ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

314.戦士の集落

「上半身裸の男達……良い♡」
「……姉ちゃん」

 アヤナが、気持ちの悪い気配を漂わせている。

 第二十一ステージは、ほぼ裸族の男女がそこら中を歩いている小さな村のようだ。

 皆、黒い縄のような物を組み合わせて作った、ヒラヒラした服を着ている。

 男は短パン。女はミニスカートにブラみたいな物。

 建物は土の壁で出来ていて、枝を束ねた物を日除けにした露天商のような物がチラホラ。

「ルイーサは、マッチョな男って良いと思わない?」
「いや、別に」

 身体が逞しいに超した事はないが……コセは良い身体してるって、サトミが言ってたし♡

「らっしゃい」

 全員がボス戦を終えたのち、私達は皆で、若くも筋肉質な褐色肌の男が居る露天商へとやって来た。

「ここでは一度だけ、戦士は5000Gで武具を売って貰えるよ」

「戦士の同胞達よ、最初だけは出血大サービスしてやるぜ」

○以下から選んで購入できます。

★守護戦士の剣  5000G ★守護戦士の槍  5000G
★守護戦士の短剣 5000G ★守護戦士の大剣 5000G
★守護戦士の弓  5000G ★守護戦士の棍棒 5000G
★守護戦士の斧  5000G ★守護戦士の甲手 5000G
★守護戦士の盾  5000G ★守護戦士の兜  5000G
★守護戦士の鎧  5000G ★守護戦士の装束 5000G

 戦士職の人間が、それぞれ別の物を購入していく。

「ねー、この武具とかって私達には今更じゃない?」

 アヤナが、わざとフェルナンダに尋ねる。

「これと言った特殊効果は付いていないが、地味にAランクだからな。まあ、確かに私達には今更だが、別のステージなら三倍の値段で売れる」

 ちなみに、最初の一つ目以外は20000Gになるらしい。

「戦士にとって、武具はお守りと同じだ。金を掛けても損は無い。偉大なる我等が守護者に、祈りを捧ぐ事もな」

 NPCの男が、意味ありげな事を口にする。

「祈りに興味があるなら、あの丘に行ってみると良い」

「じゃあ、行ってみよっか」

 メルシュが提案するていで、私達は半ば強制的に丘へと向かった。


            ★


「じゃあクマムに、さっき買ったアイテムを全て渡して」

 メルシュの指示通り、クマムに十二種類の武具全てが渡る。

「では、行きます」

 丘の上に聳え立つ戦士の石像に、クマムが近付いていく。

○守護戦士の十二種の武具、全てを奉じますか?

「YESです」

 クマムが選択をすると、甲冑を纏った石像が青白く輝き出す!


○以下から一つを選択出来ます。

★ガーディアンをパーティーに加える。
★守護戦士のサブ職業を手に入れる。
★守護武術使いのスキルカード・守護領域のスキルカードを手に入れる。

「へと……ど、どうしますか?」

 ここまでが、偶然を装った一連の流れだが……さすがに無理があるだろう。

 まあ、観測者共を少しでも撹乱できればそれで良いわけだが。

 もし隠れNPCの情報をもたらしているのがジュリーだと知られれば、ジュリーだけが狙い撃ちにされる危険性もあるからな。

「どうやら隠れNPCだったみたいだね。でも、今隠れNPCを増やしてもパーティーメンバーが分散してしまうだけだから、今回はサブ職業だけにしておこう」

「分かりました」

 クマムが、“守護戦士”のサブ職業を選択した。

「何気に初めてだね。隠れNPCを手に入れずに、隠れNPC固有の能力だけを選んだのは」
「確かにな」

 ジュリーの意見に同意する。

「クマム、それをルイーサに」
「私に?」
「“守護戦士”には“守護武術”と“守護領域”のスキルが含まれていて、“守護武術”は武術スキルのように使用できる守りに優れた能力。武具その物の属性を武術に反映させる効果もある。“守護領域”は、所持者の半径三メートル以内に居るパーティーメンバー、レギオンメンバーの耐性能力、全ての回復力を少しずつ上げてくれるよ」

「複数の属性武器を使い分けて、タンク役にもなる私が一番合っているというわけか……ありがたく貰っておこう」

 さっそく、サブ職業にセットしておく。

「というわけだから、私達のレギオンに加入しておいた方が良いよ」

 メルシュがそう言った相手は、例の黒尽くめの正体三人組。

 この危険な奴等を、正式に仲間に引き込もうとしているわけじゃないだろうな?

「そんな気は無いわ」
「我々のリーダーは、今そちらのリーダーと共に行動して居るエリューナです。勧誘したいのであれば、そちらに当たってください」

 ハッキリ言って、私も反対だ。

「だったら、わざわざ勧誘するまでもないか」
「ちょ、ど、どういう意味よ、それ!」

 濃い茶髪の女、スヴェトラーナが慌てている。

「ここでするべき事はもう無いし、さっさと進んじゃおうか」

 メルシュめ、コセとそのリーダーをくっ付けるつもりか?

 ……私はまだなのに。

 それにしても……私が言うのもなんだが、随分国際色豊かな顔ぶれになったな、この集団。


●●●


「お待たせしました、ザッカルさん」
「おう、終わったみたいだな」

 朝に十五ステージで合流したリョウ達と、例のクイズをクリアした所で再び合流。

「そちらは早かったですね」

「おう。意外にも、コトリの奴が頭良いみたいでよ」

 後方にいる白髪の小柄な棍棒使いの異世界人に、親指を向ける。

 全問一発でクリア出来たから、Aランクアイテムが一つ手に入ったぜ。

「早速だが、ボス戦に行くか?」
「それは良いんですけれど……そちらは三人だけで良いんですか?」

 コトリのパーティーは、俺と馬獣人のケルフェのみ。

「しかも、全員戦士ですし」
「俺が平均Lvを上げてるし、ここのボスとは一度戦っているからな」

 まあ、ユイが戦っているのを端で見てただけだが。

「それよりも、貴重なアイテムを貸してやってんだ。お前らこそ、負けんじゃねぇぞ」
「ハイ!」
「「「「「「ありがとうございます!!」」」」」」

 六人の女達が、一斉に頭を下げる。

「お、おう」

 リョウに渡したのは、Sランクの“カリスマリーダーの指輪”。

 パーティーリーダーが装備すると、パーティーを組める人数を一人増やすというもの。

 ジュリーがこの前のクエスト中に手に入れたらしいが、リョウ達にとっては有り難すぎる装備だったらしい。

 リーダーであるリョウのLvじゃ、パーティーメンバーは最大六人。

 で、リョウを慕っている女共は六人。

 どうしても一人余っちまうから、交代で二人をコトリ達のチームに組み込んで居たんだとか。

 まあ、あれだ……その度に、少なからず揉め事が起きていたそうな。

 あの女共からすれば、全員が平等にリョウの傍に居られるようになったってわけだ。

 また一人増えたら揉めそうだな……コセの周りとは大違いだぜ。

「それじゃ、行くぞお前ら!」

 元気の良い返事……あの指輪のおかげで、暫くは俺の無茶にも従ってくれそうだぜ。


            ★


「来んぞ!」

 懐かしきボス、魔神・刀鬼が動き出す。

「ザッカルパイセン、ソイツは私達で倒しちゃうよ!」
「そうですね。正規メンバーに実力を見て貰うチャンスですし」

 コトリとケルフェが、前に出ちまう。

「しゃーねーな」

「じゃあケルフェ、いつものパターンで」

「了解です――“早駆け”」

 ケルフェが、“瞬足”に匹敵する速度で駆け続ける!

 魔神・刀鬼は、急接近してきたケルフェに狙いを定めたらしい。

 例の“摺り足”で、ケルフェを捉えようとしているようだ。

「“魔眼”」

「あれは……タマと同じ」

 額に、不気味な赤い目が。


「ここ――“拒絶領域”!!」


 メグミやコセが使う円柱状の衝撃波で、振り下ろされる魔神の長ドスごと――大きく逸らした!

「古代の尖盾」

 コトリの奴が、左腕に連動する鋭い突起物付きの盾を出現させる。

 つうか、いつの間に魔神の背に肉迫していたのか。


「“衝撃針術”――インパクトニードル!!」


 背骨の辺りに盾の切っ先がブッ刺さり、広く亀裂を刻んだ!?

「“光輝盾術”――シャイニングバニッシュ!!」

 魔神の背を、大きく爆ぜさせた!!

「コトリ!」
「危ねぇ!!」

 無理矢理な体勢から放とうとしている魔神の刀が、コトリに向かって――


「――“悪穿ち”!!」


 咄嗟に三文字刻んだ黒き剣槍、“巨悪を穿て”を投げ放ち――長ドスごと魔神の右腕をぶっ壊してやった!!

「決めろ、コトリ!!」


「“光輝棒術”――シャイニングブレイクッ!!」


 コトリの”鋼鳥の狂群”が光と共に魔神に叩きつけられ――石の身体が砕け散った。

「危なかったー。あんがとね、ザッカルパイセン!」
「おう、気にすんな」

 元気一杯だな、コイツ。

「やはり、マリナが居ないと隙を晒してしまいがちですね」

「マリナ、めっちゃ気が利くからな~。これからは、今まで以上に気を付けないとヤバいね!」

 マリナの奴が、このパーティーのオールラウンダーって感じか?

○転移先を選択できます。どこへ転移しますか?

★第十六ステージ 順当コース
★第十六ステージ 旅行コース
★第十七ステージ 旅行コース
★第十八ステージ 旅行コース
★第十九ステージ 旅行コース

「へと……順当コースで良いんでしたっけ?」
「おう、そうだ」

 俺達は全員で、これから四つの島を順当に回ることになる。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品