ダンジョン・ザ・チョイス
286.魔神・強壮守宮
謎の突発クエスト騒ぎから一夜明け、私とサキお姉さんのパーティーは共に、十七ステージのおまもり島のダンジョンに挑んでいた。
「来たわね、お守りの化身」
泥地帯に差し掛かると、見計らったように巨大マトリョーシカのようなモンスター、お守りの化身が襲い掛かってくる。
一メートル程の身体で、ピョンピョン跳ねながら。
「アタシはマサコ、美少女だよ!!」
わけの分からない事を叫びながら、”ラブリーハートな脳筋ロッド”でお守りの化身をぶっ飛ばしてしまうマサコ……ヤバい、吐き気が。
「だ、大丈夫ですか、ジュリー様?」
「え、本当に顔が青いじゃないですか!」
タマとテイマーのサキが、私を心配してくれる。
「だ、大丈夫……」
お守りの化身は、低確率でレアなおまもりをドロップしてくれるのに。
「無理しないで良いわよ、ジュリーちゃん。私達が露払いしとくから」
サキお姉さんが、気を遣ってくれる。
「いや、でも……」
経験値とか持ってかれるでしょうが。
「私らも戦うから、気にしないで。テイマーの方のサキ、ジュリーを頼んだわよ」
「致し方ないとはいえ、その言い方はやめて貰えませんかね、ユリカさん」
珍しく、サキが文句を垂れる。
「ま、私が全滅させて貰うがな!」
空を泳ぎ回りながら、次々と巨大マトリョーシカの顔面を銛で貫いていくキジナ。
……お守りの化身、結構可愛い顔してるのに……容赦ない人。
「私の”深淵を覗く瞳”で、全て貫いてくれるは!」
銛なのに瞳なんだ。
「キジナだけでも、なんとかなっちゃいそうね」
せめて彼女達の戦い方を見極めようかと思ったけれど、この程度の相手に手の内は晒してくれないか。
●●●
「いや、凄いわね。デボラからは、ドライアドは最弱だなんて聞いていたけれど」
木々が増え始めた辺りから、ドライアドのヨシノが無双を開始。
洞窟入り口までのお守りの化身全てを一瞬で縛り上げ、締め潰していく。
デボラ……あの女、なにがドライアドは最弱だから要らないよ。植物があれば、最強と言っても良いくらいじゃない!
ダンジョン・ザ・チョイスには、植物を発生させるアイテムなんかもあるし……最悪だわ。
暗い考えがよぎってしまう程に、ドライアドが持つポテンシャルに強い危機感を感じてしまっている。
「あれ、このポータルってボス部屋手前に続く奴よね? もう終わりなの?」
凄い主張の激しいおっぱいを持つメガネっ娘が、ジュリーちゃんに尋ねた。
「うん。正直、他の島と比べても旨味の無いステージが、このおまもり島だからね」
そう、だからこそ私達は、隠れNPC、シャドーを手に入れるためだけにこっちにやって来た。
でも、ジュリーちゃん達のパーティーには隠れNPCが既に二体。
今は”シュメルの指輪”を使って、一つのパーティー内に隠れNPCを二人加えられるようにしているようだけれど……そんな状態で、シャドー目当てにこのステージにやって来たとは思えない。
シャドーの固有スキルを手に入れるためっていう可能性もあるけれど……ここのボスから貰える討伐報酬は微妙だし。
……ジュリーちゃん、いったいなにを考えてこのステージに来たの?
●●●
「この第十七ステージのボスは、魔神・強壮守宮。”強壮再生”と言って、再生能力が発動中は身体能力が少しだけ上がるという地味な能力を持っています。弱点属性無し。有効武器も無し。危険攻撃と呼べるような特殊な物もありません」
私の知っている情報を、わざとサキに説明して貰っている。
「なんか、今までのボスの中で……一番弱い?」
「再生能力を持ってますけれど、この面子で短期決戦を挑めば問題ないでしょう」
あくまで、情報源は私だけじゃないというアピールに過ぎないけれど。
「回復特化な点を除けば、一番特徴が無いボスとも言えますね。ハッキリ言って、最弱の魔神と言って良いかと」
「じゃあ、私達から先にボス戦をさせて貰うよ、サキお姉さん」
「ええ、頑張ってね」
《日高見のケンシ》の面子に見送られ、私達はボス部屋の中へ。
暗がりの奥で黄色味が強い橙光が灯り――藍色の石の身体を持つ、二足歩行の守宮人間が動き出す!
「出たな!」
ステージギミックにより、魔神の左右の床から無数の守宮が這い出て来続ける。
「金星球!」
ユリカのおかげで手に入ったアイテム、”天雷の結晶体”を付与してパワーアップした、天雷の金星球を顕現!
光と雷の二種属性にしたことで利便性は狭めたけれど、雷と光属性の強化効果が適用されるようになったため、以前よりも強力になっている。
「”磁力”――”回転術”、ハイパワーローリング!!」
「”転剣の竜巻”!!」
「”煉獄鳥”!!」
私が魔神を、タマが投げた”転剣狼の竜巻ブーメラン”が上下から竜巻を発生させながら左の守宮を、ユリカの紫炎の大鳥が右の守宮の群れを根絶やしに!
「さすがに、この程度じゃダメか」
七メートル程の巨体が、両腕を交差させた状態で金星球に耐えている。
「来て、セラ!」
サキが、ハイエンジェルウィッチであるセラを呼び出す!
『「”天雷魔法”――ヘブンスプランター!!」』
私とセラで同時に光雷を放ち――金星球を強化!!
『グォォォォォォォォッッ!!』
強壮守宮の身体が、どんどん壊れていく。
「まずいです! ヤモリの数が増えてます!」
取り巻きのアイツらは大して強くないけれど、このまま数が増え続ければ、タマとユリカだけじゃ対処仕切れなくなってしまう。
「問題ありません! ”二重魔法”、”星屑魔法”――スターダストシューティング!!」
ヨシノのユニークスキルにより、ヤモリが激減していくだけでなく、余波で魔神にもダメージを与えてくれる!
「再生能力があるだけあって、しぶといわね!」
『ですが、これで終わりです!』
セラがそう叫んだ瞬間、魔神・強壮守宮の身体が粉々に砕け――光へと変わっていった。
○おめでとうございます。魔神・強壮守宮の討伐に成功しました。
「よ、良かった」
やっぱり、ゲームと実戦は違う……判ってはいた事だけれど、いざという時は神代文字の力を使うことを躊躇わない方が良い……か。
○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。
★ヤモリ焼きの指輪 ★強壮再生のスキルカード
★低級のスキルカード ★強壮守宮の吸着足
メルシュに言われていた通り、私は”強壮守宮の吸着足”を選択した。
「来たわね、お守りの化身」
泥地帯に差し掛かると、見計らったように巨大マトリョーシカのようなモンスター、お守りの化身が襲い掛かってくる。
一メートル程の身体で、ピョンピョン跳ねながら。
「アタシはマサコ、美少女だよ!!」
わけの分からない事を叫びながら、”ラブリーハートな脳筋ロッド”でお守りの化身をぶっ飛ばしてしまうマサコ……ヤバい、吐き気が。
「だ、大丈夫ですか、ジュリー様?」
「え、本当に顔が青いじゃないですか!」
タマとテイマーのサキが、私を心配してくれる。
「だ、大丈夫……」
お守りの化身は、低確率でレアなおまもりをドロップしてくれるのに。
「無理しないで良いわよ、ジュリーちゃん。私達が露払いしとくから」
サキお姉さんが、気を遣ってくれる。
「いや、でも……」
経験値とか持ってかれるでしょうが。
「私らも戦うから、気にしないで。テイマーの方のサキ、ジュリーを頼んだわよ」
「致し方ないとはいえ、その言い方はやめて貰えませんかね、ユリカさん」
珍しく、サキが文句を垂れる。
「ま、私が全滅させて貰うがな!」
空を泳ぎ回りながら、次々と巨大マトリョーシカの顔面を銛で貫いていくキジナ。
……お守りの化身、結構可愛い顔してるのに……容赦ない人。
「私の”深淵を覗く瞳”で、全て貫いてくれるは!」
銛なのに瞳なんだ。
「キジナだけでも、なんとかなっちゃいそうね」
せめて彼女達の戦い方を見極めようかと思ったけれど、この程度の相手に手の内は晒してくれないか。
●●●
「いや、凄いわね。デボラからは、ドライアドは最弱だなんて聞いていたけれど」
木々が増え始めた辺りから、ドライアドのヨシノが無双を開始。
洞窟入り口までのお守りの化身全てを一瞬で縛り上げ、締め潰していく。
デボラ……あの女、なにがドライアドは最弱だから要らないよ。植物があれば、最強と言っても良いくらいじゃない!
ダンジョン・ザ・チョイスには、植物を発生させるアイテムなんかもあるし……最悪だわ。
暗い考えがよぎってしまう程に、ドライアドが持つポテンシャルに強い危機感を感じてしまっている。
「あれ、このポータルってボス部屋手前に続く奴よね? もう終わりなの?」
凄い主張の激しいおっぱいを持つメガネっ娘が、ジュリーちゃんに尋ねた。
「うん。正直、他の島と比べても旨味の無いステージが、このおまもり島だからね」
そう、だからこそ私達は、隠れNPC、シャドーを手に入れるためだけにこっちにやって来た。
でも、ジュリーちゃん達のパーティーには隠れNPCが既に二体。
今は”シュメルの指輪”を使って、一つのパーティー内に隠れNPCを二人加えられるようにしているようだけれど……そんな状態で、シャドー目当てにこのステージにやって来たとは思えない。
シャドーの固有スキルを手に入れるためっていう可能性もあるけれど……ここのボスから貰える討伐報酬は微妙だし。
……ジュリーちゃん、いったいなにを考えてこのステージに来たの?
●●●
「この第十七ステージのボスは、魔神・強壮守宮。”強壮再生”と言って、再生能力が発動中は身体能力が少しだけ上がるという地味な能力を持っています。弱点属性無し。有効武器も無し。危険攻撃と呼べるような特殊な物もありません」
私の知っている情報を、わざとサキに説明して貰っている。
「なんか、今までのボスの中で……一番弱い?」
「再生能力を持ってますけれど、この面子で短期決戦を挑めば問題ないでしょう」
あくまで、情報源は私だけじゃないというアピールに過ぎないけれど。
「回復特化な点を除けば、一番特徴が無いボスとも言えますね。ハッキリ言って、最弱の魔神と言って良いかと」
「じゃあ、私達から先にボス戦をさせて貰うよ、サキお姉さん」
「ええ、頑張ってね」
《日高見のケンシ》の面子に見送られ、私達はボス部屋の中へ。
暗がりの奥で黄色味が強い橙光が灯り――藍色の石の身体を持つ、二足歩行の守宮人間が動き出す!
「出たな!」
ステージギミックにより、魔神の左右の床から無数の守宮が這い出て来続ける。
「金星球!」
ユリカのおかげで手に入ったアイテム、”天雷の結晶体”を付与してパワーアップした、天雷の金星球を顕現!
光と雷の二種属性にしたことで利便性は狭めたけれど、雷と光属性の強化効果が適用されるようになったため、以前よりも強力になっている。
「”磁力”――”回転術”、ハイパワーローリング!!」
「”転剣の竜巻”!!」
「”煉獄鳥”!!」
私が魔神を、タマが投げた”転剣狼の竜巻ブーメラン”が上下から竜巻を発生させながら左の守宮を、ユリカの紫炎の大鳥が右の守宮の群れを根絶やしに!
「さすがに、この程度じゃダメか」
七メートル程の巨体が、両腕を交差させた状態で金星球に耐えている。
「来て、セラ!」
サキが、ハイエンジェルウィッチであるセラを呼び出す!
『「”天雷魔法”――ヘブンスプランター!!」』
私とセラで同時に光雷を放ち――金星球を強化!!
『グォォォォォォォォッッ!!』
強壮守宮の身体が、どんどん壊れていく。
「まずいです! ヤモリの数が増えてます!」
取り巻きのアイツらは大して強くないけれど、このまま数が増え続ければ、タマとユリカだけじゃ対処仕切れなくなってしまう。
「問題ありません! ”二重魔法”、”星屑魔法”――スターダストシューティング!!」
ヨシノのユニークスキルにより、ヤモリが激減していくだけでなく、余波で魔神にもダメージを与えてくれる!
「再生能力があるだけあって、しぶといわね!」
『ですが、これで終わりです!』
セラがそう叫んだ瞬間、魔神・強壮守宮の身体が粉々に砕け――光へと変わっていった。
○おめでとうございます。魔神・強壮守宮の討伐に成功しました。
「よ、良かった」
やっぱり、ゲームと実戦は違う……判ってはいた事だけれど、いざという時は神代文字の力を使うことを躊躇わない方が良い……か。
○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。
★ヤモリ焼きの指輪 ★強壮再生のスキルカード
★低級のスキルカード ★強壮守宮の吸着足
メルシュに言われていた通り、私は”強壮守宮の吸着足”を選択した。
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