ダンジョン・ザ・チョイス
155.水上都市
「”二重魔法”、”混沌魔法”――カオスバレット」
光と闇の二種の散弾が、二つの魔法陣から放たれる。
まさかこんなに早く、強力な”混沌魔法”が手に入るなんて。
ユリカが、強化体を倒して手に入れたっていう光と闇の二種属性魔法。
いずれは、私の主力魔法にするつもりだったスキルだ。
「ナオ!」
私のカオスバレットで魔神・跳弾兎の動きが鈍くなったため、ナオに合図を送る!
「”二重魔法”、アイスフレイムカノン!」
二つの青い炎がどちらも直撃し、その巨体のおよそ九割を氷付けに。
「”神代の剣”」
「”ホロケウカムイ”」
「”ニタイカムイ”」
マスターが神代の光を大剣に纏わせ、トゥスカは青い光を、ザッカルは翠の光を自身に纏ってボスに急接近。
「「「ハイパワースラッシュ!!」」」
三人が順にボスの身体を切り裂いて、ボス戦は終了した。
「では、私は”跳弾”のスキルカードを」
「俺は”跳躍”かな」
「俺も”跳躍だな”」
「私も”跳躍”」
既に”跳躍”を持ってるトゥスカ以外は、皆”跳躍”か。
私は、後々のために”跳弾の刃石脚”を選択。
魔神シリーズの武具は、最低一つは確保するようにしておく。
次はいよいよ、水上都市か。
●●●
ボス戦終了後、光に包まれて次のステージに辿り着く。
今回は一番最後にボス戦をしたので、既に全員が揃っている。
その中に、見たことのない美少女が居た。
モモカと一緒に兎と戯れて居たが、俺達に気付いて近付いてくる。
「初めまして。マスターユリカの隠れNPC、ドライアドのヨシノと申します。以後、お見知り置きを」
丁寧に挨拶されたためか、お嬢様という印象を覚える。
「コセだ。一応、皆のまとめ役になってる」
「トゥスカです。彼の妻です」
「ナオよ! コセの奥さんのナオ!」
なんでそんなにアピール?
「ザッカルだ、よろしく」
「私の名前はメルシュよ、ヨシノ」
「分かりました。ワイズマン、メルシュ。あとで、彼等について色々教えてくださいませ」
優雅に一礼するヨシノ。
やっぱりお嬢様って感じだな。
「ここが水上都市か」
祭壇から伸びる階段下には水路があり、船が留まっているのが見える。
家々は規則正しく並び、英知の街の物よりも黒っぽく、上に長い造り。
「水上都市は五つの区画に別れていて、区画から区画に移動するには船で水路を移動する必要があるからね」
「じゃあ、まずは教会に行きましょう!」
と提案するサトミさん。
「それは明日にしよう。それよりも、まずは家の購入が先だよ」
「どういうことだ?」
確かに、人数が増えて手狭に感じることも増えたけれど。
「レギオン戦に参加するためには、最低でも三つのパーティーが必要。それは、レギオン戦を行うために家を持っている人間が最低三人は必要だからなんだ」
ジュリーが説明してくれるが……なんだそりゃ?
「レギオン戦の細かいルールは、昼にでも説明するよ。それよりもマスター」
メルシュが耳打ちしてくる。
「先に進むにはレギオン戦に挑まなきゃならないわけだけれど、第二ステージみたいに、奴隷を購入しなきゃいけないみたい」
それを聞いて、急に脚が重くなる。
「組んだレギオンの中に一人、人魚が必要らしいから、モモカはジュリー達と一緒に別行動させよう」
既に家を持っている俺に、奴隷を買いに行けと。
一応、モモカに気を遣ったらしい。
「皆は家を購入できる南西区画へ。私達は北東区画に行くから。ユリカも付いてきて」
「私? ……分かったわ」
こうして、俺達は祭壇を降りた先で二手に別れる事に。
降りた先にあった五隻の小舟では、NPCが船頭をやっているようだ。
「ウチは北東行き専用だよ」
○一つの船に乗れるのは、最大八人です。
チョイスプレートが表示される。
○値段は一人200Gになります。
「船代をくんな」
俺とボス戦をこなしたメンバーと、ユリカとヨシノの七人で乗り込み、1400G実体化して船頭さんに渡す。
「まいど! 船を出すから、到着するまで大人しく座っててくれよ」
西洋人っぽい風格なのに、訛った日本語を話すから変な感じだな。
船頭のオッサンがオールを漕ぎ始めると、ゆっくり動き出す。
少し離れると、さっきまで船があった場所に光が集まって……同じ船と船頭さんが出現した。
「……なんだかな」
異国での旅行記分から、ホラー現象を目の当たりにした気分に。
船は次第に、右へと進路を変える。
ジュリー達は二隻並んで、反対側へと向かう。
「皆、左が中央区画で、冒険者ギルドがあるよ。レギオンを登録する場所でもある」
メルシュが解説を始める。
中央区側には船着き場が見え、階段を二メートル程登った先に、英知の街で見たギルドに似た造りの建物があった。
「反対側は南東区画。宿や武器防具、薬やスキルカードなんかが売ってあるの」
区画ごとに別の用途があると。
船が左に曲がる。
「南西区画は、例のミニチュアや指輪、衣服とか食糧だね」
ジュリー達が向かった場所。
「北西はモンスターが居て、稼ぎ場になってる。だから、他の人間と接触する可能性が高いのは北西か南東区画だね」
最低十五人以上でレギオンを組まないといけないなら、この都市で立ち往生になっているプレーヤーが居る可能性は高いんだよな。
「んで、私らが向かっている北東は?」
ザッカルが尋ねた。
「賭博場。そして、奴隷商館がある場所」
「まさか……奴隷を買いに行くのか」
メルシュの発言に、ザッカルから怒気が滲む。
「先に進むには、レギオンに一人、人魚が必要なんだよ」
「俺たちの時と同じってわけか! デルタのクソめ!」
実際に売り物にされてた身からすれば、怒りは当然か。
そう言えば俺は、結果的に始まりの村で六十人以上の獣人奴隷を買った事になるのか。
「じゃあ、人魚族を一人購入しに行くというわけですか?」
「それなんだけれど、良かったらユリカも購入するつもりでいて」
「へ?」
嫌そうな顔のユリカ。
隠れNPCも奴隷という分類だけれど、ユリカはタマを購入したジュリーと行動していたため、奴隷の購入経験は無いはず。
人を金で買うという経験は、非常に気持ち悪い。
ペットを買うという行為にすら抵抗を感じる俺には、尚更だ。
トゥスカが俺と一緒に居ることを望んでくれているから、俺は罪悪感を感じずにすんでいるのだろう。
「最初はともかく、信用できそうなら奴隷から解放して構わないからさ」
「二十人以上居るんだし、別に無理しなくても……」
メルシュの勧めを、断りたいらしい。
「隠れNPCが五人になった以上、パーティーは五つに分けなきゃならない。人魚を一人購入したとしても二十二人。サキが居るパーティーはともかく、それ以外の二つのパーティーは四人で行動しなきゃいけなくなる」
テイマーのサキはモンスターを従えているため、四人パーティーでも数的に問題は無い。
「まあ、良さそうな人が居なければ、無理に購入する必要は無いよ」
人数を揃えても、信用できなかったり足手纏いばかりが増えたって意味は無い。
俺達はこの辺の適性レベルを越えているだろうから、四人パーティーでも暫くは問題ないだろうし。
多分メルシュは、今後のレギオン戦を意識しているんだろう。
少しでも質の良い人間で、頭数を揃えたいんだろうな。
船が右に曲がると、向かいから船が近付いてきた。
「……へー」
「……アテル」
向かいの小舟にはアテルと、目付きの鋭い青い髪の……人魚が乗っていた。
その手には、大きな銛?
「僕等はこれから、ボス戦に挑む。先に行ってるよ、コセ」
「……ああ」
すれ違い様に言われた言葉。
アテルの不適な笑みと、ジッとこちらを見詰める女人魚の眼差しが、強く印象に残った。
光と闇の二種の散弾が、二つの魔法陣から放たれる。
まさかこんなに早く、強力な”混沌魔法”が手に入るなんて。
ユリカが、強化体を倒して手に入れたっていう光と闇の二種属性魔法。
いずれは、私の主力魔法にするつもりだったスキルだ。
「ナオ!」
私のカオスバレットで魔神・跳弾兎の動きが鈍くなったため、ナオに合図を送る!
「”二重魔法”、アイスフレイムカノン!」
二つの青い炎がどちらも直撃し、その巨体のおよそ九割を氷付けに。
「”神代の剣”」
「”ホロケウカムイ”」
「”ニタイカムイ”」
マスターが神代の光を大剣に纏わせ、トゥスカは青い光を、ザッカルは翠の光を自身に纏ってボスに急接近。
「「「ハイパワースラッシュ!!」」」
三人が順にボスの身体を切り裂いて、ボス戦は終了した。
「では、私は”跳弾”のスキルカードを」
「俺は”跳躍”かな」
「俺も”跳躍だな”」
「私も”跳躍”」
既に”跳躍”を持ってるトゥスカ以外は、皆”跳躍”か。
私は、後々のために”跳弾の刃石脚”を選択。
魔神シリーズの武具は、最低一つは確保するようにしておく。
次はいよいよ、水上都市か。
●●●
ボス戦終了後、光に包まれて次のステージに辿り着く。
今回は一番最後にボス戦をしたので、既に全員が揃っている。
その中に、見たことのない美少女が居た。
モモカと一緒に兎と戯れて居たが、俺達に気付いて近付いてくる。
「初めまして。マスターユリカの隠れNPC、ドライアドのヨシノと申します。以後、お見知り置きを」
丁寧に挨拶されたためか、お嬢様という印象を覚える。
「コセだ。一応、皆のまとめ役になってる」
「トゥスカです。彼の妻です」
「ナオよ! コセの奥さんのナオ!」
なんでそんなにアピール?
「ザッカルだ、よろしく」
「私の名前はメルシュよ、ヨシノ」
「分かりました。ワイズマン、メルシュ。あとで、彼等について色々教えてくださいませ」
優雅に一礼するヨシノ。
やっぱりお嬢様って感じだな。
「ここが水上都市か」
祭壇から伸びる階段下には水路があり、船が留まっているのが見える。
家々は規則正しく並び、英知の街の物よりも黒っぽく、上に長い造り。
「水上都市は五つの区画に別れていて、区画から区画に移動するには船で水路を移動する必要があるからね」
「じゃあ、まずは教会に行きましょう!」
と提案するサトミさん。
「それは明日にしよう。それよりも、まずは家の購入が先だよ」
「どういうことだ?」
確かに、人数が増えて手狭に感じることも増えたけれど。
「レギオン戦に参加するためには、最低でも三つのパーティーが必要。それは、レギオン戦を行うために家を持っている人間が最低三人は必要だからなんだ」
ジュリーが説明してくれるが……なんだそりゃ?
「レギオン戦の細かいルールは、昼にでも説明するよ。それよりもマスター」
メルシュが耳打ちしてくる。
「先に進むにはレギオン戦に挑まなきゃならないわけだけれど、第二ステージみたいに、奴隷を購入しなきゃいけないみたい」
それを聞いて、急に脚が重くなる。
「組んだレギオンの中に一人、人魚が必要らしいから、モモカはジュリー達と一緒に別行動させよう」
既に家を持っている俺に、奴隷を買いに行けと。
一応、モモカに気を遣ったらしい。
「皆は家を購入できる南西区画へ。私達は北東区画に行くから。ユリカも付いてきて」
「私? ……分かったわ」
こうして、俺達は祭壇を降りた先で二手に別れる事に。
降りた先にあった五隻の小舟では、NPCが船頭をやっているようだ。
「ウチは北東行き専用だよ」
○一つの船に乗れるのは、最大八人です。
チョイスプレートが表示される。
○値段は一人200Gになります。
「船代をくんな」
俺とボス戦をこなしたメンバーと、ユリカとヨシノの七人で乗り込み、1400G実体化して船頭さんに渡す。
「まいど! 船を出すから、到着するまで大人しく座っててくれよ」
西洋人っぽい風格なのに、訛った日本語を話すから変な感じだな。
船頭のオッサンがオールを漕ぎ始めると、ゆっくり動き出す。
少し離れると、さっきまで船があった場所に光が集まって……同じ船と船頭さんが出現した。
「……なんだかな」
異国での旅行記分から、ホラー現象を目の当たりにした気分に。
船は次第に、右へと進路を変える。
ジュリー達は二隻並んで、反対側へと向かう。
「皆、左が中央区画で、冒険者ギルドがあるよ。レギオンを登録する場所でもある」
メルシュが解説を始める。
中央区側には船着き場が見え、階段を二メートル程登った先に、英知の街で見たギルドに似た造りの建物があった。
「反対側は南東区画。宿や武器防具、薬やスキルカードなんかが売ってあるの」
区画ごとに別の用途があると。
船が左に曲がる。
「南西区画は、例のミニチュアや指輪、衣服とか食糧だね」
ジュリー達が向かった場所。
「北西はモンスターが居て、稼ぎ場になってる。だから、他の人間と接触する可能性が高いのは北西か南東区画だね」
最低十五人以上でレギオンを組まないといけないなら、この都市で立ち往生になっているプレーヤーが居る可能性は高いんだよな。
「んで、私らが向かっている北東は?」
ザッカルが尋ねた。
「賭博場。そして、奴隷商館がある場所」
「まさか……奴隷を買いに行くのか」
メルシュの発言に、ザッカルから怒気が滲む。
「先に進むには、レギオンに一人、人魚が必要なんだよ」
「俺たちの時と同じってわけか! デルタのクソめ!」
実際に売り物にされてた身からすれば、怒りは当然か。
そう言えば俺は、結果的に始まりの村で六十人以上の獣人奴隷を買った事になるのか。
「じゃあ、人魚族を一人購入しに行くというわけですか?」
「それなんだけれど、良かったらユリカも購入するつもりでいて」
「へ?」
嫌そうな顔のユリカ。
隠れNPCも奴隷という分類だけれど、ユリカはタマを購入したジュリーと行動していたため、奴隷の購入経験は無いはず。
人を金で買うという経験は、非常に気持ち悪い。
ペットを買うという行為にすら抵抗を感じる俺には、尚更だ。
トゥスカが俺と一緒に居ることを望んでくれているから、俺は罪悪感を感じずにすんでいるのだろう。
「最初はともかく、信用できそうなら奴隷から解放して構わないからさ」
「二十人以上居るんだし、別に無理しなくても……」
メルシュの勧めを、断りたいらしい。
「隠れNPCが五人になった以上、パーティーは五つに分けなきゃならない。人魚を一人購入したとしても二十二人。サキが居るパーティーはともかく、それ以外の二つのパーティーは四人で行動しなきゃいけなくなる」
テイマーのサキはモンスターを従えているため、四人パーティーでも数的に問題は無い。
「まあ、良さそうな人が居なければ、無理に購入する必要は無いよ」
人数を揃えても、信用できなかったり足手纏いばかりが増えたって意味は無い。
俺達はこの辺の適性レベルを越えているだろうから、四人パーティーでも暫くは問題ないだろうし。
多分メルシュは、今後のレギオン戦を意識しているんだろう。
少しでも質の良い人間で、頭数を揃えたいんだろうな。
船が右に曲がると、向かいから船が近付いてきた。
「……へー」
「……アテル」
向かいの小舟にはアテルと、目付きの鋭い青い髪の……人魚が乗っていた。
その手には、大きな銛?
「僕等はこれから、ボス戦に挑む。先に行ってるよ、コセ」
「……ああ」
すれ違い様に言われた言葉。
アテルの不適な笑みと、ジッとこちらを見詰める女人魚の眼差しが、強く印象に残った。
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