ダンジョン・ザ・チョイス
167.魔神・紫雲猿
「……やっちまった」
「う~ん♡」
俺の胸の中で、寝返りを打つ……ザッカル。
昨夜まで、そういう関係になる気はなかった。
まさか、大笑いした代償がこれとは。
「コセ~♡」
……まあ、いっか。ベッドの上のザッカル、可愛かったし。
結構甘えん坊だったな。
「朝日……眩しいなー」
●●●
「おはようございます、《龍意のケンシ》の皆さん」
レギオン戦を始めたのと同じ時間帯に、冒険者ギルドを訪れた。
「レギオンメンバー全員を、ボスへの道に連れて行ってくれ」
「畏まりました」
受付嬢が指を鳴らすと、身体が光りに包まれる。
★
「ここは……ギルドの裏手か」
晴天下、広く真っ直ぐな通路がボス部屋へと通じる門まで伸びている。
「歩きながら話すよ。第九ステージのボスは、魔神・紫雲猿。雲で空を飛び、棒を使って攻撃してくるよ」
メルシュが恒例の講義を始めてくれる。
……なんか、孫悟空みたいなボスだな。
「有効武器は弓矢で、弱点属性は光。危険攻撃は、伸縮自在の棒だね。突然伸ばしてくるうえに、ボス部屋の端から端まで届かせてくるから、油断しないように」
「じゃ、まずは俺達から行くか」
紫の妖精に蜂蜜入りの小瓶をお供えしたあと、俺、トゥスカ、メルシュ、クマム、モモカのパーティーでボス部屋に入る。
いつもの、静謐さと不気味さが同居したボス部屋の奥、紫の光が発光する!
いつもより、天井が高い気がするな。
『キーーーーーーーヤオーーー!!』
なに、その鳴き声。
「来るよ!」
魔神・紫雲猿が跳び上がると、宙に紫色の雲が生まれ、それに跳び乗った!
「弓が使えれば、簡単にあの雲を壊せるんだけれど」
「確か、物理ダメージを受けると一発で壊れるんだっけか」
魔法や“魔力砲”などではダメらしい。
『キェキェキェ!』
紫雲猿が髪を抜いて、ソイツをばら撒く。
その髪が地上に落ちた途端に、紫色の猿になった!
「ポイズンエイプ。噛まれると毒になるから、注意して」
何気に、始まりの村の突発クエストを除けば、初の状態異常持ちモンスターか。
まあ、突発クエストの時も、モンスターではなく装備していた武器による物だったけれど。
「じゃ、手筈通りに頼む! “夜鷹”!」
夜空の鷹を呼び出し、肩を掴ませて飛翔!
「“飛行魔法”、フライ!」
メルシュは魔法で追い掛けてきてくれる。
今回は、俺とメルシュが紫雲猿を受け持ち、トゥスカ達三人がポイズンエイプの相手をする事になっていた。
「“神代の剣”」
文字を三つ刻み、“サムシンググレートソード”に青い刃を生成!
「ハッ!!」
夜鷹のおかげで紫雲猿の棒突きを避け、すれ違い様に頬の部分を切り裂く!
「“煉獄魔法”、インフェルノブラスター!」
紫の棒に防がれる!
「“光線魔法”、アトミックレイ!」
不意を突き、メルシュが光属性の光線を右脚に浴びせ、壊した!
「“竜剣術”、ドラゴンスラッシュ!」
紫雲猿の首を刎ねる。
夜鷹に旋回して貰うと、紫の雲が消え、紫雲猿が地上に降りるのが見えた!
●●●
「“瞬突”!」
“疾風のレイピア”を構え、高速でお猿さんの喉に突き刺す!
素早く引いて、別のポイズンエイプの攻撃範囲から逃れる!
『キキ!』
跳躍しながら、襲い掛かってきた!?
『クケッ!?』
黄金の尻尾が、ポイズンエイプを叩き潰した?
「クマム、大丈夫?」
「ありがとう、モモカちゃん!」
モモカちゃんの黄金竜が、私を助けてくれたみたい。
「負けてられないな。“刺突術”、フリックラッシュ!」
二体のポイズンエイプを、連続突きで穴だらけに!
「“疾風迅雷”!」
風と雷を脚から迸らせ、高速移動!
ポイズンエイプの喉や目を狙って、仕留めていく!
「あ!」
また髪が落ちてきて、猿が増えた!!
「はああああああッ!!」
突然目の前に出現したポイズンエイプの頭を、思わず蹴り抜いてしまう!
“疾風迅雷”を発動していたからか、簡単に首がもげちゃった!
「クマム、危ないよ!」
「へ?」
モモカちゃんの声が聞こえると、突然の地響き!?
「首の無い……魔神?」
紫の棒を振り回し、薙払いを!!
――足が竦んで。
「“神代の盾”!」
大剣を使って、私に直撃するはずだった棒の一撃を、コセさんが受け止めていた!?
「――ハッ!!」
コセさんの大剣の光が増し、大質量の棍棒を押し返す!?
「動け、クマム!」
「はい!」
今の、格好良かったかも♡
「“尖衝武装”!」
赤い鋭い光を、レイピアに纏わせる。
英知の街で起きた突発クエストで手に入れた、手持ち武器による突きのみを強化してくれるスキル。
レイピア主体である私の低い攻撃能力を、補ってくれるありがたいスキル。
これが無かったら、魔神・跳弾兎を一人では倒せなかった。
コセさんが、左から魔神に近付く!
私が右から接近を始めると、棒が伸びてコセさんを狙う!
「ハイパワーブーメラン!!」
コセさんに直撃するという直前で、横合いから飛んできた巨大ブーメランにより、棍棒が上へと弾かれ、軌道が変わった!
トゥスカさん、凄い!
それにコセさんも、まるで信じていたかのような、迷いの無い走りで紫雲猿に接近!
「“大剣術”、ハイパワーブレイク!!」
「“刺突術”、ハイパワーフリック!!」
二人の攻撃が魔神の身体を砕き、完全に光へと変えた。
なんか、凄く気持ちいい!
「こんなに戦いやすいの……初めてかも」
アイドル仲間でのパーティーは、凄く気を遣わないと仲間の攻撃で死にかねなかったし。
○おめでとうございます。魔神・紫雲猿の討伐に成功しました。
「フー……」
安心したら、気が抜けてしまった。
「大丈夫か?」
コセさんが、声を掛けてくれる。
「ああ、はい。さっきはありがとうございました!」
「どう致しまして」
……この人も、私の……か、身体を要求したりするのかな?
結構、そういう関係になっている人も居るみたいだし。
「じゃあ、さっさとボス討伐報酬を選んじゃいましょう。あまりジュリー達を待たせるのも良くないですし」
「そうですね」
トゥスカさんの言葉に、変な事を考え始めていた頭を律する!
○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。
★紫雲猿の棍棒 ★雲魔法のスキルカード
★紫雲の指輪 ★紫雲猿の靴
「へと……好きなのを選んで良いんでしたっけ?」
メルシュさんに尋ねる。
「正直、”雲魔法”はイマイチだね。紫雲の指輪はさっきボスが乗ってたので飛べるんだけれど、一発で壊れちゃう。棒をメインに戦うなら“紫雲猿の棍棒”でも良いんだけれど……」
“雲魔法”は、攻撃より防御重視の魔法でしたっけ?
「一番利便性が高いのは、“紫雲猿の靴”かな。一応、空を歩けるよ。他の飛行手段に比べるとイマイチだけれど、その他欄に空きがあるなら装備してても良いかも。マスターなんかは、上空で“夜鷹”がやられたときの緊急回避手段になるだろうし」
「……なるほど。なら、俺は靴にするかな」
「モモカも!」
「私もですね」
「まあ、一番無難だね。私は“紫雲猿の棍棒”を選ぶけれど」
こうして聞いていると、今まで適当に選んでた自分達が恥ずかしい。
私は“雲魔法使いのサブ職業”を持っているため、一番気になった靴を選んだ。
○これより、第十ステージの遺跡村に転移します。
「う~ん♡」
俺の胸の中で、寝返りを打つ……ザッカル。
昨夜まで、そういう関係になる気はなかった。
まさか、大笑いした代償がこれとは。
「コセ~♡」
……まあ、いっか。ベッドの上のザッカル、可愛かったし。
結構甘えん坊だったな。
「朝日……眩しいなー」
●●●
「おはようございます、《龍意のケンシ》の皆さん」
レギオン戦を始めたのと同じ時間帯に、冒険者ギルドを訪れた。
「レギオンメンバー全員を、ボスへの道に連れて行ってくれ」
「畏まりました」
受付嬢が指を鳴らすと、身体が光りに包まれる。
★
「ここは……ギルドの裏手か」
晴天下、広く真っ直ぐな通路がボス部屋へと通じる門まで伸びている。
「歩きながら話すよ。第九ステージのボスは、魔神・紫雲猿。雲で空を飛び、棒を使って攻撃してくるよ」
メルシュが恒例の講義を始めてくれる。
……なんか、孫悟空みたいなボスだな。
「有効武器は弓矢で、弱点属性は光。危険攻撃は、伸縮自在の棒だね。突然伸ばしてくるうえに、ボス部屋の端から端まで届かせてくるから、油断しないように」
「じゃ、まずは俺達から行くか」
紫の妖精に蜂蜜入りの小瓶をお供えしたあと、俺、トゥスカ、メルシュ、クマム、モモカのパーティーでボス部屋に入る。
いつもの、静謐さと不気味さが同居したボス部屋の奥、紫の光が発光する!
いつもより、天井が高い気がするな。
『キーーーーーーーヤオーーー!!』
なに、その鳴き声。
「来るよ!」
魔神・紫雲猿が跳び上がると、宙に紫色の雲が生まれ、それに跳び乗った!
「弓が使えれば、簡単にあの雲を壊せるんだけれど」
「確か、物理ダメージを受けると一発で壊れるんだっけか」
魔法や“魔力砲”などではダメらしい。
『キェキェキェ!』
紫雲猿が髪を抜いて、ソイツをばら撒く。
その髪が地上に落ちた途端に、紫色の猿になった!
「ポイズンエイプ。噛まれると毒になるから、注意して」
何気に、始まりの村の突発クエストを除けば、初の状態異常持ちモンスターか。
まあ、突発クエストの時も、モンスターではなく装備していた武器による物だったけれど。
「じゃ、手筈通りに頼む! “夜鷹”!」
夜空の鷹を呼び出し、肩を掴ませて飛翔!
「“飛行魔法”、フライ!」
メルシュは魔法で追い掛けてきてくれる。
今回は、俺とメルシュが紫雲猿を受け持ち、トゥスカ達三人がポイズンエイプの相手をする事になっていた。
「“神代の剣”」
文字を三つ刻み、“サムシンググレートソード”に青い刃を生成!
「ハッ!!」
夜鷹のおかげで紫雲猿の棒突きを避け、すれ違い様に頬の部分を切り裂く!
「“煉獄魔法”、インフェルノブラスター!」
紫の棒に防がれる!
「“光線魔法”、アトミックレイ!」
不意を突き、メルシュが光属性の光線を右脚に浴びせ、壊した!
「“竜剣術”、ドラゴンスラッシュ!」
紫雲猿の首を刎ねる。
夜鷹に旋回して貰うと、紫の雲が消え、紫雲猿が地上に降りるのが見えた!
●●●
「“瞬突”!」
“疾風のレイピア”を構え、高速でお猿さんの喉に突き刺す!
素早く引いて、別のポイズンエイプの攻撃範囲から逃れる!
『キキ!』
跳躍しながら、襲い掛かってきた!?
『クケッ!?』
黄金の尻尾が、ポイズンエイプを叩き潰した?
「クマム、大丈夫?」
「ありがとう、モモカちゃん!」
モモカちゃんの黄金竜が、私を助けてくれたみたい。
「負けてられないな。“刺突術”、フリックラッシュ!」
二体のポイズンエイプを、連続突きで穴だらけに!
「“疾風迅雷”!」
風と雷を脚から迸らせ、高速移動!
ポイズンエイプの喉や目を狙って、仕留めていく!
「あ!」
また髪が落ちてきて、猿が増えた!!
「はああああああッ!!」
突然目の前に出現したポイズンエイプの頭を、思わず蹴り抜いてしまう!
“疾風迅雷”を発動していたからか、簡単に首がもげちゃった!
「クマム、危ないよ!」
「へ?」
モモカちゃんの声が聞こえると、突然の地響き!?
「首の無い……魔神?」
紫の棒を振り回し、薙払いを!!
――足が竦んで。
「“神代の盾”!」
大剣を使って、私に直撃するはずだった棒の一撃を、コセさんが受け止めていた!?
「――ハッ!!」
コセさんの大剣の光が増し、大質量の棍棒を押し返す!?
「動け、クマム!」
「はい!」
今の、格好良かったかも♡
「“尖衝武装”!」
赤い鋭い光を、レイピアに纏わせる。
英知の街で起きた突発クエストで手に入れた、手持ち武器による突きのみを強化してくれるスキル。
レイピア主体である私の低い攻撃能力を、補ってくれるありがたいスキル。
これが無かったら、魔神・跳弾兎を一人では倒せなかった。
コセさんが、左から魔神に近付く!
私が右から接近を始めると、棒が伸びてコセさんを狙う!
「ハイパワーブーメラン!!」
コセさんに直撃するという直前で、横合いから飛んできた巨大ブーメランにより、棍棒が上へと弾かれ、軌道が変わった!
トゥスカさん、凄い!
それにコセさんも、まるで信じていたかのような、迷いの無い走りで紫雲猿に接近!
「“大剣術”、ハイパワーブレイク!!」
「“刺突術”、ハイパワーフリック!!」
二人の攻撃が魔神の身体を砕き、完全に光へと変えた。
なんか、凄く気持ちいい!
「こんなに戦いやすいの……初めてかも」
アイドル仲間でのパーティーは、凄く気を遣わないと仲間の攻撃で死にかねなかったし。
○おめでとうございます。魔神・紫雲猿の討伐に成功しました。
「フー……」
安心したら、気が抜けてしまった。
「大丈夫か?」
コセさんが、声を掛けてくれる。
「ああ、はい。さっきはありがとうございました!」
「どう致しまして」
……この人も、私の……か、身体を要求したりするのかな?
結構、そういう関係になっている人も居るみたいだし。
「じゃあ、さっさとボス討伐報酬を選んじゃいましょう。あまりジュリー達を待たせるのも良くないですし」
「そうですね」
トゥスカさんの言葉に、変な事を考え始めていた頭を律する!
○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。
★紫雲猿の棍棒 ★雲魔法のスキルカード
★紫雲の指輪 ★紫雲猿の靴
「へと……好きなのを選んで良いんでしたっけ?」
メルシュさんに尋ねる。
「正直、”雲魔法”はイマイチだね。紫雲の指輪はさっきボスが乗ってたので飛べるんだけれど、一発で壊れちゃう。棒をメインに戦うなら“紫雲猿の棍棒”でも良いんだけれど……」
“雲魔法”は、攻撃より防御重視の魔法でしたっけ?
「一番利便性が高いのは、“紫雲猿の靴”かな。一応、空を歩けるよ。他の飛行手段に比べるとイマイチだけれど、その他欄に空きがあるなら装備してても良いかも。マスターなんかは、上空で“夜鷹”がやられたときの緊急回避手段になるだろうし」
「……なるほど。なら、俺は靴にするかな」
「モモカも!」
「私もですね」
「まあ、一番無難だね。私は“紫雲猿の棍棒”を選ぶけれど」
こうして聞いていると、今まで適当に選んでた自分達が恥ずかしい。
私は“雲魔法使いのサブ職業”を持っているため、一番気になった靴を選んだ。
○これより、第十ステージの遺跡村に転移します。
「ファンタジー」の人気作品
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