最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

第55話 護衛依頼

 ギルドでランク指定のないクエストを受けたソフィ達は、依頼人と合流する為に『グラン』の町の入り口で依頼人を待つ。

 今回のクエストでは報酬とは別に、ギルドから1500Pが付与されるので、ソフィは一気にCランクに上がるチャンスが得られる事が出来て、ギルドに所属して直ぐのラルフに至っては今回のクエストをクリアするだけでFランクになれるのだった。

「うむ、やはり美味しいクエストだったな」

 ギルド職員に詳しくポイントの説明をしてもらったソフィは機嫌が良かった。

 リーネもこの面子で受ける以上は命の心配等は全くしていないが、出来る事ならばソフィと二人でパーティを組みたいという気持ちがあった。

 ラルフにソフィと親しい関係に見えると言われた事で気をよくしたリーネは、ラルフもパーティに誘ったが、後々考えるとていよく乗せられたのだと気づいて悔しそうに横目でラルフを睨んだが、そんなリーネにニコニコと笑顔で返された。

(今度は絶対乗せられないわよ!)

 何も気づいていないソフィを横目にそう決意をするリーネであった。

 そしてそんな三人の前に、どうやら依頼人らしき男が声を掛けて来るのだった。

「失礼ですが貴方達は、私の依頼をギルドで受けてくださった方々でしょうか?」

 依頼人は『ラルフ』に向かって話しかける。

 どうやらこのパーティのを『』と思った様子であった。

「ええ、そうです。貴方が『ステンシア』の町までの護衛を希望された依頼人の方ですか?」

 依頼人を安心させるような微笑みを浮かべてラルフは問いかける。

「は、はい、そうです。今日はどうか宜しくお願いします」

 ……
 ……
 ……

 『グラン』の森の方向と反対側の入り口から町をから出て、凡そ一時間程の整備されている綺麗な道を歩いていく。

 するとその先に大きな川があり、そこで一向は立ち止まる。

 どうやらこの先に見える橋が『ステンシア』と『グラン』を結ぶ橋のようで、ここが問題の盗賊が出現するという場所のようである。

 ソフィ達はここに来るまでの道中で依頼人と色々と話をしたのだが、どうやらこの依頼人は薬草等の商品を扱っている行商人でどうしても急ぎで『ステンシア』で商売をしなければならないらしく、この橋付近に出るという盗賊の所為で、仕方なく相場より遥かに高い護衛料を捻出してギルドに依頼を出したらしい。

 ――依頼人の名は『ミナト』。

 二十代半ばといった青年で行商を始めてから既に三年が経っていて、それなりに経験豊富で駆け出しとは違って、独自の荷馬車も有するそこそこの行商人であった。

 この世界では行商人は馬車便を利用してあらゆる町を移動するのが一般的なので、個人の荷馬車を持っている行商人は、それなりに裕福な商人なのだそうだ。

「それでミナトとやら、先程言っていた薬草とは『ステンシア』でなければ売り上げが見込めないのだろうか?」

 ソフィがミナトに訊ねると少し躊躇う様子を見せたが、直ぐに口を開いて話を始めた。

「ええ……。最近『ステンシア』の町ではこの商品が流行っていましてね」

 そう言ってソフィに一束の草を見せてきた。

「む? 我にはただの『薬草』にしか見えぬが他のモノとは違うのか?」

 冒険者が怪我をした時に使う、軽度の傷を治して痛みを引かせる事を目的としたような、そんな一般的な薬草に見えた。

「実はこれはをもたらす、新種の薬草なんです」

 ステンシアという町はサシスの町までとは言わないが、グランの町よりもずっと大きな町であり、怪我の痛みに悩ませる冒険者も多く、こぞってこの『薬草』を求める者が多いらしい。

 ソフィはそれでも『薬草』がそこまで大きな商いになるのかと疑問に思ったが、どうやら荷馬車に積んでいる多くの積荷がこの『薬草』であった為に、どうやら一般の者達には分からなくても商人達の間では儲けられると考えているようだった。

「なるほど、世の中何が商売の道具になるか分からないものだな」

 ソフィがそう言うと、ミナトも同意だとばかりに頷いた。

「我々のような行商人は、流行りに敏感でなければ生きていけませんから」

 ミナトはそう言うと『本当に大変なんですよ』と苦笑いを浮かべていた。

 一行がそんな商売話で盛り上がりながら橋を渡り終えて少し経った頃に『微笑』が何かを察知したかのように立ち止まり辺りを見回し始めた。

「ソフィ様、どうやら盗賊が本当にいるようです」

 ラルフが断言をするようにそう口にすると、商売の話をしていたミナトの顔が急に強張り始めるのだった。

「む、どうやらおでましか?」

「あそこ見てソフィ!」

 リーネがそう言って指を差す方向には茂みがあったが、その声に反応したのか続々とガラの悪そうな男達が武器を片手に姿を見せ始めるのだった。

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