ダンジョン・ザ・チョイス
219.救済できぬ存在
「ルイーサ達よりも前にこの一団に加わった者は知っているだろうが、私はレプティリアンと呼ばれる種族の生まれ変わりだ」
メグミさんの言葉に、レプティリアンを名乗っていた集団に恨みを持つルイーサ、アヤナ、アオイの態度が硬化したのが伝わってきた。
「とはいえ、地球人に転生したから、レプティリアンだった頃の記憶を幾らか持っているだけの只の女だ」
「本当に? 私達のこと食べようと――」
「アヤナ――黙ろうか」
口走るのを止めようとしただけだったのに、俺の声が部屋中に浸透し、空気を軋ませる。
「わ、分かったから怒らないでよ……おっかないな」
「すまん」
怒ったつもりは無かったんだけれど。
「レプティリアンと言っても種族は色々だ。地球人にも様々な人種が居るようにな。私の場合はシーカー。レプティリアン達にとっての王族で、全てのレプティリアンの元となった支配階級の種族だ」
「昨日のレプティリアンは、私達が以前戦ったのとは強さが桁違いだったが」
「アイツはアルファ・ドラコニアン。シーカーの誰かが、他の生物の遺伝子とシーカーの遺伝子を組み合わせて作り出した、最強の戦闘種族。その皮膚は本来、徹甲弾でも用いなければ傷つけられない程だ」
ルイーサの尋ねに、応えるメグミさん。
「徹甲弾?」
「簡単に言うと、戦艦などの装甲を貫くための砲弾だな」
「よく分かんないけれど……昨日の蜥蜴が、とんでもない奴だったってのは分かったわ」
アヤナが、もう投げ槍だ。
「彼は、なぜモモカちゃんだけを食べようとしたのです? 私達を腐ってるとかなんとか言っていた気がするのですが?」
珍しく、スゥーシャから尋ねる。
「……私達の身体が、実際に汚染されてるからさ。少なくとも、異世界から来た私達はな」
哀しそうに語るメグミさん。
「汚染されてるって……どういう事ですか?」
「世界中の食品や薬が、実は身体に悪いって聞いたことがあるわ。特に薬やサプリメントなんかは、利権絡みでとんでもない無法が蔓延ってるって」
クマムの疑問に答えたのは、意外にもユリカ。
……なんか、本当に意外だ。
正直、ユリカはこういう話題にまったく興味が無い人種だと思ってたからな。
「ワクチンについてなら、少し聞いたことあるわね。ワクチン接種ってつまり、弱毒化した病気にあらかじめ掛かって抗体を作るって事で、感染予防と謳ってはいるものの、一度その病気に感染するって事なわけだから、普通に危険よね? ワクチンを摂取した地域の方が、ワクチンが原因で感染が広まったなんて記録もあるみたいだし」
サトミさんも、意外と知ってるんだ。
昔流行った病気が、凄まじい感染力でたくさん死んだんだったよな。
その原因の一つとして、ワクチンを万能予防薬と勘違いしていた人間があまりに多く、感染対策を怠って家族に移し、クラスターを多発させたって報道があったっけ。
もしかして、ワクチンが原因でクラスターが発生したのか?
数年後には、妊娠する能力を失った人が一定数居たんだよな。
「ワクチンの実態について知っていれば、ワクチン接種がいかに危険かは分かるが、まあ、あのドラコニアンが言っていたのは主に食品だな」
メグミさんが話を戻す。
「動物に与える餌、野菜を育てるための農薬、海洋に垂れ流されている劇薬混じりの生活用水やプラゴミ……例を挙げればきりがないくらいだ」
どれも、人類が存在しなければ起こりえない話だな。
「それらを摂取して生きてきた俺達は、まさしく汚染された人間ってわけだ」
俺の言葉により、空気が少し重くなってしまう……すみません。
「そこで、奴等は汚染がそれ程でもない幼子の血肉を食らうんだ。他にも、低周波の人間は負の感情、特に恐怖を好む。子供ならば、大人よりも恐怖で染め上げやすいからな……胸糞悪いことに、私達のいた世界の地下では、言葉にするのも悍ましい惨劇が各地で繰り広げられている」
そういう噂は、ネットで見掛けたことがあった。
アメリカ在住の日本人が、ホワイトハウスの地下から子供が救助されたって言う情報を動画付きで発信していたのを。
不鮮明だったし、素人の俺にはあれが捏造だったかどうかも分からない。
「まあ、ダンジョン・ザ・チョイス内の食べ物は、神様の力を利用して無理矢理生成された物だから、気にせず食べても大丈夫だよ」
メルシュが保証してくれる。
「それを聞いて安心しまぁした。アメリカは、家畜に変な薬使っている言われてましたぁから」
「それを言ったらどこの国でも同じだと思うぞ? 家畜用の発情剤飲ませて無理矢理繁殖を促すわけだし、日本の養鶏場も、卵の大量生産方法がえげつないし」
クリスの発言に、俺が意見する。
まあ、安い物にはそれ相応の理由があるってことだな。
その辺知ったら、特に安いチェーン店やコンビニなんて怖くていけなくなるし。
俺は元々外食なんてせずに自炊してたから、あんまり関係なかったけれど。
なにせ、あの家族と外食なんて苦痛でしかなかったから。
「話の腰を折って悪いけれど……低周波の奴等って、絶対懲悪のアニメに出て来るような奴等だね……負の感情を好む所とか」
「まさしくその通りだ、ユイ。奴等は、日本の子供向けアニメに出て来るような、絶対悪と言って良い領域まで堕ちた……本当に、救いようのない存在なんだよ」
少し辛そうだな、メグミさん。
「レプティリアンを初めとする低周波の存在は、他者を支配し、搾取し、自分達だけ良ければそれで良いという考えに取り憑かれている。王制などの支配構造、現代の社会の上下関係、金融システム、数多の言語なんかも、元々は奴等が地球人を支配するために広め、植え付けた物だ」
「じゃあ、生まれ変わる前のメグミさんも……そう言うことをしてたんですか?」
「でも、裏切り者がどうとか言ってなかったかしら? 昨日の赤い蜥蜴さん」
リンピョンの尋ねを、どこか逸らそうとしているように見えるサトミさん。
……俺が思っていたよりも、サトミさんは仲間思いなのだろうか?
「まあ、少なからずそういう時期もあったかな。私が属していた一団は遥か昔に来て、アトランティス建造に関わってはいたが……直接地球に関わった事そのものが過ちだったのか、神の怒りによって消え去った」
「つまり……良い宇宙人だったってこと?」
アオイが不思議そうに尋ねる。
「いや、どうなんだろうな。本来、他の星に直接干渉することは禁じられていたから。だからこそ、コセのようにわざわざ地球人に転生することでルールの穴を突いている者達が居るわけだし」
なんか、俺が狡い奴みたいな扱いをされている! こっちは全然自覚が無いのに!
「……昨日の戦いを見た後でなんだが、今後メグミが私達を裏切らないと言えるのか? 察するに、これからもなんらかの形でレプティリアンと戦う可能性はあるんだろう? 昨日のドラコニアンや――シーカーとかいう親玉とも」
ルイーサが、真に迫った気をメグミさんにぶつけた。
「問題ない。レプティリアンだったという自覚はほとんど無いし、奴等を救済する方法は……終わらせてやるしかない。と言っても、魂の巡る先は低周波の星の種族になるだろうが」
輪廻転生って奴か。
「それは……救いようが無いと言っているのと同じでは?」
トゥスカがメグミさんに尋ねる。
「実際の所、他者が他者を救えるという考えは幻想だ。他者がしてやれるのは、あくまで切っ掛け作りまで。本当に自分を救済出来るのは、自分自身だけなんだよ」
メグミさんの言葉が、すんなりと心に染み入ってくる。
これも、以前までは無かった感覚だ。
やっぱり……光の色が青から彩藍色に変わった瞬間、俺の中の何かが……根本的に変わってしまったんだと思う。
「逆に言えば、救われる気の無い人間に、他者がなにをしようと無駄だと言うこと……だから、低周波の宇宙人だろうと、地球人だろうと……敵になれば、決して容赦するな」
メグミさんの忠告は、痛いほどに理解できた。
これまで殺してきた人間達は、まさしく低周波の生き方に順応し、それを是としてしまった者達だった。
……そう思うと少し救われるなと思うのは、ただの傲慢なんだろうな。
「ルイーサ、これで納得出来たか?」
「……まあ、これまで一緒に戦ってきたわけだし、私も頭では分かっているんだが……」
心では、まだ信用できないということか。
「メグミはマスターとの間に”最高級の婚姻の指輪”を生み出してるんだし、裏切るなんて行為に手を染める可能性はまずないよ。なんらかの要因で堕落するのならともかくね」
メルシュが婚姻の指輪を、まるで身分証明かなにかのように扱いやがった!
「なる程。なら安心だな」
なんでそこで、とても晴れやかな笑顔で納得しちゃうの、ルイーサさん!
メグミさんの言葉に、レプティリアンを名乗っていた集団に恨みを持つルイーサ、アヤナ、アオイの態度が硬化したのが伝わってきた。
「とはいえ、地球人に転生したから、レプティリアンだった頃の記憶を幾らか持っているだけの只の女だ」
「本当に? 私達のこと食べようと――」
「アヤナ――黙ろうか」
口走るのを止めようとしただけだったのに、俺の声が部屋中に浸透し、空気を軋ませる。
「わ、分かったから怒らないでよ……おっかないな」
「すまん」
怒ったつもりは無かったんだけれど。
「レプティリアンと言っても種族は色々だ。地球人にも様々な人種が居るようにな。私の場合はシーカー。レプティリアン達にとっての王族で、全てのレプティリアンの元となった支配階級の種族だ」
「昨日のレプティリアンは、私達が以前戦ったのとは強さが桁違いだったが」
「アイツはアルファ・ドラコニアン。シーカーの誰かが、他の生物の遺伝子とシーカーの遺伝子を組み合わせて作り出した、最強の戦闘種族。その皮膚は本来、徹甲弾でも用いなければ傷つけられない程だ」
ルイーサの尋ねに、応えるメグミさん。
「徹甲弾?」
「簡単に言うと、戦艦などの装甲を貫くための砲弾だな」
「よく分かんないけれど……昨日の蜥蜴が、とんでもない奴だったってのは分かったわ」
アヤナが、もう投げ槍だ。
「彼は、なぜモモカちゃんだけを食べようとしたのです? 私達を腐ってるとかなんとか言っていた気がするのですが?」
珍しく、スゥーシャから尋ねる。
「……私達の身体が、実際に汚染されてるからさ。少なくとも、異世界から来た私達はな」
哀しそうに語るメグミさん。
「汚染されてるって……どういう事ですか?」
「世界中の食品や薬が、実は身体に悪いって聞いたことがあるわ。特に薬やサプリメントなんかは、利権絡みでとんでもない無法が蔓延ってるって」
クマムの疑問に答えたのは、意外にもユリカ。
……なんか、本当に意外だ。
正直、ユリカはこういう話題にまったく興味が無い人種だと思ってたからな。
「ワクチンについてなら、少し聞いたことあるわね。ワクチン接種ってつまり、弱毒化した病気にあらかじめ掛かって抗体を作るって事で、感染予防と謳ってはいるものの、一度その病気に感染するって事なわけだから、普通に危険よね? ワクチンを摂取した地域の方が、ワクチンが原因で感染が広まったなんて記録もあるみたいだし」
サトミさんも、意外と知ってるんだ。
昔流行った病気が、凄まじい感染力でたくさん死んだんだったよな。
その原因の一つとして、ワクチンを万能予防薬と勘違いしていた人間があまりに多く、感染対策を怠って家族に移し、クラスターを多発させたって報道があったっけ。
もしかして、ワクチンが原因でクラスターが発生したのか?
数年後には、妊娠する能力を失った人が一定数居たんだよな。
「ワクチンの実態について知っていれば、ワクチン接種がいかに危険かは分かるが、まあ、あのドラコニアンが言っていたのは主に食品だな」
メグミさんが話を戻す。
「動物に与える餌、野菜を育てるための農薬、海洋に垂れ流されている劇薬混じりの生活用水やプラゴミ……例を挙げればきりがないくらいだ」
どれも、人類が存在しなければ起こりえない話だな。
「それらを摂取して生きてきた俺達は、まさしく汚染された人間ってわけだ」
俺の言葉により、空気が少し重くなってしまう……すみません。
「そこで、奴等は汚染がそれ程でもない幼子の血肉を食らうんだ。他にも、低周波の人間は負の感情、特に恐怖を好む。子供ならば、大人よりも恐怖で染め上げやすいからな……胸糞悪いことに、私達のいた世界の地下では、言葉にするのも悍ましい惨劇が各地で繰り広げられている」
そういう噂は、ネットで見掛けたことがあった。
アメリカ在住の日本人が、ホワイトハウスの地下から子供が救助されたって言う情報を動画付きで発信していたのを。
不鮮明だったし、素人の俺にはあれが捏造だったかどうかも分からない。
「まあ、ダンジョン・ザ・チョイス内の食べ物は、神様の力を利用して無理矢理生成された物だから、気にせず食べても大丈夫だよ」
メルシュが保証してくれる。
「それを聞いて安心しまぁした。アメリカは、家畜に変な薬使っている言われてましたぁから」
「それを言ったらどこの国でも同じだと思うぞ? 家畜用の発情剤飲ませて無理矢理繁殖を促すわけだし、日本の養鶏場も、卵の大量生産方法がえげつないし」
クリスの発言に、俺が意見する。
まあ、安い物にはそれ相応の理由があるってことだな。
その辺知ったら、特に安いチェーン店やコンビニなんて怖くていけなくなるし。
俺は元々外食なんてせずに自炊してたから、あんまり関係なかったけれど。
なにせ、あの家族と外食なんて苦痛でしかなかったから。
「話の腰を折って悪いけれど……低周波の奴等って、絶対懲悪のアニメに出て来るような奴等だね……負の感情を好む所とか」
「まさしくその通りだ、ユイ。奴等は、日本の子供向けアニメに出て来るような、絶対悪と言って良い領域まで堕ちた……本当に、救いようのない存在なんだよ」
少し辛そうだな、メグミさん。
「レプティリアンを初めとする低周波の存在は、他者を支配し、搾取し、自分達だけ良ければそれで良いという考えに取り憑かれている。王制などの支配構造、現代の社会の上下関係、金融システム、数多の言語なんかも、元々は奴等が地球人を支配するために広め、植え付けた物だ」
「じゃあ、生まれ変わる前のメグミさんも……そう言うことをしてたんですか?」
「でも、裏切り者がどうとか言ってなかったかしら? 昨日の赤い蜥蜴さん」
リンピョンの尋ねを、どこか逸らそうとしているように見えるサトミさん。
……俺が思っていたよりも、サトミさんは仲間思いなのだろうか?
「まあ、少なからずそういう時期もあったかな。私が属していた一団は遥か昔に来て、アトランティス建造に関わってはいたが……直接地球に関わった事そのものが過ちだったのか、神の怒りによって消え去った」
「つまり……良い宇宙人だったってこと?」
アオイが不思議そうに尋ねる。
「いや、どうなんだろうな。本来、他の星に直接干渉することは禁じられていたから。だからこそ、コセのようにわざわざ地球人に転生することでルールの穴を突いている者達が居るわけだし」
なんか、俺が狡い奴みたいな扱いをされている! こっちは全然自覚が無いのに!
「……昨日の戦いを見た後でなんだが、今後メグミが私達を裏切らないと言えるのか? 察するに、これからもなんらかの形でレプティリアンと戦う可能性はあるんだろう? 昨日のドラコニアンや――シーカーとかいう親玉とも」
ルイーサが、真に迫った気をメグミさんにぶつけた。
「問題ない。レプティリアンだったという自覚はほとんど無いし、奴等を救済する方法は……終わらせてやるしかない。と言っても、魂の巡る先は低周波の星の種族になるだろうが」
輪廻転生って奴か。
「それは……救いようが無いと言っているのと同じでは?」
トゥスカがメグミさんに尋ねる。
「実際の所、他者が他者を救えるという考えは幻想だ。他者がしてやれるのは、あくまで切っ掛け作りまで。本当に自分を救済出来るのは、自分自身だけなんだよ」
メグミさんの言葉が、すんなりと心に染み入ってくる。
これも、以前までは無かった感覚だ。
やっぱり……光の色が青から彩藍色に変わった瞬間、俺の中の何かが……根本的に変わってしまったんだと思う。
「逆に言えば、救われる気の無い人間に、他者がなにをしようと無駄だと言うこと……だから、低周波の宇宙人だろうと、地球人だろうと……敵になれば、決して容赦するな」
メグミさんの忠告は、痛いほどに理解できた。
これまで殺してきた人間達は、まさしく低周波の生き方に順応し、それを是としてしまった者達だった。
……そう思うと少し救われるなと思うのは、ただの傲慢なんだろうな。
「ルイーサ、これで納得出来たか?」
「……まあ、これまで一緒に戦ってきたわけだし、私も頭では分かっているんだが……」
心では、まだ信用できないということか。
「メグミはマスターとの間に”最高級の婚姻の指輪”を生み出してるんだし、裏切るなんて行為に手を染める可能性はまずないよ。なんらかの要因で堕落するのならともかくね」
メルシュが婚姻の指輪を、まるで身分証明かなにかのように扱いやがった!
「なる程。なら安心だな」
なんでそこで、とても晴れやかな笑顔で納得しちゃうの、ルイーサさん!
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