ダンジョン・ザ・チョイス
325.魔神・日蝕狼
「なんというか、拍子抜けだな」
あれから三人で下山を続けること三時間。俺達はようやく、終点であるボス扉の前にやって来た。
ここに来るまでにモンスターと接触したのは、ほんの数度。それも、単体の熊モンスターと鹿モンスターのみだった。
「飛んでいければ、まだ楽だったのに」
「山頂から徒歩で下山しないと、辿り着けない仕掛けだからな」
橋の砦町のNPCがヒントをくれるらしいけれど、俺達はメルシュ経由で手に入れている。
ちなみに、山で迷ってもヒントを得られるようにはなっているそうだ……徒歩限定で。
「さすがに、足が痛くなってきたな」
「私は大丈夫です」
「俺は、痛いという程ではないな」
「む……」
一番弱音を吐いた形になってしまったエリューナさんが、何故か準備運動のようなモーションを。
そう言えばこの人、二十ステージを縄張りにしていたっぽいよな。
マリナも俺も積極的に攻略を進めていたけれど、エリューナさんは暫く二十ステージに居たわけだから……足腰は俺達よりも弱ってそう。
「よし、さっさとボス戦を終わらせるぞ!」
「へと、無理しなくても良いですよ?」
不器用ながらも気遣うマリナ。
「マリナ、半端な優しさは他人を傷付けることもある」
「おい、聞こえているぞ、コセ!」
珍しく感情的になるエリューナさん。
「お前が無理矢理唇を奪うような男だと、マリナに告げ口してやろうか?」
耳元で囁かれた。
「いや……あれは事故でしょう」
「男とのは、初めてだったんだぞ?」
「……スミマセン」
でも……ちょっと嬉しい。
「本当に、休まなくて大丈夫ですか?」
「大丈夫だ!」
「俺達は魔法の家が使えないし、早めに寝床と向こうの雰囲気を掴んでおいた方が良いか」
危険なプレーヤーが居るのかどうかまでは、メルシュにも分からないし。
「ほら行くぞ、お前ら!!」
もう投げ槍だな、エリューナさん。
ボス部屋の扉が開き、俺達は中へ。
「ボスは魔神・日蝕狼。弱点属性は氷、有効武器は剣、危険攻撃は“太陽法術”。更に、光と炎の属性を吸収する事もある。二種属性でも同様だ」
二十一からは、ボスに特殊な特性が備わっている事が多いらしい。
「ステージギミックは無し。来るぞ!」
水色のラインが灯ると、第二ステージの転剣狼に酷似した青白い魔神の姿が顕わに!
『グルルルル』
姿は転剣狼よりも少し小柄だが、額から生える剣のような白角が、妙に神々しさを醸し出している気がする。
『アォォォォォォォォォォォォン!!』
額の角に酷似した剣を手にし、瞬発的な動きで距離を詰めてくる魔神・日蝕狼。
「下がれ! “吹雪魔法”――ブリザードトルネード!!」
凍てつく竜巻が、日蝕狼の身体の一部を凍らせた。
『ウォォォォォ!!』
日蝕狼の剣が、エリューナさんに迫る!
「――“拒絶領域”!!」
跳躍してきた魔神を、弾いて後退させた。
「“飛王剣”!!」
俺の強化された斬撃を剣で受けるも、更に後退する魔神。
TPの劇的な増大による威力の強化……思っていた以上かもしれない。
「マリナ、”硝子魔法”を魔神に!」
「で、でも!」
“硝子魔法”は氷と光の二種属性。ボスには吸収されて無駄に終わると思っているのだろう。
「俺を信じろ!」
「分かったわ! “硝子魔法”――グラスレイ!!」
魔法陣に円の硝子を作り出し、そこから光線が照射される!
『ウォォォォォ!!』
魔神・日蝕狼の身体が黒く染まり、攻撃を受け付けなくなってしまう。
だが、あの能力を発動した事で動きが止まった!
「今だ、エリューナ!!」
「ああ!!」
神代文字をそれぞれの武器に刻み込み――文字が共鳴!
「「“神代の剣”!」」
青白い刃を形成し――両側から駆け詰める!
「“空遊滑脱”」
「“空衝”」
魔神の左右に跳びあがり、同時に剣を振り下ろす!!
「“大地剣術”――グランドスラッシュ!!」
「“吹雪剣術”――ブリザードスラッシュ!!」
魔神・日蝕狼を、X字に切り裂く!
『ゥォォォォォォォォ!!』
青白い輝きを放ち、身体を再生させていく日蝕狼!
「――“魔力砲”!!」
文字を使って強化したマリナの砲撃が、魔神に直撃!
だが、剣で弾きながら、より俊敏な動きで逃れてしまう!
『ウォォォォォッ!!』
光の剣撃を飛ばして来る日蝕狼!
「クソ」
ほとんど跳躍で動き回るため、素早いのもあって“大地讃頌”を当てる隙が無い!
「へ?」
文字の共振する感覚が、強くなった?
「――“神代の霊剣”」
炎のような青白い光を纏ったマリナの剣が振るわれ、炎光の斬撃を飛ばした!?
しかも、振るう度に新たな斬撃を飛ばしていく!
『ゥォォォォォッ!!』
ダメージは軽微だけれど、着実に魔神に傷を与えているようだ。
「トドメはお願い!」
「ああ!」
「任せろ!」
三人の文字が、より深く共振――俺の“サムシンググレートソード”に、十五文字が刻まれる!!
「――――“飛王剣”!!」
俺の斬撃とマリナの炎光の斬撃が重なり――増大した一撃が、魔神の剣を砕き壊した!!
「“神代の剣影”――“吹雪剣術”、ブリザードスラッシュ!!」
魔神の頭から胸までも切り裂き、内側から凍らせていく!
「コセ!」
「ユウダイ!」
「“神代の剣”――“竜剣術”――――ドラゴンスラッシュ!!」
長大な青の刀身を生み出し、魔神・日蝕狼を袈裟斬りにした。
○おめでとうございます。魔神・日蝕狼の討伐に成功しました。
「ハアハア、思ったより……ハアハア、手こずったな」
人数とLv、ステージをすっ飛ばしている事も地味に響いたのだろうか。
○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。
★日蝕狼の山刀 ★サブ職業:太陽法術使い
★飛剣・靈光のスキルカード ★サブ職業:タシロカムイ
★天磐戸のスキルカード
「フー……一気に怠くなってきた……さすがに休もう」
「そうね……ここなら安全だし」
二人から、泣き言が洩れる。
登山を終えた直後に、予想以上に神代文字の力を振り絞ったからな。
「私は、好きに選ばせて貰うぞ」
「マリナはなにを選ぶ?」
「この飛剣て言うのかな? 私に合っていそう」
「なら俺は、“太陽法術使い”を選ぶか」
”タシロカムイ”は獣人専用だろうし、魔神の武器であろう”日蝕狼の山刀”は、今更な性能だろう。
三人でボス部屋内に寝っ転がり、俺達は誰ともなく仮眠を取っていた。
○これより、第二十九ステージの荒廃の大地の村に転移します。
あれから三人で下山を続けること三時間。俺達はようやく、終点であるボス扉の前にやって来た。
ここに来るまでにモンスターと接触したのは、ほんの数度。それも、単体の熊モンスターと鹿モンスターのみだった。
「飛んでいければ、まだ楽だったのに」
「山頂から徒歩で下山しないと、辿り着けない仕掛けだからな」
橋の砦町のNPCがヒントをくれるらしいけれど、俺達はメルシュ経由で手に入れている。
ちなみに、山で迷ってもヒントを得られるようにはなっているそうだ……徒歩限定で。
「さすがに、足が痛くなってきたな」
「私は大丈夫です」
「俺は、痛いという程ではないな」
「む……」
一番弱音を吐いた形になってしまったエリューナさんが、何故か準備運動のようなモーションを。
そう言えばこの人、二十ステージを縄張りにしていたっぽいよな。
マリナも俺も積極的に攻略を進めていたけれど、エリューナさんは暫く二十ステージに居たわけだから……足腰は俺達よりも弱ってそう。
「よし、さっさとボス戦を終わらせるぞ!」
「へと、無理しなくても良いですよ?」
不器用ながらも気遣うマリナ。
「マリナ、半端な優しさは他人を傷付けることもある」
「おい、聞こえているぞ、コセ!」
珍しく感情的になるエリューナさん。
「お前が無理矢理唇を奪うような男だと、マリナに告げ口してやろうか?」
耳元で囁かれた。
「いや……あれは事故でしょう」
「男とのは、初めてだったんだぞ?」
「……スミマセン」
でも……ちょっと嬉しい。
「本当に、休まなくて大丈夫ですか?」
「大丈夫だ!」
「俺達は魔法の家が使えないし、早めに寝床と向こうの雰囲気を掴んでおいた方が良いか」
危険なプレーヤーが居るのかどうかまでは、メルシュにも分からないし。
「ほら行くぞ、お前ら!!」
もう投げ槍だな、エリューナさん。
ボス部屋の扉が開き、俺達は中へ。
「ボスは魔神・日蝕狼。弱点属性は氷、有効武器は剣、危険攻撃は“太陽法術”。更に、光と炎の属性を吸収する事もある。二種属性でも同様だ」
二十一からは、ボスに特殊な特性が備わっている事が多いらしい。
「ステージギミックは無し。来るぞ!」
水色のラインが灯ると、第二ステージの転剣狼に酷似した青白い魔神の姿が顕わに!
『グルルルル』
姿は転剣狼よりも少し小柄だが、額から生える剣のような白角が、妙に神々しさを醸し出している気がする。
『アォォォォォォォォォォォォン!!』
額の角に酷似した剣を手にし、瞬発的な動きで距離を詰めてくる魔神・日蝕狼。
「下がれ! “吹雪魔法”――ブリザードトルネード!!」
凍てつく竜巻が、日蝕狼の身体の一部を凍らせた。
『ウォォォォォ!!』
日蝕狼の剣が、エリューナさんに迫る!
「――“拒絶領域”!!」
跳躍してきた魔神を、弾いて後退させた。
「“飛王剣”!!」
俺の強化された斬撃を剣で受けるも、更に後退する魔神。
TPの劇的な増大による威力の強化……思っていた以上かもしれない。
「マリナ、”硝子魔法”を魔神に!」
「で、でも!」
“硝子魔法”は氷と光の二種属性。ボスには吸収されて無駄に終わると思っているのだろう。
「俺を信じろ!」
「分かったわ! “硝子魔法”――グラスレイ!!」
魔法陣に円の硝子を作り出し、そこから光線が照射される!
『ウォォォォォ!!』
魔神・日蝕狼の身体が黒く染まり、攻撃を受け付けなくなってしまう。
だが、あの能力を発動した事で動きが止まった!
「今だ、エリューナ!!」
「ああ!!」
神代文字をそれぞれの武器に刻み込み――文字が共鳴!
「「“神代の剣”!」」
青白い刃を形成し――両側から駆け詰める!
「“空遊滑脱”」
「“空衝”」
魔神の左右に跳びあがり、同時に剣を振り下ろす!!
「“大地剣術”――グランドスラッシュ!!」
「“吹雪剣術”――ブリザードスラッシュ!!」
魔神・日蝕狼を、X字に切り裂く!
『ゥォォォォォォォォ!!』
青白い輝きを放ち、身体を再生させていく日蝕狼!
「――“魔力砲”!!」
文字を使って強化したマリナの砲撃が、魔神に直撃!
だが、剣で弾きながら、より俊敏な動きで逃れてしまう!
『ウォォォォォッ!!』
光の剣撃を飛ばして来る日蝕狼!
「クソ」
ほとんど跳躍で動き回るため、素早いのもあって“大地讃頌”を当てる隙が無い!
「へ?」
文字の共振する感覚が、強くなった?
「――“神代の霊剣”」
炎のような青白い光を纏ったマリナの剣が振るわれ、炎光の斬撃を飛ばした!?
しかも、振るう度に新たな斬撃を飛ばしていく!
『ゥォォォォォッ!!』
ダメージは軽微だけれど、着実に魔神に傷を与えているようだ。
「トドメはお願い!」
「ああ!」
「任せろ!」
三人の文字が、より深く共振――俺の“サムシンググレートソード”に、十五文字が刻まれる!!
「――――“飛王剣”!!」
俺の斬撃とマリナの炎光の斬撃が重なり――増大した一撃が、魔神の剣を砕き壊した!!
「“神代の剣影”――“吹雪剣術”、ブリザードスラッシュ!!」
魔神の頭から胸までも切り裂き、内側から凍らせていく!
「コセ!」
「ユウダイ!」
「“神代の剣”――“竜剣術”――――ドラゴンスラッシュ!!」
長大な青の刀身を生み出し、魔神・日蝕狼を袈裟斬りにした。
○おめでとうございます。魔神・日蝕狼の討伐に成功しました。
「ハアハア、思ったより……ハアハア、手こずったな」
人数とLv、ステージをすっ飛ばしている事も地味に響いたのだろうか。
○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。
★日蝕狼の山刀 ★サブ職業:太陽法術使い
★飛剣・靈光のスキルカード ★サブ職業:タシロカムイ
★天磐戸のスキルカード
「フー……一気に怠くなってきた……さすがに休もう」
「そうね……ここなら安全だし」
二人から、泣き言が洩れる。
登山を終えた直後に、予想以上に神代文字の力を振り絞ったからな。
「私は、好きに選ばせて貰うぞ」
「マリナはなにを選ぶ?」
「この飛剣て言うのかな? 私に合っていそう」
「なら俺は、“太陽法術使い”を選ぶか」
”タシロカムイ”は獣人専用だろうし、魔神の武器であろう”日蝕狼の山刀”は、今更な性能だろう。
三人でボス部屋内に寝っ転がり、俺達は誰ともなく仮眠を取っていた。
○これより、第二十九ステージの荒廃の大地の村に転移します。
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