異世界最弱うんこ

ノベルバユーザー570056

さよおなら、全て流そう

生きていく上で何かを失わずに得ることはほとんどの場合無い。私は最後まで楽して生きようとした。そのツケが「死」だ。
私は自傷気味にそう呟き、23歳の春、命というものを捨てた。


<序章>
----将来の夢ってなんだろうか。大学3年当時21歳の冬、残り数ヶ月で就職活動が始まろうとしている時期にふと私は考えてしまった。
私が本当になりたいものってなんだろうかと。
過去を遡って考えても、保育園の頃には当時好きな子と結婚すること。
小学生の頃には、その時から始めたサッカーをやっていたことからサッカー選手。
中学でもその流れでサッカー選手になりたいと安直にそう考えていた。本気でサッカー選手になれる、なろうとは思っていなかったが、地獄のような練習も何とかこなし、地区大会では優勝し、都大会出場もすることができたから、それなりには頑張ったと思う。
一転し高校からは部活も辞め、いわゆる帰宅部というやつに所属し特に何も考えずただひたすらに時間を浪費していた。
この時から私は少しずつ堕落した生活をし始めたのだろうと今振り返って気付く。
人間先の未来を予測しながら生活していくのは難しく、多くの人間は今を大切にと言いつつ特に真剣に考えずに時間を過ごし、何かを失った時に初めて過去の自分のあり方を後悔する哀れな生き物である。
そうして今まさに私は過去の自分に失望し、未来像が見えなくなっているのである。
これまで「なんとかなる」をモットーとして生きてきた。それはこれまで中学、高校、大学への進学も何となくこなしてきたというほんの小さな裏付けからなるもので、今回の就職活動についても時が来ればなんとかなるだろうと浅はかな考えで、インターンにも参加せず、バイトや趣味、時々何がきっかけで知り合ったのかも記憶に残っていない女を抱くくらいに、一日一日をただ何も考えず過ごした。
ただそんな夜に、「自分は何をやっているのだろう。したいことが無いのに何故生きているのだろう。」と考えることが日に日に増えていった。
それは次第に私自身の命というものを軽く見るようになっていき、深夜に街灯のない道の真ん中をぼーっと歩いたり、近所の廃ビルに足を踏み入れ、何をするでもなくただ近くを走る車の走行音に耳を傾けたり、飲酒運転や不眠症を偽り処方してもらった向精神薬や睡眠薬を過剰に摂取し、緊急搬送されたこともあった。
それでも目覚めて思うことは、「自分はまだ生きてしまっている」「また死ぬことは出来なかった」そう考えると、ストレスで荒れた胃が痛んだ

「死んだら負けだ」「死は最悪の選択だ」と綺麗言の常套句を用いる人間は、多くの場合、自分の生活が充実している無責任な第三者が自分の株を上げようとして語っているに過ぎない。
その人間が、過去に私なんかよりも苦労し、挫折し、努力してきた過程を用いて同情しようとしてきても、それはその人間がこの過程の中で成功したごく僅かな成功体験なのである。大抵の場合は良くて現状維持に留まるものだと考えてしまう。
自殺志願者を初めとして、不登校の学生に対して、生きていれば必ずいい事があると根拠もない希望的観測で生の苦痛から解放させず、留めさせ、その者の命を救った自己満足で自己陶酔し、現世に拘束した者の事などもう眼中にもない。
人生は矛盾で理不尽なことだらけである。
同情してほしいのではない、今の状況を作ったのは紛れもなく私自身である。
私が悪いのは当然ながら自覚している。
それでも私は今を生きて生きたいと思えない。そんな私の理不尽を最後に少しだけでもいいから理解してくれたら有難い。



私は今廃ビルの窓枠にロープを括りつけた前に立っている。
生きていく上で何かを失わずに得ることはほとんどの場合無い。私は最後まで楽して生きようとした。そのツケが「死」だ。
私は自傷気味にそう呟き、命というものを捨てた。











目が覚めると私は異世界勇者の最弱お供ウンコになっていた。

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