ダンジョン・ザ・チョイス
299.再会の龍意のケンシ達
「コセ!」
十五分の捜索を終え、神秘の館に戻ってくると……ユリカがガッシリと抱き付いてきた。
黒髪の左右を二本のおさげにした、ちょっと地味目の眼鏡の美少女。
その主張の激しい巨乳が、”偉大なる英雄の鎧”越しに押し付けられている!
「お、おい……」
ユリカが人目も憚らずこんな風に抱き付いてくるなんて……余程の事があったのかと心配になってしまう。
「怪我は無いか?」
「私は大丈夫だけれど、リンピョンとジュリー、フェルナンダとサトミは負傷したみたい。治療は無事に終わったようだけれど」
「……そっか。全員、神秘の館に?」
「フェルナンダは、ルイーサ達と一緒に忍者屋敷の方に居るはず」
「色々情報交換をしたい。怪我が無い者は集まれるか?」
「ああ……モモカは、ヨシノと一緒にお風呂よ」
「風呂?」
七歳であるモモカのことは、かなり心配だったけれど……なぜこのタイミングで風呂?
「モモカになにかあったのですか!?」
綺麗な黒髪とナイスバディーを持つ犬獣人のトゥスカが、とても心配そうに尋ねた。
「ええと……なんか、モモカが女の子を拾ってきたみたいで……その子が、もの凄く臭かったのよ。バニラって名前らしいんだけれど」
「そ、そうですか……」
一緒にお風呂に入っているくらいなら、問題無い……のかな?
「おい、ユリカ!! いつまでこの私を待たせるつもりだ!」
玄関から出て来たのは、奴隷服を着た……緑髪の美女?
「誰だ?」
耳が、異様に長い。
「エルフのレリーフェ。突発クエストで私を助けてくれたお礼に、私の奴隷にしたの」
ユリカ、その言い方はどうなんだ?
「いい加減に、私達をどうするつもりなのか言え! 場合によっては、この命に代えてでも――」
「待て待て。こっちも仲間が合流したばかりで、分からない事だらけなんだ」
明日の件もあるし、早いうちに現状の確認と情報の共有をしておきたい。
「情報交換の場に、貴女も参加してくれないか? 俺達としても、そちらの意見を色々聞きたい」
「なるほど。貴様がユリカの軍師、もしくはこの集団の副官というわけだ」
「ユリカの軍師?」
なんで、俺が軍師やら副官なんて話に?
「いや、私はこのレギオンのリーダーじゃないわよ?」
ユリカが自分の立場を否定する。
「レギオン? いや、今更隠しても騙されんぞ!」
彼女、レギオンについては知らないのか。
「騙されんて……そもそも、なんで私がリーダーだと思ってんのよ?」
「一瞬とはいえ、神代の力を十二文字刻んだお前が、リーダーでないはずがないだろう!」
「ユリカって、九文字が限界じゃなかったか?」
「実戦だと、六文字がやっとだったけれどね」
このおよそ一週間で、ユリカも成長したって事なんだな。
「言っておくけれど、コセは三つ同時に十二文字刻めるわよ?」
「…………ハ?」
「ていうか、ここには私よりも文字を上手く扱える人間が何人も居るから」
十二文字刻めたのは、俺しか居なかった気がするんだが。
「マスター、いつまでもここで喋っているわけにはいかないよ?」
緑味を帯びた白髪の少女、ワイズマンの隠れNPCであるメルシュに指摘される。
「そうだな。ユリカ、皆を食堂に集めてくれ。トゥスカは、ルイーサ達を呼んで来て欲しい」
「了解」
「分かりました、ご主人様」
俺は、メルシュとお茶の用意でもしておこうか。
「……来ないんですか?」
口を大きく開けたままのエルフ、レリーフェさんに尋ねる。
「い、行きましゅ!!」
いったい、なにを慌てて居るのだろう?
★
怪我をしたと聞いていたけれど、フェルナンダとリンピョン、アヤナ以外は集まってくれた。
モモカとヨシノは、まだ暫く掛かるらしい。
それにしても、何人かは装備が変わっているみたいだな。
ノーザンなんか、銀の鎧が藍色のゴツイのに変わっている。
「フェルナンダは大丈夫なのか?」
「傷は塞がったが、目を覚まさなくてな。今は、アヤナが見てくれている」
「青い鎧の男が強くて……フェルナンダが善戦してくれなかったら、誰かは死んでたかもしれない……ルイーサは居なかったけれど、こっちは四人がかりだったのに」
赤茶髪の緩いウェーブ掛かった長い髪を持つルイーサと、緑髪で左サイドテールを作っているアオイが教えてくれる。
ルイーサもだが、アオイが珍しく意気消沈していた。
それだけ、酷い怪我だったのかもしれない。
「……そうか」
余程の強敵だったみたいだな。
「……ありがとね、ノーザン。ノーザンとネクロマンサーが来てくれなかったら、アイツを追い払えなかったよ」
「いえ……なんとか間に合って良かったです」
白味を帯びた青髪の牛獣人、ノーザンが申し訳なさそうに……というか、生返事?
なにかあったのか、ノーザン?
「疲れてるかもしれないけれど、こっちも色々あってね。早めに伝えた方が良いと思って、無理に集まってもらったの」
メルシュが、まるで自分が言いだしたかのように喋り出す。
俺にヘイトが向かないようにという、メルシュなりの配慮なんだろうけれど……。
「まずは、十六ステージの宝石島組から話を始めるね」
メルシュを中心に、”宝石魔法”のユニークスキルを手に入れたこと、アテルと同盟を結んだ事を中心に語られる。
取り敢えず、豪華客船で起きた突発クエストについては触れない事にしたらしい。
次に十七ステージのおまもり島について、日本人とイギリス人のハーフである金髪の美少女、ジュリーが語り出す。
十八ステージの魔女の避暑地で起きた事については、アマゾネスの隠れNPCである、黒ロング褐色美女のシレイアが。魔女オークションに関しては、二面性のある黒髪の女性、カナが説明してくれる。
十九ステージの遺跡島に関しては、白鎧が印象的なルイーサと、白髪の華奢な人魚であるスゥーシャが報告してくれる。
フェルナンダが居ないからか、イマイチ要領を得ない部分もあったけれど、無事にSランクの聖剣を手に入れることが出来たらしい。
「さっきの突発クエストに関しては、後日、面子が揃ってから話した方が良さそうだね。明日、朝食後にでも話そっか」
皆が疲れているのを察したからか、メルシュがそう言いだした。
「オイ。疲れているところ悪いが、お前達が奴隷にしたエルフ達について、この場で聞かせて貰おうか!」
この状況で、なぜこんなにも毅然としていられるのだろう、このエルフは。
「そうだな。ユリカ、説明を頼む」
何人居るか知らないけれど、早めに片付けておいた方が良い件だろう。
「私がそこのレリーフェに助けて貰ったって言うのと、怪我をしたエルフを安全な場所に移動させようと思ったのよ。ほら、”逆転の紋章”で奴隷にされたら、クエストから脱落扱いになるとかかんとか言ってたから」
「なるほど、ルールを逆手に取って安全を確保しようと思ったわけだ」
最初ユリカに会った頃は、こんな柔軟な発想が出来る人間になるとは思えなかったけれど……成長してるんだな。
「それは理解出来るが、なぜ貴様は私まで奴隷に!!」
「そんなの、あとからお金を払うのが勿体ないからよ」
「な……」
ユリカ、レリーフェさんを随分気に入ったんだな。
今までのユリカなら、自分から好意的に誰かを仲間に誘おうなんてしなかっただろうに。
「どうせ奴隷に戻っちゃうなら、タダで私の奴隷にしちゃった方がお得でしょ」
「てことは、これからはレリーフェさんと攻略を進めるという事ですか? エルフの方と肩を並べるのは、なんだか畏れ多いです」
信心深い白猫獣人のタマが、エルフを敬うような事を言い出す。
獣人には、エルフを上に見るような傾向があるのか?
「神代文字を使えていたから、即戦力になってくれるわよ」
「神代文字を?」
それは、普通に頼もしいな。
「勝手な事を言うな! 奴隷として使われるくらいなら、私は舌を噛むぞ!」
「じゃあ、はい」
「……奴隷の紋章が」
彼女の胸元から、奴隷の印が消える。
どうやらユリカが、チョイスプレートを操作して奴隷から解放したようだ。
「マスター、この二十ステージの先に進むには、エルフをパーティーかレギオンに一人以上加えておく必要があるよ」
「また、強制的に奴隷を買わせる仕様か」
デルタの奴等は、余程俺達に人間を買うという経験をさせたいらしい。
「文字を扱えるって言うなら、確かに彼女は適任かも」
「そうだな……レリーフェさん、貴女に話して置きたいことがある」
彼女に、俺達が置かれている状況、目的について教えることにした。
十五分の捜索を終え、神秘の館に戻ってくると……ユリカがガッシリと抱き付いてきた。
黒髪の左右を二本のおさげにした、ちょっと地味目の眼鏡の美少女。
その主張の激しい巨乳が、”偉大なる英雄の鎧”越しに押し付けられている!
「お、おい……」
ユリカが人目も憚らずこんな風に抱き付いてくるなんて……余程の事があったのかと心配になってしまう。
「怪我は無いか?」
「私は大丈夫だけれど、リンピョンとジュリー、フェルナンダとサトミは負傷したみたい。治療は無事に終わったようだけれど」
「……そっか。全員、神秘の館に?」
「フェルナンダは、ルイーサ達と一緒に忍者屋敷の方に居るはず」
「色々情報交換をしたい。怪我が無い者は集まれるか?」
「ああ……モモカは、ヨシノと一緒にお風呂よ」
「風呂?」
七歳であるモモカのことは、かなり心配だったけれど……なぜこのタイミングで風呂?
「モモカになにかあったのですか!?」
綺麗な黒髪とナイスバディーを持つ犬獣人のトゥスカが、とても心配そうに尋ねた。
「ええと……なんか、モモカが女の子を拾ってきたみたいで……その子が、もの凄く臭かったのよ。バニラって名前らしいんだけれど」
「そ、そうですか……」
一緒にお風呂に入っているくらいなら、問題無い……のかな?
「おい、ユリカ!! いつまでこの私を待たせるつもりだ!」
玄関から出て来たのは、奴隷服を着た……緑髪の美女?
「誰だ?」
耳が、異様に長い。
「エルフのレリーフェ。突発クエストで私を助けてくれたお礼に、私の奴隷にしたの」
ユリカ、その言い方はどうなんだ?
「いい加減に、私達をどうするつもりなのか言え! 場合によっては、この命に代えてでも――」
「待て待て。こっちも仲間が合流したばかりで、分からない事だらけなんだ」
明日の件もあるし、早いうちに現状の確認と情報の共有をしておきたい。
「情報交換の場に、貴女も参加してくれないか? 俺達としても、そちらの意見を色々聞きたい」
「なるほど。貴様がユリカの軍師、もしくはこの集団の副官というわけだ」
「ユリカの軍師?」
なんで、俺が軍師やら副官なんて話に?
「いや、私はこのレギオンのリーダーじゃないわよ?」
ユリカが自分の立場を否定する。
「レギオン? いや、今更隠しても騙されんぞ!」
彼女、レギオンについては知らないのか。
「騙されんて……そもそも、なんで私がリーダーだと思ってんのよ?」
「一瞬とはいえ、神代の力を十二文字刻んだお前が、リーダーでないはずがないだろう!」
「ユリカって、九文字が限界じゃなかったか?」
「実戦だと、六文字がやっとだったけれどね」
このおよそ一週間で、ユリカも成長したって事なんだな。
「言っておくけれど、コセは三つ同時に十二文字刻めるわよ?」
「…………ハ?」
「ていうか、ここには私よりも文字を上手く扱える人間が何人も居るから」
十二文字刻めたのは、俺しか居なかった気がするんだが。
「マスター、いつまでもここで喋っているわけにはいかないよ?」
緑味を帯びた白髪の少女、ワイズマンの隠れNPCであるメルシュに指摘される。
「そうだな。ユリカ、皆を食堂に集めてくれ。トゥスカは、ルイーサ達を呼んで来て欲しい」
「了解」
「分かりました、ご主人様」
俺は、メルシュとお茶の用意でもしておこうか。
「……来ないんですか?」
口を大きく開けたままのエルフ、レリーフェさんに尋ねる。
「い、行きましゅ!!」
いったい、なにを慌てて居るのだろう?
★
怪我をしたと聞いていたけれど、フェルナンダとリンピョン、アヤナ以外は集まってくれた。
モモカとヨシノは、まだ暫く掛かるらしい。
それにしても、何人かは装備が変わっているみたいだな。
ノーザンなんか、銀の鎧が藍色のゴツイのに変わっている。
「フェルナンダは大丈夫なのか?」
「傷は塞がったが、目を覚まさなくてな。今は、アヤナが見てくれている」
「青い鎧の男が強くて……フェルナンダが善戦してくれなかったら、誰かは死んでたかもしれない……ルイーサは居なかったけれど、こっちは四人がかりだったのに」
赤茶髪の緩いウェーブ掛かった長い髪を持つルイーサと、緑髪で左サイドテールを作っているアオイが教えてくれる。
ルイーサもだが、アオイが珍しく意気消沈していた。
それだけ、酷い怪我だったのかもしれない。
「……そうか」
余程の強敵だったみたいだな。
「……ありがとね、ノーザン。ノーザンとネクロマンサーが来てくれなかったら、アイツを追い払えなかったよ」
「いえ……なんとか間に合って良かったです」
白味を帯びた青髪の牛獣人、ノーザンが申し訳なさそうに……というか、生返事?
なにかあったのか、ノーザン?
「疲れてるかもしれないけれど、こっちも色々あってね。早めに伝えた方が良いと思って、無理に集まってもらったの」
メルシュが、まるで自分が言いだしたかのように喋り出す。
俺にヘイトが向かないようにという、メルシュなりの配慮なんだろうけれど……。
「まずは、十六ステージの宝石島組から話を始めるね」
メルシュを中心に、”宝石魔法”のユニークスキルを手に入れたこと、アテルと同盟を結んだ事を中心に語られる。
取り敢えず、豪華客船で起きた突発クエストについては触れない事にしたらしい。
次に十七ステージのおまもり島について、日本人とイギリス人のハーフである金髪の美少女、ジュリーが語り出す。
十八ステージの魔女の避暑地で起きた事については、アマゾネスの隠れNPCである、黒ロング褐色美女のシレイアが。魔女オークションに関しては、二面性のある黒髪の女性、カナが説明してくれる。
十九ステージの遺跡島に関しては、白鎧が印象的なルイーサと、白髪の華奢な人魚であるスゥーシャが報告してくれる。
フェルナンダが居ないからか、イマイチ要領を得ない部分もあったけれど、無事にSランクの聖剣を手に入れることが出来たらしい。
「さっきの突発クエストに関しては、後日、面子が揃ってから話した方が良さそうだね。明日、朝食後にでも話そっか」
皆が疲れているのを察したからか、メルシュがそう言いだした。
「オイ。疲れているところ悪いが、お前達が奴隷にしたエルフ達について、この場で聞かせて貰おうか!」
この状況で、なぜこんなにも毅然としていられるのだろう、このエルフは。
「そうだな。ユリカ、説明を頼む」
何人居るか知らないけれど、早めに片付けておいた方が良い件だろう。
「私がそこのレリーフェに助けて貰ったって言うのと、怪我をしたエルフを安全な場所に移動させようと思ったのよ。ほら、”逆転の紋章”で奴隷にされたら、クエストから脱落扱いになるとかかんとか言ってたから」
「なるほど、ルールを逆手に取って安全を確保しようと思ったわけだ」
最初ユリカに会った頃は、こんな柔軟な発想が出来る人間になるとは思えなかったけれど……成長してるんだな。
「それは理解出来るが、なぜ貴様は私まで奴隷に!!」
「そんなの、あとからお金を払うのが勿体ないからよ」
「な……」
ユリカ、レリーフェさんを随分気に入ったんだな。
今までのユリカなら、自分から好意的に誰かを仲間に誘おうなんてしなかっただろうに。
「どうせ奴隷に戻っちゃうなら、タダで私の奴隷にしちゃった方がお得でしょ」
「てことは、これからはレリーフェさんと攻略を進めるという事ですか? エルフの方と肩を並べるのは、なんだか畏れ多いです」
信心深い白猫獣人のタマが、エルフを敬うような事を言い出す。
獣人には、エルフを上に見るような傾向があるのか?
「神代文字を使えていたから、即戦力になってくれるわよ」
「神代文字を?」
それは、普通に頼もしいな。
「勝手な事を言うな! 奴隷として使われるくらいなら、私は舌を噛むぞ!」
「じゃあ、はい」
「……奴隷の紋章が」
彼女の胸元から、奴隷の印が消える。
どうやらユリカが、チョイスプレートを操作して奴隷から解放したようだ。
「マスター、この二十ステージの先に進むには、エルフをパーティーかレギオンに一人以上加えておく必要があるよ」
「また、強制的に奴隷を買わせる仕様か」
デルタの奴等は、余程俺達に人間を買うという経験をさせたいらしい。
「文字を扱えるって言うなら、確かに彼女は適任かも」
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