ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

399.黒茨の化身


「”猛毒鞭術”――ヴェノムブレイズ!!」
「”冥雷剣術”――ヘルサンダーブレイク!!」


 白髪の美女が振るう凶悪な鞭を、”匠の拘泥り庖丁”に纏わせた黒雷で切り払う!

「ハアハア」
「ハアハア」

 向こうの鞭のリーチと凶悪なデザインのせいで、なかなか間合いを詰められない。

「”爆雷岩”!!」

 指輪から、雷纏う岩球を発射!!

「”溶解魔法”――アシッドバイパー!!」

 緑の溶解液で出来た大蛇が岩を包み込み、爆発を内部で封じ込められた!

「まずい! ”魔法障壁”!」
「”魔法障壁”!!」

 飛び散る溶解液を、互いに防ぐ。

「私と互角……」
「互角? 良いわ。特別に、貴女に私のユニークスキルを見せてあげる」

 ユニークスキル……そんな物があるなら、今までどうして使わなかったの?

「ユウコ様!!」

 下側から、複数のエルフの男達が!

「チ! 穢れの翼」

 背中から墨汁のような液体を出して八翼を形成。“消せぬ穢れは憎悪の糧”を展開し、この場を離脱する!

「あの女、私の下僕を傷付けておいて!」

 ユウコ……あの女とは、絶対に相容れることは無いでしょうね。


●●●


「ユウコ様」

 あの女には逃げられたか。

「私も、そろそろ飛行手段を手に入れた方が良いわね」

 ――奇怪な音と共に、なにかが近付いてくる!

「う、後ろだ!!」

「「――ギャァァァぁぁぁぁぁぁ!!」」

 私の下僕達が……ロボットの腕の電動ノコギリによって両断された?

『キヒヒヒヒ!! 綺麗な人形を壊すのは、楽しいなぁぁぁ!!』


「――――――死ね――”黒茨の化身”」


 ユニークスキルにより、この身を黒き棘の巨塊人とする!!

 同時に”黒茨の惨殺鞭”に神代文字が十二文字が刻まれ――金の皺が宿る、”黒神茨の惨殺謳歌”へ!

『な、じゅ、十二文字だと!!? の、ノルディックのゴミがぁぁぁぁぁぁ!!!』

『”神代の千針”――”絡め取り”!!』

 私の鞭で捕獲すると同時に、青白い光を纏った黒針で、鋼鉄の装甲を容易く貫く。

『う……そだ……強すぎ……る』

 クソロボットを引き寄せ、で……刺し潰した。


『――――ギィァァァァアアアアアアアアッッッ!!!!』


 このゲームを仕掛けた奴等を、私は――絶対に赦さないッッッ!!!


●●●


「”超高速”!! ――”天元侵蝕”!!」

 黒鎧野郎の動きを、”万の巨悪を穿て”に六文字刻むことでなんとか見切る!

「貰った!」

 ――左肩を、光に貫かれた!

「テメー、それは!!」

「ククク! 使い勝手が良いぜ、お前の”レーザーソード”はよ~」

 奪われた俺の愛剣で!

「絶対に許さねー」

「片腕がろくに使えなくなったって言うのに、強がるんじゃねぇよ!!」

 右腕のみで剣槍を振るい、牽制する!

「……クソ」

 血は出ていないが、動くほど激痛に苛まれちまう。

「”回復魔法”なんざ使ったら、一瞬で殺してやるからな~」

 嫌味な野郎だ。

「”超高速”!!」

 まだ文字を完全に使いこなせているわけじゃねーが――仕方ねー!!

「”天元侵蝕”!!」

 九文字刻んでなんとか斧の一撃を受け切るも、神代文字の光を黒い靄が侵蝕してくる!

「今度こそ、お前の装備を全部俺の物に!!」

「――がぁッ!!?」

 鎧の隙間から、腹に“グレートオーガの短剣”を突き刺したッ!!

「て、テメーッッ!!」

「左腕が使えないと思って、油断したなぁぁ!!」

「か、”陽炎”!!」

 蹴りをぶち込んでやろうとしたら、またあの変なスキルによって外されちまう!

「く、クソ。”超高速”ッ!!」


「――“悪穿ち”!!」


 背中を晒して逃げる鎧野郎に、“万の巨悪を穿て”をぶち込んだ!!

「地続きじゃないこの場所で、前みたいに逃げられるとでも思ったのかよ」

「ち、チクショ……ぅ…………」

 下と上に行くためのプレート階段は二カ所。

 逃げる方向さえ絞れれば、前みたいに外すかってんだ。


●●●


「“斬爪拳”――ブレイズスマッシュ!!」

 ”猛禽鳥の嘴孔脚”の鋭いつま先で、ジュンイチとかいう軽薄そうな金髪男の頬の肉を抉り取る!

「ぼ、僕の顔にッッ!!」

「そんな大した面でもないのですから、気にする必要も無いのでは?」

「な、なんだと!? ナンパ成功率七十パーセントの僕の顔を!!」
「私、貴男みたいなヘラヘラしたクソガキっぽい人、好きじゃ無いんですよ」

 ギルマスのように、漢らしくも大人の余裕と少年のような笑顔を併せ持った方が……好き♡

「そもそも、ナンパの目的は身体でしょう? 今までに、一人でも責任を取ろうとしたことはあるのですか?」

 毎回フラれているなら、それはそれで人間として問題があるのでしょうが。

「彼等のレギオン名は《不倫はブランド》ですから、数とか、誰と寝たとか、そういったガキっぽい所に価値を見出しているのでしょう」

 ネクロマンサーのメフィーさんが教えてくれる。

「つまらない人ですね」

 まあ、私の獣人人生も平凡でしたけれど。ギルマスと出会うまでは!

「ふ、ふざけるな! ”三重魔法”!!」

 この男、魔法使いだったのか!!

 鎧を装備しているからてっきり。

「“光線魔法”、アトミッ――」

 魔法を放つよりも早く懐に入り込み、刃の生えたバックル――“貫けぬもの魂のごとし”で喉を切り裂いた。

「やりますね。《日高見のケンシ》に来ませんか?」

 メフィーさんに誘われる。

「すみません。もう、心に決めた方がおりますので」
「そうですか、残念です」

 ああ、いつになったら私は、ギルマスに会えるのでしょうか。


●●●


『ようやく面白そうな輩を見付けたぞ!』

 二足歩行のロボットが、私とパドマさんの前に……重い震動と共に降り立つ。

「もしかして、コイツが強力なモンスターって奴?」

 いや、モンスターじゃなくてロボットじゃん。

「それよりも、喋ったということは……プレーヤーが憑依されているタイプか」

『違うぞ、黒いの。アフリカ人か中東の人間か知らんが、頭の出来は悪いらしいな』

「……私はインド人だ」

『ああ、もういつ内戦が起きてもおかしくないあの国か』

「へ?」

 コイツ、向こうの世界情勢に詳しい……もしかして、観測者?


「フフフフフ――フハハハハハハハハハッッ!!」


 パドマさんが笑ってる。

『……なぜ笑っている?』
「あの国が消えてくれるなら、むしろ清々するわ」

 そう言いながらパドマさんは、片刃の剣に神代文字を三文字刻んだ。

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