ダンジョン・ザ・チョイス
231.黒い獣
「“鍵開け”」
「またカードですね、ご主人様」
○“瞬足のスキルカード”を手に入れました。
「イマイチ良いのが手に入らないな」
俺達は左を選択し、罠を突破して財宝部屋までやって来たわけだが……さっきからお金や、既に持っているスキルのカードくらいしか手に入らない。
全部で二十箱しかないのに、残り六箱。
「あ、これは細剣かな?」
薄い緑と白に彩られた柄と、花の形のガードが付いた銀刀身の剣。
細剣のようだけれど、刀身の幅は結構広いし、明らかにクマムの“伸縮のレイピア”より長い。
「あ、この武器、“一輪の華花への誓い”って言う名前だって」
メルシュが、なにかのタイトルのような名前を口にする。
「その名前から察するに、神代文字対応ですか?」
クマムがメルシュに尋ねた。
「そうそう。と言うわけで、クマムに渡しちゃって、マスター」
「じゃあ、どうぞ」
この剣を使うとしたら、クマムかクリスになるだろうしな。
「私で宜しいのですか?」
「使ってみて合わなければ、クリスに渡せば良いだけだし」
「ありがとうございます、メルシュさん、コセさん」
早速装備してみるクマム。
「今までの剣と比べて、ちょっと重めですね。刀身も長い……ですが、悪くないです」
何度か突きを放ち、感触を確かめているらしい。
「コセ……なんか変なのあったんだけれど」
ナオの声にそちらを振り向くと……カボチャ風の露出多目な服を着てい――るぅぅぅ!!?
「それ……実戦向きじゃないだろう」
「確かにそうよね」
ナオが身体の向きを変えると、際どい部分が見え隠れする。
「“カボチャのドレス”……ネタ的な衣装みたいだね。実用性は無いみたい」
「夜の実用性はあるんじゃない?」
「確かにそうですね」
ナオの発言に、同意してしまうトゥスカさん。
「こら。クマムだって居るんだから、もう少し自重してくれ」
「わ、私の事ならお気になさらず……」
顔が赤いクマム……たぶん初心なんだろうな。
「クマムちゃんも、この服着てみる?」
「へ!? で、では……いつかその内に」
なんでこっちをチラチラ見てくるの?
「残りの宝箱を開けていくぞ!」
あんな顔されたら、勘違いしそうになるだろう。
……でも、クマムの婚姻の指輪って……“最高級の婚姻の指輪”なんだよな。
たったそれだけの事なのに、クマムとそういう関係になることが、許されるのではないかと思ってしまっている自分が居る。
この世界の人間は一夫多妻にそこまで抵抗が無いみたいだけれど、向こうの世界から来たルイーサ達はそうでは無い。
実際……ルイーサに告白はしたけれど、保留になったままだし。
もっとちゃんと、相手のことを見て考えるようにしないと。
「……うん? これはアタッチメントって奴か?」
見た目は大きな文鎮で、持ち手部分がなく、連結させるための輪っかがあった。
アタッチメントは、ローゼが使う“万能鎖”に繋がないと使用できないという特殊なアイテム。
「“リジェクトアタッチメント”。メグミの拒絶の腕と同じ、”拒絶”の効果がある文鎮だね」
モモカに良い物を上げらそうだな。
正確には、モモカじゃなくてローゼにだけれど。
●●●
「へー、コイツは良いな!」
洞窟の中の財宝部屋にて、ザッカルが“暗黒の爪腕の指輪”を使い、赤い爪の巨大黒腕を出現させていた。
「あんがとよ、カナ!」
「ううん、良いのよ。私も、“暗殺者の仮面”なんて貰ったし」
口から上を覆う、黒い格好いい仮面!
「ハァー…………凄く落ち着く」
まるで、この世界で生きていることが他人事になったみたい。
「全部回収し終わったし、そろそろ行くよ」
シレイアさんに言われ、私は仮面を付けたまま財宝部屋を出て戻り、別の道へと進む。
「暗くなってきたな」
「ちょっと暗すぎませんか? このまま奥に進んだら危ないですよ」
ザッカルとノーザンちゃんが話をしていると、暗闇の中に動く物が見えた!
「猿のモンスターよ!」
「ナイトモンキーか!」
私が注意を促すと、シレイアさんが敵の名前を教えてくれる。
「ランダムにどのモンスターが出るか決まる仕組みだったが、ある意味一番厄介なのとぶつかったね」
確か、ナイトモンキーかダークバットかグールが出るんだったかしら?
「“風刃”!」
接近してきたナイトモンキーを、”ゲイルサイズ”から繰り出した風の斬撃で、二体切り裂く!
「コイツら、石の短剣みたいなのを持ってる! 気を付けて!」
「カナ……お前、もしかして見えてんのか?」
「ええ、この仮面のお陰みたい――“回転”!」
軸足で一回転し、鎌の頭部分をぶつけてザッカル達に近付こうとしたナイトモンキーを後退させる。
「クソ! 暗すぎて、目が慣れてもろくに見えねーぞ!」
ザッカルはネコ科の獣人のはずだけれど、見えないんだ。
「カナさん……私が前に出るから、討ち漏らしをお願い」
「へ?」
“調伏の太刀”を抜いて、一人で前に出てしまうユイちゃん。
「……凄い」
「フッ!」
一刀ごとに、確実にナイトモンキーを切り裂いている。
ユイちゃんを避けて接近してきたナイトモンキーは数が少なく、なんとか私だけで対処出来た。
「ユイちゃん……この暗闇でも見えるスキルでも持ってるの?」
「ん? なんとなく……気配と空気の動き……みたいな?」
自分でも、よく分かって居なさそうに答えるユイちゃん。
「す、凄いわね……このレギオンって、みんながこんなとんでもない能力を持っていたりする?」
「安心しな、カナ。うちのマスターは、規格外中の規格外だから」
「ほ、本当に?」
文字の力を使える人達って、みんな私と比べ物にならないくらい強かったんだけれど。
「第二波、来るみたいだよ」
「よりによって、強い魔法攻撃が使えない面子の時に現れるなんて!」
――シレイアさんの言葉に、ちょっとカチンと来た。
私がパーティー唯一の魔法使いなのに、お前が強力な魔法が使えないせいでって言われてしまった気がして。
「ユイちゃん、次は私が前に出るわね」
「う、うん」
“ゲイルサイズ”から、使い慣れた“暗黒の大鎌”に持ち替える。
シレイアさんに他意は無いって分かってるんだけれど……どうしてもイライラしてしまう。
「全員――私が刈り殺してあげる~」
久し振りに、私の中の黒い獣が殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せって――訴え掛けて来るぅぅぅぅぅぅッッッッ!!!!
「またカードですね、ご主人様」
○“瞬足のスキルカード”を手に入れました。
「イマイチ良いのが手に入らないな」
俺達は左を選択し、罠を突破して財宝部屋までやって来たわけだが……さっきからお金や、既に持っているスキルのカードくらいしか手に入らない。
全部で二十箱しかないのに、残り六箱。
「あ、これは細剣かな?」
薄い緑と白に彩られた柄と、花の形のガードが付いた銀刀身の剣。
細剣のようだけれど、刀身の幅は結構広いし、明らかにクマムの“伸縮のレイピア”より長い。
「あ、この武器、“一輪の華花への誓い”って言う名前だって」
メルシュが、なにかのタイトルのような名前を口にする。
「その名前から察するに、神代文字対応ですか?」
クマムがメルシュに尋ねた。
「そうそう。と言うわけで、クマムに渡しちゃって、マスター」
「じゃあ、どうぞ」
この剣を使うとしたら、クマムかクリスになるだろうしな。
「私で宜しいのですか?」
「使ってみて合わなければ、クリスに渡せば良いだけだし」
「ありがとうございます、メルシュさん、コセさん」
早速装備してみるクマム。
「今までの剣と比べて、ちょっと重めですね。刀身も長い……ですが、悪くないです」
何度か突きを放ち、感触を確かめているらしい。
「コセ……なんか変なのあったんだけれど」
ナオの声にそちらを振り向くと……カボチャ風の露出多目な服を着てい――るぅぅぅ!!?
「それ……実戦向きじゃないだろう」
「確かにそうよね」
ナオが身体の向きを変えると、際どい部分が見え隠れする。
「“カボチャのドレス”……ネタ的な衣装みたいだね。実用性は無いみたい」
「夜の実用性はあるんじゃない?」
「確かにそうですね」
ナオの発言に、同意してしまうトゥスカさん。
「こら。クマムだって居るんだから、もう少し自重してくれ」
「わ、私の事ならお気になさらず……」
顔が赤いクマム……たぶん初心なんだろうな。
「クマムちゃんも、この服着てみる?」
「へ!? で、では……いつかその内に」
なんでこっちをチラチラ見てくるの?
「残りの宝箱を開けていくぞ!」
あんな顔されたら、勘違いしそうになるだろう。
……でも、クマムの婚姻の指輪って……“最高級の婚姻の指輪”なんだよな。
たったそれだけの事なのに、クマムとそういう関係になることが、許されるのではないかと思ってしまっている自分が居る。
この世界の人間は一夫多妻にそこまで抵抗が無いみたいだけれど、向こうの世界から来たルイーサ達はそうでは無い。
実際……ルイーサに告白はしたけれど、保留になったままだし。
もっとちゃんと、相手のことを見て考えるようにしないと。
「……うん? これはアタッチメントって奴か?」
見た目は大きな文鎮で、持ち手部分がなく、連結させるための輪っかがあった。
アタッチメントは、ローゼが使う“万能鎖”に繋がないと使用できないという特殊なアイテム。
「“リジェクトアタッチメント”。メグミの拒絶の腕と同じ、”拒絶”の効果がある文鎮だね」
モモカに良い物を上げらそうだな。
正確には、モモカじゃなくてローゼにだけれど。
●●●
「へー、コイツは良いな!」
洞窟の中の財宝部屋にて、ザッカルが“暗黒の爪腕の指輪”を使い、赤い爪の巨大黒腕を出現させていた。
「あんがとよ、カナ!」
「ううん、良いのよ。私も、“暗殺者の仮面”なんて貰ったし」
口から上を覆う、黒い格好いい仮面!
「ハァー…………凄く落ち着く」
まるで、この世界で生きていることが他人事になったみたい。
「全部回収し終わったし、そろそろ行くよ」
シレイアさんに言われ、私は仮面を付けたまま財宝部屋を出て戻り、別の道へと進む。
「暗くなってきたな」
「ちょっと暗すぎませんか? このまま奥に進んだら危ないですよ」
ザッカルとノーザンちゃんが話をしていると、暗闇の中に動く物が見えた!
「猿のモンスターよ!」
「ナイトモンキーか!」
私が注意を促すと、シレイアさんが敵の名前を教えてくれる。
「ランダムにどのモンスターが出るか決まる仕組みだったが、ある意味一番厄介なのとぶつかったね」
確か、ナイトモンキーかダークバットかグールが出るんだったかしら?
「“風刃”!」
接近してきたナイトモンキーを、”ゲイルサイズ”から繰り出した風の斬撃で、二体切り裂く!
「コイツら、石の短剣みたいなのを持ってる! 気を付けて!」
「カナ……お前、もしかして見えてんのか?」
「ええ、この仮面のお陰みたい――“回転”!」
軸足で一回転し、鎌の頭部分をぶつけてザッカル達に近付こうとしたナイトモンキーを後退させる。
「クソ! 暗すぎて、目が慣れてもろくに見えねーぞ!」
ザッカルはネコ科の獣人のはずだけれど、見えないんだ。
「カナさん……私が前に出るから、討ち漏らしをお願い」
「へ?」
“調伏の太刀”を抜いて、一人で前に出てしまうユイちゃん。
「……凄い」
「フッ!」
一刀ごとに、確実にナイトモンキーを切り裂いている。
ユイちゃんを避けて接近してきたナイトモンキーは数が少なく、なんとか私だけで対処出来た。
「ユイちゃん……この暗闇でも見えるスキルでも持ってるの?」
「ん? なんとなく……気配と空気の動き……みたいな?」
自分でも、よく分かって居なさそうに答えるユイちゃん。
「す、凄いわね……このレギオンって、みんながこんなとんでもない能力を持っていたりする?」
「安心しな、カナ。うちのマスターは、規格外中の規格外だから」
「ほ、本当に?」
文字の力を使える人達って、みんな私と比べ物にならないくらい強かったんだけれど。
「第二波、来るみたいだよ」
「よりによって、強い魔法攻撃が使えない面子の時に現れるなんて!」
――シレイアさんの言葉に、ちょっとカチンと来た。
私がパーティー唯一の魔法使いなのに、お前が強力な魔法が使えないせいでって言われてしまった気がして。
「ユイちゃん、次は私が前に出るわね」
「う、うん」
“ゲイルサイズ”から、使い慣れた“暗黒の大鎌”に持ち替える。
シレイアさんに他意は無いって分かってるんだけれど……どうしてもイライラしてしまう。
「全員――私が刈り殺してあげる~」
久し振りに、私の中の黒い獣が殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せって――訴え掛けて来るぅぅぅぅぅぅッッッッ!!!!
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