ダンジョン・ザ・チョイス
308.エルフの思想
「おい、コセ!」
シレイアの訓練に付き合っていたら、レリーフェさんが喧嘩腰で声を掛けてきた。
というか、背後にエルフ達が。
ジュリーの砦城を使っている奴等か。
ていうか、いつの間にか見学者が増えてるな。カナさんが居るのはちょっと意外……ザッカルにでも誘われたのか?
「私を無視するとは良い度胸だな」
「いや、そんなつもりは」
「今から、貴様に決闘を申し込む!」
「いや、いきなりが過ぎ――」
とても細い刀身の剣で、高速の突きを放ってきた!!
「……不意打ちか」
しかも、眉間を狙ってきた。
躱さなければ、確実に死んでいただろう場所を。
「私を屈伏させてみろ、レギオンリーダー」
いったい、なにを考えているのやら。
「“魔炎”」
紫炎の蛇を空中に生み出し、レリーフェを後退させる。
「“暴風魔法”――サイクロンバレット!!」
レリーフェの魔法を、“魔炎”に食わせて消し去った。
「面白い」
剣を腰に差し、“森は木漏れ日に包まれて”を構えるレリーフェ。
「なにが面白いんだ?」
「お前が、一気に戦う者の目になったからだ。戦士の目にな」
まさか、そんな事を面と向かって言われる日が来るとは。
「死んでも文句は言うなよ」
「当然だ!」
弓に、文字が三文字刻まれた!
「“風光弓術”――シーニックアロー!!」
「“超竜撃”」
”偉大なる英雄竜の猛撃剣”の効果で、正面から光と風の矢を打ち消す。
「――行くぞ」
“地天衝のブーツ”で右斜めに駆け上がり、レリーフェに狙いを付けさせないよう接近。
「ベクトルコントロール!」
普通に射ったはずの矢が、俺を追い掛けてくる。
”弓術“にも、”転剣術“と同じコントロール系の攻撃法があったのか。
迎撃のため、方向転換して切り払う!
「この私に対して、文字の力を使わないつもりか!」
弓に文字を刻んだまま剣を抜き、近接戦を仕掛けてくるレリーフェ!
「く!」
軽い細剣から繰り出される連続攻撃に、防戦一方となってしまう。
「ユリカの言うとおりだというのなら、貴様の本気を見せてみろ!」
下手にスキルで攻撃したら、無用な怪我をさせかねない。
「仕方ない――“可変”」
三文字刻むと同時に顎を開き――レリーフェの細剣を噛み切――れない!?
「文字の力を」
弓から、剣に流しこんでいる!
「これくらい出来なくては、騎士団長は務まらんのでな!」
文字が六文字に増え、攻撃は更に苛烈に!
「ハァッ!!」
剣を大剣形態に戻し――六文字刻んで、剣ごとレリーフェを弾き飛ばす!
「どうした、そんな物か!」
「わざわざ、使う必要の無い力を使うつもりは無い」
頼りすぎれば、戦い方が稚拙になってしまうと知っているから。
「そんなに見たいなら、そっちが引き出して見せろ」
「言ったな――装備セット2」
レリーフェの手に、黒い大仰な弓が出現した!?
しかも、背の“森は木漏れ日に包まれて”から神代の力を流しこんでいる!
「決闘に借り物を使わせて貰うのは忍びないが――要望通り、私の全力をぶつけてやろう!!」
Sランクの、“アルテミスの魔弓”を使った一撃が来る!!
「”風光弓術“――シーニックブレイズッ!!」
――”偉大なる英雄竜の猛撃剣”に、文字を十二文字刻む。
「”竜剣術“――――ドラゴンスラッシュ!!」
光と風の奔流を、竜の一撃で……切り裂いた。
「……本当に……十二文字刻むとわ」
「まだ続けるか?」
こっちは剣一本にしか文字を刻んでいないから、まだまだ精神力には余裕がある。
「その状態で、かなり余裕があるようだな……まったく、畏れ入る」
レリーフェが空気を弛緩させて文字を消したため、戦闘の意思は無くなったと判断。
「これで満足しただろう、お前達!」
「はい「「申し訳ありませんでした!!」」」
エルフ達が、一斉に頭を下げた?
「我等エルフ族には、神代文字を扱える者を敬う風習がある。私が若くして騎士団長になれたのも、それが理由だ」
さっきまでの棘がなくなり、親しみすら向けられている気がしてくる程に……穏やかな様子のレリーフェさん。
「彼等を納得させるために、わざと?」
「私自身がこの目で確かめたかったというのもあったが、レギオンの同盟の話をしたらごねる者が多くてな。すまない」
人騒がせな。
「エルフ族はずっと、世界中からデルタに消されていく文化を守ってきた。神代文字や世界の在り方についての教えを。故に、選民思想のような考えへと至り、視野狭窄となっている者も少なくないのだ。許して欲しい」
「は、はあ……」
世界の在り方? 神話かなにかのことか?
「これで私も、心置きなくお前達に……コセ殿に力を貸せそうだ」
「コセ殿?」
急に敬称で。
「……あ、アレなにかしら?」
カナさんが近付いていく先――黒い靄の一部が、膨張しているだと!?
「全員警戒!! なにか来る!!」
メルシュの切羽詰まった声に、ザッカルと共に急いで戦闘モードへ移行したカナさんに駆け寄る!
「いったい、なにが来やがる」
「――ぁぁぁぁああああああうgいkdkgでッッッッ!!!』
「なんだよ……コイツ」
「人間……なの?」
鎧を身に付けた大柄な男のようだが……左半身を中心に、様々な生物の特徴が見受けられる滅茶苦茶な見た目を!!
『ああッッ!! ああッッ!! ああああぁぁぁskvげッッッッ!!!」
「正気を失っている」
右手の巨大な斧を振り回し、攻撃してきた!!
「“超竜撃”!!」
振り下ろしてきた斧を弾き上げる!
「完全に錯乱してやがる! ぶっ殺すぞ!」
「判ったわ!」
「俺が――ッ!」
十二文字引き出したからか、身体が少しばかり重い。
そろそろ慣れたと思ったが、一回気を抜いたのが悪かったか。
「オラよ!!」
ザッカルが三文字刻んだ剣槍で斬り掛かるも、銅色の大斧に防がれる。
「気を付けて! ソイツの装備、Sランクが多い!」
メルシュの警告が飛ぶ。
「なんだと?」
「すぐに終わらせるわよ!」
カナさんが、鎌に三文字刻んだと同時に左腕の甲手から蜘蛛の糸を発射――即座に首を刈りに!
「おぉぉ――“大地讃頌”ッッ!!』
奴が地面を踏み付けた瞬間、扇状に黄土色の光りが地面を流れ――ザッカルとカナを吹き飛ばしてしまった!!
「“飛王剣”!!」
『“大地斧術”、グランドスラッシュ!!」
奴が俺の斬撃を迎撃しているうちに、頭上を“跳躍”で跳び越え――空中を踏んで首を薙ぎに行く!
「――硬い!」
文字無しの状態とはいえ、首への一撃をほんの少しの切り傷で止められてしまうなんて!
あの化け物化した部分は、恐ろしく頑丈らしい。
「“風光弓術”――シーニックブレイズ!!」
「“古代弓術”――オールドブレイズ!!」
背後からレリーフェとシレイアが強襲してくれるも、あまりの硬さに大したダメージになっていない!?
「――“超竜撃”!!」
瞬時に十二文字を刻み、竜の一撃を食らわせる!!
「“闘気斧”gjwhッ!!』
「ク!!」
ルイーサと同系統の能力で強化した斧に、ギリギリで受けきられてしまう!!
『ゥォぉぉぉぉぉッッッッ!!!」
地面からの攻撃を警戒するあまり、突進を受けるまま――浮かせていた身体が押される!!
なんとか空中を踏んで留まろうとするも――このままじゃ、コイツと一緒に俺まで靄の中に!!
「コセくん!!」
「野郎!!」
カナさんの蜘蛛糸が男にくっ付いて引っ張ろうとするも、膂力が違いすぎて意味を成さない!
ザッカルが糸を引こうとするも、止められない!
コイツのこの力……いったい何者なんだよ!!
「――まずい」
「――文字の力を纏ってッ!!」
メルシュの悲痛な叫びを最後に、俺達四人は……靄の中へと落ちていった。
シレイアの訓練に付き合っていたら、レリーフェさんが喧嘩腰で声を掛けてきた。
というか、背後にエルフ達が。
ジュリーの砦城を使っている奴等か。
ていうか、いつの間にか見学者が増えてるな。カナさんが居るのはちょっと意外……ザッカルにでも誘われたのか?
「私を無視するとは良い度胸だな」
「いや、そんなつもりは」
「今から、貴様に決闘を申し込む!」
「いや、いきなりが過ぎ――」
とても細い刀身の剣で、高速の突きを放ってきた!!
「……不意打ちか」
しかも、眉間を狙ってきた。
躱さなければ、確実に死んでいただろう場所を。
「私を屈伏させてみろ、レギオンリーダー」
いったい、なにを考えているのやら。
「“魔炎”」
紫炎の蛇を空中に生み出し、レリーフェを後退させる。
「“暴風魔法”――サイクロンバレット!!」
レリーフェの魔法を、“魔炎”に食わせて消し去った。
「面白い」
剣を腰に差し、“森は木漏れ日に包まれて”を構えるレリーフェ。
「なにが面白いんだ?」
「お前が、一気に戦う者の目になったからだ。戦士の目にな」
まさか、そんな事を面と向かって言われる日が来るとは。
「死んでも文句は言うなよ」
「当然だ!」
弓に、文字が三文字刻まれた!
「“風光弓術”――シーニックアロー!!」
「“超竜撃”」
”偉大なる英雄竜の猛撃剣”の効果で、正面から光と風の矢を打ち消す。
「――行くぞ」
“地天衝のブーツ”で右斜めに駆け上がり、レリーフェに狙いを付けさせないよう接近。
「ベクトルコントロール!」
普通に射ったはずの矢が、俺を追い掛けてくる。
”弓術“にも、”転剣術“と同じコントロール系の攻撃法があったのか。
迎撃のため、方向転換して切り払う!
「この私に対して、文字の力を使わないつもりか!」
弓に文字を刻んだまま剣を抜き、近接戦を仕掛けてくるレリーフェ!
「く!」
軽い細剣から繰り出される連続攻撃に、防戦一方となってしまう。
「ユリカの言うとおりだというのなら、貴様の本気を見せてみろ!」
下手にスキルで攻撃したら、無用な怪我をさせかねない。
「仕方ない――“可変”」
三文字刻むと同時に顎を開き――レリーフェの細剣を噛み切――れない!?
「文字の力を」
弓から、剣に流しこんでいる!
「これくらい出来なくては、騎士団長は務まらんのでな!」
文字が六文字に増え、攻撃は更に苛烈に!
「ハァッ!!」
剣を大剣形態に戻し――六文字刻んで、剣ごとレリーフェを弾き飛ばす!
「どうした、そんな物か!」
「わざわざ、使う必要の無い力を使うつもりは無い」
頼りすぎれば、戦い方が稚拙になってしまうと知っているから。
「そんなに見たいなら、そっちが引き出して見せろ」
「言ったな――装備セット2」
レリーフェの手に、黒い大仰な弓が出現した!?
しかも、背の“森は木漏れ日に包まれて”から神代の力を流しこんでいる!
「決闘に借り物を使わせて貰うのは忍びないが――要望通り、私の全力をぶつけてやろう!!」
Sランクの、“アルテミスの魔弓”を使った一撃が来る!!
「”風光弓術“――シーニックブレイズッ!!」
――”偉大なる英雄竜の猛撃剣”に、文字を十二文字刻む。
「”竜剣術“――――ドラゴンスラッシュ!!」
光と風の奔流を、竜の一撃で……切り裂いた。
「……本当に……十二文字刻むとわ」
「まだ続けるか?」
こっちは剣一本にしか文字を刻んでいないから、まだまだ精神力には余裕がある。
「その状態で、かなり余裕があるようだな……まったく、畏れ入る」
レリーフェが空気を弛緩させて文字を消したため、戦闘の意思は無くなったと判断。
「これで満足しただろう、お前達!」
「はい「「申し訳ありませんでした!!」」」
エルフ達が、一斉に頭を下げた?
「我等エルフ族には、神代文字を扱える者を敬う風習がある。私が若くして騎士団長になれたのも、それが理由だ」
さっきまでの棘がなくなり、親しみすら向けられている気がしてくる程に……穏やかな様子のレリーフェさん。
「彼等を納得させるために、わざと?」
「私自身がこの目で確かめたかったというのもあったが、レギオンの同盟の話をしたらごねる者が多くてな。すまない」
人騒がせな。
「エルフ族はずっと、世界中からデルタに消されていく文化を守ってきた。神代文字や世界の在り方についての教えを。故に、選民思想のような考えへと至り、視野狭窄となっている者も少なくないのだ。許して欲しい」
「は、はあ……」
世界の在り方? 神話かなにかのことか?
「これで私も、心置きなくお前達に……コセ殿に力を貸せそうだ」
「コセ殿?」
急に敬称で。
「……あ、アレなにかしら?」
カナさんが近付いていく先――黒い靄の一部が、膨張しているだと!?
「全員警戒!! なにか来る!!」
メルシュの切羽詰まった声に、ザッカルと共に急いで戦闘モードへ移行したカナさんに駆け寄る!
「いったい、なにが来やがる」
「――ぁぁぁぁああああああうgいkdkgでッッッッ!!!』
「なんだよ……コイツ」
「人間……なの?」
鎧を身に付けた大柄な男のようだが……左半身を中心に、様々な生物の特徴が見受けられる滅茶苦茶な見た目を!!
『ああッッ!! ああッッ!! ああああぁぁぁskvげッッッッ!!!」
「正気を失っている」
右手の巨大な斧を振り回し、攻撃してきた!!
「“超竜撃”!!」
振り下ろしてきた斧を弾き上げる!
「完全に錯乱してやがる! ぶっ殺すぞ!」
「判ったわ!」
「俺が――ッ!」
十二文字引き出したからか、身体が少しばかり重い。
そろそろ慣れたと思ったが、一回気を抜いたのが悪かったか。
「オラよ!!」
ザッカルが三文字刻んだ剣槍で斬り掛かるも、銅色の大斧に防がれる。
「気を付けて! ソイツの装備、Sランクが多い!」
メルシュの警告が飛ぶ。
「なんだと?」
「すぐに終わらせるわよ!」
カナさんが、鎌に三文字刻んだと同時に左腕の甲手から蜘蛛の糸を発射――即座に首を刈りに!
「おぉぉ――“大地讃頌”ッッ!!』
奴が地面を踏み付けた瞬間、扇状に黄土色の光りが地面を流れ――ザッカルとカナを吹き飛ばしてしまった!!
「“飛王剣”!!」
『“大地斧術”、グランドスラッシュ!!」
奴が俺の斬撃を迎撃しているうちに、頭上を“跳躍”で跳び越え――空中を踏んで首を薙ぎに行く!
「――硬い!」
文字無しの状態とはいえ、首への一撃をほんの少しの切り傷で止められてしまうなんて!
あの化け物化した部分は、恐ろしく頑丈らしい。
「“風光弓術”――シーニックブレイズ!!」
「“古代弓術”――オールドブレイズ!!」
背後からレリーフェとシレイアが強襲してくれるも、あまりの硬さに大したダメージになっていない!?
「――“超竜撃”!!」
瞬時に十二文字を刻み、竜の一撃を食らわせる!!
「“闘気斧”gjwhッ!!』
「ク!!」
ルイーサと同系統の能力で強化した斧に、ギリギリで受けきられてしまう!!
『ゥォぉぉぉぉぉッッッッ!!!」
地面からの攻撃を警戒するあまり、突進を受けるまま――浮かせていた身体が押される!!
なんとか空中を踏んで留まろうとするも――このままじゃ、コイツと一緒に俺まで靄の中に!!
「コセくん!!」
「野郎!!」
カナさんの蜘蛛糸が男にくっ付いて引っ張ろうとするも、膂力が違いすぎて意味を成さない!
ザッカルが糸を引こうとするも、止められない!
コイツのこの力……いったい何者なんだよ!!
「――まずい」
「――文字の力を纏ってッ!!」
メルシュの悲痛な叫びを最後に、俺達四人は……靄の中へと落ちていった。
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