ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

365.鳥葬の廃都

「鳥葬の廃都……大樹村と一転して、随分寂れているな」

 祭壇上から見た光景への、エリューナさんの素直な感想。

「上空の鳥達はモンスターで、街中でも普通に襲ってきます。夜になると居なくなるそうなので、NPC達も夜まで外に出ません。店が開くのも夜だけだそうです」

 突発クエストや滞在ペナルティーを除けば、街や村でモンスターに襲われる事なんて無かったのに。

「街でも鳥に食い殺される。故に鳥葬ですか」

 階段を下りながら、チトセさんが口にした。

「不気味な所だね。所で、ここの滞在ペナルティーは?」

 マリナに尋ねられる。

「まだ分からない。俺が到達したステージじゃないとメルシュにも分からないから、情報交換をするまでは不明だ」

「ああ、そっか」

 滞在ペナルティーはオリジナルには無い要素のため、オリジナルに詳しいジュリーでも分からない。

 始まりの村みたいにどこかでNPCからヒントくらいは貰えそうだけれど、この時間帯の廃都にはそのNPCすら見当たらない。

「店は閉まっているという話だが、さすがに宿泊は出来るよな?」
「ええ。そこだけは開いているはずです」

 さすがに夜まで閉まっているとなると、あまりにも不便すぎる。

「一カ所だけ、灯りが見えますね」

 チトセさん指し示す先には、確かに光源が洩れる窓が。

「行ってみましょう」

 街が街だし、プレーヤーは居ないと思いたいな。


●●●


「“絶滅”!!」

 ベルセルクもどきとかいう獣人共の一体を、今日手に入れたばかりの“絶滅の剣槍”の効果を使用しながら貫き――倒す!

「……ライブラリに書かれていた通りか」

 “絶滅”の効果により、ここらにいたベルセルクもどき共が一斉に光に変わり出す。

「“絶滅”。倒したモンスターと同種のモンスターを、一時的に全滅させる能力ですか」

 ケルフェの冷静な声。

「ああ。これで、このエリアを抜けるまでベルセルクもどき共は出て来ねー。問題は、この効果で絶滅させた分の経験値やらなにやらが手に入らないって点か」

 突発クエストのせいで疲労している俺達は、そろそろ限界だと悟ってこの効果を使用することにした。

「強力だけれど、使いすぎれば自分の首を絞めるって事っすね」

 キヨミの言うとおりだな。コイツに頼りすぎると、“絶滅”が意味を成さないボスやらプレーヤーに、特に大苦戦するようになるだろう。

 まあ、“半ベルセルク”のサブ職業を必要数手に入れたから使ったんだけれどよ。

「……この武器が、あの時にあれば楽だったのに」

 突発クエスト、スタンピードラットを討伐せよ。

 あれは一匹だけの雄も含めて全部同種のはずだから、一匹倒せば確実に終わらせることが出来たはず。

 まあ、クエスト限定ルールで使えなくされた可能性が高いだろうがな。

「リョウ様達は大丈夫でしょうか?」

 鹿獣人のエレジーが、心配そうにしてやがる。

 アイツらは今、過酷な岩場の方に行っている。

 アッチは飛べる人間には安全らしいから、ヴァルキリーであるキャロラインや魔法使いのシホとアヤ、空を泳げる人魚のニシィーが一緒。

 つうわけで、コトリのパーティーには今、リョウラブの獣人三人娘が入っている。

 ちなみに、カオリ達五人もこっちに来た。

「そういやお前らって、始まりの村って所でコセ達と一緒に戦ったんだよな? どういう突発クエストだったんだよ?」

 たびたび耳にしてはいたが、詳しく聞いたことはなかったんだよな。

「凄かったんだよ、あの時のギルマス!」
「その直前もです。黒鬼との戦いとか、どう考えてもあの時の私達じゃ勝てないくらい強かったですから!」
「遠くからでしたが、一つ目の女との戦いは、確かに素晴らしかったです。私達が束になっても勝てなかったのに、ギルマスさんは一人で圧倒して見せまして」
「うんうん、本当に凄かった!」
「私は、ギルマスが私財で買ったたくさんの獣人を解放してくれたことの方が感動だったな~」

 コトリとケルフェだけでなく、エレジー、マーリ、キューリまで饒舌に語り出した!

 よし、俺も、スタンピードラットとアルファ・ドラコニアンの時のコセの武勇伝をしてやろう!

「コイツら……お前らがその気ならなー、私だってアテルの格好いい話をすっぞ! あれは黒昼村での話、突発クエスト・ガルガンチュア行進曲を仕掛けられた時でなー!」

 バッファの奴にまで火を付けちまった。


◇◇◇


『ああ……終わった』

 アイテムとか考えるのが好きだからって、今までにない新しいモンスターを造らされるなんて!

『まあ、ネットに使えそうなのがあったから、それをほぼ丸パクリさせて貰ったけれどねー』

 オタク共は、想像力が逞しくて助かるわ~。

『エリカ君、例の物は出来たかね?』

 オッペンハイマー様からの連絡。

『ええ、ついさっき。微調整はまだですけれど』
『そちらは私がやろう。データを送ってくれたまえ』
『あら珍しい』

 普段、直接作業する事なんてほとんど無いはずなのに。

『所で……十四番目のSSランク武器、”亡者の怨嗟が還る場所”は君の作品かね?』

『とっくにお調べになっているのでは?』

『まあね……君の潔白は証明されたが、あまりにも不可解だ。なぜ武器の名前が、君のセンスに酷似しているのかも含めて』
『さあ? 誰かが、この私に罪を被せようとしたのでは?』

 さすがに苦しいとは思いつつも、本当に心当たりが無いためどうしようもない。

『私からも、一つ尋ねたいことが』
『なにかね?』


『なぜ私に、神代文字対応の武具を造らせたのです?』


 神代文字対応の武具が無ければ、高周波の人間共をもっと簡単に片付けられたはず。

『ゲームを盛り上げるためだとも。外からその手の武器が持ち込まれるケースも発生していたし、文字を使う者同士で潰し合いをさせられるかもという期待もあった』

 コセやアテル、それにユイやルイーサとかいう女の剣のことか。

『本当にそれだけですか?』
『無論だとも』

 さすがに、こちらのメリットが薄すぎる。


『あまり深入りするのはよしたまえ、エリカ君』


 時折感じる、オッペンハイマー様の有無を言わさぬ圧倒的で不気味な圧!!

『どの業界でも、首を突っ込む人間は消されるのが世の常だ。デルタの一員たる君は、充分にそのことを理解して居るはず』

 口封じのために数十人殺すなんて、この組織では……DS所属の人間ならばよくあること。

『も、もちろん、私は弁えておりますとも!』

 私だって、オルフェのような目に遭うのは……絶対にゴメンよ。

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