最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
第145話 ヴェルトマーとの出会い
――遡る頃、およそ三千年前。
当時から勢力を伸ばしていた『ラルグ』魔国と、対を為す大国として『レイズ』魔国は存在していた。
その頃のレイズ魔国の魔法部隊は、今ほど強力なものではなく『レイズ』魔国の近接部隊を前衛に、背後から魔法部隊が援護するといった現体制とは程遠い軍の体制であった。
魔法部隊よりも近接部隊の方が発言力があった程で、ラルグ魔国の侵攻を防ぐ為に毎日軍議が開かれていた。
その頃の『シス』はまだ200歳を過ぎたかという程の若い『魔族』だった。
魔族の200歳と言えばまだまだ若輩者で、人間でいうところの10代に差し掛かるかといった年齢である。
その頃のシスはまだ『レイズ』魔国の王女であった。
当時の女王で彼女の母親の『セレス』女王が『レイズ』魔国を治めていた。
「ラルグ魔国がうちの国境付近まで勢力を伸ばしつつあります。このままいけば我が国の勢力圏に入るのは、時間の問題かと思われます」
当時の魔法部隊長『リーゼ・フィクス』』が、今の差し迫っている状況を告げると、近衛部隊長『ラティオ・ビデス』が返事をする。
「『レルバノン・フィクス』か……。こいつを何とかしなければ『レイズ』魔国は終わりだぞ」
「ラティオの剣技でも抑えられず、私の『魔法』も難なく躱しながら突っ込んでくるあの死神を、一体どうすれば追い返せるのか……」
連日軍議は行われていたが最後には必ず『レルバノン』という『ラルグ』魔国の死神の話題になって部屋は沈黙に包まれる。
これが最近の軍議の流れになりつつあった。
既にこの頃には『レルバノン・フィクス』は、鮮血のレルバノンと呼ばれており、彼の武器の大鎌を巧みに操り近隣諸国を彼と、彼の持つ部隊だけで次々と攻め落としていった。
今のレルバノンとは似ても似つかぬ性格で、血気盛んで売られた喧嘩は必ず買うといった脳筋な戦士だった。
しかしその脳筋な男を罠をはめようとしても、持ち前の力で突破してしまうので『レイズ』魔国側としては、八方塞がりに陥るのである。
そして今日もまた軍議は解決の糸口さえ見つけられぬままに、時間だけが無駄に過ぎて終わってしまうのだった。
『セレス』女王の横で軍議に参加していたシス王女は、幼いながらに国の問題を自分の事のように考えていた。
普段より考え込んでいたからだろうか、シス王女は軍議が終わった後に散歩に出かけていたが、気づかぬ内に、首都シティアスの街まで歩いてきてしまっていたらしい。
「いけない! 戻らないとお母様に怒られちゃう!」
しかしシスがその場で踵を返して戻ろうとした時に、首都のシティアスの方から喧騒が聞こえてくるのであった。
戻らなければと思いながらも、シスはついつい喧騒が気になり中心へと近づいてしまうのであった。
物陰からシスは顔だけを出して様子を眺めてみると、どうやら酒に酔っぱらってる二人組の男が、若い女性に絡んでいるようだった。
「いいからちょっと付き合えよ! そんな恰好して誘ってたんだろ?」
そう言われている女性の恰好は確かに普通の恰好ではなかった。
大人びた黒く長い髪に、レースのスカートが特徴的なワンピースドレスに身を包んでいた。
しかし問題なのはその透けているスカートの至る所が破けていて、きわどく下着なども見え隠れしている為に、酔っぱらいの悪漢達が劣情を抱くのも仕方がない恰好とも言える状態であった。
「……るっさいなぁ! 私は今イライラしてるのよ。それ以上絡んでくるなら、容赦しないわよ!」
凜とした美人がそう言うと酔っぱらった男達は、尚の事下卑た笑みを浮かべて、女を抱き寄せようと一歩近寄る。
「や、やめなさい!」
見るに見兼ねたシスが、物陰から大急ぎで走っていきながら喧騒の中心に割って入って大声を出した。
「……え?」
絡まれていた女性が酔っ払い達を蹴り飛ばそうとしていたところへ、いきなりシスが割り込んできた為に、女性は慌ててその足を止めるのだった。
「なんだぁ、てめぇ?」
「てめぇも一緒に遊んで欲しいのか?」
どうやら男達は酷く酔っぱらっているようで、シスの事をこの国の王女だという事に気づいて居らず、そのまま彼女にも手を出そうと伸ばして来るのであった。
シスは慌てて『魔法』を唱える。
彼女の詠唱はたどたどしいが『魔法』を唱えた瞬間に、絡まれていた女性が目を見開いてシスに視線を奪われていた。
そして小さな火球が、男たちに向かって飛んでいく。
「アッチチッ!」
男が火を払うとそのままあっさりと消える。どうやら『魔法』の威力自体は、大したことがないようであった。
「てめぇ、服に穴があいちまったじゃねーか!」
男がシスの胸倉を掴み上げようと手を出した。
「ひっ!」
シスは両手で頭を押さえて、恐怖に怯えるように必死に目を瞑る。
「ふふ、お嬢さんありがとうね?」
しかしその瞬間、今度は絡まれていた女性が男達に『魔法』を発動させる。
「アンタ達は少しばかり、痛い目にあったほうがいいわね!」
女性が指を鳴らすと強風が吹き荒れて、そのまま酔っ払い二人は東の空へと飛ばされていった。
シスは目を丸くしてとんでもない『魔法』を見せた女性に驚く。
その視線に気づいた女性が、シスに柔らかく微笑みかける。
――これがこの二人の物語の序開。後に『レイズ』魔国の女王とフィクスとなる二人の出会いであった。
当時から勢力を伸ばしていた『ラルグ』魔国と、対を為す大国として『レイズ』魔国は存在していた。
その頃のレイズ魔国の魔法部隊は、今ほど強力なものではなく『レイズ』魔国の近接部隊を前衛に、背後から魔法部隊が援護するといった現体制とは程遠い軍の体制であった。
魔法部隊よりも近接部隊の方が発言力があった程で、ラルグ魔国の侵攻を防ぐ為に毎日軍議が開かれていた。
その頃の『シス』はまだ200歳を過ぎたかという程の若い『魔族』だった。
魔族の200歳と言えばまだまだ若輩者で、人間でいうところの10代に差し掛かるかといった年齢である。
その頃のシスはまだ『レイズ』魔国の王女であった。
当時の女王で彼女の母親の『セレス』女王が『レイズ』魔国を治めていた。
「ラルグ魔国がうちの国境付近まで勢力を伸ばしつつあります。このままいけば我が国の勢力圏に入るのは、時間の問題かと思われます」
当時の魔法部隊長『リーゼ・フィクス』』が、今の差し迫っている状況を告げると、近衛部隊長『ラティオ・ビデス』が返事をする。
「『レルバノン・フィクス』か……。こいつを何とかしなければ『レイズ』魔国は終わりだぞ」
「ラティオの剣技でも抑えられず、私の『魔法』も難なく躱しながら突っ込んでくるあの死神を、一体どうすれば追い返せるのか……」
連日軍議は行われていたが最後には必ず『レルバノン』という『ラルグ』魔国の死神の話題になって部屋は沈黙に包まれる。
これが最近の軍議の流れになりつつあった。
既にこの頃には『レルバノン・フィクス』は、鮮血のレルバノンと呼ばれており、彼の武器の大鎌を巧みに操り近隣諸国を彼と、彼の持つ部隊だけで次々と攻め落としていった。
今のレルバノンとは似ても似つかぬ性格で、血気盛んで売られた喧嘩は必ず買うといった脳筋な戦士だった。
しかしその脳筋な男を罠をはめようとしても、持ち前の力で突破してしまうので『レイズ』魔国側としては、八方塞がりに陥るのである。
そして今日もまた軍議は解決の糸口さえ見つけられぬままに、時間だけが無駄に過ぎて終わってしまうのだった。
『セレス』女王の横で軍議に参加していたシス王女は、幼いながらに国の問題を自分の事のように考えていた。
普段より考え込んでいたからだろうか、シス王女は軍議が終わった後に散歩に出かけていたが、気づかぬ内に、首都シティアスの街まで歩いてきてしまっていたらしい。
「いけない! 戻らないとお母様に怒られちゃう!」
しかしシスがその場で踵を返して戻ろうとした時に、首都のシティアスの方から喧騒が聞こえてくるのであった。
戻らなければと思いながらも、シスはついつい喧騒が気になり中心へと近づいてしまうのであった。
物陰からシスは顔だけを出して様子を眺めてみると、どうやら酒に酔っぱらってる二人組の男が、若い女性に絡んでいるようだった。
「いいからちょっと付き合えよ! そんな恰好して誘ってたんだろ?」
そう言われている女性の恰好は確かに普通の恰好ではなかった。
大人びた黒く長い髪に、レースのスカートが特徴的なワンピースドレスに身を包んでいた。
しかし問題なのはその透けているスカートの至る所が破けていて、きわどく下着なども見え隠れしている為に、酔っぱらいの悪漢達が劣情を抱くのも仕方がない恰好とも言える状態であった。
「……るっさいなぁ! 私は今イライラしてるのよ。それ以上絡んでくるなら、容赦しないわよ!」
凜とした美人がそう言うと酔っぱらった男達は、尚の事下卑た笑みを浮かべて、女を抱き寄せようと一歩近寄る。
「や、やめなさい!」
見るに見兼ねたシスが、物陰から大急ぎで走っていきながら喧騒の中心に割って入って大声を出した。
「……え?」
絡まれていた女性が酔っ払い達を蹴り飛ばそうとしていたところへ、いきなりシスが割り込んできた為に、女性は慌ててその足を止めるのだった。
「なんだぁ、てめぇ?」
「てめぇも一緒に遊んで欲しいのか?」
どうやら男達は酷く酔っぱらっているようで、シスの事をこの国の王女だという事に気づいて居らず、そのまま彼女にも手を出そうと伸ばして来るのであった。
シスは慌てて『魔法』を唱える。
彼女の詠唱はたどたどしいが『魔法』を唱えた瞬間に、絡まれていた女性が目を見開いてシスに視線を奪われていた。
そして小さな火球が、男たちに向かって飛んでいく。
「アッチチッ!」
男が火を払うとそのままあっさりと消える。どうやら『魔法』の威力自体は、大したことがないようであった。
「てめぇ、服に穴があいちまったじゃねーか!」
男がシスの胸倉を掴み上げようと手を出した。
「ひっ!」
シスは両手で頭を押さえて、恐怖に怯えるように必死に目を瞑る。
「ふふ、お嬢さんありがとうね?」
しかしその瞬間、今度は絡まれていた女性が男達に『魔法』を発動させる。
「アンタ達は少しばかり、痛い目にあったほうがいいわね!」
女性が指を鳴らすと強風が吹き荒れて、そのまま酔っ払い二人は東の空へと飛ばされていった。
シスは目を丸くしてとんでもない『魔法』を見せた女性に驚く。
その視線に気づいた女性が、シスに柔らかく微笑みかける。
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