ダンジョン・ザ・チョイス
203.熱帯雨林へ
「”禍鎌切”」
私の”暗黒の大鎌”の刃に、青と紫が入り交じる光が灯る。
「そのまま振ってみな」
「はい!」
シレイアという隠れNPCに指導されながら、新しいスキルを試す。
鎌を振ると、四、五メートルくらいまでジグザグの光の刃が――峰の側から直線上に伸びた。
「……凄い」
以前、突発クエストに巻き込まれて手に入れた”暗黒の大鎌”を好んで使っていたけれど、これがあれば格段に戦いやすくなりそう。
何度か振るい、感触を確かめる。
全力で振るって七、八メートルって所か。
「発動中はTPが減り続けるから、その点は気をつけな」
「はい、分かりました」
隠れNPC……か。
前に黒尽くめの集団とか、白い面の男の一団の中に、獣人と人魚以外で、日本人どころか本当に人間なのか疑いたくなる女の子を見掛けた事があったけれど……まさかNPCを味方に付ける方法があったなんて。
でも彼女達からは、モブキャラと違ってちゃんと感情を感じる。
本当にNPC……なのかな?
それに、私達を異世界に呼び込んだのが実は同じ世界の人間とか、元々存在していたゲームをモデルにしているとか、訳の分からない情報を急に教えられて、脳がパンクしそう!
「”蜘蛛網”! ”蜘蛛網”蜘蛛網”蜘蛛網”蜘蛛網”蜘蛛網”蜘蛛網”蜘蛛網”!!」
『ギャアアアアアアアアアア!! やーラーレ~ター!』
モモカっていう女の子が、私と同じ”大蜘蛛の射甲”を使って、大きな黒騎士に”蜘蛛網”を飛ばし続けていた。
『も、モモカ姫は、つ、強いな~!』
「フン!」
モモカという名前らしい少女が、不機嫌そうにその場を後にしてサキの元へと駆けていく。
そのサキはと言うと……どこかイヤラシイ笑みをモモカに向かって浮かべていた。
『も、モモカ姫~。ど、どこに行くのですか~?』
あの黒騎士、絶対あの子に嫌われてるでしょ。
●●●
カナと出会ってから二日後の早朝、二十五人全員で昆虫村の端っこ、第十三ステージの入り口である洞窟を潜る。
暫く歩くと洞窟を抜け……アマゾンを連想させる、植物に囲まれた、超大な濁った河が見えてきた。
「第十三ステージは熱帯雨林。安全地帯がボス部屋直前にしかない分ステージは短いけれど、飛べない場合は下半身を水に浸けた状態で進まなきゃならないよ」
いつものように、メルシュが解説してくれる。
「そのために、直前で”蝶々の光翅”が買えるようになってたのか」
「その他装備欄を一つ埋めるだけで、魔法使いでも戦士でも、TP、MPの消費無しで使えるからね」
ルイーサの言葉に、ジュリーが買ってきてくれたアイテムの有用性を説く。
「とはいえ、他の飛行手段に比べると不便だし、”紫雲猿の靴”を持っている人は念のため履いておくように」
俺は指輪で夜鷹を呼び、ジュリーは”明星の翼”、クマムとルイーサは”天使の翼”、メグミさんは”竜翼”を生み出し、”飛行魔法”を使える者は魔法で飛ぶ。
人魚のスゥーシャは人魚専用のスキルである”遊泳”で、それ以外の人間は”蝶々の光翅”を使って飛び立つ。
タマの槍の飛行速度は速すぎ、留まる事が難しいため、同じく”蝶々の光翅”で飛ぶ。
昨日は一日、全員が飛行訓練、空中戦闘の習熟に費やしたんだよな。
「河を遡って行けば良いんでしだっけ?」
「基本一本道よね、このダンジョン・ザ・チョイスっていうゲームは」
「まだまだ序盤だって言うのもあるけれど、選択制の分かれ道によって色々な要素を用意してあるのが、このゲームの売りの一つだったから」
クマムとユリカの会話に、ジュリーが乱入する。
「空を飛んでいると、”ジャンピングアリゲーター”が飛び跳ねてくるんだったか?」
「戦士のザッカルは、あまり前に出ないでね。ジュリー、サトミ、そろそろお願い」
メルシュが促す。
「それじゃあ行くわよ、ジュリーちゃん」
「ハイ!」
二人が前に出る。
「「”二重魔法”、”万雷魔法”、サンダラススプランター!!」」
トワイライトスプランターよりも攻撃距離が短く、威力の大きいサンダラススプランターを海中に向かって放つ二人。
「雷が海面を駆けるエフェクトがある間は、そこからワニが飛び跳ねてくる事は無いから、消える前に進もう」
「では皆さん、私とスゥーシャさんは先行します!」
「気を付けてな」
「「はい!」」
タマとスゥーシャが”蒼穹を駆けろ”を掴み、先へと進んでしまう。
「ふ、ふふふふ、二人だけで、だ、だだ大丈夫なんですか?」
カナが心配そうに尋ねてくる……ていうか、またモブキャラみたいな格好を。
ダンジョンの攻略中なんだから、強気になれるあの戦闘向けの格好でいた方がいいんじゃないのか?
「観測者の横槍次第でもあるけど、特になにも無ければ問題無いと思うよ」
あまり離れすぎないように言ってあるし、大丈夫だと思いたいが。
「モモカちゃん……やっぱり蝶々の翅飾り――メチャクチャ似合ってる!」
サキがうるさい。
●●●
雷のエフェクトが無い範囲に出ると、次第に水面が揺れ始めた。
「タマさん、そろそろ来そうです!」
「行きましょう、スゥーシャさん!」
私達の役目は、”ジャンピングアリゲーター”などのモンスターを倒して、ある程度素材を手に入れること。
メルシュさん達によると、このステージのモンスター達は水中に居る間は無敵らしく、倒すことが出来ないらしい。
だから、私達だけで先行してモンスターと戦いに来たのです!
「それでは――行きます!」
空中で上に向かって尾びれを翻し、海面へと向かって突撃する!
「”銛術”――パワーハープン!!」
白銀の三つ叉の銛、”天の白河は流れる”を手に、尻尾を使って飛び上がってきたワニさんとすれ違いながら、その背に銛を突き立てる!
銛が水棲モンスターに効果的だからなのか、一撃で倒せた!
「”一角水魚”!」
水のカジキを呼びだして、タマさんを狙って飛びだしてきたワニさん達の脇腹に、吻を突き刺させていく!
思ってたよりも、順調に討伐出来てる!
「スゥーシャさん!!」
――頭が石の魚、”ストーンヘッドフィッシュ”が群れで突撃してきた!
水面に近付かなければ、出現しないというモンスター。
「”ワッカカムイ”!」
青緑の気を纏って、身体能力を強化!
「”聖水魔法”――セイントバイパー!!」
群れの突撃を避けきって、白い水の螭を叩きつけた!
「……やった」
この短期間で、私どんどん強くなってる!
「少しは逞しくなったようだな、スゥーシャ」
「――この声は」
振り返った先には…………私が探していた人……キジナ姉さんがいた。
「少しだけお前を試してやる、スゥーシャ」
私の”暗黒の大鎌”の刃に、青と紫が入り交じる光が灯る。
「そのまま振ってみな」
「はい!」
シレイアという隠れNPCに指導されながら、新しいスキルを試す。
鎌を振ると、四、五メートルくらいまでジグザグの光の刃が――峰の側から直線上に伸びた。
「……凄い」
以前、突発クエストに巻き込まれて手に入れた”暗黒の大鎌”を好んで使っていたけれど、これがあれば格段に戦いやすくなりそう。
何度か振るい、感触を確かめる。
全力で振るって七、八メートルって所か。
「発動中はTPが減り続けるから、その点は気をつけな」
「はい、分かりました」
隠れNPC……か。
前に黒尽くめの集団とか、白い面の男の一団の中に、獣人と人魚以外で、日本人どころか本当に人間なのか疑いたくなる女の子を見掛けた事があったけれど……まさかNPCを味方に付ける方法があったなんて。
でも彼女達からは、モブキャラと違ってちゃんと感情を感じる。
本当にNPC……なのかな?
それに、私達を異世界に呼び込んだのが実は同じ世界の人間とか、元々存在していたゲームをモデルにしているとか、訳の分からない情報を急に教えられて、脳がパンクしそう!
「”蜘蛛網”! ”蜘蛛網”蜘蛛網”蜘蛛網”蜘蛛網”蜘蛛網”蜘蛛網”蜘蛛網”!!」
『ギャアアアアアアアアアア!! やーラーレ~ター!』
モモカっていう女の子が、私と同じ”大蜘蛛の射甲”を使って、大きな黒騎士に”蜘蛛網”を飛ばし続けていた。
『も、モモカ姫は、つ、強いな~!』
「フン!」
モモカという名前らしい少女が、不機嫌そうにその場を後にしてサキの元へと駆けていく。
そのサキはと言うと……どこかイヤラシイ笑みをモモカに向かって浮かべていた。
『も、モモカ姫~。ど、どこに行くのですか~?』
あの黒騎士、絶対あの子に嫌われてるでしょ。
●●●
カナと出会ってから二日後の早朝、二十五人全員で昆虫村の端っこ、第十三ステージの入り口である洞窟を潜る。
暫く歩くと洞窟を抜け……アマゾンを連想させる、植物に囲まれた、超大な濁った河が見えてきた。
「第十三ステージは熱帯雨林。安全地帯がボス部屋直前にしかない分ステージは短いけれど、飛べない場合は下半身を水に浸けた状態で進まなきゃならないよ」
いつものように、メルシュが解説してくれる。
「そのために、直前で”蝶々の光翅”が買えるようになってたのか」
「その他装備欄を一つ埋めるだけで、魔法使いでも戦士でも、TP、MPの消費無しで使えるからね」
ルイーサの言葉に、ジュリーが買ってきてくれたアイテムの有用性を説く。
「とはいえ、他の飛行手段に比べると不便だし、”紫雲猿の靴”を持っている人は念のため履いておくように」
俺は指輪で夜鷹を呼び、ジュリーは”明星の翼”、クマムとルイーサは”天使の翼”、メグミさんは”竜翼”を生み出し、”飛行魔法”を使える者は魔法で飛ぶ。
人魚のスゥーシャは人魚専用のスキルである”遊泳”で、それ以外の人間は”蝶々の光翅”を使って飛び立つ。
タマの槍の飛行速度は速すぎ、留まる事が難しいため、同じく”蝶々の光翅”で飛ぶ。
昨日は一日、全員が飛行訓練、空中戦闘の習熟に費やしたんだよな。
「河を遡って行けば良いんでしだっけ?」
「基本一本道よね、このダンジョン・ザ・チョイスっていうゲームは」
「まだまだ序盤だって言うのもあるけれど、選択制の分かれ道によって色々な要素を用意してあるのが、このゲームの売りの一つだったから」
クマムとユリカの会話に、ジュリーが乱入する。
「空を飛んでいると、”ジャンピングアリゲーター”が飛び跳ねてくるんだったか?」
「戦士のザッカルは、あまり前に出ないでね。ジュリー、サトミ、そろそろお願い」
メルシュが促す。
「それじゃあ行くわよ、ジュリーちゃん」
「ハイ!」
二人が前に出る。
「「”二重魔法”、”万雷魔法”、サンダラススプランター!!」」
トワイライトスプランターよりも攻撃距離が短く、威力の大きいサンダラススプランターを海中に向かって放つ二人。
「雷が海面を駆けるエフェクトがある間は、そこからワニが飛び跳ねてくる事は無いから、消える前に進もう」
「では皆さん、私とスゥーシャさんは先行します!」
「気を付けてな」
「「はい!」」
タマとスゥーシャが”蒼穹を駆けろ”を掴み、先へと進んでしまう。
「ふ、ふふふふ、二人だけで、だ、だだ大丈夫なんですか?」
カナが心配そうに尋ねてくる……ていうか、またモブキャラみたいな格好を。
ダンジョンの攻略中なんだから、強気になれるあの戦闘向けの格好でいた方がいいんじゃないのか?
「観測者の横槍次第でもあるけど、特になにも無ければ問題無いと思うよ」
あまり離れすぎないように言ってあるし、大丈夫だと思いたいが。
「モモカちゃん……やっぱり蝶々の翅飾り――メチャクチャ似合ってる!」
サキがうるさい。
●●●
雷のエフェクトが無い範囲に出ると、次第に水面が揺れ始めた。
「タマさん、そろそろ来そうです!」
「行きましょう、スゥーシャさん!」
私達の役目は、”ジャンピングアリゲーター”などのモンスターを倒して、ある程度素材を手に入れること。
メルシュさん達によると、このステージのモンスター達は水中に居る間は無敵らしく、倒すことが出来ないらしい。
だから、私達だけで先行してモンスターと戦いに来たのです!
「それでは――行きます!」
空中で上に向かって尾びれを翻し、海面へと向かって突撃する!
「”銛術”――パワーハープン!!」
白銀の三つ叉の銛、”天の白河は流れる”を手に、尻尾を使って飛び上がってきたワニさんとすれ違いながら、その背に銛を突き立てる!
銛が水棲モンスターに効果的だからなのか、一撃で倒せた!
「”一角水魚”!」
水のカジキを呼びだして、タマさんを狙って飛びだしてきたワニさん達の脇腹に、吻を突き刺させていく!
思ってたよりも、順調に討伐出来てる!
「スゥーシャさん!!」
――頭が石の魚、”ストーンヘッドフィッシュ”が群れで突撃してきた!
水面に近付かなければ、出現しないというモンスター。
「”ワッカカムイ”!」
青緑の気を纏って、身体能力を強化!
「”聖水魔法”――セイントバイパー!!」
群れの突撃を避けきって、白い水の螭を叩きつけた!
「……やった」
この短期間で、私どんどん強くなってる!
「少しは逞しくなったようだな、スゥーシャ」
「――この声は」
振り返った先には…………私が探していた人……キジナ姉さんがいた。
「少しだけお前を試してやる、スゥーシャ」
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