ダンジョン・ザ・チョイス
232.花畑での賑わい
「“竜技”、ドラゴンサンダー!!」
腐った血肉を持つ筋肉質なモンスターだが、接近する暇も無く倒されていくグール共。
「おし!」
モモカが、頑張ってグールを消し飛ばしてくれていた。
汚名をそそごうとしているんだろうな。
「私達、本当に手伝わなく良いんですかぁ? メグミ」
「危なくなるまでは、一人でやらせてあげよう」
一人で何かを乗り越える。さっきの事を後悔している今のモモカにとって、とても重要な事だ。
ここで私達がしゃしゃり出てモモカを手伝っても、モモカのためにならないどころか、あの子に劣等感を植え付けることになるだろう。
モモカは頑張り屋の良い子だから、尚更だ。
「洞窟、終わりみたいですね」
リンピョンの言うとおり、出口と思われる場所から光が差し込んでいた。
そこから、ちゃんと出口まで気をぬかずに進むモモカ。
本当に良い子だ。
「わぁ~、綺麗ねー」
洞窟を抜けると、サトミの第一声と共に、黄色い花が広がる平原が目に飛び込んで来た。
「確かに綺麗だな」
そよ風が吹き、花が揺れる。
背後には高く青い山々が連なり、どこまでも青空が広がっていた。
幾度の文明崩壊以前は、こんな美しい景色が地球のどこにでもあったという。
……その大崩壊を起こした存在は、レプティリアンのような強い低周波のネガティブ系宇宙人を……許さないのだろうな。
「ここは安全エリアかしら?」
「ピクニック……したぁいですねぇ」
「フフ。じゃあ、ここでご飯を食べましょうか。時間も時間だしね♪」
サトミが花畑手前にシートを敷き、バスケットなどの、いかにもピクニックに持っていきそうな物を次々と並べていく。
「サトミ……こうなることを予想していたのか?」
このステージがパーティーごとの攻略だと知っていたから、食事中にプレーヤーに襲われる心配は無いし、用意しててもおかしくはないが。
「こんな事もあろうかと、随分前にサッと食べられる物を用意して置いたのよ♪」
サンドイッチや唐揚げ、卵焼きなんかが入ったケースがどんどん並べられていく。
「随分前って、いつのことですか?」
リンピョンが尋ねる。
「一ヶ月くらい前?」
「「「へ!?」」」
い、一ヶ月前の……お弁当。
「チョイスプレートにしまっておけば時間は経過しないんだから、なんの問題もないでしょう! ほら、トマトスープなんてあったかいまんま。出来たてヌクヌクスープでしょ!」
サトミが、珍しくいじけ始めている。
「……食べちゃダメなの?」
モモカが、今にも涎を垂らしそうな顔で尋ねてきた。
「いや、大丈夫だぞ。ただ、チョイスプレートにしまっていないお弁当は一日で悪くなってしまうから、驚いちゃっただけなんだ」
モモカはこの世界の生まれだから、賞味期限とか消費期限の概念がまったく無さそうだな。
「サトミのご飯、私大好き!」
「クゥゥーーッ!! モモカちゃんは、本当に可愛いわねぇぇ!!」
サトミが、モモカを強く抱き締める。
「サトミ、苦しい!」
「あら、ごめんなさいね」
「私も、早く食べたいでぇす!」
花畑を鑑賞しながら、私達はサトミのお弁当に舌鼓を打つこととした。
●●●
「赤い花畑か」
アマゾンリザードマンを倒して休憩したのち、暫く洞窟を進んだら花畑が広がる場所に出た。
「ここを抜ければ、次はボス部屋だったわよね? ヨシノ」
アヤナが尋ねる。
「はい、その通りです。ですが、赤い花と言うことはフレイムフラワーが出現するでしょう。つまり、ドライアドである私の戦闘能力は半減します」
「その分は私がカバーします!」
スゥーシャは元気いっぱいね。
「……ユリカは戦力外じゃないの?」
「残念ね、アオイ。私には“灼熱の指輪”があるから、炎耐性に関係なくダメージを与えられるのよ」
そう言えば、赤い花って事は、ここで手に入るレアアイテムは“灼熱の指輪”か。
私達のレギオンで火属性メインって、私しか居ないのにね。
五人で歩き出し、花畑の間の道に足を踏み入れると――左右の花畑の中から気配が。
「皆さん、花畑の中に居る間はこちらからダメージを与えられず、モンスターも攻撃しては来ません」
「つまり、道に入ってきた奴だけを狙えば良いのね!」
赤い蕾の植物が前後の道の中に入ってきて、炎の花を咲かせ始める。
「後ろはお任せを! “氾濫魔法”――リバーバイパー!」
スゥーシャが、水の蛇で攻撃してくれる。
「“煉獄魔法”――インフェルノブラスター!!」
道が直線状だから、外す心配もない!
「うん、問題なさそうね! じゃあ、このまま進むわよ!」
一撃じゃ無理かもと思ったけれど、文字無しでもいけそう。
「マスターは、ちょっと一人でなんとかしようとしすぎですね」
「へ、そう?」
ヨシノに指摘されるも、そう言われるような憶えが無い。
「アヤナさんとアオイさん、前をお願いします。マスターは力を温存しておいてください」
ヨシノが指示を出し始めちゃった。
「ヨシノ? へ、急にどうしたの?」
いつもなら私を立てようとするのに。
「私、MPならさっきの休憩で全快してるわよ?」
「マスターは神代文字を九文字引き出せるようになってから日が浅いのですから、一度使っただけでも、精神的な負担は自分が感じている以上だと思ってください」
確かに、全然眠くないと思ってたのにゲーム中に寝落ちしちゃった事は何回かあったけれどさ。
「ねー、なんか大きいのが出て来たよ?」
アオイに言われて前の道を見ると……赤い炎が、ローブを着たような上半身だけのゴーストに変わる。
「ファイヤーアストラルです。アレには水属性以外の攻撃が通じません」
そう言えば、出現率の少ないモンスターで、積極的に倒すように言われてたわね。
『ゴアアアアアアアアアッ!!』
「“聖水魔法”、セイクリッドバイパー!!」
「“氾濫魔法”、リバーバイパー!!」
アヤナとアオイの魔法で、呆気なく倒されるファイヤーアストラル。
「あ、“灼熱の指輪”が手に入ったわね……ヨシノ、ファイヤーアストラル用にアヤナ達は温存しておいた方が良いんじゃない?」
「……確かにそうですね」
「文字は使わないようにするから、安心しなさい」
ボス戦でも、文字は控えるようにした方が良いか。
転移直後に、突発クエストが起きることが多いし。
コセだって、そのせいで古城遺跡でピンチになったわけだしね。
「ありがとうね、ヨシノ……心配してくれて」
やっぱり、ヨシノ相手だと素直になれやすい。
「わ、私は……マスターの隠れNPCですから」
肌が色白だから、顔を赤らめているのがよく分かって……ヨシノってば可愛い!
今日は、久し振りにヨシノと一緒に寝ようかな。
腐った血肉を持つ筋肉質なモンスターだが、接近する暇も無く倒されていくグール共。
「おし!」
モモカが、頑張ってグールを消し飛ばしてくれていた。
汚名をそそごうとしているんだろうな。
「私達、本当に手伝わなく良いんですかぁ? メグミ」
「危なくなるまでは、一人でやらせてあげよう」
一人で何かを乗り越える。さっきの事を後悔している今のモモカにとって、とても重要な事だ。
ここで私達がしゃしゃり出てモモカを手伝っても、モモカのためにならないどころか、あの子に劣等感を植え付けることになるだろう。
モモカは頑張り屋の良い子だから、尚更だ。
「洞窟、終わりみたいですね」
リンピョンの言うとおり、出口と思われる場所から光が差し込んでいた。
そこから、ちゃんと出口まで気をぬかずに進むモモカ。
本当に良い子だ。
「わぁ~、綺麗ねー」
洞窟を抜けると、サトミの第一声と共に、黄色い花が広がる平原が目に飛び込んで来た。
「確かに綺麗だな」
そよ風が吹き、花が揺れる。
背後には高く青い山々が連なり、どこまでも青空が広がっていた。
幾度の文明崩壊以前は、こんな美しい景色が地球のどこにでもあったという。
……その大崩壊を起こした存在は、レプティリアンのような強い低周波のネガティブ系宇宙人を……許さないのだろうな。
「ここは安全エリアかしら?」
「ピクニック……したぁいですねぇ」
「フフ。じゃあ、ここでご飯を食べましょうか。時間も時間だしね♪」
サトミが花畑手前にシートを敷き、バスケットなどの、いかにもピクニックに持っていきそうな物を次々と並べていく。
「サトミ……こうなることを予想していたのか?」
このステージがパーティーごとの攻略だと知っていたから、食事中にプレーヤーに襲われる心配は無いし、用意しててもおかしくはないが。
「こんな事もあろうかと、随分前にサッと食べられる物を用意して置いたのよ♪」
サンドイッチや唐揚げ、卵焼きなんかが入ったケースがどんどん並べられていく。
「随分前って、いつのことですか?」
リンピョンが尋ねる。
「一ヶ月くらい前?」
「「「へ!?」」」
い、一ヶ月前の……お弁当。
「チョイスプレートにしまっておけば時間は経過しないんだから、なんの問題もないでしょう! ほら、トマトスープなんてあったかいまんま。出来たてヌクヌクスープでしょ!」
サトミが、珍しくいじけ始めている。
「……食べちゃダメなの?」
モモカが、今にも涎を垂らしそうな顔で尋ねてきた。
「いや、大丈夫だぞ。ただ、チョイスプレートにしまっていないお弁当は一日で悪くなってしまうから、驚いちゃっただけなんだ」
モモカはこの世界の生まれだから、賞味期限とか消費期限の概念がまったく無さそうだな。
「サトミのご飯、私大好き!」
「クゥゥーーッ!! モモカちゃんは、本当に可愛いわねぇぇ!!」
サトミが、モモカを強く抱き締める。
「サトミ、苦しい!」
「あら、ごめんなさいね」
「私も、早く食べたいでぇす!」
花畑を鑑賞しながら、私達はサトミのお弁当に舌鼓を打つこととした。
●●●
「赤い花畑か」
アマゾンリザードマンを倒して休憩したのち、暫く洞窟を進んだら花畑が広がる場所に出た。
「ここを抜ければ、次はボス部屋だったわよね? ヨシノ」
アヤナが尋ねる。
「はい、その通りです。ですが、赤い花と言うことはフレイムフラワーが出現するでしょう。つまり、ドライアドである私の戦闘能力は半減します」
「その分は私がカバーします!」
スゥーシャは元気いっぱいね。
「……ユリカは戦力外じゃないの?」
「残念ね、アオイ。私には“灼熱の指輪”があるから、炎耐性に関係なくダメージを与えられるのよ」
そう言えば、赤い花って事は、ここで手に入るレアアイテムは“灼熱の指輪”か。
私達のレギオンで火属性メインって、私しか居ないのにね。
五人で歩き出し、花畑の間の道に足を踏み入れると――左右の花畑の中から気配が。
「皆さん、花畑の中に居る間はこちらからダメージを与えられず、モンスターも攻撃しては来ません」
「つまり、道に入ってきた奴だけを狙えば良いのね!」
赤い蕾の植物が前後の道の中に入ってきて、炎の花を咲かせ始める。
「後ろはお任せを! “氾濫魔法”――リバーバイパー!」
スゥーシャが、水の蛇で攻撃してくれる。
「“煉獄魔法”――インフェルノブラスター!!」
道が直線状だから、外す心配もない!
「うん、問題なさそうね! じゃあ、このまま進むわよ!」
一撃じゃ無理かもと思ったけれど、文字無しでもいけそう。
「マスターは、ちょっと一人でなんとかしようとしすぎですね」
「へ、そう?」
ヨシノに指摘されるも、そう言われるような憶えが無い。
「アヤナさんとアオイさん、前をお願いします。マスターは力を温存しておいてください」
ヨシノが指示を出し始めちゃった。
「ヨシノ? へ、急にどうしたの?」
いつもなら私を立てようとするのに。
「私、MPならさっきの休憩で全快してるわよ?」
「マスターは神代文字を九文字引き出せるようになってから日が浅いのですから、一度使っただけでも、精神的な負担は自分が感じている以上だと思ってください」
確かに、全然眠くないと思ってたのにゲーム中に寝落ちしちゃった事は何回かあったけれどさ。
「ねー、なんか大きいのが出て来たよ?」
アオイに言われて前の道を見ると……赤い炎が、ローブを着たような上半身だけのゴーストに変わる。
「ファイヤーアストラルです。アレには水属性以外の攻撃が通じません」
そう言えば、出現率の少ないモンスターで、積極的に倒すように言われてたわね。
『ゴアアアアアアアアアッ!!』
「“聖水魔法”、セイクリッドバイパー!!」
「“氾濫魔法”、リバーバイパー!!」
アヤナとアオイの魔法で、呆気なく倒されるファイヤーアストラル。
「あ、“灼熱の指輪”が手に入ったわね……ヨシノ、ファイヤーアストラル用にアヤナ達は温存しておいた方が良いんじゃない?」
「……確かにそうですね」
「文字は使わないようにするから、安心しなさい」
ボス戦でも、文字は控えるようにした方が良いか。
転移直後に、突発クエストが起きることが多いし。
コセだって、そのせいで古城遺跡でピンチになったわけだしね。
「ありがとうね、ヨシノ……心配してくれて」
やっぱり、ヨシノ相手だと素直になれやすい。
「わ、私は……マスターの隠れNPCですから」
肌が色白だから、顔を赤らめているのがよく分かって……ヨシノってば可愛い!
今日は、久し振りにヨシノと一緒に寝ようかな。
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