ダンジョン・ザ・チョイス
354.実装されたSSランク武具
「というわけですので、明日からお世話になりますね、エリューナさん!」
夜、ようやくコセ達が帰ってきたと思ったら……知らない女を連れ帰って来やがった!
まったく、こっちがトゥスカとノーザンていう奴等の件でヤキモキしていたってのに、新しい女を引っ掛けてくるとはな!
「おい、コセ。マリナ」
「文句なら、左腕が痛くなったユウダイにね」
「おい、お前、こういう時だけ狡いぞ!」
おしどり夫婦っぷりを見せ付けやがって!
「あの……もしかして私……お邪魔でしたか?」
今にも泣き出しそうになるチトセ!
「し、知らない人間がいきなり来たら……だ、誰だって驚くだろうが……」
特に、このゲームではいつ隣人同士の殺し合いが始まってもおかしくないのだから。
なのに、いきなり押し掛けてきて一緒の部屋に寝泊まりとか……有り得ねー。
まあ……結構可愛いけれど。
「……日本人にしては、顔の堀が深めだな」
コセやマリナもそうだが。
「一応、アイヌの末裔ですので」
「ああ、なるほど」
道理で、美人なわけだ。
「……お前、仲間は?」
「……死んだ者と、先に進んだ者と」
「……そうか」
いつぞやの私と、同じ眼だ。
「ハァー、お前の得物とかスキル、戦術を細かく教えて貰うぞ。それがパーティーを組む最低限の条件だ」
自分の事を棚に上げて……なにを言っているのやら、私は。
「フフ! はい、喜んで!」
心が洗われるような笑顔だな、まったく。
「これが、人徳という奴か」
トゥスカ達の件を隠している負い目もあるし……黙っておいてやるか。
「……なにを今更」
コセの仲間を問答無用で殺そうとした女が、今更仁義を振りかざすなっての。
●●●
「本日、事件がありました」
夕食の準備を終えた頃、狸獣人のカプアが戻って来たと思ったら、開口一番にそう言いだした。
「事件?」
「なにがあったの、カプア?」
私とウララが尋ねる。
「《獣人解放軍》の幹部の一人が、パーティーメンバー共々殺されたそうです」
「それって……レジスタンスの仕業ですか?」
尋ねるノーザン。
「いえ、やったのは新しくこのステージに来た輩。殺されたのは、祭壇を見張っていた者達です。目撃したレジスタンスメンバーの話では、その言動から、賞金稼ぎに転向した人間達だと推測されています」
「賞金稼ぎ……例のバウンティーハンターシステムという奴ですか」
人の命に、値段を付ける醜悪なシステム。
「顔は隠して居たそうですが、リーダーの得物は情報がありました。“エンバーミング・クライシス”という、SSランクの黒と白の大杖だそうです」
「SSランク……」
いずれ、使い手に遭遇するとは思っていたけれど……こんなに早く身近に、それも、敵になるかもしれない相手が使用しているなんて。
「能力は分かりますか?」
「いえ……ライブラリシステムには、見ただけでは名前とランクくらいしか表示されないらしく。女は指示するだけで、自分では戦わなかったそうです」
「メルシュに聞けば……なにか分かるかも」
でも、私達には連絡を取る手段が無い。
「トゥスカお姉様。そう言えば、魔法の家のコンソールを使用すれば連絡を取り合えるのでは?」
「あ!!」
魔法の家が使えないご主人様には連絡できないけれど、その手があった!
「コンソールで連絡? そんな機能があるの?」
「へ、そんな便利な機能が? ……レジスタンスの誰も、そんなこと言ってなかったのに」
二人とも知らなかったのか。
「可能であれば、仲間達に連絡を取っても構いませんか?」
コンソールでの連絡はメルシュがやっていたから、私達に使いこなせるかは分からない。
「ええ、是非お願い」
「強力なSランクを超えるSSランク……いったい、どれ程のポテンシャルを秘めているのか」
それから私とノーザンは、暫くの間コンソール操作に悪戦苦闘する事になる。
◇◇◇
『“エンバーミング・クライシス”の所有者は、さっそく好き勝手に暴れ回っているようだね』
ダンジョン・ザ・チョイスのファンとやらが考え、ネットに上げていた幻のSSランク武器とやらを実装させてみたが……なかなかどうして、波乱を巻き起こしてくれる。
バウンティーハンターシステムは私の発案だが、隠れNPCの方は別のファン考案の要素だ。
サービスが終了した今でも、ダンジョン・ザ・チョイスは世界中に根強いファンが居るらしい。
『“ケラウノス・ミョルニル”、“エンド・オブ・ガイアソード”、“ブラッディーコレクション”、“ファング・ザ・ビースト”、“アルティメットハフト”、“エンバーミング・クライシス”、”プロメテウス・フォティア”、“ジ・アビス・レインズ”、“レグレスアウルム”、“アブソリュートバーン”、“聖神剣・ゴッドブランド”、“コマンダーロードコート”、“エロスハート”。取り敢えず、十三種全てが使い手に渡った』
おかげで、攻略最前線である六十四層に陣取っていた三大レギオンにも動きが出始めたようだし……悪くない。
『うん? なぜ、SSランク欄が17番目まで存在している……』
現段階では、誰も新規のSSランクを制作していないはず。
しかも、14番目には名前まで表示されているだと!?
『“亡者の怨嗟が還る場所”……この名前、まさか神代文字に対応して……』
だとしたら、かなりマズい。
元々SSランクは、強力な神代文字の使い手であるアテルやコセ一派に対抗させるための物。
『14番目のSSランク……所有者は誰だ』
●●●
「そういうわけだから、今日から第二十四ステージの攻略を始めるから」
メルシュとレリーフェさん、ユリカにタマとスゥーシャまで、何故かネグリジェ姿で話をしに来てくれた……昨夜はエリューナさんとチトセさんと同じ部屋なのもあり、目の前の光景は目の保養と言うより毒なんですが……。
「俺達は、これからすぐに三十ステージの攻略を開始するよ」
既に四人とも、出発の準備は出来ている。
「それで、チトセって言うのは信用できそう?」
「ああ……たぶん」
出会い頭に助けられたのもあって、無条件に信用してしまっている部分はある。
少々、色眼鏡で見すぎているかもしれないけれど……大丈夫だと思う。
「そう言えば、トゥスカとノーザンは? 最近、姿を見ていない気がするんだけれど」
最近と言っても、ここ数日の話だけれど。
「二人とも、朝早くから情報収集に動いてくれている。この時間じゃないと、人の目があり過ぎるらしくてな」
何故か、レリーフェさんが進んで説明してくれる。
「そ、そうなんですか」
久し振りに、トゥスカの顔が見たかったんだけれど。
「それよりどーお、マスター。私達のこの格好……そそるでしょう?」
メルシュが、胸の谷間をドアップで見せ付けてくる!
「ど、どうしたんだ、急に?」
普段、メルシュはそんなこと言わない気が……しなくもない……か?
「コセ、レリーフェって結構大きいわよ」
「お、おい、ユリカ!」
胸を下から持ち上げるように、後ろから揉み上げるユリカ!!
「レリーフェさん、こう見えて処女だそうですよ」
「彼氏募集中だそうです♪」
タマとスゥーシャ……こんなこと、夜にしか言わないはずなのに。
「おい、勝手にバラすな! ていうか、彼氏の募集なんてしてないぞ! 人聞きの悪いことを言うな! くの……」
レリーフェさんの顔が赤い……さすがに恥ずかしかったらしい。
普段が凛々しいから、格好も相まって可愛らしく見えてしまうな。
「おい、コセ! いつまで話しているつもりだ! 私達だけで先に行くぞ!」
エリューナさんの声。
「じゃ、じゃあ、俺はこれで! 夜にでもまた連絡するから!」
「「「「「いってらっしゃーい」」」」」
なんだろう、この誤魔化されてる感は?
夜、ようやくコセ達が帰ってきたと思ったら……知らない女を連れ帰って来やがった!
まったく、こっちがトゥスカとノーザンていう奴等の件でヤキモキしていたってのに、新しい女を引っ掛けてくるとはな!
「おい、コセ。マリナ」
「文句なら、左腕が痛くなったユウダイにね」
「おい、お前、こういう時だけ狡いぞ!」
おしどり夫婦っぷりを見せ付けやがって!
「あの……もしかして私……お邪魔でしたか?」
今にも泣き出しそうになるチトセ!
「し、知らない人間がいきなり来たら……だ、誰だって驚くだろうが……」
特に、このゲームではいつ隣人同士の殺し合いが始まってもおかしくないのだから。
なのに、いきなり押し掛けてきて一緒の部屋に寝泊まりとか……有り得ねー。
まあ……結構可愛いけれど。
「……日本人にしては、顔の堀が深めだな」
コセやマリナもそうだが。
「一応、アイヌの末裔ですので」
「ああ、なるほど」
道理で、美人なわけだ。
「……お前、仲間は?」
「……死んだ者と、先に進んだ者と」
「……そうか」
いつぞやの私と、同じ眼だ。
「ハァー、お前の得物とかスキル、戦術を細かく教えて貰うぞ。それがパーティーを組む最低限の条件だ」
自分の事を棚に上げて……なにを言っているのやら、私は。
「フフ! はい、喜んで!」
心が洗われるような笑顔だな、まったく。
「これが、人徳という奴か」
トゥスカ達の件を隠している負い目もあるし……黙っておいてやるか。
「……なにを今更」
コセの仲間を問答無用で殺そうとした女が、今更仁義を振りかざすなっての。
●●●
「本日、事件がありました」
夕食の準備を終えた頃、狸獣人のカプアが戻って来たと思ったら、開口一番にそう言いだした。
「事件?」
「なにがあったの、カプア?」
私とウララが尋ねる。
「《獣人解放軍》の幹部の一人が、パーティーメンバー共々殺されたそうです」
「それって……レジスタンスの仕業ですか?」
尋ねるノーザン。
「いえ、やったのは新しくこのステージに来た輩。殺されたのは、祭壇を見張っていた者達です。目撃したレジスタンスメンバーの話では、その言動から、賞金稼ぎに転向した人間達だと推測されています」
「賞金稼ぎ……例のバウンティーハンターシステムという奴ですか」
人の命に、値段を付ける醜悪なシステム。
「顔は隠して居たそうですが、リーダーの得物は情報がありました。“エンバーミング・クライシス”という、SSランクの黒と白の大杖だそうです」
「SSランク……」
いずれ、使い手に遭遇するとは思っていたけれど……こんなに早く身近に、それも、敵になるかもしれない相手が使用しているなんて。
「能力は分かりますか?」
「いえ……ライブラリシステムには、見ただけでは名前とランクくらいしか表示されないらしく。女は指示するだけで、自分では戦わなかったそうです」
「メルシュに聞けば……なにか分かるかも」
でも、私達には連絡を取る手段が無い。
「トゥスカお姉様。そう言えば、魔法の家のコンソールを使用すれば連絡を取り合えるのでは?」
「あ!!」
魔法の家が使えないご主人様には連絡できないけれど、その手があった!
「コンソールで連絡? そんな機能があるの?」
「へ、そんな便利な機能が? ……レジスタンスの誰も、そんなこと言ってなかったのに」
二人とも知らなかったのか。
「可能であれば、仲間達に連絡を取っても構いませんか?」
コンソールでの連絡はメルシュがやっていたから、私達に使いこなせるかは分からない。
「ええ、是非お願い」
「強力なSランクを超えるSSランク……いったい、どれ程のポテンシャルを秘めているのか」
それから私とノーザンは、暫くの間コンソール操作に悪戦苦闘する事になる。
◇◇◇
『“エンバーミング・クライシス”の所有者は、さっそく好き勝手に暴れ回っているようだね』
ダンジョン・ザ・チョイスのファンとやらが考え、ネットに上げていた幻のSSランク武器とやらを実装させてみたが……なかなかどうして、波乱を巻き起こしてくれる。
バウンティーハンターシステムは私の発案だが、隠れNPCの方は別のファン考案の要素だ。
サービスが終了した今でも、ダンジョン・ザ・チョイスは世界中に根強いファンが居るらしい。
『“ケラウノス・ミョルニル”、“エンド・オブ・ガイアソード”、“ブラッディーコレクション”、“ファング・ザ・ビースト”、“アルティメットハフト”、“エンバーミング・クライシス”、”プロメテウス・フォティア”、“ジ・アビス・レインズ”、“レグレスアウルム”、“アブソリュートバーン”、“聖神剣・ゴッドブランド”、“コマンダーロードコート”、“エロスハート”。取り敢えず、十三種全てが使い手に渡った』
おかげで、攻略最前線である六十四層に陣取っていた三大レギオンにも動きが出始めたようだし……悪くない。
『うん? なぜ、SSランク欄が17番目まで存在している……』
現段階では、誰も新規のSSランクを制作していないはず。
しかも、14番目には名前まで表示されているだと!?
『“亡者の怨嗟が還る場所”……この名前、まさか神代文字に対応して……』
だとしたら、かなりマズい。
元々SSランクは、強力な神代文字の使い手であるアテルやコセ一派に対抗させるための物。
『14番目のSSランク……所有者は誰だ』
●●●
「そういうわけだから、今日から第二十四ステージの攻略を始めるから」
メルシュとレリーフェさん、ユリカにタマとスゥーシャまで、何故かネグリジェ姿で話をしに来てくれた……昨夜はエリューナさんとチトセさんと同じ部屋なのもあり、目の前の光景は目の保養と言うより毒なんですが……。
「俺達は、これからすぐに三十ステージの攻略を開始するよ」
既に四人とも、出発の準備は出来ている。
「それで、チトセって言うのは信用できそう?」
「ああ……たぶん」
出会い頭に助けられたのもあって、無条件に信用してしまっている部分はある。
少々、色眼鏡で見すぎているかもしれないけれど……大丈夫だと思う。
「そう言えば、トゥスカとノーザンは? 最近、姿を見ていない気がするんだけれど」
最近と言っても、ここ数日の話だけれど。
「二人とも、朝早くから情報収集に動いてくれている。この時間じゃないと、人の目があり過ぎるらしくてな」
何故か、レリーフェさんが進んで説明してくれる。
「そ、そうなんですか」
久し振りに、トゥスカの顔が見たかったんだけれど。
「それよりどーお、マスター。私達のこの格好……そそるでしょう?」
メルシュが、胸の谷間をドアップで見せ付けてくる!
「ど、どうしたんだ、急に?」
普段、メルシュはそんなこと言わない気が……しなくもない……か?
「コセ、レリーフェって結構大きいわよ」
「お、おい、ユリカ!」
胸を下から持ち上げるように、後ろから揉み上げるユリカ!!
「レリーフェさん、こう見えて処女だそうですよ」
「彼氏募集中だそうです♪」
タマとスゥーシャ……こんなこと、夜にしか言わないはずなのに。
「おい、勝手にバラすな! ていうか、彼氏の募集なんてしてないぞ! 人聞きの悪いことを言うな! くの……」
レリーフェさんの顔が赤い……さすがに恥ずかしかったらしい。
普段が凛々しいから、格好も相まって可愛らしく見えてしまうな。
「おい、コセ! いつまで話しているつもりだ! 私達だけで先に行くぞ!」
エリューナさんの声。
「じゃ、じゃあ、俺はこれで! 夜にでもまた連絡するから!」
「「「「「いってらっしゃーい」」」」」
なんだろう、この誤魔化されてる感は?
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