ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

268.宝石島での再会

「”禍鎌切”!」

 ”シュバルツバルトブルーム”に乗って猛スピードで落下しながら、”宵闇の暗闘を制せよ”からジグザグの刃を伸ばして、マジックパワースパイダーの首みたいな部分を刎ねる!

 更に、お尻から生やしているその他装備、”烈火剣尾”Aランクで燃やし切り、トドメを刺した。

「使いこなしているじゃないか、カナ。おかげでマジックパワースパイダーの発見、討伐効率も上がったし、コイツは思わぬ収獲だね」

 シレイアが良い評価を下してくれる。

「ええ、とっても便利よ。気にいちゃったわ♪」

 昨夜のオークションで偶然落札してしまった”シュバルツバルトブルーム”だけれど、この真っ黒な艶々のほうきというのもあって、とても気に入ってしまった。

 コセ達がクイズで手に入れたA級アイテムの”烈火剣尾”も、良い感じ。

「黒い仮面に大鎌にほうき……カナさんはどこへ向かっているのかな?」
「さあな。まあ、強くなってるんなら、なんでも良いだろう」

 ユイちゃんとザッカルは、なにを話しているのかしら?

「このパーティーに魔法使いが私しか居ないとはいえ、”殲滅のノクターン”まで私が持ってても良いの?」

 私は魔法使いだけれど、武器戦闘がメインになっちゃってるし、昨日のオークションで手に入れた四つのうち三つも所持している事に若干の後ろめたさが。

「まあ、そこは合流後で良いさね。ちょっと扱いにくい杖だし」

 夜に使うと威力を増加だっけ。Sランクらしいから、普段から使っていてもそれなりに強力みたいだけれど。

「それで、明日にはダンジョン攻略で良いんですよね?」

 ノーザンが尋ねる。

「まあ、大した長さは無いけれどね。毒持ちが出るけれど、食らうのは稀だし、既に”毒耐性”の指輪も人数分あるから、ボスまでは楽なもんよ」

 次の二十ステージに行くまで魔法の家は利用できないから、ダンジョン攻略を始めたら一気にボス戦まで終えた方が良いというのがシレイアさんの考え。

「午後を休息に当てるためにも、午前のうちに”強靭の魔糸”をノルマ以上に集めましょう!」


 久し振りにやる気になっている自分にちょっと驚きながら、化け蜘蛛にも負けず、気持ちの良い汗をかくのだった。


●●●


「思ったより早く着きそうだな」

 ”耐弾性ボート”の操舵をしていると、島がどんどん大きくなっていく。

「到着は昼前くらいになりそうだね。夜も少し走らせたから、予定より早く着きそう」

 メルシュがやって来て、確認してくれた。

「先に着いている皆は無事だろうか?」

 モモカ、ナオ、メグミ、クリス、サトミさん、リンピョンの六人は、昨日の今頃に到着しているはず。

「海の旅も、もうすぐ終わりなのですね」

 クマムが……白い布で身体を覆っただけの半裸状態で、操舵室に上がってきた!

「なんて格好をしてるんだよ」
「もう一回くらい相手をシていただけ無いかと思って♡」

 海のど真ん中で開放的になっているのだろうけれど……クマムさん、性欲強すぎません?

「でも、さすがに我慢した方が良さそうですね。では、今夜にでもホテルで」
「今夜は他の者に譲らないと、ナオにすら嫌われてしまうかもしれませんよ」

 トゥスカがクマムを窘める。

 ……この二日間、クマムと張り合っていたくせに。

 というか、トゥスカさんも下着姿じゃん!

「あと二十分もかからないだろうから、上陸の準備をしておいた方が良いよ」

 メルシュに促されて、荷物の片付けに行く二人。

「私が口で抜いてあげようか?」

 ……俺が二人の半裸に反応してしまった事は、メルシュに気付かれていたらしい。

「け、結構です」

 ダメだ、全員この開放感に当てられておかしくなっている!

 ほんの少し、ボートのスピードを上げ……ん?

 船着き場の所に、見覚えのある人影が……。

「サトミさん達に……アテル?」

 どうして、アテル達と一緒に皆が。


             ★


「コセーー!!」

 陸に上がるなり、モモカが駆けながら抱き付いてきた。

「元気だったか、モモカ」

 抱え上げ、オデコをくっ付けながら尋ねる。

「うん、元気!」

 三日近く離れてたからか、モモカの純真無垢な笑顔が眩しい!

「お姉ちゃん達がたくさん遊んでくれたの!」

 わざわざお姉ちゃん達って言ったって事は……アテル達とそれなりに長く居たようだな。

「久し振りだね、コセ」
「決着を着ける……ってわけじゃないよな」
「もちろん。今日は幾つか提案があって、彼女達に仲立ちを頼んだんだ」

 サトミさんが近付いてくる。

「港に着いたとき、プレーヤー達に待ち伏せされてたんだけれど……彼等に助けられたの」

 アテルの周りに居るのは十一人……万が一戦闘になれば、俺達の方が圧倒的に不利。

「場所を変えて、話をしないかい?」

 少し、アテルの雰囲気が変わった気がする。

 それとも、俺の感じ方が変わったのだろうか。

「……分かった」
「それじゃあ、向こうに――」
「モモカちゃん、一緒にお昼ご飯食べましょう!」

 いきなりモモカに接近してきたのは、青い髪を持つ格好いい系の綺麗な美女。

 ゴツイ黒い盾が得物らしい。他に武器らしい武具は見当たらない。

 格好はズボンだけれど、ヘソが見えてたりと地味に際どい、上が白、下が青の服を着ている。

「ズルいわよ、エリ!」

 遅れてモモカに近付いてきたのは、和風の甲冑を身に着け、鉢巻きを巻いたお姫様カットの黒髪美女。

「早い者勝ちよ、カズコ」
「そんなのダメよ!」

 モモカが、分かりやすく俺の後ろに隠れる。
 
「エリさん、カズコさん、モモカちゃんが嫌がってるよ」

「ご、ごめんなさい」
「こ、怖がらせる気は無かったの!」

 妙に媚びてくる人間って、なんか怖いんだよな。

「二人とも、少し離れなさい」

 指摘してくれたのは、猫系の獣人?

「お久しぶりです、トゥスカ」
「こちらこそ、クフェリア」

 二人は知り合いなのか?

「やー、初めまして、ワイズマン。設定上はメルシュだったね」
「黒昼村以来だな、メルシュ」
「初めましてというべきですか、メルシュ」

 貴族のような優美な服に海賊帽子やマントを羽織っている赤茶髪の女性と、いつぞやに遭遇した隠れNPCのタイタン、それに、密着するような赤銅色の石鎧を着た黒髪短髪の子が。

「パイレーツにタイタン、それにガーゴイルか。ええ、久し振り」

 ガーゴイルということは、既にこのステージの隠れNPCは取られた後か。

「今はメアリーだよ」
「私はオードリーです」

 切符のよさそうな女海賊が隠れNPCのパイレーツ、メアリーで、無感情そうに見えるのが、ガーゴイルの隠れNPCであるオードリーか。

 挨拶もそこそこに、俺達はアテル達に付いて歩き出した。

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