ダンジョン・ザ・チョイス
338.シルキーのコツポン
「あ♡ あ♡ もっと、ユウダイを感じていたい♡♡♡」
マリナがテントを出て数十分、未だに嬌声が微かに聞こえてくる。
「久し振りだから、歯止めが利かないかも」
「良いよ……私に、全部頂戴」
度々マリナを煽った身だが……なんか面白くないな。
せめて、私に聞こえないようにヤれよ! さっきから眠れないんだよ!
「あ♡♡ ああ♡♡ ああ♡♡! ユウダイ♡♡ ユウダイ♡♡♡ ユウダーイ♡♡♡♡!!」
マリナ……アイツ、綺麗な顔して淫乱すぎる!!
「クソ……私まで変な気分になってくるだろうが」
●●●
「……うーん」
小鳥の囀りが……聞こえる。
「そうだ……私」
昨日は、ボロ家に泊まったんだった。
「ハァーぁ……これで条件を満たせてなかったら、文句の一つでも言ってやる」
半ば下着みたいな寝間着姿のまま、“上質なシルク”を適当に置いておいたテーブルの前へ。
「あれ……綺麗に片付いてる」
メルシュ達に言われて、結構物を散乱させてたのに。
○以下から一つを選択出来ます。
★シルキーをパーティーに加える。
★妖精侍女のサブ職業を手に入れる。
★私の家のスキルカード・超光属性強化のスキルカードを手に入れる。
いきなりチョイスプレートが出て来た。
「……来た」
私は、シルキーをパーティーに加えるを選択。
すると光が天井から降り注ぎ……一人の女の子の姿に。
薄い金髪を淑やか風にポニーテールにした、真っ白な侍女風のドレスを着る少女が。
「ろくに片付けも出来ないダメなダメなダメなご主人様。私が、この家と共に最後の最後までご奉仕して差し上げましょう♪」
箒を振り回しながらダンスをしたかと思えば……コイツ、今なんて言った?
「片付けくらい、私は出来るわよ!」
むしろ、サンヤやルフィルの方が床に散らかす癖があるくらいだし!
「私は家を綺麗にするのが好きなので、むしろ汚して頂けないと困ってしまいます~」
なに、この偏屈なマゾ女。
「……まさかアイツら、変なNPCを押し付けようとしたわけじゃないでしょうね!」
「煩いですよ、ツェツァ」
「うーん、違う家の朝は新鮮だなー」
「どうやら、無事に契約出来たようですね」
ルフィル、サンヤ、ヒビキが、私の寝間着に似た格好で起きてきた。
「それでは、さっそく出発の準備をしましょうか~♪」
――辺りの景色がいきなりブレて…………家が……消えた。
「「「……痴女が居る」」」
私達が寝間着姿で外に放り出された瞬間を――ジュリー達に見られた~~!?
「あ、ご主人様。私に名前をお与えくださーい♪」
「ウッサいわ、このボケッ!!」
本当に……最悪ッ。
●●●
『シュルルルル……シャー!!』
緑生い茂る山に入って暫く、白い大蛇が木の上から現れて威嚇してきた。
「弱点は、氷属性のようだ」
ある程度接近したら表示された。
ドロップ品までは、さすがに表示されないらしい。
「私がやる。武器交換――”アイスコフィン”」
硝子の剣から、氷の大剣に持ち替えるマリナ。
「援護する。“魔炎”」
宙を泳ぐ紫炎の蛇で撹乱しながら、マリナが攻め込む隙を作らせる。
「“二連瞬足”」
二度の瞬足からの、顎下への一突きが決まった!
「“氷結の棺”」
突き刺した部分から、大蛇の巨体を一気に凍結させてしまう!?
「さすが、Aランク武器」
突き刺してからじゃないと効果を発揮しづらいのかもしれないけれど、その分威力は絶大か。
その証拠に、今の一撃だけで白蛇が光に変わり始めている。
「やったな」
「うん、サンキュー」
自然と手を叩き合う俺達。
「…………」
「な、なんですか?」
エリューナさんの無言の圧が凄い。
「……いや、テントを片付けるとき、マリナが寝てた所から匂ったなと」
「へ!? ……ぁ」
「おめっとさん」
「――あああああああああッッ!!」
その割には、なんだか凄く眠そうに見えるけれど……気付いてたのかな? 夜の時点で。
だとすると、昨夜は寝ていたと言う遠回しな気遣いなのかも……さすがに考え過ぎか?
「ほら、さっさと進むぞ」
「あ、待ってください」
恥ずかしくなりながらも、エリューナさんを二人で追う。
「それで、取り敢えず上を目指せば良いんだったか?」
「はい。山頂にある洞穴から、今度は下へと降りていく。そこを越えれば、その先にボスが居ると」
メルシュ達は既に三つのステージを超えているし、俺ももう少しペースを上げたいところ。
「さすがに、次の町やら村では、一日くらいゆっくり休みたい所だな」
「……そうですね」
荒廃の大地の村ではろくに休めなかったし、魔法の家も使えないから……まあ、仕方ないか。
「……“警鐘”のスキルに反応。数は複数。さっきの蛇ほど音は大きくない」
エリューナさんに渡した”警鐘“は、敵の脅威度を、頭の中に直接響く音などで判別出来る物らしい。
「すぐそこまで来てる」
俺とマリナが構えた瞬間、山の斜面を狂ったように移動するのは……猪のモンスター達。
非常識なサイズではなく、故に俊敏な動き!
「クソ眠いってのに……とっとと仕留めるぞ!」
エリューナさん……やっぱり、聞かれてたんだろうな……。
●●●
「は? 一日、ここに滞在する?」
スヴェトラーナの圧。
「昨日、“上質なシルク”というのが手に入っただろう? そのおかげで、魔法使い専用の高ランクの衣服が作成可能になったそうだ」
メルシュに危害が加えられぬよう、私が魔法の家の領域で説明した。
「で、それが出来上がるのが今日の夕方くらいだから、出発は早くても今日の夕方だと」
「私もメルシュも、今日は一日休息に当てて、明日の朝早くの出発を考えている」
騎士団を率いた身としては、当然の判断。
「少しでも早く、先に進みたいって言うのに!」
「すみません、レリーフェさんでしたよね?」
先日加わったばかりのヒビキという女が、私に話し掛けてくる。
「メルシュさんを交えて、少々相談したい事があるのですが。お時間を頂きたく」
「ちょ、ヒビキ!?」
「急いては事をし損じる。私はこの言葉を、この数年で痛いほど実感しました」
スヴェトラーナを諫めようとしてくれているのか。
「それに、一つのステージの攻略を数日で、それも連続で、死者を一人も出さずに済ませるなど、私の常識ではあり得ない事です。この集団の攻略ペースと効率さは、充分すぎるほど異常と言えるでしょう」
五十三ステージまで進んだ女の言葉は、さすがに重いな。
「……言われなくても分かってるわよ」
彼女達も、以前に仲間を失って居るのだろう。
「戦力が落ちれば、攻略ペースを下げざる終えないだろう。大丈夫、メルシュは安全と攻略速度を出来る限り両立しようとしてくれているさ」
なによりも、コセ殿に追い付こうという熱意がある者ばかりだしな。
「それと……ルフィルのこと、宜しく頼む」
「……ええ」
彼女にはもう、私の言葉は届かないだろうから。
「というわけですのでマスター、私の名前の再考をしましょう!」
「アンタの名前はコツポンよ。ポンコツをもじってコツポン。本当はポンコツって名前にしたかったのを、わざわざもじってあげたのよ?」
「い、いくらなんでも酷すぎますよ、ご主人様~!」
「ウッサい、黙れ!」
いつの間にかコント集団みたいなってるな、コイツら。
マリナがテントを出て数十分、未だに嬌声が微かに聞こえてくる。
「久し振りだから、歯止めが利かないかも」
「良いよ……私に、全部頂戴」
度々マリナを煽った身だが……なんか面白くないな。
せめて、私に聞こえないようにヤれよ! さっきから眠れないんだよ!
「あ♡♡ ああ♡♡ ああ♡♡! ユウダイ♡♡ ユウダイ♡♡♡ ユウダーイ♡♡♡♡!!」
マリナ……アイツ、綺麗な顔して淫乱すぎる!!
「クソ……私まで変な気分になってくるだろうが」
●●●
「……うーん」
小鳥の囀りが……聞こえる。
「そうだ……私」
昨日は、ボロ家に泊まったんだった。
「ハァーぁ……これで条件を満たせてなかったら、文句の一つでも言ってやる」
半ば下着みたいな寝間着姿のまま、“上質なシルク”を適当に置いておいたテーブルの前へ。
「あれ……綺麗に片付いてる」
メルシュ達に言われて、結構物を散乱させてたのに。
○以下から一つを選択出来ます。
★シルキーをパーティーに加える。
★妖精侍女のサブ職業を手に入れる。
★私の家のスキルカード・超光属性強化のスキルカードを手に入れる。
いきなりチョイスプレートが出て来た。
「……来た」
私は、シルキーをパーティーに加えるを選択。
すると光が天井から降り注ぎ……一人の女の子の姿に。
薄い金髪を淑やか風にポニーテールにした、真っ白な侍女風のドレスを着る少女が。
「ろくに片付けも出来ないダメなダメなダメなご主人様。私が、この家と共に最後の最後までご奉仕して差し上げましょう♪」
箒を振り回しながらダンスをしたかと思えば……コイツ、今なんて言った?
「片付けくらい、私は出来るわよ!」
むしろ、サンヤやルフィルの方が床に散らかす癖があるくらいだし!
「私は家を綺麗にするのが好きなので、むしろ汚して頂けないと困ってしまいます~」
なに、この偏屈なマゾ女。
「……まさかアイツら、変なNPCを押し付けようとしたわけじゃないでしょうね!」
「煩いですよ、ツェツァ」
「うーん、違う家の朝は新鮮だなー」
「どうやら、無事に契約出来たようですね」
ルフィル、サンヤ、ヒビキが、私の寝間着に似た格好で起きてきた。
「それでは、さっそく出発の準備をしましょうか~♪」
――辺りの景色がいきなりブレて…………家が……消えた。
「「「……痴女が居る」」」
私達が寝間着姿で外に放り出された瞬間を――ジュリー達に見られた~~!?
「あ、ご主人様。私に名前をお与えくださーい♪」
「ウッサいわ、このボケッ!!」
本当に……最悪ッ。
●●●
『シュルルルル……シャー!!』
緑生い茂る山に入って暫く、白い大蛇が木の上から現れて威嚇してきた。
「弱点は、氷属性のようだ」
ある程度接近したら表示された。
ドロップ品までは、さすがに表示されないらしい。
「私がやる。武器交換――”アイスコフィン”」
硝子の剣から、氷の大剣に持ち替えるマリナ。
「援護する。“魔炎”」
宙を泳ぐ紫炎の蛇で撹乱しながら、マリナが攻め込む隙を作らせる。
「“二連瞬足”」
二度の瞬足からの、顎下への一突きが決まった!
「“氷結の棺”」
突き刺した部分から、大蛇の巨体を一気に凍結させてしまう!?
「さすが、Aランク武器」
突き刺してからじゃないと効果を発揮しづらいのかもしれないけれど、その分威力は絶大か。
その証拠に、今の一撃だけで白蛇が光に変わり始めている。
「やったな」
「うん、サンキュー」
自然と手を叩き合う俺達。
「…………」
「な、なんですか?」
エリューナさんの無言の圧が凄い。
「……いや、テントを片付けるとき、マリナが寝てた所から匂ったなと」
「へ!? ……ぁ」
「おめっとさん」
「――あああああああああッッ!!」
その割には、なんだか凄く眠そうに見えるけれど……気付いてたのかな? 夜の時点で。
だとすると、昨夜は寝ていたと言う遠回しな気遣いなのかも……さすがに考え過ぎか?
「ほら、さっさと進むぞ」
「あ、待ってください」
恥ずかしくなりながらも、エリューナさんを二人で追う。
「それで、取り敢えず上を目指せば良いんだったか?」
「はい。山頂にある洞穴から、今度は下へと降りていく。そこを越えれば、その先にボスが居ると」
メルシュ達は既に三つのステージを超えているし、俺ももう少しペースを上げたいところ。
「さすがに、次の町やら村では、一日くらいゆっくり休みたい所だな」
「……そうですね」
荒廃の大地の村ではろくに休めなかったし、魔法の家も使えないから……まあ、仕方ないか。
「……“警鐘”のスキルに反応。数は複数。さっきの蛇ほど音は大きくない」
エリューナさんに渡した”警鐘“は、敵の脅威度を、頭の中に直接響く音などで判別出来る物らしい。
「すぐそこまで来てる」
俺とマリナが構えた瞬間、山の斜面を狂ったように移動するのは……猪のモンスター達。
非常識なサイズではなく、故に俊敏な動き!
「クソ眠いってのに……とっとと仕留めるぞ!」
エリューナさん……やっぱり、聞かれてたんだろうな……。
●●●
「は? 一日、ここに滞在する?」
スヴェトラーナの圧。
「昨日、“上質なシルク”というのが手に入っただろう? そのおかげで、魔法使い専用の高ランクの衣服が作成可能になったそうだ」
メルシュに危害が加えられぬよう、私が魔法の家の領域で説明した。
「で、それが出来上がるのが今日の夕方くらいだから、出発は早くても今日の夕方だと」
「私もメルシュも、今日は一日休息に当てて、明日の朝早くの出発を考えている」
騎士団を率いた身としては、当然の判断。
「少しでも早く、先に進みたいって言うのに!」
「すみません、レリーフェさんでしたよね?」
先日加わったばかりのヒビキという女が、私に話し掛けてくる。
「メルシュさんを交えて、少々相談したい事があるのですが。お時間を頂きたく」
「ちょ、ヒビキ!?」
「急いては事をし損じる。私はこの言葉を、この数年で痛いほど実感しました」
スヴェトラーナを諫めようとしてくれているのか。
「それに、一つのステージの攻略を数日で、それも連続で、死者を一人も出さずに済ませるなど、私の常識ではあり得ない事です。この集団の攻略ペースと効率さは、充分すぎるほど異常と言えるでしょう」
五十三ステージまで進んだ女の言葉は、さすがに重いな。
「……言われなくても分かってるわよ」
彼女達も、以前に仲間を失って居るのだろう。
「戦力が落ちれば、攻略ペースを下げざる終えないだろう。大丈夫、メルシュは安全と攻略速度を出来る限り両立しようとしてくれているさ」
なによりも、コセ殿に追い付こうという熱意がある者ばかりだしな。
「それと……ルフィルのこと、宜しく頼む」
「……ええ」
彼女にはもう、私の言葉は届かないだろうから。
「というわけですのでマスター、私の名前の再考をしましょう!」
「アンタの名前はコツポンよ。ポンコツをもじってコツポン。本当はポンコツって名前にしたかったのを、わざわざもじってあげたのよ?」
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