ダンジョン・ザ・チョイス
81.龍意と共に在る者
「”光線魔法”、レーザー!」
レッサーヴァンパイアを、光属性の魔法で焼き尽くす。
○”凝血のマント”を手に入れました。
チョイスプレートを確認し、目当てのアイテムがドロップした事を確かめる。
無いよりはマシ程度の装備アイテムだけれど、一応は手に入れた方が良いと判断したアイテム。
「メルシュさん、安全エリアが見えた」
ユイが教えてくれた。
「じゃあ、一度館に戻ろう」
辺りよりも明るい安全エリア内で、鍵を使って空間に穴を開ける。
穴の先、門扉を潜って館の中へ。
誰か帰ってきてるかなとリビングに入ると、ジュリー、タマがグッタリしていた
モンスターの大群を、二人だけで相手にしたからだろうなー。
「ジュリー、目的の物は?」
「手に入れたよ。そっちは?」
「四つは確保したよ……マスター達はまだ?」
「ええ、そうみたい」
キッチンから、ポットを手に現れるトゥスカ。
トゥスカは積極的に戦うわけにはいかなかったから、あまり疲れてなさそう。
さて、マスター達はどんな武器を持ち帰ってくれるかな?
スキルキラーか、ゴルドソルジャーと当たっていれば良いんだけれど。
●●●
「ハッ!!」
昨日ユイに教わった方法で、咆哮と共に気合いを乗せた振り下ろしを放つ!
剣同士がぶつかった衝撃が肌を撫で、ビリビリと振るわせる。
スキルキラーの近くだとスキルは使えないけれど、武具の効果は使える。
だから、”滅剣ハルマゲドン”のような強力な効果を持つ武器を使えば、スキルキラーを倒すのは難しくない。とはメルシュの言。
メルシュは、まさか俺が”滅剣ハルマゲドン”を使わずに勝とうとしているなんて思ってないだろうな。
スキルキラーが、剣を握る手に力を入れたのが分かった。
――肌が泡立つ感覚に乗るように、上半身を下げて横薙ぎを回避。
毒が有ると知っているからか、思考が剣と、それを握る右腕に自然と集中する。
だから、それ以外への注意が疎かになってしまう。
――右膝蹴りが頭に当たり、首と額に集中して激痛が走った!!
重い痛みが、絶叫し続けているかのよう!
醜い現実が、自分の中の幻想を蹂躙してくるような感覚!!
現実って奴は……どうしてこうもガキっぽくて、野蛮なのか!!
「ああああああああああああああああああああッッッ!!!」
怒気が込められた絶叫と共に、湧き上がった憎悪を振り払う!
俺の想いが研ぎ澄まされ、力となって剣に流れ込んでいく!
「行くぞ」
●●●
「へー」
頭を蹴られた数瞬の後、コセの剣が神代文字を刻む。
デスアーマーの時は三文字だけだったが、今回は六文字か。
「神代文字を……刻んだ」
ノーザンの言葉に、違和感を覚える。
こっちの世界の神代文字は、デルタが随分昔に排除したはずなのに。
密かに、受け継いでいた者達が居ても不思議じゃないがね。
ノーザンはコセを……いや、コセの剣を食い入るように見詰めていた。
●●●
痛みが邪魔だ。
頭の痛みを一時的に遠い場所へと押しやり、俺とスキルキラー以外の物を排除する。
態勢を立て直したスキルキラーが再び仕掛けてくるも、さっきよりも遅い気がする。
俺の身体も、動きが鈍い気がする。
刻が虚ろになる。
剣による突きを、僅かに身を捻って躱す。
左手を柄頭に添え、剣先を上に向けると――吸い込まれるようにスキルキラーの喉を貫いた。
『ギゴがあああがああ!!』
苦しむような仕草を見せ、剣を喉から抜いたのち、飛び退くスキルキラー。
挑発しようかとも思ったが、酷く、言葉を発するのが嫌に思えた。
言葉が、今の俺を現実という枠に押し込めてしまいそうで、それが途方もないほど嫌に感じたのだ。
『がアアアがアアアアいいああッッッ!!』
数刻前の俺を見ているかのような狂乱ぶり。
姿勢を低くしたスキルキラーが、剣を上に構えて、突っ込んで来る。
――剣が振り下ろされた瞬間、俺は右腕を無造作に振り――”ヴェノムキャリバー”ごと、スキルキラーの首を刎ねていた。
とても酷く、他人事な感覚。
剣を持つ重みも、勝利した事への歓喜も、今自分がここに存在している事すらも、夢の中で起きた出来事であるかのよう。
――自分という個が、世界に呑み込まれていく気がする。
奔流が……押し寄せてくうい3うふえwzk3rhぅfんrにv3ぐvksfnz!!!
「コセ様!!」
誰かが、俺に抱き付いてきた?
「龍意に呑まれてはなりません! コセ様、戻ってきて!!」
この子は……誰だっけ?
「コセ! 戻ってこい!! このままじゃ、お前が消えてしまうぞ!!」
知っているはずの声が、また聞こえたcsf3。
ghz3なのに、誰なのかは思い出せないxs3d。
感覚が渦巻いて、螺旋となって、己を穿ち始めて――いd3やwvdbj3っZ
「お許しを、コセ様」
首を引っ張られた瞬間、唇が柔らかい物に触れた?
「…………ノーザン?」
「コセ様!!」
俺は今、ノーザンとキスしたのか?
この、小柄な少女と?
「ノーザン……あのッ!!?」
より強く、ノーザンが抱き付いてきた!?
「僕が……僕が、ずっとコセ様をお守りします!」
……なにがどうなってるんだ?
◇◇◇
『…………神代文字を九つも刻んだ?』
一瞬だったが、確かに九つ灯った!
まずい……まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい!!!
三文字ならまだしも、六文字でも問題なのに!!
『神代文字を操りし者……愚かなる神の尖兵!!』
かつて偶発的に出現した尖兵一人により、我等の支族が何人犠牲になった事か!!
『こ、このままでは……私が組織に粛清されかねない!』
かつて侵入してきた者のあの剣を、私がゲームに組み込んでしまっている!!
『お、落ち着け。まだ九文字じゃないか……』
半分にも到達していないのに、なにを慌てる必要がある!
『他の観測者に気付かれる前に、スキルキラーとの戦闘記録を消してしまえば良いのだ!』
コセ様は、今一番人気があるのです。早々に手放せるものか!
『次に私が突発クエストを仕掛けられる時に、コセ様自身か、あの剣を排除する事さえ出来れば良いのです』
ようやく神々から解放された我々の世界!
再び世界が、神々の呪縛に苛まれる日々を作り出すなど、私がその手助けをしてしまうなど……絶対にあってはならない!!
●●●
安全エリアを目指し、三人で洞窟内を歩く。
神代文字を、お父さんの剣に刻んだ男、コセ。
それすなわち、龍意と共に在る者の証!
でも、その龍意に呑まれそうになるほど、今のコセ様は危うい。
僕が、コセ様を守る! この命に代えても!!
レッサーヴァンパイアを、光属性の魔法で焼き尽くす。
○”凝血のマント”を手に入れました。
チョイスプレートを確認し、目当てのアイテムがドロップした事を確かめる。
無いよりはマシ程度の装備アイテムだけれど、一応は手に入れた方が良いと判断したアイテム。
「メルシュさん、安全エリアが見えた」
ユイが教えてくれた。
「じゃあ、一度館に戻ろう」
辺りよりも明るい安全エリア内で、鍵を使って空間に穴を開ける。
穴の先、門扉を潜って館の中へ。
誰か帰ってきてるかなとリビングに入ると、ジュリー、タマがグッタリしていた
モンスターの大群を、二人だけで相手にしたからだろうなー。
「ジュリー、目的の物は?」
「手に入れたよ。そっちは?」
「四つは確保したよ……マスター達はまだ?」
「ええ、そうみたい」
キッチンから、ポットを手に現れるトゥスカ。
トゥスカは積極的に戦うわけにはいかなかったから、あまり疲れてなさそう。
さて、マスター達はどんな武器を持ち帰ってくれるかな?
スキルキラーか、ゴルドソルジャーと当たっていれば良いんだけれど。
●●●
「ハッ!!」
昨日ユイに教わった方法で、咆哮と共に気合いを乗せた振り下ろしを放つ!
剣同士がぶつかった衝撃が肌を撫で、ビリビリと振るわせる。
スキルキラーの近くだとスキルは使えないけれど、武具の効果は使える。
だから、”滅剣ハルマゲドン”のような強力な効果を持つ武器を使えば、スキルキラーを倒すのは難しくない。とはメルシュの言。
メルシュは、まさか俺が”滅剣ハルマゲドン”を使わずに勝とうとしているなんて思ってないだろうな。
スキルキラーが、剣を握る手に力を入れたのが分かった。
――肌が泡立つ感覚に乗るように、上半身を下げて横薙ぎを回避。
毒が有ると知っているからか、思考が剣と、それを握る右腕に自然と集中する。
だから、それ以外への注意が疎かになってしまう。
――右膝蹴りが頭に当たり、首と額に集中して激痛が走った!!
重い痛みが、絶叫し続けているかのよう!
醜い現実が、自分の中の幻想を蹂躙してくるような感覚!!
現実って奴は……どうしてこうもガキっぽくて、野蛮なのか!!
「ああああああああああああああああああああッッッ!!!」
怒気が込められた絶叫と共に、湧き上がった憎悪を振り払う!
俺の想いが研ぎ澄まされ、力となって剣に流れ込んでいく!
「行くぞ」
●●●
「へー」
頭を蹴られた数瞬の後、コセの剣が神代文字を刻む。
デスアーマーの時は三文字だけだったが、今回は六文字か。
「神代文字を……刻んだ」
ノーザンの言葉に、違和感を覚える。
こっちの世界の神代文字は、デルタが随分昔に排除したはずなのに。
密かに、受け継いでいた者達が居ても不思議じゃないがね。
ノーザンはコセを……いや、コセの剣を食い入るように見詰めていた。
●●●
痛みが邪魔だ。
頭の痛みを一時的に遠い場所へと押しやり、俺とスキルキラー以外の物を排除する。
態勢を立て直したスキルキラーが再び仕掛けてくるも、さっきよりも遅い気がする。
俺の身体も、動きが鈍い気がする。
刻が虚ろになる。
剣による突きを、僅かに身を捻って躱す。
左手を柄頭に添え、剣先を上に向けると――吸い込まれるようにスキルキラーの喉を貫いた。
『ギゴがあああがああ!!』
苦しむような仕草を見せ、剣を喉から抜いたのち、飛び退くスキルキラー。
挑発しようかとも思ったが、酷く、言葉を発するのが嫌に思えた。
言葉が、今の俺を現実という枠に押し込めてしまいそうで、それが途方もないほど嫌に感じたのだ。
『がアアアがアアアアいいああッッッ!!』
数刻前の俺を見ているかのような狂乱ぶり。
姿勢を低くしたスキルキラーが、剣を上に構えて、突っ込んで来る。
――剣が振り下ろされた瞬間、俺は右腕を無造作に振り――”ヴェノムキャリバー”ごと、スキルキラーの首を刎ねていた。
とても酷く、他人事な感覚。
剣を持つ重みも、勝利した事への歓喜も、今自分がここに存在している事すらも、夢の中で起きた出来事であるかのよう。
――自分という個が、世界に呑み込まれていく気がする。
奔流が……押し寄せてくうい3うふえwzk3rhぅfんrにv3ぐvksfnz!!!
「コセ様!!」
誰かが、俺に抱き付いてきた?
「龍意に呑まれてはなりません! コセ様、戻ってきて!!」
この子は……誰だっけ?
「コセ! 戻ってこい!! このままじゃ、お前が消えてしまうぞ!!」
知っているはずの声が、また聞こえたcsf3。
ghz3なのに、誰なのかは思い出せないxs3d。
感覚が渦巻いて、螺旋となって、己を穿ち始めて――いd3やwvdbj3っZ
「お許しを、コセ様」
首を引っ張られた瞬間、唇が柔らかい物に触れた?
「…………ノーザン?」
「コセ様!!」
俺は今、ノーザンとキスしたのか?
この、小柄な少女と?
「ノーザン……あのッ!!?」
より強く、ノーザンが抱き付いてきた!?
「僕が……僕が、ずっとコセ様をお守りします!」
……なにがどうなってるんだ?
◇◇◇
『…………神代文字を九つも刻んだ?』
一瞬だったが、確かに九つ灯った!
まずい……まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい!!!
三文字ならまだしも、六文字でも問題なのに!!
『神代文字を操りし者……愚かなる神の尖兵!!』
かつて偶発的に出現した尖兵一人により、我等の支族が何人犠牲になった事か!!
『こ、このままでは……私が組織に粛清されかねない!』
かつて侵入してきた者のあの剣を、私がゲームに組み込んでしまっている!!
『お、落ち着け。まだ九文字じゃないか……』
半分にも到達していないのに、なにを慌てる必要がある!
『他の観測者に気付かれる前に、スキルキラーとの戦闘記録を消してしまえば良いのだ!』
コセ様は、今一番人気があるのです。早々に手放せるものか!
『次に私が突発クエストを仕掛けられる時に、コセ様自身か、あの剣を排除する事さえ出来れば良いのです』
ようやく神々から解放された我々の世界!
再び世界が、神々の呪縛に苛まれる日々を作り出すなど、私がその手助けをしてしまうなど……絶対にあってはならない!!
●●●
安全エリアを目指し、三人で洞窟内を歩く。
神代文字を、お父さんの剣に刻んだ男、コセ。
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