野球少女は天才と呼ばれた

柚沙

第4話 遂に甲子園へ!



女子野球の全国大会は7月の中旬から7月の下旬まで甲子園で試合を行うことになっている。


男子の場合は9回まで試合があるため、1日4試合だが女子は7回までなので1日5試合を行うことになっている。

そのため大会期間もかなり短い期間で設定されている。


女子野球の大きな特徴としてチームによって、ユニホームが全然バラバラというのが特徴であり、ショートパンツスタイルもあれば、ショートパンツにスカートがついたユニホームみたいなのもある。


逆に普通の男子と同じユニホームのチームもあり、帽子もサンバイザーみたいなのもあれば麦わら帽子みたいな変わった帽子のチームもある。



女子野球は真剣勝負の中にも女の子の可愛さや可憐さをというイメージを定着させたいのか、リストバンドや小物の着用も許可されており、スパイクシューズもチームカラーの主な色プラスでラインの色が自由などもある。



城西高校のユニホームは一般的なタイプのユニホームだったが、光は帽子の後ろにポニーテールにするための穴があることにとても喜んでいた。



「りゅー、全国大会行ってくるからね!家でおねーちゃんの活躍をテレビで見てるんだぞ!」


頭をポンポンと叩かれて、そのまま家を飛び出すように出ていってしまった。

光は弟の言葉も両親の言葉も聞かずに、勝手にどこかに行ったりするのはこれから先もあんまり変わらないのであった。



全国大会1回戦の相手は北海道の2年連続で夏の全国大会に出てる高校との試合になった。


男女問わず皆の憧れの甲子園での試合だが、いつも見なれた光景と違うところは女子用のラッキーゾーンが設置されているところだ。

両翼86m、センター105mとしておりその球場を10m前後にすることでホームランも出るような作りになっていた。

フェンスを10m前後にしたことでホームランが出るようになったというよりは、バットの性能が格段に上がったことが要因となっている。


今女子用で使われているバットは最初は男子の方で使われたのだが、打球スピードや飛距離が従来のバットよりも高性能すぎた為、ピッチャーライナーなどの元々危険のあるプレーが無視できないレベルまで来てしまい、すぐに男子で使用することを禁止された。


そこで女子野球の人気の急上昇で、長打が出ずらくスモールベースボールが主流だった女子野球に、このバットを使用することでホームランやフェンス直撃の当たりが目に見えて増えるようになり、長打を狙う強力打線を目指すチームも増えてきた。


長打力が改善されることによって、従来のスモールベースボールから幅が増えてきて、今度は投低打高が顕著になって来てしまった。


投手は工夫して変化球やストレートを投げてはいるけど、ある程度詰まらせても簡単に外野まで飛ばせるバットのせいで打たせて取るピッチングがかなり難しくなっていった。


そこで次に導入されたのが、従来の硬式球141.7g〜148.8gの重さから10g重さを落したやや低反発の硬式球だった。



1番の変化はボールの皮が手にフィットしやすくなったおかげで、握力の弱い女性でもボールの縫い目が指にかかりやすくなったことだ。それにより投手のストレートの平均スピードが上がり、変化球のコントロールなどがしやすくなった事で四死球の大幅低下に成功した。



光は福岡県予選では余裕のピッチングでここまで来たと思われているが、もしかして違う可能性もあるんじゃないかと光の周りの選手達は言っていた。


男子の硬式球でMAX138キロ投げれる光が、女子の硬式球でここまでMAX137キロなのはおかしいのではないか?


変化球も格段と曲がるだろうし、コントロールだってしやすいはずだが、これまでのボールと違うためにもしかしたらいつものような変化球やストレートが投げれないんじゃないかという可能性。



光の弟の龍も両親も出来れば毎試合甲子園に行って試合観戦したかったが、そういう訳にもいかず1回戦は家のテレビで観戦すると連絡が来ていた。



「いよいよ夏の女子甲子園1回戦第1試合が開始されます。実況は田中幸奈たなかゆきなです。」



女子の甲子園大会は実況、解説共にどちらも女性でまさに女の子の為の甲子園という感じになっている。



「先行の福岡県代表の城西高校は創立1年目で甲子園出場となります。前評判ではエースで四番の東奈光さんのワンマンチームと評されています。解説の高宮さんは城西高校はどのような高校だと思われますか?」



「解説の高宮詩乃たかみやしのです。東奈さんはこの全国大会に出てる選手でもずば抜けた才能の選手だと思います。」



無名の福岡の高校から突如として甲子園へ殴り込んで来た天才というのが光の総評みたいだ。



「ですが、北海道代表の札幌第一高校は北海道でも強豪で、物凄い選手がいる訳では無いですが走攻守バランスがよく弱点が見当たらないチームとなってますので、東奈さんがどれだけ最小失点に抑えられるかが鍵となると思われます。」


解説の高宮さんは現役の女子プロ野球選手だ。
実況の田中さんも女子甲子園大会ということで、女性アナウンサー特有ので綺麗な感じと言うよりも、見た目は活発でスポーツが好きというのがよく分かる感じで、かなり好感の持てる2人がテレビに映っている。



「高宮さん、東奈投手ですが予選ではストレートとツーシームのみで変化球を一切投げていませんが、これは変化球を投げられないのか、変化球を投げないスタイルどちらなのでしょうか?」


勝負球となる変化球を持っている姉が、変化球を投げないのは光の投球を見ていた全ての人が思っていることで、アナウンサーももっとらしい質問を投げかけていた。


「んー…視察で練習を2回見に行った時も、今日のキャッチボールと投球練習を見た限り一球も変化球らしきものを投げた様子がないですね。」




「女子高校生の平均ストレートが110キロ前後ですが、東奈さんは平均ストレートが134.8キロでストレートでは女子のトッププロよりも速い球を投げているので、ストレートのみでも十分通用するとは思いますね。」


解説の高宮さんは、変化球を投げられないことにはとても懐疑的な感じの受け答えをしていた。


平均よりも約25キロも速いストレート投げながら、一切変化球を投げられないとは思えないのだろう。


その後も実況解説は光の福岡予選のダイジェストをテレビに映しながら解説をしていた。




「さて、注目も甲子園第一回戦第一試合、福岡県代表城西高校 対 北海道代表札幌第一高校の試合が始まります!」



          

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