最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第164話 過去のアレルバレル2
「当時私は大魔王ヌーの配下の魔王達を何とか倒す事には成功したのだけど、その時の戦闘の所為で、隠蔽していた魔力がばれちゃってね。更に追手に狙われることになったのだけど……、その時にあの方が助けてくれたのよ」
…………
「こんなヤバイ世界、来なきゃよかったわね」
目の前には『真なる魔王』階級の魔法使いが五体程いた。
その五体とも当時の私と同格かそれ以上の強さだった。
その真なる魔王階級の者達が一斉に魔法を詠唱し始めた時、私は死を覚悟した――。
――そんな時だった。
「クックック、誰の領地で好き勝手に暴れておる?」
突然あのお方が現れたかと思えば、明らかに『ヌー』の配下達は動揺していた。
「三秒だけ待ってやろう。それまでに去らねば容赦はせぬぞ?」
「一、二……」
次の瞬間には、当時の私と同じ程の強さだった『真なる魔王』達が、一斉にその場を離れたのだ。
「お主、危ないところだったな?」
そういってあのお方は、座り込んでいる私に手を差し伸べてくれた。
……
……
……
「これが私と『ソフィ』様との出会いよ」
過去を思い返しながらその時の事を話してくれていたヴェルは、そう言って私の顔を見た。
「ソフィさんって、本当に昔から優しい人なのね」
シスはソフィの屋敷へ飛んだ時の事を、思い出しながらそう言った。
「そうね。あの方は敵対さえ……いや、あの方の仲間を傷つけたりしなければ、本当に優しいお方よ」
――あくまで大事な者を傷つけたりしなければね。
強調して言うユファにシスは、ゴクリと生唾を飲み込んだ。
「話を戻すけど、私はその後にあの方に保護されながら客分という扱いで『大魔王』ソフィの陣営に加えさせて頂いたの」
ちょうどソフィ様は、大魔王『ヌー』との戦争中でね。他の大魔王達はこの二人の戦争に、割り込んだりせずに動向を見守っていた。
大魔王同士の戦いは『量』より『質』である為に、下手なちょっかいを出す事は身を滅ぼす事に繋がるみたいであった。
「そして両者の戦争が終結するのに割と時間はかかったかしら。結果は『ソフィ』様の勝利で終わり。その時に私はあの方にある事を訊ねたの。大魔王フルーフはどうなったのかをね」
「レアって子の主だったのよね?」
ユファはコクリと頷いた。
「フルーフ様が『概念跳躍』で辿り着いた場所が、ちょうど私と同じようにあの方と同じ領地内だったらしく、ヌーとの戦争前にあの方と戦ったらしいわ」
「そ、それでどうだったの?」
シスは興奮気味にユファの言葉を待つ。
「私も詳細は教えてもらえなかったけど、勝負自体はあの方が勝利したらしいわ」
「戦いが終わった後にフルーフ様は、あの方の事を気に入ったそうでね。再戦を約束してその場を離れたらしいの」
どうやらソフィとフルーフは戦いが終わった後は悔恨などはなく、友人のような関係になったようだ。
しかしそこから浮かない表情で、言葉を続けるユファであった。
「大魔王はやられてもそう簡単に死ぬ事はなく。私のように『代替身体』と呼ばれる仮の姿を最初から用意しておけばそちらの身体に魂を憑依させて、本体が眠りから覚めるまでの間、違う身体で活動できるのだけど」
ユファは大魔王の『代替身体』の仕組みの話を前置きに、話をした後に本題を話し始めた。
「ヌーを倒した後にあの方は配下を連れてヌーの領地へ向かったのだけど、その場にいたのは虚ろな目を浮かべたフルーフ様だった」
シスは目を丸くしてユファの話を聞く。
何故フルーフはヌーの領地へいたのか――。
その当然の疑問を孕んだ表情を浮かべた。
「あの方は変わり果てた姿をしていたフルーフ様へと声をかけたけど、フルーフ様はブツブツと何かを呟いていただけで、あの方の声が耳に届いていなかった。でも、あの方の顔を見た瞬間に一瞬だけ正気に戻ったようにあの方に近づこうとしたのだけど、直ぐに虚ろな目に戻り、そして目の前から突然姿を消したのよ……」
ユファは当時の事を思い出しながら、静かに続ける。
「『概念跳躍』を使って戻ったのだとは思うのだけど、その後の事は分からない。あの方も私もその場に居たけど、結局ヌーの本体も見つけられずに仕方なく私たちは、大魔王『ヌー』の領地を後にしたの。そしてヌーを倒した事であの方に逆らう『大魔王』達は表立ってはいなくなり、少しの間だけど平和がおとずれた」
どうやら他の大魔王達はソフィさんとヌーっていう大魔王程には、強くはなかったようだとシスはそう結論づけるのだった。
「私はその後もソフィ様の領地であの方に魔法を教えてもらいながら、その時に自分の意思で大魔王ソフィ様の配下となることを決めた」
そして『ヴェルトマー』であった頃に大事そうに身に着けていた『金色のメダル』を私に見せてくれた。
――シスは、そのメダルを一度だけ見たことがあった。
「これがその時にあの方に頂いた『金色のメダル』よ!」
そう言ったユファは、長年一緒にいた私でさえ見た事の無いような自慢気な顔を浮かべて、誇らしげにそのメダルを見せてもらったのだった。
そして大事そうに胸にしまい込むと、彼女は話の続きをしてくれるのであった。
…………
「こんなヤバイ世界、来なきゃよかったわね」
目の前には『真なる魔王』階級の魔法使いが五体程いた。
その五体とも当時の私と同格かそれ以上の強さだった。
その真なる魔王階級の者達が一斉に魔法を詠唱し始めた時、私は死を覚悟した――。
――そんな時だった。
「クックック、誰の領地で好き勝手に暴れておる?」
突然あのお方が現れたかと思えば、明らかに『ヌー』の配下達は動揺していた。
「三秒だけ待ってやろう。それまでに去らねば容赦はせぬぞ?」
「一、二……」
次の瞬間には、当時の私と同じ程の強さだった『真なる魔王』達が、一斉にその場を離れたのだ。
「お主、危ないところだったな?」
そういってあのお方は、座り込んでいる私に手を差し伸べてくれた。
……
……
……
「これが私と『ソフィ』様との出会いよ」
過去を思い返しながらその時の事を話してくれていたヴェルは、そう言って私の顔を見た。
「ソフィさんって、本当に昔から優しい人なのね」
シスはソフィの屋敷へ飛んだ時の事を、思い出しながらそう言った。
「そうね。あの方は敵対さえ……いや、あの方の仲間を傷つけたりしなければ、本当に優しいお方よ」
――あくまで大事な者を傷つけたりしなければね。
強調して言うユファにシスは、ゴクリと生唾を飲み込んだ。
「話を戻すけど、私はその後にあの方に保護されながら客分という扱いで『大魔王』ソフィの陣営に加えさせて頂いたの」
ちょうどソフィ様は、大魔王『ヌー』との戦争中でね。他の大魔王達はこの二人の戦争に、割り込んだりせずに動向を見守っていた。
大魔王同士の戦いは『量』より『質』である為に、下手なちょっかいを出す事は身を滅ぼす事に繋がるみたいであった。
「そして両者の戦争が終結するのに割と時間はかかったかしら。結果は『ソフィ』様の勝利で終わり。その時に私はあの方にある事を訊ねたの。大魔王フルーフはどうなったのかをね」
「レアって子の主だったのよね?」
ユファはコクリと頷いた。
「フルーフ様が『概念跳躍』で辿り着いた場所が、ちょうど私と同じようにあの方と同じ領地内だったらしく、ヌーとの戦争前にあの方と戦ったらしいわ」
「そ、それでどうだったの?」
シスは興奮気味にユファの言葉を待つ。
「私も詳細は教えてもらえなかったけど、勝負自体はあの方が勝利したらしいわ」
「戦いが終わった後にフルーフ様は、あの方の事を気に入ったそうでね。再戦を約束してその場を離れたらしいの」
どうやらソフィとフルーフは戦いが終わった後は悔恨などはなく、友人のような関係になったようだ。
しかしそこから浮かない表情で、言葉を続けるユファであった。
「大魔王はやられてもそう簡単に死ぬ事はなく。私のように『代替身体』と呼ばれる仮の姿を最初から用意しておけばそちらの身体に魂を憑依させて、本体が眠りから覚めるまでの間、違う身体で活動できるのだけど」
ユファは大魔王の『代替身体』の仕組みの話を前置きに、話をした後に本題を話し始めた。
「ヌーを倒した後にあの方は配下を連れてヌーの領地へ向かったのだけど、その場にいたのは虚ろな目を浮かべたフルーフ様だった」
シスは目を丸くしてユファの話を聞く。
何故フルーフはヌーの領地へいたのか――。
その当然の疑問を孕んだ表情を浮かべた。
「あの方は変わり果てた姿をしていたフルーフ様へと声をかけたけど、フルーフ様はブツブツと何かを呟いていただけで、あの方の声が耳に届いていなかった。でも、あの方の顔を見た瞬間に一瞬だけ正気に戻ったようにあの方に近づこうとしたのだけど、直ぐに虚ろな目に戻り、そして目の前から突然姿を消したのよ……」
ユファは当時の事を思い出しながら、静かに続ける。
「『概念跳躍』を使って戻ったのだとは思うのだけど、その後の事は分からない。あの方も私もその場に居たけど、結局ヌーの本体も見つけられずに仕方なく私たちは、大魔王『ヌー』の領地を後にしたの。そしてヌーを倒した事であの方に逆らう『大魔王』達は表立ってはいなくなり、少しの間だけど平和がおとずれた」
どうやら他の大魔王達はソフィさんとヌーっていう大魔王程には、強くはなかったようだとシスはそう結論づけるのだった。
「私はその後もソフィ様の領地であの方に魔法を教えてもらいながら、その時に自分の意思で大魔王ソフィ様の配下となることを決めた」
そして『ヴェルトマー』であった頃に大事そうに身に着けていた『金色のメダル』を私に見せてくれた。
――シスは、そのメダルを一度だけ見たことがあった。
「これがその時にあの方に頂いた『金色のメダル』よ!」
そう言ったユファは、長年一緒にいた私でさえ見た事の無いような自慢気な顔を浮かべて、誇らしげにそのメダルを見せてもらったのだった。
そして大事そうに胸にしまい込むと、彼女は話の続きをしてくれるのであった。
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