最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第256話 レパートの軍勢

 フルーフが大魔王として君臨していた時代のレパートの世界は、中には戦力値が高い者が居るという程度であり、数多ある世界の中では、そこまで目立って強い者が居るという世界ではなかった。

 当時ではフルーフ以外に目立って強い者は『ユファ』や『レインドリヒ』それ以外では『真なる魔王』の階級クラスに到達しているのは『レア』くらいのものであった。

 リラリオの世界よりは戦力としては上であっても、アレルバレルの世界と比べると全く話にならない総戦力である。

 しかし時代は変貌を遂げて今のレパートの世界は違う。ヴァルテンの部隊やレインドリヒの部隊の中でも『真なる魔王』の階級クラスに到達している者は数多く居る。

 そしてレアの直属の部隊の中には『大魔王』に到達している者も居る。レアがこの世界に戻ってきた後から一気にこの世界の総戦力は高まった。

 始祖龍キーリが治めていた数千年前の時代の『リラリオ』の世界であれば、この軍勢であれば始祖龍キーリを含めていなければ圧勝していた事だろう。

 しかし今から転移する現時代の『リラリオ』はもうそんな時代ではない。レパートの世界の軍勢が勝つ確率は相当に低い。

 アレルバレルの王ソフィと始祖龍キーリ。九大魔王のユファや、真なる魔王に覚醒したシス女王。

 そしてソフィの名付けを経た事で四百を越える魔物達は『魔王』階級クラスにすら届くかという程の力を有する。

 普段のレアであれば仕掛ける戦争ではなかった筈だが、今回ばかりはそれでも強行する理由ワケがある。

 ――それはレアの主にして親代わりである大魔王フルーフを壊した疑いがあるソフィを殺す為である。

 レアはこの戦争で生きて帰ってくる事は想定していない。自らがやられても刺し違えてでもソフィを殺す為に、全勢力で挑むつもりである。

 …………

 準備が整ったレアは少し前にフルーフの城の玉座の間に作った大きな穴に『概念跳躍アルム・ノーティア』用の魔力を施し始めた。

「よし、お前達! 行きなさぁい!」

 レアの号令によってその場にいた魔族達は次々穴へ飛び込んでいく。

 ――戦争の幕がレアの手によって、切って落とされたのだった。

 リラリオの世界。かつての魔人が住んでいた『ディアミール』大陸から近い東の空に大きな穴が出現する。

 そしてその穴から次から次に『レパート』の世界の軍勢が、姿を見せ始めるのだった。

 最初に姿を見せ始めたのは『魔術師』レインドリヒ達の部隊である。レインドリヒの部隊は魔法使いが多く、その数は百体を上回る程であった。

 次に出てくるのは『謀り』の大魔王であるヴァルテン達の部隊である。こちらは剣を持った魔族や槍を持った魔族も多く戦闘職は混合と言った感じであり、その数は二百体程であった。

 そして最後に出てくるのが本丸である『魔王』レアの部隊である。フルーフの時代から居る魔族に合わせて、レアが鍛え抜いた精鋭の魔族達であり、その数も四百にのぼる。

 ――こうして総勢七百程のレパートの世界の軍勢が、リラリオの世界に降り立つのであった。

「さて、まずは敵を分散させないとねぇ? レインドリヒちゃん達は、レイズ魔国方面に向かってくれるぅ?」

「ああ、任せておけ、直ぐに終わらせてくる」

 いつものように冗談か本気かよく分からない反応を見せず、素直に言葉を返すレインドリヒに、少しレアは戸惑ったが頷いて見せた。

「ヴァルテンちゃんは、トウジン魔国方面を攻めてねぇ?」

「分かりました。久しぶりの戦争ですからね、楽しませて頂きましょうか」

 そう言ってヴァルテンは『青』のオーラを纏い始めた。

「さてそれじゃあ、戦争を始めましょうかぁ?」

 キィイインという甲高い音が響き渡り、レアの目が『金色』に輝き始めるのだった。

 遂に『魔王』レアが配下の軍勢を引き連れて、リラリオの世界に降り立った。

 ――これより力ある魔王同士の軍勢の戦争が始まるのだった。

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