ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

400.反逆の雷神パドマ

「“迅雷瞬足”!」

 雷を脚から迸らせながら、動きやすくて脚がはだけやすい“反逆のサリー”靡かせてロボットに接近――背後を取る。


「“青雷剣術”――ブルーサンダースラッシュ!!」


 雷と水を纏わせたザファー・タキエ、”運命への反逆心を滾らせよ”を背後から振り下ろす!

『バカが!』

 ――機械から雷が迸り、私の身体が弾かれる!

「“樹液弾”!」

 コトリの攻撃が、ロボットの左脚関節に直撃。すぐに固まって動きを鈍らせてくれた!

「“殴打撃”!!」
『ハ! 神代文字無しの攻撃なら!』

 凶悪な見た目の金棒みたいな武器でコトリが右脚を殴り付けると――ロボットの体勢が崩れる!

『なに!?』

 ”鋼鳥の狂群”は、武器と防具を破壊する効果がある特殊な低ランク武器。

 サキが欲しがっていたけれど、材料を集め切れなかったから作れなかったとか言ってた代物。

「“青雷魔法”――ブルースプランター!!」

 雷をぶつけるも、“黄金障壁”で威力を半減される。

「“光輝棒術”――シャイニングブレイク!!」

 今度は、“白銀障壁”によってコトリの攻撃が半減されてしまった。

 なら、武術でも魔法でもない攻撃手段で。

「“爆発瓶”」

 “爆発瓶の指輪”の効果で中身が燃えている瓶を生成――文字の力を流しこんで、ロボットに向かって投げ付ける!

『く、クソッタレが!!』

「“樹液弾”!」

 爆発によってボディーに亀裂が入った所に、コトリの攻撃で腕や肩の関節も封じられた。

『う、動けない!』

「戦い方次第で、こうも楽になるのね」

 私も、幼い頃からゲームに触れられれば、もう少し柔軟に考えられたのかもしれない。

「――コトリ、後ろです!」

「クソ――」

 炎の魔法が派手な爆発を引き起こし、コトリの身体が派手に……飛んで来た。

「……ぅぅ」
「……良かった」

 まだ生きている。

「……頑丈な奴」
「見たことない武器だ。とっととぶっ殺して、奪っちまおうぜ」

 二人の男が、こちらを狙っていた。


「――ぅッッ!!」


 こんな時に、靄に触れた両肩が激痛に!!

 ……マサコみたいに、大人しくクエスト未参加にしておけば良かったかッ。

「なんか、いきなり膝を付いたぞ?」
「油断するな。遠距離から攻めろ」

 “魔武の指輪”を使って、切り替えている?

「“爆炎魔法”――バーニングカノン!!」

 武器交換で、“神鳴のザファー・タキエ”に持ち替える!

「――“神鳴”!!」

 強力な青紫の雷を刀身の切っ先から放ち、爆炎を貫いて霧散させた!

「……あっぶねー」

 もう少しという所で、術者には避けられてしまった。

「犯してみたかったけれど、やめておくか」
「俺は抵抗あるな、黒人は」
「お前、獣人やエルフだって嫌がるもんな」
「るせー、ゲテモノ好きが」

 ――クズ共が!!

「――ぅぅぅぅッッッ!!!」

 痛みが……いつもより激しい……ッッ!!

「な、なんなんだ、コイツ?」
「気味が悪いぜ」


「――ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」


 肩が……肩甲骨が丸ごと蠢いて――――私の肩から出て来た蛇みたいななにかが、ロボットを喰らったッッ!!?

『な、なにが――――』


       《ようやく足りた》


 両肩の大蛇の姿が急激に変わっていき――左肩から白銀の腕が二本、右肩からも黄金の腕が二本生えてきたッ!!

「ユニーク……スキル?」

 この四本の腕の使い方が、“雷神の四本腕”の使い方が――頭に流れ込んでくる!

「おい、コイツ……やべーんじゃねぇか?」
「ば、化け物だ……逃げろ!!」

「お前達に、化け物呼ばわりされるなんてね」

 自分達の精神性の方がよっぽど化け物だろうに――普通って言葉を使うことが、いかに異常かを自覚していない化け物共がッッ!!


「――“雷神の裁き”!!」


 黄金と白銀の四本腕から青紫の槍を発射し、背中を向けていた男達の身体を貫き……絶命させた。

「……く、ククククク!! ハハハハハハハハハッッ!!」

 まるで、幼い私の前で母を犯し、解体し、腸を引きずり出し、燃やし――殺したクシャトリヤの男達に、復讐を果たした気分だッッッッ!!!


●●●


「――”飛王剣“!!」

 “アマテルの太陽剣”より、神代文字の力を乗せた強力な斬撃を放つ。

『な……んだと』

 左腕と共に、レプティリアンが操る機体の胴体を半ばまで切断。


「――――“爆裂祭り”ッ!!」


 彼女、スヴェトラーナのスキルにより、連続した爆発が機械のモンスターを中心に巻き起こる。

「“颶風騎槍”!!」

 神代文字を九つ刻んだ槍を嵐のランスとしたエルフの女性が、突っ込んでいく。

「ハァぁぁぁッ!!」

 彼女の一撃は機械モンスターの装甲を貫き……仕留めきったようだ。

「どちらも、神代文字とスキルを使いこなしているんだね」

 是が非でも《日高見のケンシ》に勧誘したいところだけれど……まあ、出会いは巡り合わせか。

「ねえ、さっきの話なんだけれど……」
「アテル!」

 スヴェトラーナさんがなにか尋ねようとしたときに現れたのは、エリさん。

 長い青い髪を持つ、ちょっと野性味のある格好いい僕の恋人。

「無事?」
「ええ、僕は。エリさんは一人ですか?」
「うん。ここまでに仲間には出くわさなかったわ。クマムって言う元アイドルが、誰かと一緒に居たのは遠くから見えたけれど。所で、そっちの二人は?」
「《龍意のケンシ》の協力者だよ。ただ、同盟は結んでいないそうだ」
「ああ、例の」

 “パンデモニウムの盾”、Sランクを僅かに下げ、エリさんの警戒レベルが下がった事を察する。

 いざとなれば、その絶叫の顔が刻まれた六角盾ガントレットで、彼女達を攻撃するつもりだったんだろうな。

 指輪欄にも武器欄にも装備できる、特殊で強力なガントレットシールドで。

「他の仲間を捜しに行きましょう、アテル」
「そうだね」
「ちょっと、その前にさっきの話を聞かせなさいよ!」
「ツェツァ、今はそんな場合では……」

 コセ達はどうやら、観測者達の正体を彼女達に教えていなかったらしい。

 まあ、信用できなければ明かしづらい内容ではあるか。

「君達は、今は二十五ステージに居るんだろう? 僕等は二十四ステージに居るんだ。だから、詳しい事はクエスト終了後に向こうで話すというのはどうだろう?」

「……分かったわ」
「その時は、私も是非」

「でも、少しくらいなら良いんじゃないの? 移動しながらならさ」

 エリさんに提案されてしまう。

「……そうだね」

 コセ達には悪いけれど、少しくらい情報を開示してもバチは当たらないか。

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