ダンジョン・ザ・チョイス
184.薔薇騎士クリスティーナ
「”リングリング”は、その他装備の枠を一つ使う代わりに、ガントレット装備とかで使用できなくなった分の指輪を、その二重の輪っかに装備できんのよ」
あの後すぐに、モモカはヨシノとローゼと共にお昼寝へ。
クリスティーナへの説明はメルシュ達が引き受けてくれたため、シレイアから新アイテムについて聞いていた。
アマゾネスの隠れNPCで、妖艶なキツめの褐色美女。
「それだと、武器を生み出すタイプの“大地の盾の指輪”とかはどうなるんだ?」
「補助効果はともかく、腕の動きと連動させる指輪武器は出現させられないね」
それなりに制約はあるんだな。
リビングのフカフカソファーに座ってると、だんだん気が抜けてきた。
「そういえばアンタ、メルシュとヤッたんだって?」
耳元でコッソリ尋ねてくるシレイア!
「……うん」
よく考えると、メルシュとは凄く情けない流れだったな。
「アタシとシたくなったらいつでも言いな。隠れNPCだから、幾らヤッてもガキは出来ないからさ」
久し振りに誘惑されてる!
「ハハ……冗談だよね?」
「アタシは、冗談が嫌いだよ」
意識してしまうから、冗談って言ってほしかった!
「まあ、気が向いたらで良いさね」
そう言って、離れていくシレイア。
疲れて気を抜いてたからか、もの凄く動揺してしまったぞ。
「コセ……先程はスミマセン」
話が終わったようで、クリスティーナが声を掛けてきた。
「いや、まあ」
ちょっと手を繋いで居ただけで、なぜ小児性愛者扱いされないといけないのかと腹は立ったけれど。
「アメリカでは、他人の子供に不用意に大人が接触することに敏感でぇす。僅かな間に服や髪の色を変えられて攫われるなんて、珍しくありませぇん」
そういえば、日本のように子供だけで歩いて通学する方が、世界的には珍しいんだっけ。
「世界的テーマパークが、幼児の誘拐組織とグルになっているって噂で聞いたことはあるけれど」
日本って誘拐事件が滅多に報道されないけれど、実際のところ減っているのか? それとも規制されてるだけ?
「小さい頃、一人で行動すると小児性愛者に攫われると教えられて育ちました。ここで言うペドファイルは、医学的なペドファイルの人達の事ではありません。つまり、あなたぁには当てはまりません」
……気のせいかな? 俺を医学的なペドファイル呼ばわりしている気がするのは?
「それに、コセは十五歳。医学的ペドファイルになるにはあと一年の猶予がありまーす」
「おい! 俺が小さい子に性的興奮を覚える前提で話してるじゃねぇか!! ふざけんな!」
やっぱり俺、コイツ嫌い!
「だって二人共、左手薬指に同じ指輪してまぁした。将来を誓い合ってるのでしょう?」
――またこの指輪かッ!!
「いや、この指輪は……」
「それに、あのモモカって子、貴方を女の目で見てまぁした。まさしく、禁断の恋でぇす! 私、貴方たちをぉ見守りたい!」
サトミさん並にこっちの世界観を捻じ曲げてくるな、この女!!
「マスター。クリスティーナはサトミと契約させる事にしたから」
「ああ、はい」
メルシュ、最悪な二人を組み合わせたな。
「それと、これなんだけれど」
「ん?」
メルシュが見せてきたのは、鳥の頭が付いた黄金の指輪。
「調べたところ、“シュメルの指輪”って名前で、隠れNPC専用装備みたい」
「専用装備……これをクエスト中に手に入れたのか?」
「ヨシノが転送された部屋の宝箱に入ってて、部屋から出られない代わりに手に入れられる、限定アイテムだったんだって」
ドライアドの隠れNPC、ヨシノ。
植物がある程度存在すれば、最強の隠れNPCに躍り出るという、尖った能力の美しい半植物美女。
「それで、この指輪の能力は?」
「装備した隠れNPCの制約を弱められるみたい。だから、一つのパーティーに隠れNPCが二体ってことも可能だよ」
「それは助かるな!」
クリスティーナが増えることでパーティー数を増やさなければならないのがネックだったけれど、その問題を解消できる。
「私の中に、このアイテムの情報は今日まで無かった。多分、新しく作られた物だよ」
新しいアイテムが、急遽追加されることもあると。
ジュリーの知るオリジナル版には無い要素が少なくないみたいだし、観測者側の都合により、そういう事も起きるということか。
「皆さん、私の事はクリス呼んでください! よろしく、お願ぁいします!」
「よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
「おう、よろしくな!」
意外と馴染んでるな、あの女。
★
「クリスちゃんって考古学者なの?」
「ハーイ、といっても見習いでぇす! ペトログリフ! 日本たくさん見付かる聞いて、十八で留学しまぁした」
「ペトログリフ?」
夕食の傍ら、サトミさんが次々と質問を投げ掛けていく。
「とぉっても古い物で、歴史的価値が凄い物でぇす。世界的に、日本でたくさん見付かっているから、日本が人類発祥の地という説の、根拠の一つになってまぁす」
お上品にオムレツをフォークで食べながら、淀みなく答えていくクリス。
「人類発祥って、アフリカじゃないの?」
「私も……そう聞いた。日本人は大陸から……中国からの移民者とも」
アヤナとアオイが疑問を述べる。
「それは違いまぁす。人類発祥の地や経緯はまだまだ分からない。でも、縄文人の遺伝子が中国や朝鮮伝来でないことは、サイエンス的に証明されてぇます」
「世界的に珍しいとある遺伝子を、日本人の男の約半数が宿してるらしい。この辺は、縄文人に関する研究が進めば色々分かってくるだろうな」
ジュリーが、意外な知識を披露。
「なんだか難しい話しになってきたわね」
「昔、朝廷と争ってた人達、居ました。朝廷側の人、古事記に外からやって来た記述あるそうでぇすね? それに、日本の歴史、数百年の空白あって、その頃の事、ほとんどなにも分かってない。不自然なくらい記録ないし、突然、漢字輸入して、昔の文字無くしてしまった形跡あります。不思議でぇす」
「まるで、日本が朝廷側に侵略された事実を消そうとしているように聞こえるな」
「実際、そだと思いまぁす。第二次世界大戦終わるまで、管理されていない人達。中枢から遠退いて山で生活していた人達居まぁした。遥か昔から、朝廷が目の敵にしていた人達、サンカや蝦夷とか、盗賊や鬼と、色んな蔑称使って、長く敵対してまぁした」
日本は単一民族だと思われがちだが、昔はそうじゃ無かった。
北海道が日本になったのはそれ程昔じゃないし、沖縄は日本とは違う独特の文化があって、中国との関係も深く、未だに中国に隷属を示す儀式が執り行われていると聞いたこともある。
侵略後はその地の文化を破壊するのが世界的な定石らしいし、歴史って幾らでも捏造が可能だよな。
ネットのない当時なら尚更。
「ペトログリフ、漢字以前の文字との関連深い。カタカムナとか神代文字とか、色々あるみたいで、どんどん新しい発見、続いてまぁした」
クリスが気落ちする。
「戻れないの……ちょっと残念。でも、デルタというの、非常に興味ありまぁす! 切り替えて、生きる!」
「その意気よ、クリスちゃん!」
サトミさんと和気あいあいとなるクリス。
戻れないこと、それ程気にしてはいないようだな。
それにしても、漢字以前の文字が神代文字か。
武具に刻まれる、強大な力を引き出せる文字。
この一致は偶然なのかな?
あの後すぐに、モモカはヨシノとローゼと共にお昼寝へ。
クリスティーナへの説明はメルシュ達が引き受けてくれたため、シレイアから新アイテムについて聞いていた。
アマゾネスの隠れNPCで、妖艶なキツめの褐色美女。
「それだと、武器を生み出すタイプの“大地の盾の指輪”とかはどうなるんだ?」
「補助効果はともかく、腕の動きと連動させる指輪武器は出現させられないね」
それなりに制約はあるんだな。
リビングのフカフカソファーに座ってると、だんだん気が抜けてきた。
「そういえばアンタ、メルシュとヤッたんだって?」
耳元でコッソリ尋ねてくるシレイア!
「……うん」
よく考えると、メルシュとは凄く情けない流れだったな。
「アタシとシたくなったらいつでも言いな。隠れNPCだから、幾らヤッてもガキは出来ないからさ」
久し振りに誘惑されてる!
「ハハ……冗談だよね?」
「アタシは、冗談が嫌いだよ」
意識してしまうから、冗談って言ってほしかった!
「まあ、気が向いたらで良いさね」
そう言って、離れていくシレイア。
疲れて気を抜いてたからか、もの凄く動揺してしまったぞ。
「コセ……先程はスミマセン」
話が終わったようで、クリスティーナが声を掛けてきた。
「いや、まあ」
ちょっと手を繋いで居ただけで、なぜ小児性愛者扱いされないといけないのかと腹は立ったけれど。
「アメリカでは、他人の子供に不用意に大人が接触することに敏感でぇす。僅かな間に服や髪の色を変えられて攫われるなんて、珍しくありませぇん」
そういえば、日本のように子供だけで歩いて通学する方が、世界的には珍しいんだっけ。
「世界的テーマパークが、幼児の誘拐組織とグルになっているって噂で聞いたことはあるけれど」
日本って誘拐事件が滅多に報道されないけれど、実際のところ減っているのか? それとも規制されてるだけ?
「小さい頃、一人で行動すると小児性愛者に攫われると教えられて育ちました。ここで言うペドファイルは、医学的なペドファイルの人達の事ではありません。つまり、あなたぁには当てはまりません」
……気のせいかな? 俺を医学的なペドファイル呼ばわりしている気がするのは?
「それに、コセは十五歳。医学的ペドファイルになるにはあと一年の猶予がありまーす」
「おい! 俺が小さい子に性的興奮を覚える前提で話してるじゃねぇか!! ふざけんな!」
やっぱり俺、コイツ嫌い!
「だって二人共、左手薬指に同じ指輪してまぁした。将来を誓い合ってるのでしょう?」
――またこの指輪かッ!!
「いや、この指輪は……」
「それに、あのモモカって子、貴方を女の目で見てまぁした。まさしく、禁断の恋でぇす! 私、貴方たちをぉ見守りたい!」
サトミさん並にこっちの世界観を捻じ曲げてくるな、この女!!
「マスター。クリスティーナはサトミと契約させる事にしたから」
「ああ、はい」
メルシュ、最悪な二人を組み合わせたな。
「それと、これなんだけれど」
「ん?」
メルシュが見せてきたのは、鳥の頭が付いた黄金の指輪。
「調べたところ、“シュメルの指輪”って名前で、隠れNPC専用装備みたい」
「専用装備……これをクエスト中に手に入れたのか?」
「ヨシノが転送された部屋の宝箱に入ってて、部屋から出られない代わりに手に入れられる、限定アイテムだったんだって」
ドライアドの隠れNPC、ヨシノ。
植物がある程度存在すれば、最強の隠れNPCに躍り出るという、尖った能力の美しい半植物美女。
「それで、この指輪の能力は?」
「装備した隠れNPCの制約を弱められるみたい。だから、一つのパーティーに隠れNPCが二体ってことも可能だよ」
「それは助かるな!」
クリスティーナが増えることでパーティー数を増やさなければならないのがネックだったけれど、その問題を解消できる。
「私の中に、このアイテムの情報は今日まで無かった。多分、新しく作られた物だよ」
新しいアイテムが、急遽追加されることもあると。
ジュリーの知るオリジナル版には無い要素が少なくないみたいだし、観測者側の都合により、そういう事も起きるということか。
「皆さん、私の事はクリス呼んでください! よろしく、お願ぁいします!」
「よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
「おう、よろしくな!」
意外と馴染んでるな、あの女。
★
「クリスちゃんって考古学者なの?」
「ハーイ、といっても見習いでぇす! ペトログリフ! 日本たくさん見付かる聞いて、十八で留学しまぁした」
「ペトログリフ?」
夕食の傍ら、サトミさんが次々と質問を投げ掛けていく。
「とぉっても古い物で、歴史的価値が凄い物でぇす。世界的に、日本でたくさん見付かっているから、日本が人類発祥の地という説の、根拠の一つになってまぁす」
お上品にオムレツをフォークで食べながら、淀みなく答えていくクリス。
「人類発祥って、アフリカじゃないの?」
「私も……そう聞いた。日本人は大陸から……中国からの移民者とも」
アヤナとアオイが疑問を述べる。
「それは違いまぁす。人類発祥の地や経緯はまだまだ分からない。でも、縄文人の遺伝子が中国や朝鮮伝来でないことは、サイエンス的に証明されてぇます」
「世界的に珍しいとある遺伝子を、日本人の男の約半数が宿してるらしい。この辺は、縄文人に関する研究が進めば色々分かってくるだろうな」
ジュリーが、意外な知識を披露。
「なんだか難しい話しになってきたわね」
「昔、朝廷と争ってた人達、居ました。朝廷側の人、古事記に外からやって来た記述あるそうでぇすね? それに、日本の歴史、数百年の空白あって、その頃の事、ほとんどなにも分かってない。不自然なくらい記録ないし、突然、漢字輸入して、昔の文字無くしてしまった形跡あります。不思議でぇす」
「まるで、日本が朝廷側に侵略された事実を消そうとしているように聞こえるな」
「実際、そだと思いまぁす。第二次世界大戦終わるまで、管理されていない人達。中枢から遠退いて山で生活していた人達居まぁした。遥か昔から、朝廷が目の敵にしていた人達、サンカや蝦夷とか、盗賊や鬼と、色んな蔑称使って、長く敵対してまぁした」
日本は単一民族だと思われがちだが、昔はそうじゃ無かった。
北海道が日本になったのはそれ程昔じゃないし、沖縄は日本とは違う独特の文化があって、中国との関係も深く、未だに中国に隷属を示す儀式が執り行われていると聞いたこともある。
侵略後はその地の文化を破壊するのが世界的な定石らしいし、歴史って幾らでも捏造が可能だよな。
ネットのない当時なら尚更。
「ペトログリフ、漢字以前の文字との関連深い。カタカムナとか神代文字とか、色々あるみたいで、どんどん新しい発見、続いてまぁした」
クリスが気落ちする。
「戻れないの……ちょっと残念。でも、デルタというの、非常に興味ありまぁす! 切り替えて、生きる!」
「その意気よ、クリスちゃん!」
サトミさんと和気あいあいとなるクリス。
戻れないこと、それ程気にしてはいないようだな。
それにしても、漢字以前の文字が神代文字か。
武具に刻まれる、強大な力を引き出せる文字。
この一致は偶然なのかな?
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