最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第245話 無垢で健気な幼女
レパートの世界へ戻ってきた『レインドリヒ』は、レアが居る場所へ向かう。このレアが居る城は元々はフルーフの城である。
魔王レアがリラリオに戻る前は、魔王『ヴァルテン』と共に、レインドリヒがこの世界を支配しようとしていたが、レアが戻ると同時にあっさりと支配権をレアに奪い返されて、そのままレアの配下に加えさせられた。
レインドリヒはレアのいる城の玉座の間に入ると同時に、ソフィと会った時の余韻が吹き飛んだ。
玉座の間は数百の魔族がびっしりと部屋中に整列しており、その前方の玉座にレアが座っていた。そしてそのレアは、レインドリヒが部屋に入ると威圧的な目で彼を睨む。
「こ、これは凄い光景だな。レア?」
レアの視線を受け流しながら、ゆっくりと近づいてそう呟くと、不機嫌そうな顔でレアは言葉を返す。
「貴方も『魔王』ソフィに会いに行っていたようね? 一体どういう話し合いをしたのかしらぁ?」
瞬間、レインドリヒはまずいと思った。
本気で怒っているときのレアが態度で現れていた。
この時のレアに下手な態度をとったり誤魔化そうとしたりした場合、レインドリヒはあっさりと殺されるであろう。
「ああ。リラリオの世界に下見に行っていたんだ。今あそこでは面白い催しが行われていてね? お前の先輩の『魔王』であるユファが、闘技場というリングの上で戦っていたよ?」
レインドリヒが嘘偽りなく報告すると、レアは興味無さげに鼻を鳴らした。
「先輩魔王? この世界出身でありながら別世界の魔王に媚びて、あろうことかそのまま配下となった女を私の先輩と呼ばないで欲しいわねぇ?」
「ぐっ! わ、悪かったっ!」
レアは魔瞳『金色の目』で力任せにレインドリヒを睨みつけると、レインドリヒはその場で胸を押さえながら蹲った。
レインドリヒは直ぐに失言だったとレアに謝罪をする。
今のレアは普段のように他人をイジるような余裕もない。
魔王ソフィに対して恐ろしい程の怨恨を抱えており、軽い気持ちで呟いた発言に後悔をするレインドリヒだった。
「まぁ別にいいわぁ、そんなことより貴方の『概念跳躍』は、他者を転移させる事は出来るのかしらぁ?」
大魔王『フルーフ』の編み出した『概念跳躍』は自分自身を転移させることは出来るが、他者を転移させる事は出来ない。
しかしフルーフから『概念跳躍』の『理』を覚えさせられたレアは魔力の続く限り他者を転移させる事が出来る。
ダールの世界に現在いる『大賢者』と同じように、既存の世界間転移の魔法を進化させる事に成功しているのだった。
「お前と一緒にしないでもらえるか? 『概念跳躍』は一流の魔法使いが匙を投げる程の『魔法』だぞ? 簡単に進化させる事が出来る訳がないだろう?」
レインドリヒはそう言うと、両手をあげて無理無理ばかりに首を振ってみせる。
だがレアはレインドリヒの話を話半分で聞いていた。
その様子を見るに彼女は、レインドリヒの言葉を全く信用をしていないようだ。
「ふーん? 魔術師と呼ばれる『大魔王』にしてはポンコツなのねぇ?」
レインドリヒを馬鹿にするような、態度と口調でレインドリヒを煽る。
「ははは! フルーフ様やお前のような天才はそう何人も居ないという事の証明だな」
レインドリヒはレアの挑発を流して、更に称えるように謙遜をする。
(こんな事を言っているが、私の見立てではこいつは『概念跳躍』を進化させている。そう簡単に尻尾を見せないか)
口ではこう言っているが、レアの中でのレインドリヒの評価は消して低くはない。
大魔王『レインドリヒ』は別の世界を直接見てきたレアであっても、かなり上位に位置する『大魔王』だと理解している。
あの規模の違うアレルバレルの世界であっても、このレインドリヒであれば、十分に生き残れるだろうと思える程には認めているのであった。
「まぁいいわぁ。私は今度の戦争でここに居る者達を全員転移させるからぁ、貴方は『悪魔召喚』で私兵を増やしてリラリオで受肉させてもらえるかしらぁ?」
「は?」
レインドリヒはレアの言葉に耳を疑うのだった。
――今、何と言った? ここにいる数百の魔族達を全員転移させる?
レインドリヒは信じられないようなモノを見る目でレアを見る。
「何を呆けているのかしらぁ? 大魔王の領域にいるなら『悪魔召喚』くらいできるでしょう?」
「そっちじゃない……。お前は『概念跳躍』で、ここにいる数百の魔族を転移させられるというのか?」
「当然でしょう? フルーフ様の編み出した魔法は誰よりも私が理解しているわぁ。あの方の配下であれば、これくらい出来て当たり前よぉ」
ここでようやく魔王レアは、機嫌を良くし始めるのであった。
このレアという魔族の機嫌を取るには、フルーフを褒め称えた上で、流石はフルーフの配下だなと認めるような口ぶりをすればいいのだ。
しかしまさかこの場にいる魔族全員を転移させられるとは、流石にレインドリヒでも思わなかった。
先程『概念跳躍』で他者を転移させる事は出来ないと告げたレインドリヒではあるが、実際は数体程度なら転移させられる。
だが、それでも『魔術師』として膨大な魔力を持つレインドリヒですら、数体程度しか送れないのである。
それをレアは一度に数百体規模で、別の世界へ転移させられるというのだから桁が違いすぎる。
「今度の戦争、本気なのだな?」
レインドリヒの言葉に神妙に頷く『魔王』レア。
「当たり前よぉ。魔王ソフィだけは……、あいつだけは許さない!」
魔王レアにとってフルーフという主は彼女の価値観の全てであり、フルーフの為なら喜んで命を差し出す程である。
――そのフルーフを正気で失くさせたと思われる者を許す筈がなかった。
そして真相を知るレインドリヒは、目の前の小さな少女を可哀想な目で見る。
(流石の私でも……。この嘘を突き通すのは心苦しいものだな)
何千年という年月が経った今であっても、自分の主の為に健気な行動をとり続けるレアを見て、彼らしくない感情にとらわれる魔術師であった。
魔王レアがリラリオに戻る前は、魔王『ヴァルテン』と共に、レインドリヒがこの世界を支配しようとしていたが、レアが戻ると同時にあっさりと支配権をレアに奪い返されて、そのままレアの配下に加えさせられた。
レインドリヒはレアのいる城の玉座の間に入ると同時に、ソフィと会った時の余韻が吹き飛んだ。
玉座の間は数百の魔族がびっしりと部屋中に整列しており、その前方の玉座にレアが座っていた。そしてそのレアは、レインドリヒが部屋に入ると威圧的な目で彼を睨む。
「こ、これは凄い光景だな。レア?」
レアの視線を受け流しながら、ゆっくりと近づいてそう呟くと、不機嫌そうな顔でレアは言葉を返す。
「貴方も『魔王』ソフィに会いに行っていたようね? 一体どういう話し合いをしたのかしらぁ?」
瞬間、レインドリヒはまずいと思った。
本気で怒っているときのレアが態度で現れていた。
この時のレアに下手な態度をとったり誤魔化そうとしたりした場合、レインドリヒはあっさりと殺されるであろう。
「ああ。リラリオの世界に下見に行っていたんだ。今あそこでは面白い催しが行われていてね? お前の先輩の『魔王』であるユファが、闘技場というリングの上で戦っていたよ?」
レインドリヒが嘘偽りなく報告すると、レアは興味無さげに鼻を鳴らした。
「先輩魔王? この世界出身でありながら別世界の魔王に媚びて、あろうことかそのまま配下となった女を私の先輩と呼ばないで欲しいわねぇ?」
「ぐっ! わ、悪かったっ!」
レアは魔瞳『金色の目』で力任せにレインドリヒを睨みつけると、レインドリヒはその場で胸を押さえながら蹲った。
レインドリヒは直ぐに失言だったとレアに謝罪をする。
今のレアは普段のように他人をイジるような余裕もない。
魔王ソフィに対して恐ろしい程の怨恨を抱えており、軽い気持ちで呟いた発言に後悔をするレインドリヒだった。
「まぁ別にいいわぁ、そんなことより貴方の『概念跳躍』は、他者を転移させる事は出来るのかしらぁ?」
大魔王『フルーフ』の編み出した『概念跳躍』は自分自身を転移させることは出来るが、他者を転移させる事は出来ない。
しかしフルーフから『概念跳躍』の『理』を覚えさせられたレアは魔力の続く限り他者を転移させる事が出来る。
ダールの世界に現在いる『大賢者』と同じように、既存の世界間転移の魔法を進化させる事に成功しているのだった。
「お前と一緒にしないでもらえるか? 『概念跳躍』は一流の魔法使いが匙を投げる程の『魔法』だぞ? 簡単に進化させる事が出来る訳がないだろう?」
レインドリヒはそう言うと、両手をあげて無理無理ばかりに首を振ってみせる。
だがレアはレインドリヒの話を話半分で聞いていた。
その様子を見るに彼女は、レインドリヒの言葉を全く信用をしていないようだ。
「ふーん? 魔術師と呼ばれる『大魔王』にしてはポンコツなのねぇ?」
レインドリヒを馬鹿にするような、態度と口調でレインドリヒを煽る。
「ははは! フルーフ様やお前のような天才はそう何人も居ないという事の証明だな」
レインドリヒはレアの挑発を流して、更に称えるように謙遜をする。
(こんな事を言っているが、私の見立てではこいつは『概念跳躍』を進化させている。そう簡単に尻尾を見せないか)
口ではこう言っているが、レアの中でのレインドリヒの評価は消して低くはない。
大魔王『レインドリヒ』は別の世界を直接見てきたレアであっても、かなり上位に位置する『大魔王』だと理解している。
あの規模の違うアレルバレルの世界であっても、このレインドリヒであれば、十分に生き残れるだろうと思える程には認めているのであった。
「まぁいいわぁ。私は今度の戦争でここに居る者達を全員転移させるからぁ、貴方は『悪魔召喚』で私兵を増やしてリラリオで受肉させてもらえるかしらぁ?」
「は?」
レインドリヒはレアの言葉に耳を疑うのだった。
――今、何と言った? ここにいる数百の魔族達を全員転移させる?
レインドリヒは信じられないようなモノを見る目でレアを見る。
「何を呆けているのかしらぁ? 大魔王の領域にいるなら『悪魔召喚』くらいできるでしょう?」
「そっちじゃない……。お前は『概念跳躍』で、ここにいる数百の魔族を転移させられるというのか?」
「当然でしょう? フルーフ様の編み出した魔法は誰よりも私が理解しているわぁ。あの方の配下であれば、これくらい出来て当たり前よぉ」
ここでようやく魔王レアは、機嫌を良くし始めるのであった。
このレアという魔族の機嫌を取るには、フルーフを褒め称えた上で、流石はフルーフの配下だなと認めるような口ぶりをすればいいのだ。
しかしまさかこの場にいる魔族全員を転移させられるとは、流石にレインドリヒでも思わなかった。
先程『概念跳躍』で他者を転移させる事は出来ないと告げたレインドリヒではあるが、実際は数体程度なら転移させられる。
だが、それでも『魔術師』として膨大な魔力を持つレインドリヒですら、数体程度しか送れないのである。
それをレアは一度に数百体規模で、別の世界へ転移させられるというのだから桁が違いすぎる。
「今度の戦争、本気なのだな?」
レインドリヒの言葉に神妙に頷く『魔王』レア。
「当たり前よぉ。魔王ソフィだけは……、あいつだけは許さない!」
魔王レアにとってフルーフという主は彼女の価値観の全てであり、フルーフの為なら喜んで命を差し出す程である。
――そのフルーフを正気で失くさせたと思われる者を許す筈がなかった。
そして真相を知るレインドリヒは、目の前の小さな少女を可哀想な目で見る。
(流石の私でも……。この嘘を突き通すのは心苦しいものだな)
何千年という年月が経った今であっても、自分の主の為に健気な行動をとり続けるレアを見て、彼らしくない感情にとらわれる魔術師であった。
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