ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

50.強化体

「硬い!」

 グレートソードが全く通らない!

『キュルルルルルルルルーーーッ!!』

 黒茶の石籠手でこちらの剣を防ぎ、白い体表に当てさせてくれない”エンシェントリザードマン”。

 距離を取り、チョイスプレートを操作。

 サブ職業の”盾使い”を、”針使い”に変更。

「パワーニードル!」

 発動しない。サブ職業を入れ替えてもダメか。

「発動しなくても、針使いを着ければ貫通力が上がるかと思ったけれど……当てが外れたな」

 鎧は硬く、隙も無い。

「どうしたら良いんだ?」

 ”拒絶領域”で吹っ飛ばそうにも、ここは壁で囲まれているし。

『キュルルルオウウウゥゥゥゥゥゥゥ!!』

 エンシェントリザードマンの開かれた口の前に光球が生まれ、肥大化していく!

「くっ!!」

 放たれた直後に階段を飛び降りる!

「ちっ!」

 降りると同時に、襲い掛かってくる緑色のリザードマン。

 後方からは、爆発の衝撃が走る。

「いつの間にか青いのが居なくなって、全部緑になってやがる!」

 リザードマンを必死に斬りながら、階段の上に意識を向けるも、エンシェントリザードマンは現れない。

「まさか、階段の下までは来ないのか?」

 緑のリザードマンは上に登って来なかったし、可能性はある。

 あわよくば、壁が無いここまでおびき出して、“拒絶領域”で吹き飛ばそうと思ったのに!

「……そういえば、ここのリザードマンは無限に湧くんだったな」

 打開策が思い浮かばないし。

「……Lv上げするか」


●●●


「”暴風魔法”、ダウンバースト!」

『ギシャアアアアーーーーーッ!!』

 グローツラングの巨体を、飛ばしてきた宝石の弾丸ごと平伏させる。

「”紅蓮魔法”、クリムゾンフレア!」

『ギシャアアアアァァァァァァァァァァ!! ギシャアアアアッ!! ギシャアアアアッ!! ギシャアアアアッ!!!』

 弱点属性により、宝石の鱗が溶け落ちていく。

 のたうち回る宝石の大蛇。

「とどめ。”紅蓮魔法”、クリムゾンランス!」

 紅炎の槍が、大蛇の頭蓋を砕き、肉を引き裂き、内から焼き尽くす。

「紅蓮魔法で六発か」

 グローツラングもコインスネークと同じく、物理防御が高い分、魔法防御が低い。

 弱点属性である火属性の上位魔法で、魔法特化の私が使用したにも関わらず六発も撃ち込んでようやく。

 どれだけ本来より強化されているのか。

「二人は大丈夫かな?」

 ヴァナルガンドジュニアもエンシェントリザードマンも、弱点らしい弱点は無いからなー。

○グローツラングの討伐報酬をお選びください。

★金剛の盾の指輪 ★金剛の剣の指輪 ★金剛の鞭の指輪
★金剛の騎槍の指輪 ★金剛の巨腕の指輪 

 ”金剛の巨腕の指輪”を選択。

○グローツラング強化体を倒しましたので、討伐報奨金が二倍の2000000Gになります。

「ふ~ん」

 思わぬ収獲。
 目標金額までもう少し。

○グローツラングを七分以内に倒しましたので、特別報酬のサブ職業を選んでください。

★金剛拳使いのサブ職業 ★金剛盾使いのサブ職業
★金剛剣使いのサブ職業 ★金剛鞭使いのサブ職業
★金剛槍使いのサブ職業 

 こっちは、最初から手に入れるつもりだった”金剛拳使い”を選択。

○”宝石の大蛇の魔宝玉”を手に入れました。

「さて、帰りますか」

 身体が光りに包まれる。


●●●


「ハイパワーブーメラン!!」

 “荒野の黄昏は色褪せない”を投げ放つも、飛び跳ねて躱される。

「転剣の竜巻!!」
『ガアアアアアアーーーーーーーッ!!』

 ヴァナルガンドが放った咆哮が収束され、転剣の竜巻を吹き飛ばす。

「ベクトルコントロール!」

 ハイパワーブーメランの効果が残っている状態で、黄昏のブーメランの方向を変えた!

『ギャオオオゥゥゥゥゥーーーッ!!?』

 戦士.Lv20で手に入れた”二重武術”により、ブーメランによる攻撃の幅が広がったおかげで虚を突けた。

 ヴァナルガンドのお腹を、大きく切り裂く。

「”魔力砲”!!」

 動きが止まったヴァナルガンドを、直径一メートルの光で攻撃。

「頭を狙ったのに」

 左脚二本しか討てなかった。

 とはいえ、もう動けないでしょう。

「ハイパワー……」
『ガルルルラアアアアアァァァァァァァァッ!!』

 戻ってきた“荒野の黄昏は色褪せない”でトドメを刺そうと思ったとき、残った右脚で無理矢理噛み付こうと突撃してきた!

「――ブーメラン!!」

 ヴァナルガンドの頭を、“荒野の黄昏は色褪せない”でその巨体ごと切り裂く。


「――いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 唾液が身体にーーーッ!! 全身にーーーーーッ!!

 巨狼が光に変わっていく……唾液も。

「シャワー……浴びたい」

○ヴァナルガンドジュニアの討伐報酬、ヴァナルガンドの牙、ヴァナルガンドの尻尾、ヴァナルガンドの毛皮を手に入れました。

「どうでも良いから、早く帰らせて……」

○ヴァナルガンドジュニア強化体を倒しましたので、”凶狼の腕輪”を手に入れました。

「分かったから早く!!」

○ヴァナルガンドジュニアを六分以内に倒しましたので、以下から一つ特別報酬を選んでください。

★860000G ★暗黒石×4 ★ブラックオリハルコン

「頼むから、早く帰らせてよーーーッ!!」

○”悪徳の凶狼の魔宝玉”を手に入れました。

「ふざけんな!!」

 
◇◇◇


『強化体をあっさり……しかも特別報酬まで』

 結果的に、強化体特典までプレゼントしたことに……。

『もう……アイツらにちょっかい出すのやめよう……と言っても、次は無いかしらね』

 これだけ制限した状態で、強化体のエンシェントリザードマンを倒せるはずがない。

『で、なんでずっとハイリザードマンと戦っているんだ、あの男の子は?』


●●●


「ふっ!!」

 ”武器隠しのマント”から“兇賊のサーベル”を取り出し、二刀流で緑色のリザードマンを切り刻む。

 このマントが無かったら、詰んでたかもしれない。

「ハッ!!」

 “片手持ち”と“二刀流”のスキルのおかげで、二振りの大剣を自在に振るう事が出来る!

 突きは放たず、リザードマンを一刀の元に斬り伏せていく。

 止まることなく、グレートソードを振り抜いた勢いを利用して“兇賊のサーベル”を振るい、更にその勢いを利用してグレートソードを振るう。

 一度でも攻撃を止められれば、この勢いも止まってしまう。

 一撃で絶命させるように、瞬時に狙いを定め、正確に切り裂く!

 それを絶え間なく、連続で!

「はあああああああッ!!」

 “振り抜き”のスキルが連続で適用されているのが分かる。

「ハアハア……」

 いつの間にか、端まで戻ってきてしまっていたのか。

「あれ、全滅してる?」

 無我夢中だったから気付かなかった。

○戦士.Lv21になました。パーティー最大数プラス1(リーダーの時のみ適用)

○戦士.Lv22になりました。予備スキル欄プラス5

「Lvが2も上がってる。なんでだ?」

 トゥスカとメルシュが、それだけたくさんのモンスターを倒したのか? それとも、既に主を倒したのか?

「思っていたよりも強いのかな、ここのモンスター」

 こんなに簡単にLvが上がるなら、メルシュがあのタイミングでLvアップの実を使わせるとは思えないけれど。

 再び廻廊に光が立ち昇り、緑のリザードマンが数百体現れる。

「もう一周するか」

 少し楽しくなっている自分が居る。

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