ダンジョン・ザ・チョイス
358.馬獣人のケルフェ
「“宝石魔法”――ダイヤモンドダスト」
メルシュの魔法が、マッドピジョンの群れを氷付けにして倒す。
「ダイヤモンド系は、氷属性なのか?」
開発者の娘である私でも全てのユニークスキルの詳細は把握仕切れて居ないため、メルシュに尋ねる。
「ううん、今のだけだよ。ダイヤモンドは基本的に無属性だから」
魔法によっては、同じ魔法でも特定の魔法にだけ属性が加わることがある。
分かりやすいのは、フェルナンダの”精霊魔法”か。
行使する魔法によって、属性が異なる最たる魔法。
そうこうしていると、通り道の泥の中からモグラタイプのモンスター、マッドモグラの群れが出現する。
「私がやるわ~――”万変の霧”」
サトミが、ミストオーブのスキルカードから得た新たなスキルを行使。
紫味のある霧を身体に纏わり付かせるように生み出し、その霧を鞭のように振るって――と思ったら、頭を引っ込めたモグラを追って、器用に霧の触手を潜り込ませた。
「じゃーね」
……泥の中で締め潰したらしい。穴から僅かに血飛沫が舞うのが見えた。
「え、えげつない」
アヤナが引いている。
「もーう、そんなこと言ってたら、魚や動物を捌いたり出来ないじゃなーい。まあ、私も魚くらいしか捌いたことないけれどー」
「そ、それとこれとは違うでしょうが!」
「モグラさん、可愛かったのに……」
モモカが悲しんでるけれど……マッドモグラの鼻先は花のように割れていて、私としては気持ち悪いのだが……モモカのセンスは、相変わらずよく分からない。
「安全エリアだね」
泥の道の途中に、硬い地盤の安全エリアが。
「私達はまだまだ行けるわ」
スヴェトラーナが、休憩せずに進もうと提案してくる。
「最低でも五分は休むぞ。体力は有り余ってても、奇襲を警戒していた精神力は確実に削がれているのだからな」
レリーフェが、有無を言わさぬ勢いでスヴェトラーナを押さえ付ける。
「フン、分かったわよ」
これがレリーフェのやり方か……コセなら、もっと上手くやれた……と思ってしまうのは、さすがに身贔屓だろうか。
少なくとも一時、タマやユリカに不信感を持たせた私がレリーフェを責める権利は……無いかな。
●●●
『これより突発クエスト、戦士の洗礼を始めるわ!!』
ガーディアンの象がある丘から、四方八方に武器を持った半裸の男女達が広がり、押し寄せて来る。
「来たな」
「行くぞ」
ザッカルさんとキャロラインが、先陣を切る。
二人とも各々の武器を振るい、正面から守護戦士見習い達を倒していく。
単純な戦闘センスが、我々よりもずば抜けて居るようです。
「ハッ!」
私も、”猛禽鳥の嘴孔脚”の脚を振るい、戦士達に致命傷を負わせていく!
「“悪穿ち”!」
黒の剣槍を投げ、十人前後の戦士達を一撃で倒すザッカルさん!
「“戦乙女の天馬”!」
青と金の鎧纏う有翼の白馬を、自分が跨がる形で出現させ、前脚の馬蹄踏み潰していくキャロライン。
「負けてられない――“闘気盾”!」
昨日貰ったスキルカードを、これまた昨日頂いた左腕の“スティングレアシールド”Aランクに纏わせ――戦士達の振るう武器を正面から捻じ伏せながら盾の突起部分を突き刺し――そのまま突進!
「“大盾術”――ハイパワーバニッシュ!!」
数十人を巻き込む形で衝撃を与え、ぶっ飛ばした!
「ハイパワーキック!!」
“大脚術”を使用し、横合いから攻めてきた戦士達をぶちのめす!
「数は多いけれど、この調子ならあっという間に百に行きそう」
「オーイ、ケルフェー!」
おどろおどろしいデザインの金棒を振るい、私の背後の戦士を倒してくれるコトリ。
「とばしすぎじゃない?」
右腕の、真ん中から剣の生えた円形の盾、“貫けぬ物魂のごとし”の刃で戦士の首をかっ切る!
「すみません」
ちょっと調子に乗ってしまいました。
「まあ、マリナが無事だって分かったしね」
そう、島を回っている間魔法の家を使えない私達は、昨日までマリナがどこでなにをしているのか知らなかった。
生きているとは分かっていても、どの程度無事なのかはまったく分からなかったから、とても心配して居たのです。
「マリナに先を越されて、焦る気持ちは解るけれどさ!」
戦いながら会話しようとしてくるコトリ……こういう事だけは器用な。
「た、確かに、マリナは既にギルマス様にご奉仕しているかもしれませんが……だ、だからと言って焦るなど!」
私も、早くギルマス様に様々なご奉仕をして差し上げたいと思ってはいますが!
「……私、先に直接会った事を指して言ったつもりだったんだけれど」
「……ぁ」
「ケルフェって、かなりのムッツリスケベだったんだね~♪」
「――ぁぁぁあああアアアアアアアアアッッッ!!!」
やってしまったぁぁぁああああああッッッ!!!
「ほ、”ホロケウカムイ”!!」
「へ、ちょ!?」
無我夢中で力を振るい、私は戦士を倒しながら全力でコトリから逃げる!
「だって、だってだってだって、私だって獣人の女の子だもん!」
身体がもう、優れた雄であるギルマス様を求めちゃってるんだもん!!
●●●
「ありゃりゃ、すんごい馬力」
島を巡っている間に手に入れたケルフェのヘンテコな盾には、マリナが使用していた文字が六文字刻まれていた。
「私も使えないかなー、あの能力」
なんか素質が無いとダメみたいな話だったけれど、対応した武器も必要なんだっけ?
「それにしても、ザッカルさんもキャロも、キヨミまでいつの間にかどっかに行っちゃったよ」
団体行動が苦手な私が、この中で一番協調性があるっておかしくなーい?
「――“樹液弾”!」
襲ってきた猫科動物の後ろ左脚に樹液をぶつけ、固めて動きを止める。
「“殴打撃”!!」
”鋼鳥の狂群”を叩きつけて、光に変えた。
「見習い守護戦士っての以外が居るなんて、聞いてなかったけれどなー」
「チ! 仕留められなかったか」
目の隈が酷い、鈍色の軽鎧を身に着けた女が現れる。
「顔色悪いよ、大丈夫?」
「黙れ。お前に――私が受けた苦しみなんて分かるもんかッッ!! 来い、“疾風の最速猫”!!」
女の指輪が輝いて、さっきと同じ動物が顕現。
「“鞭打ち”!」
動物を自分の鞭で叩いた?
「さっきと同じだと思ったら大間違いよ! “獰猛化”!」
猫ちゃんが赤いオーラを纏って――守護戦士を切り裂きながら、猛スピードでこっちに迫ってきたし!!
「――“岩鎧”」
身体の前面に岩を纏って、その爪と牙を防ぐ。
「“大音響”」
“大音響の指輪”からの爆音を至近距離で食らわせ、少しだけ怯ませた。
本当は、狭い場所の方がずっと効果的なんだけれど!
「“光輝棒術”――シャイニングブレイ――」
「“絡め取り”!」
――鞭が絡み付いて、”鋼鳥の狂群”を奪われた!?
「スティール」
「しまッ!!」
所有権まで奪われちゃったし!!
……なんでよりによって、アレが一発で奪われちゃうかなー。
「フフフフ、この間抜けが!」
「――返せ」
右腕の“スチールフィンガーガントレット”で襲い掛かってきた戦士の首を貫きながら、最後通告をする。
それは……ギルマス達から下賜された物なんだから。
「……はぁ? そんなに返して欲しけりゃ、殺して奪い取って見ればぁ、お嬢ちゃ~ん」
――久し振りに、頭の中でブチ切れる音がした。
こんな音がしたの、両親を殺した時以来だよ。
メルシュの魔法が、マッドピジョンの群れを氷付けにして倒す。
「ダイヤモンド系は、氷属性なのか?」
開発者の娘である私でも全てのユニークスキルの詳細は把握仕切れて居ないため、メルシュに尋ねる。
「ううん、今のだけだよ。ダイヤモンドは基本的に無属性だから」
魔法によっては、同じ魔法でも特定の魔法にだけ属性が加わることがある。
分かりやすいのは、フェルナンダの”精霊魔法”か。
行使する魔法によって、属性が異なる最たる魔法。
そうこうしていると、通り道の泥の中からモグラタイプのモンスター、マッドモグラの群れが出現する。
「私がやるわ~――”万変の霧”」
サトミが、ミストオーブのスキルカードから得た新たなスキルを行使。
紫味のある霧を身体に纏わり付かせるように生み出し、その霧を鞭のように振るって――と思ったら、頭を引っ込めたモグラを追って、器用に霧の触手を潜り込ませた。
「じゃーね」
……泥の中で締め潰したらしい。穴から僅かに血飛沫が舞うのが見えた。
「え、えげつない」
アヤナが引いている。
「もーう、そんなこと言ってたら、魚や動物を捌いたり出来ないじゃなーい。まあ、私も魚くらいしか捌いたことないけれどー」
「そ、それとこれとは違うでしょうが!」
「モグラさん、可愛かったのに……」
モモカが悲しんでるけれど……マッドモグラの鼻先は花のように割れていて、私としては気持ち悪いのだが……モモカのセンスは、相変わらずよく分からない。
「安全エリアだね」
泥の道の途中に、硬い地盤の安全エリアが。
「私達はまだまだ行けるわ」
スヴェトラーナが、休憩せずに進もうと提案してくる。
「最低でも五分は休むぞ。体力は有り余ってても、奇襲を警戒していた精神力は確実に削がれているのだからな」
レリーフェが、有無を言わさぬ勢いでスヴェトラーナを押さえ付ける。
「フン、分かったわよ」
これがレリーフェのやり方か……コセなら、もっと上手くやれた……と思ってしまうのは、さすがに身贔屓だろうか。
少なくとも一時、タマやユリカに不信感を持たせた私がレリーフェを責める権利は……無いかな。
●●●
『これより突発クエスト、戦士の洗礼を始めるわ!!』
ガーディアンの象がある丘から、四方八方に武器を持った半裸の男女達が広がり、押し寄せて来る。
「来たな」
「行くぞ」
ザッカルさんとキャロラインが、先陣を切る。
二人とも各々の武器を振るい、正面から守護戦士見習い達を倒していく。
単純な戦闘センスが、我々よりもずば抜けて居るようです。
「ハッ!」
私も、”猛禽鳥の嘴孔脚”の脚を振るい、戦士達に致命傷を負わせていく!
「“悪穿ち”!」
黒の剣槍を投げ、十人前後の戦士達を一撃で倒すザッカルさん!
「“戦乙女の天馬”!」
青と金の鎧纏う有翼の白馬を、自分が跨がる形で出現させ、前脚の馬蹄踏み潰していくキャロライン。
「負けてられない――“闘気盾”!」
昨日貰ったスキルカードを、これまた昨日頂いた左腕の“スティングレアシールド”Aランクに纏わせ――戦士達の振るう武器を正面から捻じ伏せながら盾の突起部分を突き刺し――そのまま突進!
「“大盾術”――ハイパワーバニッシュ!!」
数十人を巻き込む形で衝撃を与え、ぶっ飛ばした!
「ハイパワーキック!!」
“大脚術”を使用し、横合いから攻めてきた戦士達をぶちのめす!
「数は多いけれど、この調子ならあっという間に百に行きそう」
「オーイ、ケルフェー!」
おどろおどろしいデザインの金棒を振るい、私の背後の戦士を倒してくれるコトリ。
「とばしすぎじゃない?」
右腕の、真ん中から剣の生えた円形の盾、“貫けぬ物魂のごとし”の刃で戦士の首をかっ切る!
「すみません」
ちょっと調子に乗ってしまいました。
「まあ、マリナが無事だって分かったしね」
そう、島を回っている間魔法の家を使えない私達は、昨日までマリナがどこでなにをしているのか知らなかった。
生きているとは分かっていても、どの程度無事なのかはまったく分からなかったから、とても心配して居たのです。
「マリナに先を越されて、焦る気持ちは解るけれどさ!」
戦いながら会話しようとしてくるコトリ……こういう事だけは器用な。
「た、確かに、マリナは既にギルマス様にご奉仕しているかもしれませんが……だ、だからと言って焦るなど!」
私も、早くギルマス様に様々なご奉仕をして差し上げたいと思ってはいますが!
「……私、先に直接会った事を指して言ったつもりだったんだけれど」
「……ぁ」
「ケルフェって、かなりのムッツリスケベだったんだね~♪」
「――ぁぁぁあああアアアアアアアアアッッッ!!!」
やってしまったぁぁぁああああああッッッ!!!
「ほ、”ホロケウカムイ”!!」
「へ、ちょ!?」
無我夢中で力を振るい、私は戦士を倒しながら全力でコトリから逃げる!
「だって、だってだってだって、私だって獣人の女の子だもん!」
身体がもう、優れた雄であるギルマス様を求めちゃってるんだもん!!
●●●
「ありゃりゃ、すんごい馬力」
島を巡っている間に手に入れたケルフェのヘンテコな盾には、マリナが使用していた文字が六文字刻まれていた。
「私も使えないかなー、あの能力」
なんか素質が無いとダメみたいな話だったけれど、対応した武器も必要なんだっけ?
「それにしても、ザッカルさんもキャロも、キヨミまでいつの間にかどっかに行っちゃったよ」
団体行動が苦手な私が、この中で一番協調性があるっておかしくなーい?
「――“樹液弾”!」
襲ってきた猫科動物の後ろ左脚に樹液をぶつけ、固めて動きを止める。
「“殴打撃”!!」
”鋼鳥の狂群”を叩きつけて、光に変えた。
「見習い守護戦士っての以外が居るなんて、聞いてなかったけれどなー」
「チ! 仕留められなかったか」
目の隈が酷い、鈍色の軽鎧を身に着けた女が現れる。
「顔色悪いよ、大丈夫?」
「黙れ。お前に――私が受けた苦しみなんて分かるもんかッッ!! 来い、“疾風の最速猫”!!」
女の指輪が輝いて、さっきと同じ動物が顕現。
「“鞭打ち”!」
動物を自分の鞭で叩いた?
「さっきと同じだと思ったら大間違いよ! “獰猛化”!」
猫ちゃんが赤いオーラを纏って――守護戦士を切り裂きながら、猛スピードでこっちに迫ってきたし!!
「――“岩鎧”」
身体の前面に岩を纏って、その爪と牙を防ぐ。
「“大音響”」
“大音響の指輪”からの爆音を至近距離で食らわせ、少しだけ怯ませた。
本当は、狭い場所の方がずっと効果的なんだけれど!
「“光輝棒術”――シャイニングブレイ――」
「“絡め取り”!」
――鞭が絡み付いて、”鋼鳥の狂群”を奪われた!?
「スティール」
「しまッ!!」
所有権まで奪われちゃったし!!
……なんでよりによって、アレが一発で奪われちゃうかなー。
「フフフフ、この間抜けが!」
「――返せ」
右腕の“スチールフィンガーガントレット”で襲い掛かってきた戦士の首を貫きながら、最後通告をする。
それは……ギルマス達から下賜された物なんだから。
「……はぁ? そんなに返して欲しけりゃ、殺して奪い取って見ればぁ、お嬢ちゃ~ん」
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