ダンジョン・ザ・チョイス
192.狂群と悶絶
「ようやく着いたぁぁぁ……」
トンネルの出口と川が見える安全地帯、草が生えた石がまばらに落ちている円形の広場が見えてきた。
「もう……クタクタ。あら?」
集合場所に決めてたここに、コセさんとルイーサちゃんだけが居ない?
「皆さん、お疲れ様でした」
トゥスカちゃんが労ってくれる。
「コセさんとルイーサちゃんは?」
コセさんなら、私達が来るのを待ってくれていそうなものだけれど。
「ああ……身体を汚したので、先に休んでます」
トゥスカちゃんのこの気まずい感じ、いったい何があったのかしら?
●●●
「フー……悪くないな、このお風呂」
“神秘の館”の物と違って、“忍者屋敷”のお風呂は底も壁も檜のようだ。
「檜のお風呂って手入れが大変だって言うけれど、この世界だと勝手にやってくれるからな」
扱いが雑だからと言って、カビたりしない。
……それはそれで、何か間違っている気もするけれど。
「その……すまない、コセ……」
壁の向こうから、ルイーサの声が。
彼女も湯に浸かって居るのだろう。
「いや……お風呂使わせて貰ってるし、むしろありがたいくらいだよ」
相手がクリスやアヤナだったら、絶対に嫌だったろうけれど。
「お前……良い奴過ぎるだろう」
「……そんな事ないよ」
よく優しいとか言われるけれど、俺は俺自身をそうは思えない。
「……なー、私と……その…………エッチ、シてみたいと思うか?」
「な!? ……どうしたんだよ、急に」
落ち込み過ぎて、変な事を言い出したのか?
「全部片付いて、向こうの世界に帰れるってなったとき……コセは残るつもりなんだろう?」
「……うん。コッチでやっていけるかは分からないけれど、昔より今の方が……大切な人がたくさん居るから」
向こうに居るとき既に、人間に愛想が尽きている。
特に、家族に対して。
「私が居なくなったら……どう思う?」
曖昧な問いに、困ってしまう。
寂しいとか、悲しいとか、居なくならないで欲しいって言ってくれるのを期待している……気がする。俺の自意識過剰でなければ。
「ルイーサ…………この世界で、同じお墓に入らないか?」
――口にした瞬間、頬の熱が上がったのが分かった!
もう七人に手を出しているのに……最低だよな。
「…………考えとく」
そんな返事が返ってきたあと、ルイーサの気配が隣から消えた。
「考えとく……か」
どこか、喜んでいる自分が居る。
●●●
「敵の数が多かったから、予定数はあっという間に集まったわ。“素材収集率アップの指輪”のお陰かも!」
サトミ達が、食堂のテーブルに“鋼鳥の嘴”を二百個並べてくれた。
指輪は、先日の特殊レギオン戦で手に入れたAランクの物。
「ジュリーの方は?」
「一本だけだけれど、運良く宝箱から手に入ったよ」
差し出されたのは、二百の穴が空いた金棒。
「この金棒ってDランクなのよね?」
「ええ。けれど、コレには面白い能力があります」
「よろしく、ジュリー」
嘴を回収し、実体化させた金棒に触れるジュリー。
○“鋼鳥の金棒”を、“鋼鳥の嘴”で強化出来ます。強化しますか?
「行きます」
ジュリーがOKを選択すると、金棒が光輝いて、赤黒い光が降り注ぐ!
○最大上限の二百個を取り込み、“鋼鳥の金棒”は“鋼鳥の狂群”に強化されました。
「なんだか、凄くオドロオドロしいわね」
そりゃ、棘が生えた無数の嘴が、金棒から生えた状態だしね。
「コイツはDランクのままだけれど、威力はかなり高めだし、”武具破壊”と”損耗”の効果もある。ランクアップジュエルを使ってSランクにすれば、終盤まで使える予備武器になるよ」
「ちょっとした隠し要素の武器って奴ですね」
金棒を使うのはアヤナとアオイくらいだけれど、専門武器として使ってるわけじゃないから宝の持ち腐れになっちゃうんだよね。
先に進めば進むほど、戦士は一芸に特化している方が有利になってくるからな~。
まあ、その分相性に弱くなりがちだけれど。
この武器の入手法が別ルートを通った者との協力を必要とするように、このゲームは協力プレイを前提としている部分が多い。
だからこそ、デルタはこのゲームを選んだんでしょうね。
プレイヤーキルで相手の全てを奪えるようにしたりと、協力しづらい状況に持っていくだけで難易度を上げられるとでも思ったのだろう。
優しい人間程、生き残る事が難しく出来ると。
「で、誰に使わせるの?」
「まだランクが低いから、わざわざ使わせる必要もないでしょう。もう少しランクアップジュエルが手に入りやすくなったらですね」
ジュリーは、サトミの前だと敬語なんだよね。
まあ、そうしたくなる気持ちが分からんでもない。
サトミは強いネガティブ系の人間だけれど、目覚める素質は決して低くない。
リンピョンやメグミ、皆からもう少し良い影響を受けられれば……。
「フェルナンダ、ルイーサは?」
マスターが食事を運びながら、フェルナンダに尋ねる。
「食欲が無いから、夕食は要らないってさ」
「ルイーサがご飯を食べないなんて……」
「ちょっと心配……」
長い付き合いのアヤナとアオイが心配してるって事は、よっぽど珍しいんだ。
「襖越しにだけれど、呻き声というか、奇声を発していた。さすがに、この私でも心配になってしまうくらい変な声だった」
それだけ、ゲロりんちょの事を気にしているのかもね。
●●●
「…………ムヒョーーーーッ!! オホッ! ……フフフフフフ、はぅぅぅッ♡♡♡」
コセが、コセが私に、「この世界で、同じお墓に入らないか?」……だって!
枕を抱き締めて、衝動的に布団の上を転げ回っちゃう!
「グフフフフフフ♡ そっかー。コセ、私にもちゃんと気があったんだーー~。フヘヘへへへヘヘ♡」
そうだったんだ~~♡
「…………ハァーー」
私、今めちゃくちゃ恋してる。
だって……切なすぎてご飯が喉を通らないんだもん♡
トンネルの出口と川が見える安全地帯、草が生えた石がまばらに落ちている円形の広場が見えてきた。
「もう……クタクタ。あら?」
集合場所に決めてたここに、コセさんとルイーサちゃんだけが居ない?
「皆さん、お疲れ様でした」
トゥスカちゃんが労ってくれる。
「コセさんとルイーサちゃんは?」
コセさんなら、私達が来るのを待ってくれていそうなものだけれど。
「ああ……身体を汚したので、先に休んでます」
トゥスカちゃんのこの気まずい感じ、いったい何があったのかしら?
●●●
「フー……悪くないな、このお風呂」
“神秘の館”の物と違って、“忍者屋敷”のお風呂は底も壁も檜のようだ。
「檜のお風呂って手入れが大変だって言うけれど、この世界だと勝手にやってくれるからな」
扱いが雑だからと言って、カビたりしない。
……それはそれで、何か間違っている気もするけれど。
「その……すまない、コセ……」
壁の向こうから、ルイーサの声が。
彼女も湯に浸かって居るのだろう。
「いや……お風呂使わせて貰ってるし、むしろありがたいくらいだよ」
相手がクリスやアヤナだったら、絶対に嫌だったろうけれど。
「お前……良い奴過ぎるだろう」
「……そんな事ないよ」
よく優しいとか言われるけれど、俺は俺自身をそうは思えない。
「……なー、私と……その…………エッチ、シてみたいと思うか?」
「な!? ……どうしたんだよ、急に」
落ち込み過ぎて、変な事を言い出したのか?
「全部片付いて、向こうの世界に帰れるってなったとき……コセは残るつもりなんだろう?」
「……うん。コッチでやっていけるかは分からないけれど、昔より今の方が……大切な人がたくさん居るから」
向こうに居るとき既に、人間に愛想が尽きている。
特に、家族に対して。
「私が居なくなったら……どう思う?」
曖昧な問いに、困ってしまう。
寂しいとか、悲しいとか、居なくならないで欲しいって言ってくれるのを期待している……気がする。俺の自意識過剰でなければ。
「ルイーサ…………この世界で、同じお墓に入らないか?」
――口にした瞬間、頬の熱が上がったのが分かった!
もう七人に手を出しているのに……最低だよな。
「…………考えとく」
そんな返事が返ってきたあと、ルイーサの気配が隣から消えた。
「考えとく……か」
どこか、喜んでいる自分が居る。
●●●
「敵の数が多かったから、予定数はあっという間に集まったわ。“素材収集率アップの指輪”のお陰かも!」
サトミ達が、食堂のテーブルに“鋼鳥の嘴”を二百個並べてくれた。
指輪は、先日の特殊レギオン戦で手に入れたAランクの物。
「ジュリーの方は?」
「一本だけだけれど、運良く宝箱から手に入ったよ」
差し出されたのは、二百の穴が空いた金棒。
「この金棒ってDランクなのよね?」
「ええ。けれど、コレには面白い能力があります」
「よろしく、ジュリー」
嘴を回収し、実体化させた金棒に触れるジュリー。
○“鋼鳥の金棒”を、“鋼鳥の嘴”で強化出来ます。強化しますか?
「行きます」
ジュリーがOKを選択すると、金棒が光輝いて、赤黒い光が降り注ぐ!
○最大上限の二百個を取り込み、“鋼鳥の金棒”は“鋼鳥の狂群”に強化されました。
「なんだか、凄くオドロオドロしいわね」
そりゃ、棘が生えた無数の嘴が、金棒から生えた状態だしね。
「コイツはDランクのままだけれど、威力はかなり高めだし、”武具破壊”と”損耗”の効果もある。ランクアップジュエルを使ってSランクにすれば、終盤まで使える予備武器になるよ」
「ちょっとした隠し要素の武器って奴ですね」
金棒を使うのはアヤナとアオイくらいだけれど、専門武器として使ってるわけじゃないから宝の持ち腐れになっちゃうんだよね。
先に進めば進むほど、戦士は一芸に特化している方が有利になってくるからな~。
まあ、その分相性に弱くなりがちだけれど。
この武器の入手法が別ルートを通った者との協力を必要とするように、このゲームは協力プレイを前提としている部分が多い。
だからこそ、デルタはこのゲームを選んだんでしょうね。
プレイヤーキルで相手の全てを奪えるようにしたりと、協力しづらい状況に持っていくだけで難易度を上げられるとでも思ったのだろう。
優しい人間程、生き残る事が難しく出来ると。
「で、誰に使わせるの?」
「まだランクが低いから、わざわざ使わせる必要もないでしょう。もう少しランクアップジュエルが手に入りやすくなったらですね」
ジュリーは、サトミの前だと敬語なんだよね。
まあ、そうしたくなる気持ちが分からんでもない。
サトミは強いネガティブ系の人間だけれど、目覚める素質は決して低くない。
リンピョンやメグミ、皆からもう少し良い影響を受けられれば……。
「フェルナンダ、ルイーサは?」
マスターが食事を運びながら、フェルナンダに尋ねる。
「食欲が無いから、夕食は要らないってさ」
「ルイーサがご飯を食べないなんて……」
「ちょっと心配……」
長い付き合いのアヤナとアオイが心配してるって事は、よっぽど珍しいんだ。
「襖越しにだけれど、呻き声というか、奇声を発していた。さすがに、この私でも心配になってしまうくらい変な声だった」
それだけ、ゲロりんちょの事を気にしているのかもね。
●●●
「…………ムヒョーーーーッ!! オホッ! ……フフフフフフ、はぅぅぅッ♡♡♡」
コセが、コセが私に、「この世界で、同じお墓に入らないか?」……だって!
枕を抱き締めて、衝動的に布団の上を転げ回っちゃう!
「グフフフフフフ♡ そっかー。コセ、私にもちゃんと気があったんだーー~。フヘヘへへへヘヘ♡」
そうだったんだ~~♡
「…………ハァーー」
私、今めちゃくちゃ恋してる。
だって……切なすぎてご飯が喉を通らないんだもん♡
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