最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第139話 集結するラルグ魔国軍

 遂に『ミールガルド』大陸に『ラルグ』魔国の先遣隊が到着する。

 ――その数は凡そ3000体。

 ラルグ魔国全軍の今後の行動説明すると先遣隊には、一切の攻撃を許可をせずに相手の魔力感知等の範囲を探らせる。

 ミールガルド大陸側の行動を見定めた後、ラルグ第一軍、第二軍混合部隊を出してミールガルド大陸を攻めさせる。

 まだこの段階では幹部クラス以上の者は、動かさずに一定時間を待つ。

 この大陸はとても広いが幹部クラス以上が一気に動けば壊滅までそんなに時間はかからないだろう。

 相手側が取るに足らない存在と分かれば『ラルグ』魔国全軍による『殲滅行動作戦』を開始する。

 シーマ達は『ミールガルド』大陸の西側に、先遣隊を移動させて行動を開始するのであった。

「よいか? 一定時間まで動かずに相手の出方を待てよ」

 ネスツ魔軍司令の『念話テレパシー』に先遣隊が頷く。

「ああ……、早くこの槍で貫きたいぜ!」

 ラルグ軍の一番槍である、『ニーティ・トールス』が呟く。

「クク、ではニーティ様も我々第一軍と一緒に行動されますか?」

 その呟きを聞いていた『ナゲイツ・ディルグ』、第一軍特務曹長が『ニーティ』に話し掛ける。

「クハハハ、そうだな! 手前たちと動くのもいいだろう」

 『ネスツ・ビデス』は、二体の幹部の言葉を聞いていたが、やがて小さく溜息を吐くのだった。

 そしてそうこうしている内に、先遣隊が到着してから数刻が過ぎようとしていた。

 ……
 ……
 ……

(こちらに攻撃してくる気配は無しか、いや測れるほどの力がないのか?)

 ネスツはここが人間の住む大陸だという事を思い出してそう結論を出す。

(よし……! ラルグ第一軍・第二軍混合部隊よ、行動を開始しろ)

 ネスツの『念話テレパシー』に、待機していた者達が準備を始める。

「クハハハ、よし俺も動くぞ!」

 そして『ニーティ』『ナゲイツ』の両幹部は、ラルグ混合部隊と共に『ミールガルド』大陸に向かって飛んでいった。

 ――これより『ラルグ』魔国軍の襲撃が始まる。

 ……
 ……
 ……

 既にラルグ魔国軍が『ミールガルド』大陸に到着している事をソフィ達は感じ取っていた。

「ソフィ君、どうやらラルグ軍が来たようです」

 屋敷にいるレルバノンがソフィに声をかける。

「やはり、部隊を分けておるようだな。戦力値250万から300万までの兵が3000体。その背後20里程の場所に500万から700万程度の者が5000体程隠れている。そこから15から20里程離れた西の空に、戦力値4000万弱の者と2500万程の者がおるようだ」

 レルバノンは愕然とした顔でソフィを見る。

 レルバノンも『最上位魔族』として広範囲の魔力探知は出来る方ではあるのだが、ソフィの魔力探知の規模は桁が違いすぎる。

 距離、人数、戦力値の把握。どれをとってもレルバノンとは比にはならなかった。

 『魔王』に到達している者と、到達していない者の明確な差であった。

(流石です……。この方が敵ではなくて本当に良かった……!)

「どうやら一番近くにいる部隊は、こちらの機を伺っておるようだな。こちらが何か行動を起こすのを待っているようだ」

「王国側はまだ気づいていないようですが、どうされますか?」

 レルバノンとしては今の内にこちらから仕掛けて、注意を引き付けたほうが良いのではないかと考える。

「うーむ。こちらから仕掛けさせるのが、敵の狙いかもしれぬし少し待ってみようか。王国には『ベア』や『サーベル』達が居るし遊撃部隊もおる。慌てる必要はないであろう」

 ソフィの言葉に『レルバノン』は神妙に頷いた。

「だが数で負けている以上、あまり後手後手に周るのはどうかとおもうぞ」

 トウジン魔国出身のシチョウは、全体の局面を見極める卓越した『目』を持っている。余りに数に差がある現在では、仕掛けられると不利になると感じていた。

 ソフィはクックックと笑いながら、シチョウを見る。

「よいかシチョウよ。確かに我やお主たちだけしか居らぬのであれば、話が変わるが今は状況が違う」

「お前の配下の事を言っているのか? 確かに数百体数は戦力が増えたが、それでも数十倍以上の数の差があるんだぞ?」

 シチョウの言う通りに数で言えば、ソフィ達の軍勢では数の差は歴然であった。

「クックック、まあ始まれば分かる」

 ソフィは自信満々に笑うが、シチョウにはまだ理解が出来なかった。

 そしてそれは横で見ているレルバノンもである。

(私にもソフィ君の言っている事の意味が分からないが、何故か安心している私がいる。この数の差をどう覆すというのだろうか)

 レルバノンが眉をひそめて、思考の海に流れていった。

 ソフィだけが全てを理解した上で不敵に笑うのであった。

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