ダンジョン・ザ・チョイス
418.沼地の殲滅者と勘違い系メイド
大規模突発クエストから二日目の朝、私達は全員で”魔人の皇都”の地下へ。
地下と言っても幅広い石階段しかなく、数十分後、皇都がある巨大な石柱の麓へと辿り着く。
「……また泥なんだ」
ナオの言うとおり、目の前に広がっているのは広大な沼地。
「ここでは飛行手段を使えるから、わざわざ沼を歩く必要は無いよ」
メルシュの言葉ののち、私達は一斉に翼や魔法で各々の飛行手段を使用。不自然に霧が無い方向へと進んでいく事に。
ちなみに、バニラはバトルパペットのローゼとバニラが抱えている。
「泥から”マッドフロッグ”が出て来た! て、数多すぎじゃない!?」
ユリカが驚くのも無理はない。なにせ、いきなり子供くらいの大きさのイボガエルタイプが百体前後出現――泥弾を、空に向かって一斉に吐き出してきたのだから。
「“二重魔法”、“光線魔法”――アトミックシャワー!!」
銀の杖に三文字刻み、即座にマッドフロッグを殲滅しに掛かるアヤナ。
あのアヤナが文字を刻んでいることに、どこか違和感を覚える。
「私もやるか」
“明星の遣いの嘆き”に三文字刻み、“天雷の大杖”から“光線魔法”を放って、迫る泥ごとカエル達を消し去っていく。
「カエルさん……可愛いのに」
モモカは、生き物に対して全肯定人間なのだだろうか?
●●●
霧の切れ間を進むこと数十分。ようやく泥の道が終わり、安全エリアである硬い砂地と共に大きな河が見えてきた。
――安全エリア手前の泥が盛り上がって、アナコンダみたいな巨蛇が現れる。
「“竜魔法”――ドラゴニックバイパー!!」
すぐさま高度を落とし、文字の力を流し込んだ金竜を“凶兆片翼の銀鳳凰”より召喚! 筋肉質な水蛇の腹を引き裂かせる。
「“光線魔法”――レーザー!!」
青白い光線でアナコンダの巨体を両断し、トドメを刺した。
「アヤナ、ナイスだったな」
ルイーサが、地面に降り立つなりソーマ入りの水筒を差し出して来る。
「……ありがとう」
今まで素直に受け取れた行為を、受け取る気になれない。
青い甘水を一口含み、すぐに返す。
……本当に、自分が自分じゃなくなったような感覚。
不思議と嫌じゃない……けれど、辛い。
「ルイーサは、十二文字使えるんだっけ。凄いね」
今まで、このパーティーの固定メンバーで文字を使えたのはルイーサだけ。
凄いとは思っていたし、羨ましいとも感じていたけれど……同時に怖いとも思ってた。
でも、いざ使えるようになってみて分かる。この力は……地獄だ。
まるで、たった一人で世界の全てを敵に回そうとしているかのような感覚に襲われる。
今までの私は、無意識にその感覚を拒んでいた。この杖、“凶兆片翼の銀鳳凰”を手に入れる前から。
私がこの世界に来るよりも前……中学に上がる頃にはとっくに、私は世界に恭順することを選んでいた……屈伏する事を……選んでいたんだ。
理不尽やおかしなルールを疑問に思い、その原因を知ることから……無意識のうちに逃げていた。
アオイを失って初めて、私は本気で世界を憎んだ。
そうしてようやく、私はルイーサ達と同じ舞台に立つことが出来たのだと理解し……今までの自分の生き方が、人生観が……あまりにもくだらない物だったのだと受け入れる事が出来た。
ようやく私は、生きると言うことに覚悟を持って臨めるんだ。
「アヤナ?」
「今の私には、まだ三文字だけ」
世界の全てを敵に回すような奔流の中で、己を保って立ち向かい続けるあの感覚は……まさしく地獄に挑むような物。
そんな中で、私達に道を指し示していたのがコセ。
当たり前のように十二文字を刻み、ゲームを終わらせ、《日高見のケンシ》を止めるために立ち向かっている。
この感覚を背負ったままなにかを成そうとするなんて、地獄の業火の中を裸で進もうとするような物。
いったいコセは、ルイーサは……私のどれだけ先を歩いているのだろう。
「……絶対に、追い付いてやるから」
それがたとえ不可能だったとしても、最後の最後まで食らいついてやる。
でなければ、アオイを死なせた観測者共に――一泡吹かせることすら出来ないのだから!!
●●●
まだ肌寒い早朝に八人で出発し、陽射しがキツくなってきた所で砂漠が終わる。
「ここからは崖昇りだな」
ストリームバイクの出番はここまでか。もう少し乗り回していたかったのに。
「ナターシャ、装備を外してくれ」
「へ……こ、ここでですか!?」
「ん?」
今までに無いくらい感情的なナターシャの反応に、面食らってしまう。
「で、では……」
頬を染めながら装備を外し――黒い紐がワンアクセントになった、小さなフリル付きの純白下着姿に!
「な、なんでそんな姿になったんだよ!?」
「下の世話をしろという意味かと……違ったのですか?」
……なんでこっち方面に理解を示すようになってしまったんだ。もっと他にあるだろう!
「重い装備を外してほしかっただけなんだ」
「はあ……分かりました」
侍女服姿に戻ってくれるナターシャ。
自分がデザインしたのもあって……色々ヤバいな。
「アイツ、やっぱり下心あるよな。ナターシャに対して」
「少なからず好みに寄せてはいるんでしょうね」
「バカユウダイ」
「コセ様は、小柄な方が好きなのですか?」
リューナ、チトセさん、マリナ、クオリアに好き勝手言われる! コイツら、分かってて言ってるだろう!!
「さ、先に行くからな! ――”偉大なる黄金の翼”!! “飛翔”!」
「キャ!」
ナターシャをお姫様抱っこし、背から生やしたブラウン色の鳥光翼から黄金光を噴射――崖を猛スピードで昇る!
「まったく」
「その……すみません。ユウダイ様の考えを理解できず」
「いや……出会ったばかりなら仕方ないさ。俺も言葉が足りなかった」
それにまあ……眼福だったから、どちらかと言えば得をした気分だし。
「あの、”猛禽類の両翼ウィッグ”を使えば、私でも飛べますが?」
「あ……」
普通に忘れてた。
「まあ、重装備のナターシャが空で戦うのは難しいだろう。ここでは、飛行モンスターがあんな風に襲ってくるらしいし」
以前遭遇したセメタリーコンドルの上位種、ビッグセメタリーコンドルが三羽、頭上から迫ってくる。
「――“神代の翼”」
光翼に青白い翼を纏わせ、“空衝”で加速――二羽のビッグセメタリーコンドルをすれ違いざまに両断した。
「ハイパワーキック!」
翼を翻して急落下――下にいたビッグセメタリーコンドルの首を踏み折る。
「デカくなっただけだな」
むしろ、セメタリーコンドルよりも数が少なかった分、コイツらの方が楽か。
その後の襲撃も難なく撃退し、崖の上へと辿り着く。
「ここからは岩場か」
草木も無い岩場が広範囲に広がっているようだが、凸凹が多すぎてどこまで続いているかは分からない。
「ユウダイ様、鳥の死骸です」
「こんな所にか」
“鳥葬のボーンスレイヤー”に持ち替える。
「あれ?」
大鳥の亡骸を切り裂いた瞬間、いつもと違って黄金の霧が飛び散った?
「レアな宝箱の証拠です」
「そうなのか」
さっそく、チョイスプレートで確認してみる。
○謎の鳥の亡骸より、以下のアイテムを回収しました。
★共有のティアーズ・ブルー×3
★腐った肉×3
★鳥骨×4
★立派な鳥骨×2
★綺麗な羽毛×1
地下と言っても幅広い石階段しかなく、数十分後、皇都がある巨大な石柱の麓へと辿り着く。
「……また泥なんだ」
ナオの言うとおり、目の前に広がっているのは広大な沼地。
「ここでは飛行手段を使えるから、わざわざ沼を歩く必要は無いよ」
メルシュの言葉ののち、私達は一斉に翼や魔法で各々の飛行手段を使用。不自然に霧が無い方向へと進んでいく事に。
ちなみに、バニラはバトルパペットのローゼとバニラが抱えている。
「泥から”マッドフロッグ”が出て来た! て、数多すぎじゃない!?」
ユリカが驚くのも無理はない。なにせ、いきなり子供くらいの大きさのイボガエルタイプが百体前後出現――泥弾を、空に向かって一斉に吐き出してきたのだから。
「“二重魔法”、“光線魔法”――アトミックシャワー!!」
銀の杖に三文字刻み、即座にマッドフロッグを殲滅しに掛かるアヤナ。
あのアヤナが文字を刻んでいることに、どこか違和感を覚える。
「私もやるか」
“明星の遣いの嘆き”に三文字刻み、“天雷の大杖”から“光線魔法”を放って、迫る泥ごとカエル達を消し去っていく。
「カエルさん……可愛いのに」
モモカは、生き物に対して全肯定人間なのだだろうか?
●●●
霧の切れ間を進むこと数十分。ようやく泥の道が終わり、安全エリアである硬い砂地と共に大きな河が見えてきた。
――安全エリア手前の泥が盛り上がって、アナコンダみたいな巨蛇が現れる。
「“竜魔法”――ドラゴニックバイパー!!」
すぐさま高度を落とし、文字の力を流し込んだ金竜を“凶兆片翼の銀鳳凰”より召喚! 筋肉質な水蛇の腹を引き裂かせる。
「“光線魔法”――レーザー!!」
青白い光線でアナコンダの巨体を両断し、トドメを刺した。
「アヤナ、ナイスだったな」
ルイーサが、地面に降り立つなりソーマ入りの水筒を差し出して来る。
「……ありがとう」
今まで素直に受け取れた行為を、受け取る気になれない。
青い甘水を一口含み、すぐに返す。
……本当に、自分が自分じゃなくなったような感覚。
不思議と嫌じゃない……けれど、辛い。
「ルイーサは、十二文字使えるんだっけ。凄いね」
今まで、このパーティーの固定メンバーで文字を使えたのはルイーサだけ。
凄いとは思っていたし、羨ましいとも感じていたけれど……同時に怖いとも思ってた。
でも、いざ使えるようになってみて分かる。この力は……地獄だ。
まるで、たった一人で世界の全てを敵に回そうとしているかのような感覚に襲われる。
今までの私は、無意識にその感覚を拒んでいた。この杖、“凶兆片翼の銀鳳凰”を手に入れる前から。
私がこの世界に来るよりも前……中学に上がる頃にはとっくに、私は世界に恭順することを選んでいた……屈伏する事を……選んでいたんだ。
理不尽やおかしなルールを疑問に思い、その原因を知ることから……無意識のうちに逃げていた。
アオイを失って初めて、私は本気で世界を憎んだ。
そうしてようやく、私はルイーサ達と同じ舞台に立つことが出来たのだと理解し……今までの自分の生き方が、人生観が……あまりにもくだらない物だったのだと受け入れる事が出来た。
ようやく私は、生きると言うことに覚悟を持って臨めるんだ。
「アヤナ?」
「今の私には、まだ三文字だけ」
世界の全てを敵に回すような奔流の中で、己を保って立ち向かい続けるあの感覚は……まさしく地獄に挑むような物。
そんな中で、私達に道を指し示していたのがコセ。
当たり前のように十二文字を刻み、ゲームを終わらせ、《日高見のケンシ》を止めるために立ち向かっている。
この感覚を背負ったままなにかを成そうとするなんて、地獄の業火の中を裸で進もうとするような物。
いったいコセは、ルイーサは……私のどれだけ先を歩いているのだろう。
「……絶対に、追い付いてやるから」
それがたとえ不可能だったとしても、最後の最後まで食らいついてやる。
でなければ、アオイを死なせた観測者共に――一泡吹かせることすら出来ないのだから!!
●●●
まだ肌寒い早朝に八人で出発し、陽射しがキツくなってきた所で砂漠が終わる。
「ここからは崖昇りだな」
ストリームバイクの出番はここまでか。もう少し乗り回していたかったのに。
「ナターシャ、装備を外してくれ」
「へ……こ、ここでですか!?」
「ん?」
今までに無いくらい感情的なナターシャの反応に、面食らってしまう。
「で、では……」
頬を染めながら装備を外し――黒い紐がワンアクセントになった、小さなフリル付きの純白下着姿に!
「な、なんでそんな姿になったんだよ!?」
「下の世話をしろという意味かと……違ったのですか?」
……なんでこっち方面に理解を示すようになってしまったんだ。もっと他にあるだろう!
「重い装備を外してほしかっただけなんだ」
「はあ……分かりました」
侍女服姿に戻ってくれるナターシャ。
自分がデザインしたのもあって……色々ヤバいな。
「アイツ、やっぱり下心あるよな。ナターシャに対して」
「少なからず好みに寄せてはいるんでしょうね」
「バカユウダイ」
「コセ様は、小柄な方が好きなのですか?」
リューナ、チトセさん、マリナ、クオリアに好き勝手言われる! コイツら、分かってて言ってるだろう!!
「さ、先に行くからな! ――”偉大なる黄金の翼”!! “飛翔”!」
「キャ!」
ナターシャをお姫様抱っこし、背から生やしたブラウン色の鳥光翼から黄金光を噴射――崖を猛スピードで昇る!
「まったく」
「その……すみません。ユウダイ様の考えを理解できず」
「いや……出会ったばかりなら仕方ないさ。俺も言葉が足りなかった」
それにまあ……眼福だったから、どちらかと言えば得をした気分だし。
「あの、”猛禽類の両翼ウィッグ”を使えば、私でも飛べますが?」
「あ……」
普通に忘れてた。
「まあ、重装備のナターシャが空で戦うのは難しいだろう。ここでは、飛行モンスターがあんな風に襲ってくるらしいし」
以前遭遇したセメタリーコンドルの上位種、ビッグセメタリーコンドルが三羽、頭上から迫ってくる。
「――“神代の翼”」
光翼に青白い翼を纏わせ、“空衝”で加速――二羽のビッグセメタリーコンドルをすれ違いざまに両断した。
「ハイパワーキック!」
翼を翻して急落下――下にいたビッグセメタリーコンドルの首を踏み折る。
「デカくなっただけだな」
むしろ、セメタリーコンドルよりも数が少なかった分、コイツらの方が楽か。
その後の襲撃も難なく撃退し、崖の上へと辿り着く。
「ここからは岩場か」
草木も無い岩場が広範囲に広がっているようだが、凸凹が多すぎてどこまで続いているかは分からない。
「ユウダイ様、鳥の死骸です」
「こんな所にか」
“鳥葬のボーンスレイヤー”に持ち替える。
「あれ?」
大鳥の亡骸を切り裂いた瞬間、いつもと違って黄金の霧が飛び散った?
「レアな宝箱の証拠です」
「そうなのか」
さっそく、チョイスプレートで確認してみる。
○謎の鳥の亡骸より、以下のアイテムを回収しました。
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