ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

329.爆裂魔法使いのスヴェトラーナ

『ミサキ・スズホ、32150000三千二百十五万Gとお買い得でしたが、先程のシムラ・ケンジ同様、買い手は現れず!! ざーんねん!!』

「……助けてよ――助けなさいよぉぉッッ!!!」

 二十歳前後の女が、檻の中から一瞬で消える。

『やはり、ビッチは男にも人気が無いようですねー。切り替えて参りましょう! お次は、本日の目玉商品にして歴代最高額!! 最近消滅したレギオンの元幹部――キョウゴク・ヒビーキーー!!』

 赤味の強いピンクの長髪を持つ綺麗な女が、檻の中で屹然としていた。


「――私を買うのであれば、後悔せぬよう気を付ける事です」


 女の乾いたような、それでいて泰然とした声に――ゾクゾクという感覚が込み上げてきてしまう!!

 あれは……私達と同じだ!

『彼女の詳細はこちら!!』


○ヒビキ 20歳 〔異世界人〕

職業 戦士.Lv64

サブ職業1 蓮華仏★ サブ職業2 紅蓮槍使い
サブ職業3 狐嫁   サブ職業4 紅蓮魔法使い
サブ職業5 賢者   サブ職業6 紅蓮投槍使い

メイン武器:馬上で振るうは十字の煌めき 

 サブ武器:和熱砲

 サブ武器:粉砕の十文字星槍 

 サブ武器:嫁狐の小刀

 サブ武器:魔術師殺しのクナイ 

    鎧:装備不可

   衣服:鳳凰紋の腰巻き着物

  指輪右:戦国姫の籠手
  指輪右:天翔の戦国馬の指輪
  指輪右:槍倉庫の腕輪
  指輪左:戦国姫の籠手
  指輪左:灼熱の指輪 
  指輪左:紅蓮王の指輪

  お守り:見切りのお守り

 その他1:胡蝶蘭の髪留め
 その他2:リングリング
 その他3:千眼孔雀の尾羽
 その他4:怪力の腕輪 
 その他5:指輪装備+2の腕輪

スキル ●生活魔法 ●槍術 ●握力 ●投槍術
    ●火属性付与 ●遠目 ●近接探知
    ●瞬足 ●火属性強化 ●不意打ち無効
    ●索敵 ●二重武術 ●光属性付与
    ●紅蓮砲 ●吉原炎上 ●効果持続
    ●潜水 ●反骨 ●紅蓮円輪 ●暗視
    ●光属性強化 ●激情の一撃 ●武術強化
    ●壁歩き ●跳躍 ●持久力 ●魔突き
    ●一極属性強化 ●大槍術 ●瞬突 
    ●紅蓮脚 ●白骨火葬 ●飛剣・靈光
    ●天磐戸 ●鬼道 ●火袋 ●飛剣・紅蓮
    ●鳳凰翼 ●大紅蓮槍 
    
予備スキル欄 
    ●大拳術 ●転剣術 ●騎槍術 ●突進
    ●水鉄砲 ●邪光線 ●幻影肩腕 


「この女、どう考えてもこのステージに居るべき人間じゃないだろう?」
「明らかに格上……もしや、リューナとは逆のパターンなのでは?」
「おそらくはね」

 かなり上のステージから落ちてきた人間。

 なら、《龍意のケンシ》と袂を分かつ事になっても、この先のステージの情報が色々手に入るはず。

『彼女のお値段は、72500200七千二百五十万二百G!! さあ、五分間の検討タイムです!!』

「おいおい、高過ぎんだろ!」
「仲間の大半が、誰かに殺されたばかりだってのに」

 男達の声……昼間の集団の仲間か。後で殺そう。

「どうすんの、ツェツァ?」
「なんとか手が届く値段ですが、私達の手持ちのお金が底を尽きかねません」
「買うわよ、二人とも」

 人間を買うという感覚はムカつくけれど、そこに悦を感じるのも確か。

 あの頃とは、立場が逆転したかのような……最低ね、私って。

『ハーイ、お時間です! 購入希望の方は、こちらの方々だー!!』

 この時のライトアップ、悪意を持って注目させようとしているようで腹立たしい!

「……あちゃー」
「これは……少々困りましたね」

 ライトアップされたのは……私とジュリー。

『購入希望者が二名! よって、これより競りへと入りまーす! それではお二方、基本金額にお気持ちの上乗せを!』

「向こうの財力って、明らかに私達よりも上だよね……諦めたら、ツェツァ?」
「……相手が悪かったですね。彼女ならば、我々に打って付けの人材だったかもしれませんが」

 奴等にヒビキという女が渡れば、ますます対抗できなくなる!

「……諦められるか」

 チョイスプレートに、75000000七千五百万と入力!

『お二人の選択が終了したようです! えー……』

 なんで、そこで言い淀む!

『面白くないですねー……ジュリー様は競りを辞退。よって、この時点でスヴェトラーナ様が75000000七千五百万Gで購入が決定しましたーー!! 皆様、温かい拍手をお願いしま-す!!』

「おい、待て! 向こうが辞退したなら、最初の値段で良いでしょうが!」

 思わず、会場中に聞こえるくらいの声で叫ぶ!

『すみませんねー。何分、そういうシステムな物で』

「本当は対応する気が無いだけのお役所仕事してんじゃねぇーぞ、このクソ野郎ーー!!」

 NPCに向かってなにを言っているのだろうと思いつつも、文句を言わずには居られない!

 こっちは、二百万G以上も損してるのよ!?

『それでは皆様、本日の奴隷オークションはこれまで。次回、三日後の開催を是非、楽しみにしておいてくださーい!』

「おい、聞いてんのか、コラーッ!!」

『ご購入品に関してですが、王城の謁見の間にて引き渡しますのでー』

 コイツ、本当に対応する気がないの!?

『それでは皆様、夜道にはお気をつけをー』

 壇上のライトが消えると共に男も消え、会場に光が……映画館か演劇のステージかよ!

「腹立たしいぃぃ!!」
「これ、急がないと奴隷が危険なんじゃないの?」
「念のため、早く向かいましょう」
「チ! 仕方ない」

 さっきの男達、命拾いしたわね。


            ★


『それでは、これにて引き渡し完了となります』

 例の仮面を付けた女のNPCと共に、二人の奴隷を閉じ込めていた檻が光になって消える。

「あ、ありがとうな。アンタラは、俺の命の恩人だぁぁ」
「…………」

 暢気にくっちゃべっている男と、警戒しているヒビキ。

「こんな美人揃いに買って貰えるなんて、俺はついてるな~」

「ちょっと黙っててくれる?」
「……す、すみません」

 コイツの目、今淀んだわね。

 分かりやすく表現された感謝の意は、やっぱり只のポーズか。

「キョウゴク・ヒビキだっけ? どこから落ちてきたの?」

「……面白い相手に買われたようですね」

 不適な笑みを浮かべるヒビキ。

「私達のリーダーが、貴女と似たような目に遭いまして」
「というわけで、突飛な体験でも信じるよ。私達はね」

 ルフィルとサンヤが、諭すかのように情報を開示。

「元々は、五十三ステージの攻略半ばでした。例のアップデート中にレギオン内で揉め事が発生。私は巻き込まれる形で、あの黒い靄に落とされてしまったのです」

 理路整然と語るヒビキ。

「揉め事の原因は?」
「私を含めたパーティーの半数は、積極的に攻略を進めていました。元々そういう目標を掲げたレギオンだったので、私も半ば無理矢理入れて貰ったのですが……仲間が一気に十人近くもしたことが切っ掛けで、不満が爆発したようです」

 なんというか、あまりにも坦々と語りすぎている印象がある。

 冷めていると言うより……冷え切っているという感じ。

 まるで、私がリューナと出会ったばかりの頃のように。

「攻略の意思その物は、今でも変わっていません。そのためなら、手段は選ばないつもりです」

 言ったわね。


「フーン……なら、そこの男を今すぐ殺しなさい」


「お、おい……冗談だよな?」

 男が慌てている。

「私達の目的は、取り敢えず三十六ステージまで行ってリーダーと合流することよ」

 なにを思ったのか、リューナはあの男……コセと共にゲームの攻略をすると言い出した。

 なんらかの有益な取り引きをしたらしいけれど、私のリューナが男と一緒に居るなんて耐え難いわ!

「そのリーダーに、攻略の意思は?」
「私が知る限り、あまり無いわ。だから、三十六ステージから先は自由にしていい。奴隷からも解放してあげる」

「つまり、そこまでは戦力として雇いたい……言わば傭兵ですか」

「話が早くて助かるわ」

 どんな闇を背負っているのか知らないけれど、彼女はきっと、私達に迎合する。

「ただし、貴方の言う覚悟をまずは見せて貰いましょうか」

「だから殺せですか。目当ては、彼の持つアイテムのみだったと」

「う、嘘だろう……嘘だって行ってくれよ!!」

 この程度の事が出来ないなら、私達の仲間に相応しくない。

「良いでしょう。こういうのは。ただし、一つ条件が」

「なに?」


「彼と、対等な一騎打ちを所望します」


 手段は選ばないとか言っておきながら……変な女。

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