ダンジョン・ザ・チョイス
321.岩場での宝探し
「こんな所にも」
岩と岩のほんの小さな隙間に、同じ色の石で出来た小さな宝箱が。
“天使の翼”を生やして飛び回りながら探していたが、角度的に、飛行状態で下から覗き込んでようやく見付けられるような場所などにあることが多いな。
「石の指輪?」
○“溶岩の大刀の指輪”を手に入れました。
「名前からして、Sランクの指輪か」
まあ、悪くはないな。
「ルイーサさん、良いのは見付かりました?」
私と同じ翼を生やして飛び回っていたクマムが、尋ねてきた。
「良さげな指輪は幾つか。あとは、ライブラリで確認してみないとなんとも言えないな」
メルシュ達みたいに他の武具との有用な組み合わせなどを教えてくれるわけではないが、自分で好きなときに確認できるようになったのは地味に有り難い。
――ピーーー!!
「集合の合図か」
迎撃担当のフェルナンダが待つ集合場所へ、全員が集まる。
「時間が時間だ。そろそろ移動を開始しよう」
「誰か、ユニークスキルは手に入れた? 赤いメダルなんだけれど?」
フェルナンダの言葉の直後、尋ねてくるメルシュ。
「赤いのってコレ?」
モモカが指を指した先には……赤いメダルを咥えたバニラが。
「アウ!」
「良く見つけたな、バニラ」
頭を撫でてやろうと思ったら、モモカが居る方に逃げられてしまった。
「グルルルル」
「すまん、バニラ」
どうやら、私はまだまだ警戒されているようだ。
「バニラ、モモカとコセくらいにしか懐いていないわよね?」
「さすがコセ様です」
「私も、バニラちゃんと仲良くなりたいです」
ナオ、タマ、スゥーシャが各々言葉を口にする。
「どこで見付けたの、モモカ?」
ジュリーが尋ねる。
「アッチの隙間に身体を入れて、奥の小っちゃな……洞窟みたいな所にあったって!」
バニラと意思疎通を図れるモモカが、一生懸命説明してくれた。
「崖の方か」
「そう言えば、幾つか隙間がありましたね。私達では入れないくらい小さいのが幾つか」
クマムの言うとおりなら、バニラくらい小柄な奴じゃなければ見付けようがなかったという事じゃないか。
コセの“夜鷹”とかなら……いや、翼を広げた状態なら、むしろ私の身長よりも大きいか。
「バニラが居なかったら、手に入れるのは不可能だったかもな」
だからこそ、他の誰かに取られずにすんだのだろうが。
「偉いよ、バニラ!」
「キャゥー♪」
モモカには素直に撫でられるバニラ……モモカが羨ましい!
●●●
『『グルルルル』』
『『ガルルルル』』
小柄な白灰色の狼達が、安全エリアを出た俺に襲い来る!
「“黒精霊”」
「“硝子魔法”――グラスランス!!」
“シュバルツ・フェー”の力で、マリナの魔法を剣に吸収。
「ハイパワーブレイド」
剣を連続で振るい、辺りの木々諸共に大量の狼を切り裂いた。
グレイウルフよりも一回り小さいけれど、動きが俊敏なうえ、上手い具合に連携も取ってくる……地味に手強い。
「どんどん来るな――“煉獄魔法”、インフェルノバレット!!」
紫炎で怯ませているうちに、剣を振るって倒していく。
「足場が悪いけれど、新しい靴のおかげでなんとかなりそうだな」
石や大樹の根で凸凹しているけれど、宙を踏める“地天衝のブーツ”のおかげで、足場を気にせず立ち回れる。
「“氷柱針”――“衝脚”!」
一緒に戦ってくれるエリューナさん。
「オールセット1」
装備を二刀流に変え、身体を軸回転させながら斬り潰していく。
「……格好いい」
なんか、黄色い声が聞こえてきたような。
「きりがないな」
第二陣を全滅させるも、遠くから第三陣の気配が。
「そろそろ戻りましょう」
「ああ」
マリナが居る、安全エリアに帰還する。
すると、波が引くように狼達が戻っていった。
「これで、私達の戦闘スタイルは粗方掴めたか?」
「へ? ああ……ハイ。私とエリューナさんがかなり被ってて、三人とも剣を使う偏ったパーティーだって事は」
マリナの“硝子魔法”は、氷と光の二種属性。
エリューナさんの”吹雪魔法”は氷と風と、完全にではないけれど被っていると言えば被っている。
氷系統の敵には、俺が対処するつもりでいたほうが良さそうだな。
「所で、Lvは上がったのか?」
「へと……33になってます」
今の数分の戦闘で、2も上がったのか。
「もうすぐ十五時。もう少しレベリングをしたら、今日は早めに休みましょう。その分、明日は早めに出発しようと思います」
「オープンワールドのようなステージでは、迂闊には動けないか。動けても、二時間くらいで暗くなるだろうしな」
夜が明けてから空を移動する方が、もっとも時間を効率的に使えるだろう。
メルシュ達とも、色々情報交換をしておきたいし。
○“ホロケウカムイ”を手に入れました。
「あ、“ホロケウカムイ”が手に入ってる」
今まで第二ステージのボスからしか手に入れられなかった貴重なサブ職業を、あの狼からドロップしていたのか。
「ライブラリに、0.5%のの確率で手に入ると書いてあるな」
エリューナさんが教えてくれる。
「あれだけ倒しても一つだけなら、本当にレアなサブ職業なんだな」
獣人しか使えないけれど、序盤で手に入る物の中ではかなり強力だし、このレア率はむしろ納得か。
「でも、一応は警戒して置いた方が良いかも」
マリナが、妙に不安そうに口を開く。
「プレーヤーが襲ってくる可能性か」
「それもですけれど……私と一緒に靄に呑まれた女が、いつ現れるか判らないから」
マリナ達の前に現れたという、異形と化していた女か。
「凄く強くて、あの時の私には……自分を犠牲にする方法以外考えられなかった」
「お前がここに居るなら、その女も同じステージに居る可能性はあるか」
「……念のため、交代で休もう」
狼たちのおかげで、プレーヤーが近付けばすぐに騒がしくなるだろうけれど。
「思っていた以上に、ハードな旅になりそうだ。お前達との旅は」
本当、エリューナさんが付いてきてくれて良かった。
●●●
「シレイア、どうだった?」
「”狂乱の果実”は手に入らなかったよ、ジュリー」
ボス部屋前のポータルから魔法の家に移動し、シレイア達、人獣の領域組と合流した。
パーティーメンバーの戦士達がベルセルクもどきを百体倒すと手に入るという、第二十二ステージの隠れNPCを仲間にするための必須アイテム。
「バーサーカーも取られたか」
「単純な戦闘能力なら、かなり強力なんだよね~」
メルシュとシレイアが思案顔。
「アマゾネスの上位互換と言えなくもない、強力なNPCだったんだけれど」
「オイ、メルシュ。アタシにはアタシの強みがあるだろう! ていうか、私が戦士系の器用貧乏なら、お前は魔法特化の器用貧乏だろうが!」
「もう、変に噛み付いて来ないでよ」
この二人は最序盤の隠れNPCだからか、上のステージの隠れNPCに比べると性能は低めらしい。
その分、ドライアドのヨシノのように能力が尖ってはいないけれど。
「……レリーフェ、どうかした?」
私の砦城を見ながら、黄昏れているように見えたエルフの美女。
「いや、なんでもない」
今はもうあの城には居ない、エルフの仲間達に想いを馳せていたのだろうか。
「明日は早朝からボス戦だ! 今日はとっとと休むぞ!」
「「「はーい」」」
レリーフェの言葉に、疲れたように返事をするレギオンメンバー。
今日は今までに比べて、わりとハードな一日だったからな。
それでも、コセ達に追い付くためにはもっと急がなければならない。
岩と岩のほんの小さな隙間に、同じ色の石で出来た小さな宝箱が。
“天使の翼”を生やして飛び回りながら探していたが、角度的に、飛行状態で下から覗き込んでようやく見付けられるような場所などにあることが多いな。
「石の指輪?」
○“溶岩の大刀の指輪”を手に入れました。
「名前からして、Sランクの指輪か」
まあ、悪くはないな。
「ルイーサさん、良いのは見付かりました?」
私と同じ翼を生やして飛び回っていたクマムが、尋ねてきた。
「良さげな指輪は幾つか。あとは、ライブラリで確認してみないとなんとも言えないな」
メルシュ達みたいに他の武具との有用な組み合わせなどを教えてくれるわけではないが、自分で好きなときに確認できるようになったのは地味に有り難い。
――ピーーー!!
「集合の合図か」
迎撃担当のフェルナンダが待つ集合場所へ、全員が集まる。
「時間が時間だ。そろそろ移動を開始しよう」
「誰か、ユニークスキルは手に入れた? 赤いメダルなんだけれど?」
フェルナンダの言葉の直後、尋ねてくるメルシュ。
「赤いのってコレ?」
モモカが指を指した先には……赤いメダルを咥えたバニラが。
「アウ!」
「良く見つけたな、バニラ」
頭を撫でてやろうと思ったら、モモカが居る方に逃げられてしまった。
「グルルルル」
「すまん、バニラ」
どうやら、私はまだまだ警戒されているようだ。
「バニラ、モモカとコセくらいにしか懐いていないわよね?」
「さすがコセ様です」
「私も、バニラちゃんと仲良くなりたいです」
ナオ、タマ、スゥーシャが各々言葉を口にする。
「どこで見付けたの、モモカ?」
ジュリーが尋ねる。
「アッチの隙間に身体を入れて、奥の小っちゃな……洞窟みたいな所にあったって!」
バニラと意思疎通を図れるモモカが、一生懸命説明してくれた。
「崖の方か」
「そう言えば、幾つか隙間がありましたね。私達では入れないくらい小さいのが幾つか」
クマムの言うとおりなら、バニラくらい小柄な奴じゃなければ見付けようがなかったという事じゃないか。
コセの“夜鷹”とかなら……いや、翼を広げた状態なら、むしろ私の身長よりも大きいか。
「バニラが居なかったら、手に入れるのは不可能だったかもな」
だからこそ、他の誰かに取られずにすんだのだろうが。
「偉いよ、バニラ!」
「キャゥー♪」
モモカには素直に撫でられるバニラ……モモカが羨ましい!
●●●
『『グルルルル』』
『『ガルルルル』』
小柄な白灰色の狼達が、安全エリアを出た俺に襲い来る!
「“黒精霊”」
「“硝子魔法”――グラスランス!!」
“シュバルツ・フェー”の力で、マリナの魔法を剣に吸収。
「ハイパワーブレイド」
剣を連続で振るい、辺りの木々諸共に大量の狼を切り裂いた。
グレイウルフよりも一回り小さいけれど、動きが俊敏なうえ、上手い具合に連携も取ってくる……地味に手強い。
「どんどん来るな――“煉獄魔法”、インフェルノバレット!!」
紫炎で怯ませているうちに、剣を振るって倒していく。
「足場が悪いけれど、新しい靴のおかげでなんとかなりそうだな」
石や大樹の根で凸凹しているけれど、宙を踏める“地天衝のブーツ”のおかげで、足場を気にせず立ち回れる。
「“氷柱針”――“衝脚”!」
一緒に戦ってくれるエリューナさん。
「オールセット1」
装備を二刀流に変え、身体を軸回転させながら斬り潰していく。
「……格好いい」
なんか、黄色い声が聞こえてきたような。
「きりがないな」
第二陣を全滅させるも、遠くから第三陣の気配が。
「そろそろ戻りましょう」
「ああ」
マリナが居る、安全エリアに帰還する。
すると、波が引くように狼達が戻っていった。
「これで、私達の戦闘スタイルは粗方掴めたか?」
「へ? ああ……ハイ。私とエリューナさんがかなり被ってて、三人とも剣を使う偏ったパーティーだって事は」
マリナの“硝子魔法”は、氷と光の二種属性。
エリューナさんの”吹雪魔法”は氷と風と、完全にではないけれど被っていると言えば被っている。
氷系統の敵には、俺が対処するつもりでいたほうが良さそうだな。
「所で、Lvは上がったのか?」
「へと……33になってます」
今の数分の戦闘で、2も上がったのか。
「もうすぐ十五時。もう少しレベリングをしたら、今日は早めに休みましょう。その分、明日は早めに出発しようと思います」
「オープンワールドのようなステージでは、迂闊には動けないか。動けても、二時間くらいで暗くなるだろうしな」
夜が明けてから空を移動する方が、もっとも時間を効率的に使えるだろう。
メルシュ達とも、色々情報交換をしておきたいし。
○“ホロケウカムイ”を手に入れました。
「あ、“ホロケウカムイ”が手に入ってる」
今まで第二ステージのボスからしか手に入れられなかった貴重なサブ職業を、あの狼からドロップしていたのか。
「ライブラリに、0.5%のの確率で手に入ると書いてあるな」
エリューナさんが教えてくれる。
「あれだけ倒しても一つだけなら、本当にレアなサブ職業なんだな」
獣人しか使えないけれど、序盤で手に入る物の中ではかなり強力だし、このレア率はむしろ納得か。
「でも、一応は警戒して置いた方が良いかも」
マリナが、妙に不安そうに口を開く。
「プレーヤーが襲ってくる可能性か」
「それもですけれど……私と一緒に靄に呑まれた女が、いつ現れるか判らないから」
マリナ達の前に現れたという、異形と化していた女か。
「凄く強くて、あの時の私には……自分を犠牲にする方法以外考えられなかった」
「お前がここに居るなら、その女も同じステージに居る可能性はあるか」
「……念のため、交代で休もう」
狼たちのおかげで、プレーヤーが近付けばすぐに騒がしくなるだろうけれど。
「思っていた以上に、ハードな旅になりそうだ。お前達との旅は」
本当、エリューナさんが付いてきてくれて良かった。
●●●
「シレイア、どうだった?」
「”狂乱の果実”は手に入らなかったよ、ジュリー」
ボス部屋前のポータルから魔法の家に移動し、シレイア達、人獣の領域組と合流した。
パーティーメンバーの戦士達がベルセルクもどきを百体倒すと手に入るという、第二十二ステージの隠れNPCを仲間にするための必須アイテム。
「バーサーカーも取られたか」
「単純な戦闘能力なら、かなり強力なんだよね~」
メルシュとシレイアが思案顔。
「アマゾネスの上位互換と言えなくもない、強力なNPCだったんだけれど」
「オイ、メルシュ。アタシにはアタシの強みがあるだろう! ていうか、私が戦士系の器用貧乏なら、お前は魔法特化の器用貧乏だろうが!」
「もう、変に噛み付いて来ないでよ」
この二人は最序盤の隠れNPCだからか、上のステージの隠れNPCに比べると性能は低めらしい。
その分、ドライアドのヨシノのように能力が尖ってはいないけれど。
「……レリーフェ、どうかした?」
私の砦城を見ながら、黄昏れているように見えたエルフの美女。
「いや、なんでもない」
今はもうあの城には居ない、エルフの仲間達に想いを馳せていたのだろうか。
「明日は早朝からボス戦だ! 今日はとっとと休むぞ!」
「「「はーい」」」
レリーフェの言葉に、疲れたように返事をするレギオンメンバー。
今日は今までに比べて、わりとハードな一日だったからな。
それでも、コセ達に追い付くためにはもっと急がなければならない。
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