ダンジョン・ザ・チョイス
341.魔法使い達の新衣装
「服が出来たから、さっそく試してみて」
魔法職の人間に、依頼していた服飾屋さんから引き取ってきた服を、神秘の館のリビングで渡していく。
“上等なシルク”と機織りの町で手に入れた物、更に魔法のスキルカードを素材にして出来た服を。
「ようやく、新しい服が手に入ったね」
ジュリーが着たのは、黄色と白のドレス、”天雷の綺羅ドレス”Aランク。
光と雷、天雷に対する耐性と威力の強化効果がある服で、胸元と肩を露出し、長めのヒラリとしたスカートが特徴的。
ただし、冥雷のように闇と雷という二種属性以上の物には対応していない。
「うんうん、私好みじゃない!」
ユリカには、紅と黒の“煉獄の綺羅ドレス”。
「同じ氷炎と付くだけあって、マントと良く合ってるわね」
ナオには、水色と赤の“氷炎の綺羅ドレス”。
「うんうん、胸元が開いているのはちょっと気になるけれど、ローブと組み合わせると隠れるし、着心地もとっても良いわ!」
サトミのは、翠と碧の“颶風の綺羅ドレス”。
「なんか、私だけちょっとデザイン違くない?」
アヤナに渡したのは、黒と青緑が基調の“魔導師の魔法衣”、Bランク。
他の皆のは、多少の意匠は異なれど半ば色違いみたいなデザイン。けれど、アヤナのは雰囲気が結構違う。
「アヤナはあんまり特定の属性に特化しているわけじゃないから、全ての魔法の威力を底上げするタイプのを選んだの」
正直、アヤナもアオイも器用貧乏感が凄い。
マスクウェルのフェルナンダも同様の側面があるし、このパーティーにはルイーサとは別のタイプの一芸特化を固定メンバーで入れたいかな。
「なるほど……まあ、悪くないわね。もう少し明るい色の方が好みだけれど」
相変わらず、一言多い。
ちなみに、魔法使いとしても戦士としても色々中途半端なカナの分は無し。
「はい、スヴェトラーナ」
「私?」
緑と赤の鮮やかなドレスを渡す。
「“爆裂の綺羅ドレス”。爆裂系の能力に特化する際はこっちの方が威力が上がるから、状況に応じて使い分けて」
彼女の“破邪のソロチカ”はSランクで優秀だから、滅多に着ることはないだろうけれど。
私達隠れNPCの初期装備は大抵がSランクだから、スヴェトラーナみたいに用意する必要も無いんだけれど、私用として一応“混沌の綺羅ドレス”は用意しておいた。
他にも、コトリやリョウ達、魔法職用の服を幾つか。
「私も、新しい服が欲しいな~」
「モモカちゃんは、どんな服が着たいのかな~」
テイマーのサキが尋ねる。
「コセみたいに、格好いいのが良い!」
女の子なのに、そこでマスターをチョイスするのか。
「こ、コセさんだって、モモカちゃんには、きっと可愛い服を着て欲しいって……そう思ってるんじゃないかな~……なんて」
サキ、モモカに可愛い服を着せたいからってデマカセを……。
「うーん、コセはどういうのが好きなの?」
「へ……や、やっぱり、白いワンピースとかかな? モモカちゃんに、とっても良く似合うと思うよ!」
それ、絶対にアンタの願望でしょう。
「じゃあ、そろそろ行こっか」
「暗くなる前に、少しでも進もう」
日が落ちるのが遅い時季なのもあって、私達は夕刻、“妖精の家並木”から出発することにした。
●●●
○一番右:火の魔女の管轄区。
右から二番目:風の魔女の管轄区。
一番左:氷の魔女の管轄区。
左から二番目:水の魔女の管轄区。
二十九ステージの山の内部で、俺達は選択肢に遭遇していた。
「久し振りのルート分岐だな」
エリューナさんが呟く。
「この面子が少ないときに、四つもか」
しかも、俺以外の二人は氷属性に偏っている。
「それぞれの司る属性に特化した杖が手に入るらしいけれど……どうするの?」
このメンバーで魔法使いはマリナだけ。
しかも、マリナは氷と光に特化しているタイプ。
戦力アップを考えれば氷の魔女の管轄区を選ぶべきだけれど、それは同時に、氷耐性を持つ敵を相手にする事にもなる。
「氷で良いだろう。この中で恩恵があるのは、氷の魔法使いであるマリナだけなのだから」
エリューナさんに提案されてしまう。
「良いんですか?」
「私には“寒冷の指輪”があるから、問題ない」
「そう言えば、私も持ってた!」
“寒冷の指輪”は、氷耐性を無視して氷属性によるダメージを与えられるようにしてくれる指輪。
「なら、最初から問題なかったか」
俺達は、一番左の穴を下っていく事に。
「……寒くなってきた」
僅か数分程で、冷気が肌を撫でるように。
「これは、思っていた以上の寒さだ」
霜が見えたと思ったら、ほぼ氷に覆われた空間が目の前に広がる。
「は、早く通り抜けよう」
「そ、そうだな」
只のゲームならなんともないか、動きが鈍るか、床が滑るくらいだろうに。
「二人とも寒そうね」
「マリナは寒くないのか?」
「うん、あんまり。さすがに指先は冷えてきたけれど」
もしかして、装備の差なのか?
「私は寒い場所で育ったからそれなりに慣れているが……間違いなく氷点下だろうな」
進むほどに、白い息が目立つように。
「来るぞ」
“警鐘”のスキルに反応があったのか、エリューナさんがいち早く察知。
「アイススライムの群れか。“大地讃頌”!」
地面に光を広げて攻撃!
「“太陽法術”――サンバレット!!」
俺が日蝕狼討伐で手に入れたサブ職業を使い、トドメを刺してくれるマリナ。
「先に行く」
エリューナさんが“空遊滑脱”で先行し、俺達もすぐに後を追う。
「クソ……アイテムが色々ありやがる」
宝箱を初め、薬品のような物から指輪やネックレスなどが置いてある。
「急いで回収しましょう」
身体がブルブル震えてかじがんで来たけれど、貴重な物があるかもしれない。
特に確認などせず、急いでチョイスプレートに入れていく!
「また来る! 今度は別のだ!」
エリューナさんの警告ののち、奥から天井を這うように現れたのは、数刻前に戦った長身の魔女が青くなったかのようなモンスターが数体。
しかも、背から蜘蛛の脚のような物が生えている!
「“魔炎”!」
青き蜘蛛の魔女を撹乱し、“地天衝のブーツ”で空を踏んで接近!
「“ハイパワープリック”!!」
“サムシンググレートソード”を顔面から突き刺し、まずは一体!
「”飛剣・靈光”!」
「“熱光線”!」
エリューナさんもマリナも、順調に仕留めていく。
「く!」
天井から落ちてきた個体が、黒の長身の魔女と同様の動きで仕掛けてくる!
接近されると、このクネクネした回るような動きからの連撃が厄介!
「――絞殺」
左手で首を絞め、即死攻撃を見舞う!
「久し振りに使ったけれど、人間タイプには効果的だな」
”兇賊”のサブ職業は、こういう狭い場所での人型との戦闘に便利だ。
「大地の盾」
指輪で出現させた盾で別の個体に激突――壁に押しつけた状態で“殺人術”による圧殺を発動し、仕留める!
「少しは暖まったが、急がないとまともに動けなくなりそうだ」
全部仕留め終わったらしい。
「ですね」
俺も、剣を振る感覚がいつもと違ってやりづらい。
この場所は、敵以上にステージの寒さが厄介になりそうだ。
魔法職の人間に、依頼していた服飾屋さんから引き取ってきた服を、神秘の館のリビングで渡していく。
“上等なシルク”と機織りの町で手に入れた物、更に魔法のスキルカードを素材にして出来た服を。
「ようやく、新しい服が手に入ったね」
ジュリーが着たのは、黄色と白のドレス、”天雷の綺羅ドレス”Aランク。
光と雷、天雷に対する耐性と威力の強化効果がある服で、胸元と肩を露出し、長めのヒラリとしたスカートが特徴的。
ただし、冥雷のように闇と雷という二種属性以上の物には対応していない。
「うんうん、私好みじゃない!」
ユリカには、紅と黒の“煉獄の綺羅ドレス”。
「同じ氷炎と付くだけあって、マントと良く合ってるわね」
ナオには、水色と赤の“氷炎の綺羅ドレス”。
「うんうん、胸元が開いているのはちょっと気になるけれど、ローブと組み合わせると隠れるし、着心地もとっても良いわ!」
サトミのは、翠と碧の“颶風の綺羅ドレス”。
「なんか、私だけちょっとデザイン違くない?」
アヤナに渡したのは、黒と青緑が基調の“魔導師の魔法衣”、Bランク。
他の皆のは、多少の意匠は異なれど半ば色違いみたいなデザイン。けれど、アヤナのは雰囲気が結構違う。
「アヤナはあんまり特定の属性に特化しているわけじゃないから、全ての魔法の威力を底上げするタイプのを選んだの」
正直、アヤナもアオイも器用貧乏感が凄い。
マスクウェルのフェルナンダも同様の側面があるし、このパーティーにはルイーサとは別のタイプの一芸特化を固定メンバーで入れたいかな。
「なるほど……まあ、悪くないわね。もう少し明るい色の方が好みだけれど」
相変わらず、一言多い。
ちなみに、魔法使いとしても戦士としても色々中途半端なカナの分は無し。
「はい、スヴェトラーナ」
「私?」
緑と赤の鮮やかなドレスを渡す。
「“爆裂の綺羅ドレス”。爆裂系の能力に特化する際はこっちの方が威力が上がるから、状況に応じて使い分けて」
彼女の“破邪のソロチカ”はSランクで優秀だから、滅多に着ることはないだろうけれど。
私達隠れNPCの初期装備は大抵がSランクだから、スヴェトラーナみたいに用意する必要も無いんだけれど、私用として一応“混沌の綺羅ドレス”は用意しておいた。
他にも、コトリやリョウ達、魔法職用の服を幾つか。
「私も、新しい服が欲しいな~」
「モモカちゃんは、どんな服が着たいのかな~」
テイマーのサキが尋ねる。
「コセみたいに、格好いいのが良い!」
女の子なのに、そこでマスターをチョイスするのか。
「こ、コセさんだって、モモカちゃんには、きっと可愛い服を着て欲しいって……そう思ってるんじゃないかな~……なんて」
サキ、モモカに可愛い服を着せたいからってデマカセを……。
「うーん、コセはどういうのが好きなの?」
「へ……や、やっぱり、白いワンピースとかかな? モモカちゃんに、とっても良く似合うと思うよ!」
それ、絶対にアンタの願望でしょう。
「じゃあ、そろそろ行こっか」
「暗くなる前に、少しでも進もう」
日が落ちるのが遅い時季なのもあって、私達は夕刻、“妖精の家並木”から出発することにした。
●●●
○一番右:火の魔女の管轄区。
右から二番目:風の魔女の管轄区。
一番左:氷の魔女の管轄区。
左から二番目:水の魔女の管轄区。
二十九ステージの山の内部で、俺達は選択肢に遭遇していた。
「久し振りのルート分岐だな」
エリューナさんが呟く。
「この面子が少ないときに、四つもか」
しかも、俺以外の二人は氷属性に偏っている。
「それぞれの司る属性に特化した杖が手に入るらしいけれど……どうするの?」
このメンバーで魔法使いはマリナだけ。
しかも、マリナは氷と光に特化しているタイプ。
戦力アップを考えれば氷の魔女の管轄区を選ぶべきだけれど、それは同時に、氷耐性を持つ敵を相手にする事にもなる。
「氷で良いだろう。この中で恩恵があるのは、氷の魔法使いであるマリナだけなのだから」
エリューナさんに提案されてしまう。
「良いんですか?」
「私には“寒冷の指輪”があるから、問題ない」
「そう言えば、私も持ってた!」
“寒冷の指輪”は、氷耐性を無視して氷属性によるダメージを与えられるようにしてくれる指輪。
「なら、最初から問題なかったか」
俺達は、一番左の穴を下っていく事に。
「……寒くなってきた」
僅か数分程で、冷気が肌を撫でるように。
「これは、思っていた以上の寒さだ」
霜が見えたと思ったら、ほぼ氷に覆われた空間が目の前に広がる。
「は、早く通り抜けよう」
「そ、そうだな」
只のゲームならなんともないか、動きが鈍るか、床が滑るくらいだろうに。
「二人とも寒そうね」
「マリナは寒くないのか?」
「うん、あんまり。さすがに指先は冷えてきたけれど」
もしかして、装備の差なのか?
「私は寒い場所で育ったからそれなりに慣れているが……間違いなく氷点下だろうな」
進むほどに、白い息が目立つように。
「来るぞ」
“警鐘”のスキルに反応があったのか、エリューナさんがいち早く察知。
「アイススライムの群れか。“大地讃頌”!」
地面に光を広げて攻撃!
「“太陽法術”――サンバレット!!」
俺が日蝕狼討伐で手に入れたサブ職業を使い、トドメを刺してくれるマリナ。
「先に行く」
エリューナさんが“空遊滑脱”で先行し、俺達もすぐに後を追う。
「クソ……アイテムが色々ありやがる」
宝箱を初め、薬品のような物から指輪やネックレスなどが置いてある。
「急いで回収しましょう」
身体がブルブル震えてかじがんで来たけれど、貴重な物があるかもしれない。
特に確認などせず、急いでチョイスプレートに入れていく!
「また来る! 今度は別のだ!」
エリューナさんの警告ののち、奥から天井を這うように現れたのは、数刻前に戦った長身の魔女が青くなったかのようなモンスターが数体。
しかも、背から蜘蛛の脚のような物が生えている!
「“魔炎”!」
青き蜘蛛の魔女を撹乱し、“地天衝のブーツ”で空を踏んで接近!
「“ハイパワープリック”!!」
“サムシンググレートソード”を顔面から突き刺し、まずは一体!
「”飛剣・靈光”!」
「“熱光線”!」
エリューナさんもマリナも、順調に仕留めていく。
「く!」
天井から落ちてきた個体が、黒の長身の魔女と同様の動きで仕掛けてくる!
接近されると、このクネクネした回るような動きからの連撃が厄介!
「――絞殺」
左手で首を絞め、即死攻撃を見舞う!
「久し振りに使ったけれど、人間タイプには効果的だな」
”兇賊”のサブ職業は、こういう狭い場所での人型との戦闘に便利だ。
「大地の盾」
指輪で出現させた盾で別の個体に激突――壁に押しつけた状態で“殺人術”による圧殺を発動し、仕留める!
「少しは暖まったが、急がないとまともに動けなくなりそうだ」
全部仕留め終わったらしい。
「ですね」
俺も、剣を振る感覚がいつもと違ってやりづらい。
この場所は、敵以上にステージの寒さが厄介になりそうだ。
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