最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第140話 数より質

 ラルグ魔国軍はネスツ魔軍司令の念話テレパシーによって襲撃が開始された。

 やはり狙われたのは一番数が多く居る『ケビン』王国の前の兵士達だった。

「ヒィィッ! き、来たぞぉ!」

 既に前回の魔族の襲撃で戦意を粉々に打ち砕かれている王国兵達は、数千を越える数の魔族が近寄ってきた事で逃げ惑い始めた。

 しかし前回と違うところは、ソフィ達の配下が居る事であった。

「グオオオッッ!!!」

 ベアが咆哮をあげると王国兵に迫っていた魔族達が一斉に動けなくなる。

 動きを止めた『魔族』達など、モノの数の内には入らない。

 ベアの咆哮で硬直している魔族の元に、空の支配者『デス・バード』が襲い掛かる。

 次から次に空を飛んでいる魔族を地面に叩き落としていき、更に地上には自在に地形に穴をあける『クラウザー・ワーム』が多数存在しており、落ちてきた魔族をそのまた更に穴へと突き落とす。

 そしてそうなれば死の猟犬『ハウンド・ドッグ』が襲い掛かる。

「ゴアアアッ!!」

 魔族の足を、手を、喉を、臓物をあっさりと喰いちぎっていく。

 彼らは五体の『ロード』には及ばないが、その五体の『ロード』によって『名付けネームド』されている為に間接的にソフィの力を得ているといえる。

 つまり野良の『ハウンド・ドッグ』とは桁違いの戦力値である。

 王国に派遣されているソフィの配下は、155体の混合部隊だけだが、戦力値に差がありすぎる為に、ソフィの配下一体に魔族数十体が屠られていく。

 王国側を襲ってきた数千の魔族に対して、ソフィの配下は十分の一にも満たない数だったが、形勢はあっさりと『ベア』達に傾いていくのであった。

 ……
 ……
 ……

 その様子を空から見ていたラルグ魔国軍の幹部『ナゲイツ』は、驚愕の目を浮かべながらソフィの配下達を見ていた。

「た、ただの魔物達ではないぞ! 何だあの魔物達の強さは……」

 やがて『ナゲイツ』は視線を更にその背後の者達に移す。

 先程の咆哮で数百の『ラルグ』の魔族達の動きを止めた魔物『ベア』であった。

「『漏出サーチ』」。

 【種族:アウルベア 名前:ベア(名付けネームド) 戦力値:測定不能】。

「ば、馬鹿な! そ、測定不能……っ!?」

 『ナゲイツ・ディルグ』が驚くのも無理はない。

 ベアは『真なる魔王』階級クラスの魔物と化している為に『最上位魔族』以下の存在の魔力では、最早ベアの戦力値を推し量れる筈もない。

 そして驚いている彼の背後から『ロード』の一体『デス』が忍び寄ってきて、翼で叩き落とされた。

「ぐっ……!」

 咄嗟に空中で受け身の動作に入る『ナゲイツ』の行動は流石だったが、攻撃を仕掛けてきた奴を確認するために、空を見上げようとしてしまった。

 ――その瞬間、彼の首は力任せに殴られて、そのまま胴体から首が刎ね飛ばされた。

 首を飛ばしたのは五体いる『ロード』の内の一体『サーベル』だった。

 『ロード』へと進化した彼らもまた、彼らラルグ魔国の魔族達にとっては信じ難い事に『最上位魔族』階級クラスと同格程の魔物であった。

 ――彼らは直接ソフィから名前を頂戴した者達である。

 ヴェルマー大陸では大国を相手にその力を示した強者だったが、あっさりと命の灯は消えてしまった。

 戦力値という枠組みでは『最上位魔族』下位のナゲイツでは、魔族で表せば『最上位魔族』最上位階級クラスの『ロード』である『デス』や『サーベル』達の足元にも及ばない。

「お、おいおいおい!!」

 一部始終を見ていた『ニーティ・トールス』は、自分の目が信じられなかった。

 ニーティは死を間近に感じた事でようやく『ミールガルド』大陸に来た事を後悔する。

「お、俺達は天下のラルグ魔国軍だぞ!? 魔王シーマ様の配下にして、大幹部ニーティ様だああああ!」

 ニーティの槍が紅いオーラに包まれて、その目も紅くなる。

 魔族達の魔瞳まどう紅い目スカーレット・アイ』であった。

 そして恐怖心を打ち消そうと『ベア』に向かって超速度で一直線に槍を突き入れる。

 だが、紅いオーラに包まれた槍は『ベア』の体に当たる前に、あっさりと淡いオーラに阻まれてあっさりと折れた。

 『真なる魔王』に到達しかけている『魔王』階級クラスのベアに、たかが『』の槍が刺さる筈もなく、ベアはそのまま驚愕の目で壊れた槍を見ている『ニーティ』の首を掴みそのまま強引にへし折るのであった。

 ……
 ……
 ……

 圧倒的なソフィの配下達の力に、王国にいる全ての者達。

 兵士から貴族、王族に至るまで何が起きているのか分からぬままに、ただ見ている事だけしか出来なかった。

 そして今も王国ではソフィの配下達の蹂躙が続いている。

 たとえ一体でも逃してなるかとソフィの配下達は手を緩めることなく逃げる『ラルグ』の魔族達を追いかけまわしては殺し尽くしていく。

 ――彼らは『大魔王』ソフィの配下なのだ。

 『大魔王』ソフィと敵対した相手を一匹たりとも生かして帰す事は許さない。

 『大魔王』ソフィという存在に敵対する事の愚かさを知らしめる為に、この場にいるソフィの配下は徒の一体も手を抜くことはなく、魔族敵対者』を殺し尽くす。

 それは味方である筈の王国に向けても、と、分からせようとしているようだった。

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