ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

401.山猫獣人のサンヤ

「“超高速”」

 金色の螺旋状の爪を持つ、ゴツくて青いガントレットで仕掛けてくる青鎧の男。

「速いじゃん」

 “汚泥斬首の三日月”に六文字刻み、反射神経、動体視力を強化――背後からの強襲を転がってなんとか回避!

「“精霊魔法”――シルフ!!」

 風の精霊を呼び出し、男の追撃を阻んでくれるマクスウェルのフェルナンダ。

「助かったっすよ」
「良いから気をぬくな!」

 あらら、厳しい隠れNPCだなー。シルキーのコツポンとは大違いじゃん。

「女が何人束になろうと、この俺にかなうものかよ! ”深淵魔法”――アビスバイパー!!」

「“冥雷魔法”――ヘルスプランター!!」

 短剣を掲げたフェルナンダの黒き雷により、青黒いミズチが消失。

「行け、シルフ!」
「“超高速”! ――裂金れつごん螺線!!」

 風の刃を避けたのち、シルフを、その黄金の螺線指から発した回転光で引き裂く男。

 でも――動きは止まった!


「“腐食土葬”!!」


 奴の足元から土を盛り上げ、ワームに捕食されるがごとく下半身を呑み込んでいく!

「ああああッッ!! 脚がぁぁぁッッッ!!」

 “腐食土葬”はその名の通り、土に触れた部分から分解、腐敗させていく。

「ちょ、“跳躍”ッ!」

「無理矢理抜け出されたか」

 本来は、もっと大型のモンスターなんかに有効な攻撃法だからな~。

 ヒビキから、私達に合った強力なスキルのカードを一枚貰ったけれど、私のは、利便性が低いって意味で外れかな。

 ツェツァは“爆裂祭り”、ルフィルは“颶風騎槍”、コツポンは”光輝の星群”だし。

 重くて動かない奴相手なら、“腐食土葬”は一撃必殺に成り得るとはライブラリに書いてあったけれどさ。

「――“ホロケウカムイ”」

 青のオーラを纏い、強化した身体能力に任せて着地する直前の男を強襲!

「“泥土斧術”――ベリアルスラッシュ!!」

「“渦の障壁”!!」
「クソ!」

 コイツ、戦い方がうまー!

「死ね――“激流砲”ッ!!」

「“精霊魔法”――ウンディーネ!!」

 渦に弾かれて隙だらけだった私の前に、水の剣士が割り込んだ!?

「今回も、もう少しって所で邪魔に入りやがって!!」

「金剛の騎槍!」

 指輪で左腕側にダイヤモンドのランスを形成し、突っ込んでいくフェルナンダ。

「“猪突猛進”!!」
「”超高速”!」

 フェルナンダの分かりやすい誘導に乗り、背後を取る青鎧の男。

「“土爆弾”!」

 私の指輪から発射された土の塊により、弾き飛ばしてやる。

「クソ――“青雷魔法”、ブルースプランター!!」

「武器交換――“避雷針の魔光斧”!!」

 “汚泥斬首の三日月”から持ち替え、“避雷針”により雷属性の攻撃をこの斧に引き寄せる!!


「“雷光斬”!!」


 取り込んだ雷を斬撃として飛ばし、魔法を放った直後の男の胴体を――あのゴツイ爪腕で、間一髪防いだか!

「お、お前らなんかに――グハッ!!?」

 奴の背後から、下腹部が貫かれた!?

「あれって……ウンディーネの剣」

「コイツは……倒したはずじゃ……」

「私の精霊は、司る属性の単一属性では倒すことは出来ない」

「私を守ると同時に、罠を仕込んでたってわけっすか」

 隠れNPCって、そんな器用な思考も出来るのかよ……こわ。

「借りを返してやる、人間」
「く、クソがぁぁ……」

 青鎧の男は、フェルナンダによって容赦なく始末された。


○○○


「い、いつの間にそんな剣を!」

 “大陸王の真紅鎧”を持つジュンペイが、私の“絶滅の大剣”を見て驚いている。

「ジュンペイさんの“星辰の円盤”に比べたら、大した武器じゃないっすよ」

 この剣の特徴的な“絶滅”は、対人戦じゃまったく意味の無い効果だし。

「お、俺を殺す気なのか……俺は、お前の親父の!」
「警察官僚の上司の息子だから? そんな人間関係が、この世界で役に立つとでも?」

「その縁で、せ、せっかく目を掛けてやったって言うのに――お前が生意気な事ばかり抜かすから、俺は!」

「るせーな~!!」

 んなことはどうでも良いんだよ。

「“超高速”」
「ちょ、“超高速”!!」

 突発クエストで一緒に手に入れたSランク鎧の共通の効果で、高速戦闘を繰り広げる!

「お、俺とお前の親父は、帰化人の子孫なんだ! お前なら、言っている意味は分かるだろう! 俺達は、数少ない同族なんだよ!」
「裏切った相手に、そんな安い同族意識を求められてもね」

 剣を振るって、畳み掛ける!

「チ、振りづれー」

 同等の高速戦闘において、デカい武器は不利だな。

「仕方ねーか」

 剣を捨てて、腰の”欺瞞に色褪せた誇り”を抜く。

 警察で使われている警棒によく似てるから、私は大嫌いだって言うのに!

「よ、よせ……それだけは」

「ジュンペイさん曰く、チートでしたっけ? だから――目障りな俺をパーティーから追放したかったんだろう?」

 私だけが、このチート能力を使えたから。

「まったく、俺はこんな物、本当は要らねーって言うのに」

 クソ棒に、文字を六文字刻む。

「なんで……なんでお前にだけ――狡いだろうがよ!!」

「知るか」

 敢えて言うなら、私が父親を……警察組織が嫌いだからだろう。

 帰化人の父は、大東亜戦争後にブラックマーケットを取り仕切る権利を貰った事で出来たアメリカと先祖の縁により、警察組織の官僚になることが約束されていた。

 その立場を守るためにDSの言いなりになり、日本で陰謀を曝こうとする者を不当逮捕、事情聴取という名の脅しを指示する立場にあった。

 私がなに不自由なく生きてこられたのは……あの豪邸も、食べ物も、欲しい物も、学費も、旅行代も、数々の高級車も……全部、本当の日本人を騙し、搾り取った税金で手に入れた物。

 そのことに中学の時に薄々気付き、高校の時に理解した私は――非行に走った。

 どうにかしたいのにどうにも出来ない悔しさと、幼い頃に貧乏な同級生をバカにしていた事などへの罪悪感。

 その頃の私は、両親が言うように、その子の親の頭が悪いから良い仕事に着けず、給料が低いって言葉を……勉強してこなかった、努力してこなかった奴等が悪いって言葉を――信じていたんだ!

「た、“正しき刻み”!!」

 魔法使い専用装備の赤い円盤、その内部の宇宙が動き、サザンクロスを生み出した途端――大爆炎が私を中心に、足元から立ち昇る。

「“無恥なる弾圧”」

 “拒絶領域”よりも横幅が広くて低い円柱状の領域は、自分の周りに数秒の、スキルや武具効果に対する絶対防御となる。

「ジュンペイさん、自分が帰化人の子孫だってこと、日本人を未だに搾取し、騙し続けている一族の子孫だってこと……どう思ってます?」

「は? なにを言っているんだ、お前は? そんなの、感謝してるに決まってるだろうが! 朝鮮人という偉大な民族に生まれて来られたんだからな!! おまえだってそう――」

 “欺瞞に色褪せた誇り”を口の中に突っ込み――生まれて初めて、九文字刻む。

「俺は、俺の生まれを赦さないッ!!」

 そこをなあなあで済ませたら俺は――私は、自分が生きている事が恥ずかしくて仕方なくなってしまう!!


「“砂鉄棒術”――アイアンサンドブレイク」


 口内から頭を吹き飛ばし、私を罠に嵌めた帰化人の親戚を殺した。

「帰化人が日本人を騙すって……」

 ユリカって言う、おっぱい眼鏡に聞かれたか。

「スポーツ、芸能、メディア、政治、他にも数多の組織に、奴等は入り込んでいる」

 戦争で恐ろしいと感じた日本人を手懐けるために、見た目が似ている当時の在日朝鮮人に、アメリカが権力を与えた。

 だから、朝鮮系のヤクザなんて奴等が風俗を経営しているし、法も、犯罪の温床と知りながらそう言った店や出会い系サイトを条件付きで許容し、取り締まりはしても潰せないようにしているんだ。

 その証拠に、昔から警察上層部が汚職まみれなのは有名なのに……法の番人全てが腐っているから、誰にも何も変えることが出来ないって事に……日本人の大半が気付いていないんだ。

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