最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第155話 ヴェルトマーとの出会い11
レルバノンが不思議に思うのも仕方がない。
目の前でにやにやと笑みを浮かべている『ヴェルトマー』という存在は、何千年も戦場に身を置き研鑽に研鑽を重ねた大魔法使い。
――そして古から『大魔王』と呼ばれていた存在なのだから。
所謂予備の身体を用いている為に、本来の1/10程の魔力と戦力値しか現在は有してはいないが、それでも『最上位魔族』の最上位の領域に立っている。
いくら魔力等が本来の力ではないとは言っても、卓越した知識と戦闘での戦い方は変わらない。
――『災厄の大魔法使い』と呼ばれる大魔王と戦っている以上は、最上位とはいっても最上位魔族でしかない『レルバノン』が手玉に取られるのも無理はなかった。
そして本来の『魔王』としての戦い方を見せようとその気になっていた『ヴェルトマー』の元に、唐突に別の方角から同時に複数の『魔法』が無詠唱で放たれた。
――超越魔法、『万物の爆発』。
――超越魔法、『炎帝の爆炎』。
「……ちっ!」
流石に完全に意表を突かれた事に加えて極大魔法である『万物の爆発』と『炎帝の爆炎』が、無詠唱でヴェルトマーに放たれた事で、彼女は攻撃を行う為に用意していた『魔力回路』から使うつもりがなかった膨大な魔力を放出させながら、こちらも無詠唱で神域レベルの『呪文』を使って身を守る。
――呪文、『絶対防御』。
『ゴルガー』と『ネスツ』が放った魔法を『ヴェルトマー』は完全に無効化する。
ヴェルトマーは目を紅くさせながら『魔力感知』を使って、ラルグ魔国軍の『ゴルガー』と『ネスツ』の位置を確認して追撃に備える。
「レルバノン様! ここは一度撤退しましょうぞ!」
ゴルガーがレルバノンの前に立ちながらそう言い放つ。
その言葉を聞いたレルバノンは冷静に現在の状況を見極めて頷く。
「いいですか? あの化け物から逃げる事は容易ではありません。侵攻の準備をさせていた、全ての魔族を今直ぐにあの化け物にぶつけなさい!」
ゴルガーはレルバノンの言葉を受けて頷き、直ぐに念話で魔族達に命令を下す。
「ちっ! しまったな。ついつい癖で本来の身体のように動いてしまった。この身体で『絶対防御』は些か魔力の消費が著しいか……?」
突如として現れた『ゴルガー』と『ネスツ』に対して追撃を警戒していた『ヴェルトマー』だったが、どうやら即座に落とされる心配はない程度の相手だと判断した事で、レルバノン達を完全に無視して自分の魔力を確かめ始めるのだった。
そして自分の貯蔵の魔力量を調べ終えた彼女は、咄嗟の出来事であった為に取るべき防御手段を間違えた事に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるのだった。
――いや、正確には間違ってはいなかった。
本体の体力回復用に用いている『代替身体』でなければ、先程の無詠唱で放たれた敵の『魔法』を考慮して取るべき対策としての『絶対防御』は、何も間違いではなかったのである。
しかしそれはあくまで本来の身体であればの話であり『ヴェルトマー』としての彼女であれば、ここは魔力障壁と結界を織り交ぜて少しの被弾を許してでも、軽減という選択肢を取る事が最善の行動であった。
それ程までに『絶対防御』の魔力消費は『最上位魔族』程度の魔族の魔力では賄いきれないモノなのである。
「今のうちです! 一気に魔族達を嗾けなさい!」
その言葉と同時に『ゴルガー』が号令を出した。
次の瞬間には、この場に居る『ラルグ』魔国の魔族達が一斉に『ヴェルトマー』に向けて襲い掛かっていった。
「よし……! あの化け物が魔族達に意識を向けたのを確認したら、一斉に全魔力を用いて我々全員で攻撃をします。そしてその後はもう振り返らずに全力でラルグ魔国へ戻りますよ!」
多くの戦力値300万以上の魔族達が一斉にヴェルトマーに向かうのを確認した後、ゴルガーとネスツは同時に頷いた。
流石にヴェルトマーも今の身体の魔力で、この人数を相手にするのは厳しいと判断するのだった。
「くそっ! 仕方ないか」
最悪ヴェルトマーは本来の身体を一時的に使って、この局面を一瞬でひっくり返そうと考えるのであった。
そうなれば再び魔力の回復は数百年は伸びる事になるだろうが、ここでレイズ魔国を奴らに滅ぼされて、シスを失う事を考えるくらいであれば、自分の身体の復活など後回しにしても構わない。
断固たる決意を以て『大魔王ユファ』は、その選択を選ぼうとした。
――しかし、その瞬間であった。
「さぁ、今です! 出し惜しみなく一気に放ちなさい!」
――レルバノンの号令がかかったその瞬間。
「させませんよ!」
ヴェルトマーに襲い掛かっていった魔族達が、膨大な魔力の渦に巻き込まれて吹き飛んでいく。
その場に居る全ての者達が、凛とした女王の声の方を振り向くとそこには『レイズ』魔国の『セレス』女王と『リーゼ』達の魔法部隊に『ラティオ』が率いる近接近衛部隊。
――更には決死の覚悟の表情を見せて、ぎゅっと杖を握った『シス』が居た。
「お前たち! ヴェルトマーを援護しろぉっ!」
リーゼ・フィクスの号令に『レイズ』魔国の全魔法部隊が一斉に詠唱を始めるのであった。
「もう……。私一人でいいと言ったのにねぇ……!」
内心嬉しい気持ちを隠しつつも『ヴェルトマー』はそう呟く。
レルバノンは『レイズ』魔国の脅威と呼べる『魔法部隊』の一斉に詠唱を聞いた事で、この数秒先に起こる事を考えて直ぐ様号令を出す。
「もう攻撃をしても間に合いません! 今の内に転移魔法を使いなさい!」
「……くっ! わ、分かりました!」
レルバノンの言葉にゴルガーとネスツは『高等移動呪文』でラルグ魔国へと引き返していく。
それを見届けた後に『レルバノン』も転移魔法を使おうとするが、それを見たヴェルトマーは残された『魔力』を注いでレルバノンに向けて高速で炎の矢を放った。
シスに教えた魔法『炎の連矢』であった。
「く……っ!」
レルバノンに『ヴェルトマー』の炎の矢が当たり、彼の身に熱を持った痛みが走る。
中位魔法とはいっても放ったのは『ヴェルトマー』である。
――その威力は、おして然り。
何とかレルバノンは転移魔法を発動に成功して、傷を負いながらも命からがら撤退をする事に成功する。
そして次の瞬間に『レイズ』の全ての『魔法部隊』の詠唱が終わり、魔法陣が次々と空中を覆い尽くすように展開されていく。
第一陣、第二陣、第三陣と『リーゼ』の巧みな号令に従いながら『魔法部隊』が数秒ごとに順番に魔法を発動させる事で、極大魔法の爆撃が折り重なるように連続して直撃していく。
鳴り止まない爆音と連続魔法によって『ラルグ』の魔族達は慌てて逃亡を図ろうとするが、そこへ『セレス』女王と『リーゼ・フィクス』が更なる極大魔法を展開。
――最上位魔族の極大魔法は、敗走するラルグ魔国兵をこの場から脱出させる事を認めない。
そして遂に『レイズ』魔法部隊全軍の魔法によって、攻めてきた『ラルグ』魔国軍全滅に成功するのであった。
「私が獲物を逃がすなんてね『鮮血のレルバノン』か、やるじゃない」
『ラルグ』魔国軍を押し返す事に成功して喜ぶ『レイズ』魔法部隊の面々たちを尻目に、ヴェルトマーは『レルバノン』の存在を頭に記憶させたのだった。
……
……
……
目の前でにやにやと笑みを浮かべている『ヴェルトマー』という存在は、何千年も戦場に身を置き研鑽に研鑽を重ねた大魔法使い。
――そして古から『大魔王』と呼ばれていた存在なのだから。
所謂予備の身体を用いている為に、本来の1/10程の魔力と戦力値しか現在は有してはいないが、それでも『最上位魔族』の最上位の領域に立っている。
いくら魔力等が本来の力ではないとは言っても、卓越した知識と戦闘での戦い方は変わらない。
――『災厄の大魔法使い』と呼ばれる大魔王と戦っている以上は、最上位とはいっても最上位魔族でしかない『レルバノン』が手玉に取られるのも無理はなかった。
そして本来の『魔王』としての戦い方を見せようとその気になっていた『ヴェルトマー』の元に、唐突に別の方角から同時に複数の『魔法』が無詠唱で放たれた。
――超越魔法、『万物の爆発』。
――超越魔法、『炎帝の爆炎』。
「……ちっ!」
流石に完全に意表を突かれた事に加えて極大魔法である『万物の爆発』と『炎帝の爆炎』が、無詠唱でヴェルトマーに放たれた事で、彼女は攻撃を行う為に用意していた『魔力回路』から使うつもりがなかった膨大な魔力を放出させながら、こちらも無詠唱で神域レベルの『呪文』を使って身を守る。
――呪文、『絶対防御』。
『ゴルガー』と『ネスツ』が放った魔法を『ヴェルトマー』は完全に無効化する。
ヴェルトマーは目を紅くさせながら『魔力感知』を使って、ラルグ魔国軍の『ゴルガー』と『ネスツ』の位置を確認して追撃に備える。
「レルバノン様! ここは一度撤退しましょうぞ!」
ゴルガーがレルバノンの前に立ちながらそう言い放つ。
その言葉を聞いたレルバノンは冷静に現在の状況を見極めて頷く。
「いいですか? あの化け物から逃げる事は容易ではありません。侵攻の準備をさせていた、全ての魔族を今直ぐにあの化け物にぶつけなさい!」
ゴルガーはレルバノンの言葉を受けて頷き、直ぐに念話で魔族達に命令を下す。
「ちっ! しまったな。ついつい癖で本来の身体のように動いてしまった。この身体で『絶対防御』は些か魔力の消費が著しいか……?」
突如として現れた『ゴルガー』と『ネスツ』に対して追撃を警戒していた『ヴェルトマー』だったが、どうやら即座に落とされる心配はない程度の相手だと判断した事で、レルバノン達を完全に無視して自分の魔力を確かめ始めるのだった。
そして自分の貯蔵の魔力量を調べ終えた彼女は、咄嗟の出来事であった為に取るべき防御手段を間違えた事に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるのだった。
――いや、正確には間違ってはいなかった。
本体の体力回復用に用いている『代替身体』でなければ、先程の無詠唱で放たれた敵の『魔法』を考慮して取るべき対策としての『絶対防御』は、何も間違いではなかったのである。
しかしそれはあくまで本来の身体であればの話であり『ヴェルトマー』としての彼女であれば、ここは魔力障壁と結界を織り交ぜて少しの被弾を許してでも、軽減という選択肢を取る事が最善の行動であった。
それ程までに『絶対防御』の魔力消費は『最上位魔族』程度の魔族の魔力では賄いきれないモノなのである。
「今のうちです! 一気に魔族達を嗾けなさい!」
その言葉と同時に『ゴルガー』が号令を出した。
次の瞬間には、この場に居る『ラルグ』魔国の魔族達が一斉に『ヴェルトマー』に向けて襲い掛かっていった。
「よし……! あの化け物が魔族達に意識を向けたのを確認したら、一斉に全魔力を用いて我々全員で攻撃をします。そしてその後はもう振り返らずに全力でラルグ魔国へ戻りますよ!」
多くの戦力値300万以上の魔族達が一斉にヴェルトマーに向かうのを確認した後、ゴルガーとネスツは同時に頷いた。
流石にヴェルトマーも今の身体の魔力で、この人数を相手にするのは厳しいと判断するのだった。
「くそっ! 仕方ないか」
最悪ヴェルトマーは本来の身体を一時的に使って、この局面を一瞬でひっくり返そうと考えるのであった。
そうなれば再び魔力の回復は数百年は伸びる事になるだろうが、ここでレイズ魔国を奴らに滅ぼされて、シスを失う事を考えるくらいであれば、自分の身体の復活など後回しにしても構わない。
断固たる決意を以て『大魔王ユファ』は、その選択を選ぼうとした。
――しかし、その瞬間であった。
「さぁ、今です! 出し惜しみなく一気に放ちなさい!」
――レルバノンの号令がかかったその瞬間。
「させませんよ!」
ヴェルトマーに襲い掛かっていった魔族達が、膨大な魔力の渦に巻き込まれて吹き飛んでいく。
その場に居る全ての者達が、凛とした女王の声の方を振り向くとそこには『レイズ』魔国の『セレス』女王と『リーゼ』達の魔法部隊に『ラティオ』が率いる近接近衛部隊。
――更には決死の覚悟の表情を見せて、ぎゅっと杖を握った『シス』が居た。
「お前たち! ヴェルトマーを援護しろぉっ!」
リーゼ・フィクスの号令に『レイズ』魔国の全魔法部隊が一斉に詠唱を始めるのであった。
「もう……。私一人でいいと言ったのにねぇ……!」
内心嬉しい気持ちを隠しつつも『ヴェルトマー』はそう呟く。
レルバノンは『レイズ』魔国の脅威と呼べる『魔法部隊』の一斉に詠唱を聞いた事で、この数秒先に起こる事を考えて直ぐ様号令を出す。
「もう攻撃をしても間に合いません! 今の内に転移魔法を使いなさい!」
「……くっ! わ、分かりました!」
レルバノンの言葉にゴルガーとネスツは『高等移動呪文』でラルグ魔国へと引き返していく。
それを見届けた後に『レルバノン』も転移魔法を使おうとするが、それを見たヴェルトマーは残された『魔力』を注いでレルバノンに向けて高速で炎の矢を放った。
シスに教えた魔法『炎の連矢』であった。
「く……っ!」
レルバノンに『ヴェルトマー』の炎の矢が当たり、彼の身に熱を持った痛みが走る。
中位魔法とはいっても放ったのは『ヴェルトマー』である。
――その威力は、おして然り。
何とかレルバノンは転移魔法を発動に成功して、傷を負いながらも命からがら撤退をする事に成功する。
そして次の瞬間に『レイズ』の全ての『魔法部隊』の詠唱が終わり、魔法陣が次々と空中を覆い尽くすように展開されていく。
第一陣、第二陣、第三陣と『リーゼ』の巧みな号令に従いながら『魔法部隊』が数秒ごとに順番に魔法を発動させる事で、極大魔法の爆撃が折り重なるように連続して直撃していく。
鳴り止まない爆音と連続魔法によって『ラルグ』の魔族達は慌てて逃亡を図ろうとするが、そこへ『セレス』女王と『リーゼ・フィクス』が更なる極大魔法を展開。
――最上位魔族の極大魔法は、敗走するラルグ魔国兵をこの場から脱出させる事を認めない。
そして遂に『レイズ』魔法部隊全軍の魔法によって、攻めてきた『ラルグ』魔国軍全滅に成功するのであった。
「私が獲物を逃がすなんてね『鮮血のレルバノン』か、やるじゃない」
『ラルグ』魔国軍を押し返す事に成功して喜ぶ『レイズ』魔法部隊の面々たちを尻目に、ヴェルトマーは『レルバノン』の存在を頭に記憶させたのだった。
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