ダンジョン・ザ・チョイス
223.棍棒使いのコトリ
「俺達は、なにがなんでもこのゲームをクリアして、デスゲームそのものを終わらせる。その覚悟がない者に、手を差し伸べている余裕は無いんだ」
やっぱり違うなぁ、ギルマスはぁ。
ちょっと厨二病臭いセリフでも、全然笑う気になれないんだよね~。
「私達は一度プレーヤーの集団に襲われてるから、その辺の覚悟みたいなのは出来てるよ~」
英知の街で、あとからやって来た八人くらいの獣人と異世界人に襲われてね~。
マリナが容赦なく二人を殺してくれて、私とケルフェはようやく覚悟が決まった。
ギルマスがトゥスカさんを守るために男達を殺したって聞いてなかったら、善人ぶって私はマリナの事を避けてたかもね。
さすがに丸一日くらいなにも食べられなかったけれど、殺した直後に光にならず、ずっとその場に死体が残ってたら、あの罪悪感の比じゃなかったんだろうな~。
逃がしてたらあとから報復されかねないし、始末した事に後悔はない。
そこまで一緒だった女獣人の一人とは、その事件が切っ掛けで別れたんだよね。
「……自分も大丈夫です……パーティーメンバー全員が、というわけではありませんが」
石階段の町で出会った時、リョウ達は襲われてたんだよね~。
リョウがギルマスを慕ってたのは、ギルマス無しでやった祝勝会の時に知ってたから加勢して……そっから一緒に行動するようになったんだよね~。
私達は三人だけだったし、リョウ達は人数が多いせいで装備に差が出てたから、互いに協力することにしてね~。
「分かった、君達の入団を認める」
ギルマスがチョイスプレートを操作すると、私達の前にチョイスプレートが現れ、正式な入団の手続きが行えるように。
「悪いが、幹部として受け入れる事は出来ない。ダメだと思ったらレギオンから追い出す事も有り得るけれど、逆に、抜けたいと思ったら遠慮なく言ってほしい。君達の意思を尊重させて貰う」
「その場合、貸し出したアイテムの返却を求めるかもしれないけれどね」
「「アイテムの貸し出し?」」
もしかして、第九ステージより進んだ先で手に入るアイテムを貸して貰えるってこと?
「……メルシュ」
「ハイよ」
テーブルの上に、緑髪の女の子がズラリと武具を並べていく!?
「全てCランク以上のアイテムだ……ランクについては……」
「自分達はメルシュさんから聞いていたので、コトリさん達にも伝えています」
そうそう、最初は意味が分からなかったけれど。
「そう言えば、これってどのランクか分かります?」
私がメインで使っている、青灰色の棍棒を見せる。
「“光衝の棍棒”、Bランク。“光衝”の効果が便利だね」
「へー、結構ランクの高い武器だったんだ」
能力グラフのおかげで、性能が高めなのは分かってたけれど。
「全員フル装備になってくれる? 各々の戦闘スタイルやスキルに合わせて、私達がアイテムを見繕うから」
外国人どころか、人間とは思えない人達まで、突発クエストで活躍していたジュリーさんと一緒に近付いてきた。
●●●
「“精霊のファルシオン”だと!?」
武器を見繕っているはずのフェルナンダが、リョウの剣を見て驚いている?
あんなに感情を顕わにしているの、錯乱したアヤナにウンディーネを吹き飛ばされて以来ではなかろうか。
「“四原霊”の効果で、敵、味方とわず火、水、風、無属性魔法を吸収出来るSランク武器!! なんでお前だけ、こんな良いもん持ってるんだ!?」
「へ? 制限廻廊のクリア報酬選択のとき、自分は”一蹴のファルシオン”を使ってたのでこれを……」
「……くれ」
「いや、それは……」
「やめてくださいよ、フェルナンダ。幾ら貴女が、精霊関係のアイテムに目が無い設定だからって」
止めに入ってくれるサキだが……設定って。
「そもそも、フェルナンダの戦闘スタイルに合わないんですから、手に入ったとしてもルイーサさんが使うことになりますよ」
「うッ!! ……目の前で使われる方がキツいかも」
「へと……すみません」
良かった……リョウがそこで「ギルマスの仲間に使って戴けるなら本望です!!」とかいう人間じゃなくて。
「正直、この剣が無かったら、仲間を失ってたかもしれない事が多々あったので」
「まあ……そうだよな。リョウのパーティーメンバーは、“栄光の杖”以外のAランク武器は見当たらないし、指輪以外のほとんどの装備がDランク以下か」
「一つのルートだけだと、こんな物なのでしょう。スキルの方は結構充実してますね。ルート的な理由かな?」
フェルナンダとサキが分析する横で、馬の獣人美女に金属の脚甲を差し出すメルシュ。
長い黒髪の中に茶髪が入り乱れる、馬耳と馬尻尾を持つ美少女。
髪型のせいか、どことなく雰囲気がトゥスカに似ている。
「“猛禽鳥の嘴孔脚”、Cランク。ケルフェが今使っている“転剣狼の甲脚”と性能はあまり変わらないけれど、こっちは打撃が通用しない敵にも効果的だから、使い分けると攻略が楽になると思うよ」
「ありがとうございます、メルシュ参謀」
慇懃な態度で……メルシュを参謀って呼んだ?
「参謀?」
「ギルマスの右腕、アドバイザーとお見受けしました。参謀ではおかしかったでしょうか?」
「間違ってはいないけれど、誰も私を参謀とは呼ばないから」
「では、私は敬意を込めて、これからもメルシュ参謀と呼ばせて戴きます」
「ああ……うん」
メルシュが引いている!?
「ケルフェは軽盾を使うのか」
メグミさんが、彼女の小さめの円盾を見て尋ねる。
「ハイ。長物を盾で防いで、蹴りで攻めるのが私の基本スタイルです」
「なら、これを受け取ってくれ。”メタルクラッシュバックル“、Bランクだ」
「Bランク……良いんですか、貴重なのでは?」
「私の盾ではランクが低い方だし、最近戦闘スタイルが変わったから、使う機会はもう無いだろうと思ってな」
メグミさんの戦闘スタイル、最近は砲撃による中距離がメインになって来てるしな。
「コトリは棒がメインか」
「うん、本当はもっと重いのでガツンとお見舞いしたいんだけれどさ」
ジュリーが、コトリと話をしている。
「なら、これなんかどうかな?」
チョイスプレートを操作して、棘突き嘴が群生した金棒を出現させる。
「おお!! 格好いいぃぃ! さすが金髪の女神様!!」
「金髪の……女神?」
ジュリーにまで変なあだ名が。
「ねーねー、これには凄い効果があったりするの?」
「普通に殴るだけでも生物系モンスターに大きなダメージを与えられ、再生効果を阻害する。おまけに”武器破壊“と“損耗”により、武具装備のモンスターにも強くなる! 序盤ならメイン武器として使え、終盤でも予備武器として活躍させられる凄い子だよ」
「へー、シンプルで私にピッタリかも! 小難しいこと考えずに、殴れば良いんでしょ?」
「う、うん、まあ」
コトリはかなり適当の人間みたいだ……あのパーティー、あの子がリーダーなんだよな?
「マリナ、アンタは装備のランクが高めだね。スキルも魔法が充実してい……“ウメガイの光剣”はMPを消費するし、その他の武器はDランク以下か……」
アマゾネスのシレイアが見ていたのは、コトリのパーティーの一人である、長い青白い髪を持つ女子。
とても、神秘的な美しさを携えている人だ。
「ウメガイ……どっかで聞いたことがあるような」
昔……誰かがそんな感じの名前を口にしていたような。
「ん?」
今、一瞬目が合ったけれど逸らされてしまった。
「継戦能力の低さは自覚しています」
「剣がメインで氷と光属性特化の魔法使い……うん、アンタは自分の育成ビジョンが見えているみたいだね」
「ある程度能力を偏らせた方が、結果的に生き残れると思っていただけよ。このゲームみたいな世界でならね」
他の面子と違って、壁を作っている感じがあるな。
反対の立場なら、俺もそうだっただろうけれど。
「……うん。メルシュ、この子にAランクの“アイスコフィン”を渡してやってくれ」
先日の突発クエストで手に入れた、氷の剣か。
リンピョンに使わせようとしたけれど、両刃の”アイスコフィン”はリンピョン自身が合わないと言った事で、俺かルイーサが状況によっては使うという事になっていたけれど。
「なるほど。彼女のスキルから考えれば、予備としてもメインとしても活用できそうだね」
「Aランク……良いの?」
「適材適所って奴さ。コセも、適切に使える人間が持つべきだと思うだろう?」
「ああ、そうだな」
呼ばれたので、三人に近付く。
「あの……久しぶり……ユウダイ」
「へ?」
久しぶり?
「……ごめん…………誰だ?」
――次の瞬間、マリナの蹴りが俺の胸部分に向かって放たれた!!?
やっぱり違うなぁ、ギルマスはぁ。
ちょっと厨二病臭いセリフでも、全然笑う気になれないんだよね~。
「私達は一度プレーヤーの集団に襲われてるから、その辺の覚悟みたいなのは出来てるよ~」
英知の街で、あとからやって来た八人くらいの獣人と異世界人に襲われてね~。
マリナが容赦なく二人を殺してくれて、私とケルフェはようやく覚悟が決まった。
ギルマスがトゥスカさんを守るために男達を殺したって聞いてなかったら、善人ぶって私はマリナの事を避けてたかもね。
さすがに丸一日くらいなにも食べられなかったけれど、殺した直後に光にならず、ずっとその場に死体が残ってたら、あの罪悪感の比じゃなかったんだろうな~。
逃がしてたらあとから報復されかねないし、始末した事に後悔はない。
そこまで一緒だった女獣人の一人とは、その事件が切っ掛けで別れたんだよね。
「……自分も大丈夫です……パーティーメンバー全員が、というわけではありませんが」
石階段の町で出会った時、リョウ達は襲われてたんだよね~。
リョウがギルマスを慕ってたのは、ギルマス無しでやった祝勝会の時に知ってたから加勢して……そっから一緒に行動するようになったんだよね~。
私達は三人だけだったし、リョウ達は人数が多いせいで装備に差が出てたから、互いに協力することにしてね~。
「分かった、君達の入団を認める」
ギルマスがチョイスプレートを操作すると、私達の前にチョイスプレートが現れ、正式な入団の手続きが行えるように。
「悪いが、幹部として受け入れる事は出来ない。ダメだと思ったらレギオンから追い出す事も有り得るけれど、逆に、抜けたいと思ったら遠慮なく言ってほしい。君達の意思を尊重させて貰う」
「その場合、貸し出したアイテムの返却を求めるかもしれないけれどね」
「「アイテムの貸し出し?」」
もしかして、第九ステージより進んだ先で手に入るアイテムを貸して貰えるってこと?
「……メルシュ」
「ハイよ」
テーブルの上に、緑髪の女の子がズラリと武具を並べていく!?
「全てCランク以上のアイテムだ……ランクについては……」
「自分達はメルシュさんから聞いていたので、コトリさん達にも伝えています」
そうそう、最初は意味が分からなかったけれど。
「そう言えば、これってどのランクか分かります?」
私がメインで使っている、青灰色の棍棒を見せる。
「“光衝の棍棒”、Bランク。“光衝”の効果が便利だね」
「へー、結構ランクの高い武器だったんだ」
能力グラフのおかげで、性能が高めなのは分かってたけれど。
「全員フル装備になってくれる? 各々の戦闘スタイルやスキルに合わせて、私達がアイテムを見繕うから」
外国人どころか、人間とは思えない人達まで、突発クエストで活躍していたジュリーさんと一緒に近付いてきた。
●●●
「“精霊のファルシオン”だと!?」
武器を見繕っているはずのフェルナンダが、リョウの剣を見て驚いている?
あんなに感情を顕わにしているの、錯乱したアヤナにウンディーネを吹き飛ばされて以来ではなかろうか。
「“四原霊”の効果で、敵、味方とわず火、水、風、無属性魔法を吸収出来るSランク武器!! なんでお前だけ、こんな良いもん持ってるんだ!?」
「へ? 制限廻廊のクリア報酬選択のとき、自分は”一蹴のファルシオン”を使ってたのでこれを……」
「……くれ」
「いや、それは……」
「やめてくださいよ、フェルナンダ。幾ら貴女が、精霊関係のアイテムに目が無い設定だからって」
止めに入ってくれるサキだが……設定って。
「そもそも、フェルナンダの戦闘スタイルに合わないんですから、手に入ったとしてもルイーサさんが使うことになりますよ」
「うッ!! ……目の前で使われる方がキツいかも」
「へと……すみません」
良かった……リョウがそこで「ギルマスの仲間に使って戴けるなら本望です!!」とかいう人間じゃなくて。
「正直、この剣が無かったら、仲間を失ってたかもしれない事が多々あったので」
「まあ……そうだよな。リョウのパーティーメンバーは、“栄光の杖”以外のAランク武器は見当たらないし、指輪以外のほとんどの装備がDランク以下か」
「一つのルートだけだと、こんな物なのでしょう。スキルの方は結構充実してますね。ルート的な理由かな?」
フェルナンダとサキが分析する横で、馬の獣人美女に金属の脚甲を差し出すメルシュ。
長い黒髪の中に茶髪が入り乱れる、馬耳と馬尻尾を持つ美少女。
髪型のせいか、どことなく雰囲気がトゥスカに似ている。
「“猛禽鳥の嘴孔脚”、Cランク。ケルフェが今使っている“転剣狼の甲脚”と性能はあまり変わらないけれど、こっちは打撃が通用しない敵にも効果的だから、使い分けると攻略が楽になると思うよ」
「ありがとうございます、メルシュ参謀」
慇懃な態度で……メルシュを参謀って呼んだ?
「参謀?」
「ギルマスの右腕、アドバイザーとお見受けしました。参謀ではおかしかったでしょうか?」
「間違ってはいないけれど、誰も私を参謀とは呼ばないから」
「では、私は敬意を込めて、これからもメルシュ参謀と呼ばせて戴きます」
「ああ……うん」
メルシュが引いている!?
「ケルフェは軽盾を使うのか」
メグミさんが、彼女の小さめの円盾を見て尋ねる。
「ハイ。長物を盾で防いで、蹴りで攻めるのが私の基本スタイルです」
「なら、これを受け取ってくれ。”メタルクラッシュバックル“、Bランクだ」
「Bランク……良いんですか、貴重なのでは?」
「私の盾ではランクが低い方だし、最近戦闘スタイルが変わったから、使う機会はもう無いだろうと思ってな」
メグミさんの戦闘スタイル、最近は砲撃による中距離がメインになって来てるしな。
「コトリは棒がメインか」
「うん、本当はもっと重いのでガツンとお見舞いしたいんだけれどさ」
ジュリーが、コトリと話をしている。
「なら、これなんかどうかな?」
チョイスプレートを操作して、棘突き嘴が群生した金棒を出現させる。
「おお!! 格好いいぃぃ! さすが金髪の女神様!!」
「金髪の……女神?」
ジュリーにまで変なあだ名が。
「ねーねー、これには凄い効果があったりするの?」
「普通に殴るだけでも生物系モンスターに大きなダメージを与えられ、再生効果を阻害する。おまけに”武器破壊“と“損耗”により、武具装備のモンスターにも強くなる! 序盤ならメイン武器として使え、終盤でも予備武器として活躍させられる凄い子だよ」
「へー、シンプルで私にピッタリかも! 小難しいこと考えずに、殴れば良いんでしょ?」
「う、うん、まあ」
コトリはかなり適当の人間みたいだ……あのパーティー、あの子がリーダーなんだよな?
「マリナ、アンタは装備のランクが高めだね。スキルも魔法が充実してい……“ウメガイの光剣”はMPを消費するし、その他の武器はDランク以下か……」
アマゾネスのシレイアが見ていたのは、コトリのパーティーの一人である、長い青白い髪を持つ女子。
とても、神秘的な美しさを携えている人だ。
「ウメガイ……どっかで聞いたことがあるような」
昔……誰かがそんな感じの名前を口にしていたような。
「ん?」
今、一瞬目が合ったけれど逸らされてしまった。
「継戦能力の低さは自覚しています」
「剣がメインで氷と光属性特化の魔法使い……うん、アンタは自分の育成ビジョンが見えているみたいだね」
「ある程度能力を偏らせた方が、結果的に生き残れると思っていただけよ。このゲームみたいな世界でならね」
他の面子と違って、壁を作っている感じがあるな。
反対の立場なら、俺もそうだっただろうけれど。
「……うん。メルシュ、この子にAランクの“アイスコフィン”を渡してやってくれ」
先日の突発クエストで手に入れた、氷の剣か。
リンピョンに使わせようとしたけれど、両刃の”アイスコフィン”はリンピョン自身が合わないと言った事で、俺かルイーサが状況によっては使うという事になっていたけれど。
「なるほど。彼女のスキルから考えれば、予備としてもメインとしても活用できそうだね」
「Aランク……良いの?」
「適材適所って奴さ。コセも、適切に使える人間が持つべきだと思うだろう?」
「ああ、そうだな」
呼ばれたので、三人に近付く。
「あの……久しぶり……ユウダイ」
「へ?」
久しぶり?
「……ごめん…………誰だ?」
――次の瞬間、マリナの蹴りが俺の胸部分に向かって放たれた!!?
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