であった。

 ――だが、無視出来ない言葉が次の瞬間レアから放たれるのだった。

の力で龍族と喧嘩をしようっていうのであれば、魔人という種族も笑えるほど滑稽な種族ねぇ」

 ……
 ……
 ……

 魔人達の本国があるディアミール大陸では『幹部級』のリーベからの伝達を受け取り、魔人の王『シュケイン』の命令で『中級兵』以上の戦力を持つ魔人たちが、続々とヴェルマー大陸へと向かって空を飛んでいく。

 こちらは先遣隊である『下級兵』150体とは違い、完全にヴェルマーを手中に収める為の軍勢であった。

 ――その数は凡そ一万。

 魔人一体一体の戦力値が6000万を超える『中級兵』が、一万体という大規模の戦力を以て『幹部級』の二体が攻め落としたとされる『ダイオ』魔国を拠点に活動する為、ヴェルマー大陸に向かうのであった。

 本国から続々と飛んでいく姿を見た『上級兵』達は薄ら笑いを浮かべた。

「久々の戦争だったが、どうやら俺たちの出番はなさそうだな」

「ああ、魔族とやらは所詮は劣等種である種族だ。俺達魔人の敵ではない」

「だが、雑魚共を相手に運動はしたかったがな。幹部級のお二人はさぞ楽しめただろうな。羨ましい限りだ」

 ディアミール大陸にいる『上級兵』の魔人達は、口々に好き勝手言いながら大空を飛んでいく『中級兵』を眺めるのであった。

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