ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

395.天魔騎士のガブリエラ

「オウ、同胞じゃないですかぁ」

「は?」

 紫雲天馬に乗って仲間を捜していると、どこの国か分からない黒人に遭遇した。

「私、分かります。貴女と私、運命。結ばれる運命でぇす」

 なんなんだ、コイツ。

「どのステージに行けば、貴女に会えますかぁ?」
「お互いに婚姻の指輪があるのだから、分かるだろう。私は既婚者だ」

 私が最上級であるのに対し、奴は”下級の婚姻の指輪”。

 それだけで、人間性が図れるというもの。

「これは……アレでぇす。メリットある言われて。本気違いまぁす」

「私は相手に本気なんだ。お前との間に運命などない」

 私の心も貞操も人生も、全てアテルと共にある。

「貴女、分からない。でも、私、分かる。貴女、私に抱かれる運命。私、子供産む」


「――ぶっ殺してやる」


 敵意が無いからと、同じ黒人だからと――見逃がそうとした私が間違っていた。

 黒人だろうが白人だろうが、クズはクズなのだと知っていたはずなのに!!

「チ! ジャパン女なら、簡単に騙せるのに」

 いきなり流暢に!

「女の敵は、世界の敵だ」
「オウ、フェミニストですか~。怖いでーす」

 毒々紫いランス、“毒をもって毒を制せよ”に――九文字を刻む!

「これは正当防衛でーす! “二重魔法”、“光線魔法”――アトミックシャワー!!」

 頭上から襲い来る光線の雨を、天馬を駆って避け切る!

「粉を掛ける相手を間違えたな、黒人の面汚し」

「お、同じ黒人なのに! 私達、同じ被害者! この場所だって、白人の仕業決まってる!」

「言いたいことは理解するが――私は、そうやって被害者面して、同情を誘って生きている奴等が嫌いなんだよ!」

 現に、日本人の大半はアメリカに対して被疑者面しない。

 たとえそれが――洗脳教育の賜物だったとしても!


「“猛毒槍術”――ヴェノムストライク!!」


「うわぁぁぁああああッッ!!」

 天馬で駆けながら男の胸を貫き、毒を注入して絶命させた。

「ゴミが」

「お前は、ガブリエラか?」

 私のように有翼の馬を駆る女が、声を掛けてくる。

「隠れNPCのヴァルキリーか」

 デボラが執着していた、強力なNPC。

 神々しい武具を纏う、白い肌の美女。

「話が早くて助かる。一緒に来る気はあるか?」
「ああ、良いだろう」

 人種に囚われるなんて、くだらないことさ。

 そうだろう、ガブリエラ。


●●●


「あら、良さげな物みーっけ」

 宝箱から、格好いい黒光りした金属ブーツを発見。

○“苦悩を踏み締めて”を手に入れました。

「なんだか物騒な名前ね」

 でも、名前からして役立ちそう。

「……誰か来る」

「く!」

 現れた猿獣人? の女の子が、私を見た途端に棍棒を構えた。

「あら、怪我をしてるじゃない」
「ち、近づくな!」

 あらら、警戒されちゃってるみたいね。

「……クソ。ようやく撒けたと思ったのに」


「雑魚共に手こずっちまったじゃないか」


 お猿ちゃんが警戒した方向から現れたのは、いつぞやの緑の鎧と槍を持った男。

「……お、お前は!」

「あら、お久しぶり」

 私の顔を見るなり、まるで化け物を見るような目を向けないでくれるかしら~。

「お、俺の腕を潰した……く、クソ!!」

「あら、逃げちゃった」

 次遭遇したら、リベンジしようと思ってたのに。

「た、助かったっす」
「ハヌマー!」
「マリン!」
 
 今度は赤い人魚が現れて……彼女、両腕にそれぞれ甲手を装着している。

「怪我を――お前の仕業か!」
「違うっす。その人は、自分を襲った男を追い払ってくれたんす」

「まあ、向こうが勝手に逃げていっただけだけれどね~」

 うーん、この子達なら信用できそうかな。

「ねー、このクエストが終わるまで一緒に行動しない?」
「……そうっすね。自分達じゃ力不足みたいっす」
「レイナとキクルが強制だから、助けようと思って参加したけれど……確かに、このままじゃまずい」

「レイナとキクル? 貴女達って、もしかして……」


●●●


「ハアハア、ハアハア」

『頑張るじゃないか、クリスティーナ』

「シャラーップでぇす」

 強力なモンスターというのが、レプティリアンが駆るマシーンの事だったなんて。

「”薔薇魔法”――ローズフラッシュ!!」

 薔薇の花弁を吹き荒らし、牽制に用いる!

『そんなもの、この”アイアンバリエーションズ”に通用するはずがない』

 ”黄金障壁”を展開しつつ、両腕の剣で斬り掛かってくる――ここ!!

『なに?』

 カウンターで、六文字刻んだ”甘い蕾の中の逢瀬”でマシーンの脇の装甲を切り裂き――そこに”ゴルドヴィーナス”の銃口を翳す!

 この距離なら、障壁系スキルは意味を成さない!


「”金星砲術”――ヴィーナスキャノン!!」


 至近距離で撃った反動で吹き飛び、緑光を放つ床を転がる!

「ハアハア、ハアハア」

 文字から別の物に力を注ぐ強化はまだ出来ませんが、大きなダメージは叩き出せたはずでぇす。

『裏切りの雑種が、やってくれたな!』

「……ダメージは、思ったほどではありませんか」

 脇の装甲はひしゃげて内部がスパークしているようですが……問題なく動けるようです。

『黄色い猿の血が混じっているせいか、諦めの悪いことだ』

「そんなことまで……やはり、私がこのゲームに送り込まれたのは偶然ではないのですね」

『お前の叔母、オルフェのせいらしいぞ。あの雑種の末裔が、ジュリーとかいうのと組んで我等を裏切ろうとしたとさ。その罰として、姪であるお前が強制参加させられたのだそうだ。愚かな事よ』

「オルフェ姉さんが……? ――姉さんはどこに!!」

『ククククク! さあな。今頃どのような目に合っている事やら……ヒキキキキキキ!!』

「――このクソファック野郎がッッkd3p!!」
 
 ”甘い蕾の中の逢瀬”に、九文字が刻まれる!!


「”薔薇剣術”――――ローズスラッシュ!!」


 マシーンの顔部分を、大きく切り裂いた!

『か、神代文字を九文字だと!!? ば、バカな……お前には、レプティリアンの遺伝子が!!』

「私はもう、そんなものには囚われな――gkx3jけgjk!!!」

 意識が……持っていかれそうに……。

『は……ハハ……な、なんだ――只の紛れかよ!!』

「――装備セット2」

 左腕の”ゴルドヴィーナス”を”薔薇騎士の盾”に持ち替え、巨剣の横振りを受けて――吹き飛ばされるッ!!

「か……ぁ」

 姉さん……私は……無力です。

『ビビらせやがって。レプティリアンの末裔が、雑種如きが、高周波の力など使うな!!』


「金星球――“磁力”回転”!!」


 黄金の球体が、回転しながらマシーンに直撃した!?

『こ、こんなものッッ!!』
「”二重魔法”、”天雷魔法”――ヘブンスプランター!!」

 球体に雷を浴びせ、神代文字と共に黄金球体の回転速度を上げている!


「くたばれ――レプティリアンッ!!」


 ジュリーの言葉に気圧されるように、火花を散らしていたマシーンのボディーが崩壊を始め……バラバラに砕け散った。

『雑種如き……に…………』

「ハアハア、ハアハア。クリスが弱らせていなかったら、危なかったな」
「……ハハハ、助かりまぁした」

 さっきのジュリーの言葉に……強い恐怖を抱いてしまっている自分がいた。

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