ダンジョン・ザ・チョイス
336.魔神・銀粉蛾
「二十二ステージのボスは、魔神・銀粉蛾。弱点属性は火。有効武器は弓矢。危険攻撃は銀粉を振り撒く事で、皮膚を爛れさせてくるよ。回避は難しいから、風で防ぐのを勧めるよ」
「げ!」
「爛れさせるとか、最悪です」
ナオとクマムを始め、皆凄く嫌そう。
「蛾の魔神だから、飛行手段も持っているからね。それと、ステージギミックで大きな葉っぱが次から次へと生え始めるから、火を使う際は注意して」
弱点を突くのを、躊躇しちゃうような仕掛けなんだ。
「撃破特典は好きなのを選んで良いけれど、欲しいのが無ければ“上等なシルク”を選んで欲しいかな」
ボスからも手に入るんだ、あの触り心地が良いの。
「じゃ、さっそく私達から行くね」
メルシュさんとジュリーさん達が、ボス部屋へ。
「ユイさん達、三人だけで大丈夫ですか?」
スヴェトラーナさん達の人数が四人になってしまったから……パーティーを別けることになった私達を心配してくれるタマさん。
「うん、大丈夫」
試してみたい戦術もあるし。
「アンタは自分の心配でもしてな、タマ。一番なにがあるか分からない体質になっちまったんだから」
シレイアさんがタマさんを気遣う。
なんせ、幽霊に憑かれていたかもしれないんだからね。
「あら、もう終わったみたいよ」
カナさんが教えてくれる。
「……それじゃ」
シレイアさんとカナさんの三人で、ボス部屋の中へ。
奥で銀のラインが走り、白石の蛾人間が動き出す。
「ちょっと……蚕の成虫に似てる?」
「さっそく始まったね」
シレイアさんが言っているのは、床から急速に生え始めた草……クワの葉に似ているかな。大きさは全然違うけれど。
生え始めるの、魔神が翅を振わせて飛ぶのとほぼ一緒だったな。
「じゃあ、一人でやるから」
「だ、大丈夫? ユイちゃん」
「じゃ、宜しく」
ようやく、コレを試すのにちょうど良さそうな状況に巡り会えた。
「――”巨太刀の神降ろし”」
右腕の”巨太刀の神降ろしの腕輪”の力を用いて――右手の”波紋龍閃の太刀”の鍔の上の空間が歪み、十倍以上の大きさになった太刀がそこから出現する。
「すぐに終わらせるね」
成長し続けるクワの葉を跳び、飛行する魔神を目指して駆け――文字を六文字刻む!
「煌めく風?」
接近したからか、いきなり例の危険攻撃を仕掛けて来たか。
「“太刀風”――ハッ!!」
構えを取るように巨太刀を振ると、途轍もない風が巻き起こって銀風を吹き飛ばす!
剣の重さは変わらないし、“太刀風”はパワーアップしているし……使いどころが限られる点を除けば、凄く便利。
「“竜刀剣術”――――神断ち」
“太刀風”の暴風で翅が裏返った所に、巨太刀の竜閃を決めた。
「……文字通りの……一撃必殺」
私が着地した瞬間、カナさんの声が聞こえて来る。
○おめでとうございます。魔神・銀風蛾の討伐に成功しました。
「ナーイス、マスター♪」
「ヤェーイ」
シレイアさんと手を叩き合う。
○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。
★銀風蛾の鱗粉翅 ★銀風魔法のスキルカード
★桑の園の腕輪 ★上等なシルク
「好きなのを選んで良いのよね?」
カナさんがシレイアさんに尋ねる。
「“銀風魔法”は、対人戦はともかくね。威力もイマイチな上、フレンドリーファイアの危険性も高いし」
ヨシノさんなら腕輪一択だろうけれど、特に欲しいのが無ければ“上等なシルク”で良いって言ってたっけ。
「アタシは魔法を選ぶよ。メルシュに頼まれたからね」
「……うん?」
メルシュさんは、自分では魔法を選ばないんだ。
「あ、こうやって飛べば良いんだ! 結構速ーい!」
カナさんは、”銀風蛾の鱗粉翅”を選んだみたい……元気に飛び回って、とっても楽しそう。
あの人……絶対に虫好きだ。
●●●
「“狐の嫁入り”――灯火」
サブ職業、“狐嫁”の能力で無数の火の玉を作り出し、魔神・銀風蛾を攻撃し続ける。
「前よりも楽ですね」
もっと上のステージで手に入る能力ですが、火の玉を自分の意思で誘導できるため、葉を燃やさぬよう翅を避けて攻撃することが容易。
そういえば、妖精のアドバイスだと翅を矢で射れば危険攻撃を防げるとあったはずですが、敢えてあの隠れNPCは言わなかったのでしょう。
もし燃えた状態の魔神を撃ち落とせば、大量の植物に火が燃え移りますから。
ほんの数十秒で地面を覆い尽くしてしまうほど成長してしまう、巨大なお化け葉に。
「そろそろ終わらせます――“紅蓮投槍術”、クリムゾンジャベリン!!」
“馬上で振るうは十字の煌めき”に紅蓮の炎を纏わせ、胸元を貫いて上半身を粉砕した。
○おめでとうございます。魔神・銀風蛾の討伐に成功しました。
「任せちゃったけれど、楽勝だったね」
山猫獣人が、声を掛けてくる。
「二度目ですし、相性が良い相手ですから」
まさか、同じ魔神と二度も戦う事になろうとは……数日前までは、想像だにしませんでした。
「そう言えば、ヒビキさんのパーティーメンバーはどうなったのです?」
ルフィルさんが尋ねてくる。
「私が持っていた家の鍵は、いつの間にか消滅していました。奴隷になってしまった事でパーティーからも強制的に外れてしまったようですし……確かめる術がありません」
レギオンリーダーも死んでしまったようですし……あの状況で、いったい何人が無事だったのか。
「お仲間に会えたら、そっちに戻るの?」
「どちらにせよ既に所属レギオンは無くなっていますので、新しく起ち上げるか、別のレギオンに入れて貰うことになるでしょう」
スヴェトラーナさんに、正直に答える。
私の目的は、あくまでゲームをクリアして元の世界に帰還すること。
メルシュという隠れNPCを有する《龍意のケンシ》はまだまだ実力不足でしょうが、他には無い情報という武器がある。
なにより、ゲーム攻略に積極的だ。
彼等に協力する方が、結果的に私の目的を果たす最短の道となるかもしれない。
「そろそろ、この場を次の方々に譲りましょう」
もう少し、《龍意のケンシ》の方々には歩み寄って置きましょうか。
「そう言えば……」
あのユイという少女……どこかで見た憶えが……気のせいでしょうかね。
○これより、第二十三ステージの妖精の家並木に転移します。
「げ!」
「爛れさせるとか、最悪です」
ナオとクマムを始め、皆凄く嫌そう。
「蛾の魔神だから、飛行手段も持っているからね。それと、ステージギミックで大きな葉っぱが次から次へと生え始めるから、火を使う際は注意して」
弱点を突くのを、躊躇しちゃうような仕掛けなんだ。
「撃破特典は好きなのを選んで良いけれど、欲しいのが無ければ“上等なシルク”を選んで欲しいかな」
ボスからも手に入るんだ、あの触り心地が良いの。
「じゃ、さっそく私達から行くね」
メルシュさんとジュリーさん達が、ボス部屋へ。
「ユイさん達、三人だけで大丈夫ですか?」
スヴェトラーナさん達の人数が四人になってしまったから……パーティーを別けることになった私達を心配してくれるタマさん。
「うん、大丈夫」
試してみたい戦術もあるし。
「アンタは自分の心配でもしてな、タマ。一番なにがあるか分からない体質になっちまったんだから」
シレイアさんがタマさんを気遣う。
なんせ、幽霊に憑かれていたかもしれないんだからね。
「あら、もう終わったみたいよ」
カナさんが教えてくれる。
「……それじゃ」
シレイアさんとカナさんの三人で、ボス部屋の中へ。
奥で銀のラインが走り、白石の蛾人間が動き出す。
「ちょっと……蚕の成虫に似てる?」
「さっそく始まったね」
シレイアさんが言っているのは、床から急速に生え始めた草……クワの葉に似ているかな。大きさは全然違うけれど。
生え始めるの、魔神が翅を振わせて飛ぶのとほぼ一緒だったな。
「じゃあ、一人でやるから」
「だ、大丈夫? ユイちゃん」
「じゃ、宜しく」
ようやく、コレを試すのにちょうど良さそうな状況に巡り会えた。
「――”巨太刀の神降ろし”」
右腕の”巨太刀の神降ろしの腕輪”の力を用いて――右手の”波紋龍閃の太刀”の鍔の上の空間が歪み、十倍以上の大きさになった太刀がそこから出現する。
「すぐに終わらせるね」
成長し続けるクワの葉を跳び、飛行する魔神を目指して駆け――文字を六文字刻む!
「煌めく風?」
接近したからか、いきなり例の危険攻撃を仕掛けて来たか。
「“太刀風”――ハッ!!」
構えを取るように巨太刀を振ると、途轍もない風が巻き起こって銀風を吹き飛ばす!
剣の重さは変わらないし、“太刀風”はパワーアップしているし……使いどころが限られる点を除けば、凄く便利。
「“竜刀剣術”――――神断ち」
“太刀風”の暴風で翅が裏返った所に、巨太刀の竜閃を決めた。
「……文字通りの……一撃必殺」
私が着地した瞬間、カナさんの声が聞こえて来る。
○おめでとうございます。魔神・銀風蛾の討伐に成功しました。
「ナーイス、マスター♪」
「ヤェーイ」
シレイアさんと手を叩き合う。
○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。
★銀風蛾の鱗粉翅 ★銀風魔法のスキルカード
★桑の園の腕輪 ★上等なシルク
「好きなのを選んで良いのよね?」
カナさんがシレイアさんに尋ねる。
「“銀風魔法”は、対人戦はともかくね。威力もイマイチな上、フレンドリーファイアの危険性も高いし」
ヨシノさんなら腕輪一択だろうけれど、特に欲しいのが無ければ“上等なシルク”で良いって言ってたっけ。
「アタシは魔法を選ぶよ。メルシュに頼まれたからね」
「……うん?」
メルシュさんは、自分では魔法を選ばないんだ。
「あ、こうやって飛べば良いんだ! 結構速ーい!」
カナさんは、”銀風蛾の鱗粉翅”を選んだみたい……元気に飛び回って、とっても楽しそう。
あの人……絶対に虫好きだ。
●●●
「“狐の嫁入り”――灯火」
サブ職業、“狐嫁”の能力で無数の火の玉を作り出し、魔神・銀風蛾を攻撃し続ける。
「前よりも楽ですね」
もっと上のステージで手に入る能力ですが、火の玉を自分の意思で誘導できるため、葉を燃やさぬよう翅を避けて攻撃することが容易。
そういえば、妖精のアドバイスだと翅を矢で射れば危険攻撃を防げるとあったはずですが、敢えてあの隠れNPCは言わなかったのでしょう。
もし燃えた状態の魔神を撃ち落とせば、大量の植物に火が燃え移りますから。
ほんの数十秒で地面を覆い尽くしてしまうほど成長してしまう、巨大なお化け葉に。
「そろそろ終わらせます――“紅蓮投槍術”、クリムゾンジャベリン!!」
“馬上で振るうは十字の煌めき”に紅蓮の炎を纏わせ、胸元を貫いて上半身を粉砕した。
○おめでとうございます。魔神・銀風蛾の討伐に成功しました。
「任せちゃったけれど、楽勝だったね」
山猫獣人が、声を掛けてくる。
「二度目ですし、相性が良い相手ですから」
まさか、同じ魔神と二度も戦う事になろうとは……数日前までは、想像だにしませんでした。
「そう言えば、ヒビキさんのパーティーメンバーはどうなったのです?」
ルフィルさんが尋ねてくる。
「私が持っていた家の鍵は、いつの間にか消滅していました。奴隷になってしまった事でパーティーからも強制的に外れてしまったようですし……確かめる術がありません」
レギオンリーダーも死んでしまったようですし……あの状況で、いったい何人が無事だったのか。
「お仲間に会えたら、そっちに戻るの?」
「どちらにせよ既に所属レギオンは無くなっていますので、新しく起ち上げるか、別のレギオンに入れて貰うことになるでしょう」
スヴェトラーナさんに、正直に答える。
私の目的は、あくまでゲームをクリアして元の世界に帰還すること。
メルシュという隠れNPCを有する《龍意のケンシ》はまだまだ実力不足でしょうが、他には無い情報という武器がある。
なにより、ゲーム攻略に積極的だ。
彼等に協力する方が、結果的に私の目的を果たす最短の道となるかもしれない。
「そろそろ、この場を次の方々に譲りましょう」
もう少し、《龍意のケンシ》の方々には歩み寄って置きましょうか。
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